与党ケイ酸塩鉱物の六派は、ネソだのイノだの言われると訳わからん。こういう意訳を付けるとわかりやすい。派閥の違い、つまりケイ酸結合の違いは、案外その鉱物の特色を決定している。
(以下は有名な鉱物のみ。)
◆単独派(ネソ)
ペリドット (Mg,Fe)2SiO4
トパーズ Al2SiO4(F,OH)2
ガーネット X3Y2(SiO4)3
カイヤナイト Al2SiO5(アンダル―サイト、シリマナイトは異形)
ジルコン ZrSiO4
スフェーン(チタナイト) CaTiSiO5
ウィレマイト Zn2SiO4
フェナカイト Be2SiO4
ユークレース BeAlSiO4(OH)
ペリドット(オリヴィン、橄欖石)は、マントルの基本構成物質。ペリドットもトパーズもガーネットもジルコンも非常にベーシックな鉱物で、単独派の特徴はそのあたりにあるらしい。カイヤナイトはちょっと繊維派っぽいけど。フェナカイトやユークレースがここに属するのも意外。
◆双結派(ソロ)
双結なんて言葉はないけど、ほかに言いようがないから仕方ない。
ここにはエピドート・グループという大集団があって、ゾイサイト(灰簾石、Ca2AlAl2(Si2O7)(SiO4)O(OH))とエピドート(緑簾石、Ca2Fe3+Al2(SiO7)(SiO4)O(OH))たちがいる。タンザナイト、チューライトはゾイサイトの異種。
アキシナイト(斧石) Ca2(Mn,Fe)Al2BO3[Si4O12]OH
ヘミモルファイト(異極鉱)Zn4SiO7(OH)2・H2O
エピドート・グループやアキシナイトもベーシックな鉱物。しかしこれ全部含水鉱物ですな。水によって変成したものということか。
◆繊維派(イノ)
ここには
輝石グループ
角閃石グループ
という大集団がいる。ともに基礎的な造岩鉱物。名前を挙げるだけで膨大になるので省略。人気の石も多い。繊維派というだけあって、角閃石の中にはいわゆる「石綿」に属する鉱物もある。
ほかにチャロアイト、ラリマー(ペクトライト)、アストロフィライトといった異色存在もいる。3つとも繊維っぽい。
◆平面派(フィロ)
なにせ平面派なので、雲母という巨大グループがいる。
ほかにクローライト、サーペンティン、アポフィライト、クリソコラ、タルクなど。クローライトとサーペンティンは基礎的な造岩鉱物。アポフィライトは少し平面派の表情があるけれど、ほかはうーむ。クローライトなんか水晶の中に入るとトゲトゲの結晶を見せたりするぜ?
◆六環派(サイクロ/シクロ)
ケイ酸が6個、輪というか六角形というかで結合している。不思議ですな。
ベリル Be3Al2Si6O18(エメラルド、アクアマリン、モルガナイトなど)
トルマリン 主にX+Y+(BO3)3Si6O18(OH)4
アイオライト Mg2Al3(AlSi5O18)
ダイオプテーズ CuSiO3・H2O
ベニトアイト BaTiSi3O9
スギライト K(Na,□)2Li3(Fe,Mn,Al,Zr)2Si12O30
六環派は少数派だけど魅力的な石が多い。トルマリンは硼酸も水酸基も入っていて多様で複雑怪奇でちょっと異分子。こやつは与党に含めていいのだろうか。(そういうやつもたまにいるね)
◆立体派(テクト)
ケイ酸が網目状・立体的に結合したもの。複雑。ここには超巨大グループが2つ。
長石グループおよび準長石グループ(ソーダライト・グループ)
沸石グループ
あまりに巨大で面倒なので省略。
スキャポライト(グループ)、ダンビュライトなどもいる。
こうやってみると、案外派閥なりの色合いが見えてくるような感じがする……しませんか?
単独派・双結派はベーシックな感じ。繊維派もベーシック鉱物だけど独特の繊維っぽい感じが異色。六環派は個性派ぞろい。立体派は超複雑。
まあ「ええ? お前そこなの?」という鉱物も多いけど。
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