貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ユーディアライト

2021-11-26 19:55:34 | 単品

Eudialyte、ユージアライト、ユージアル石、ユーディアル石。めんどい。
まあこの化学式をご覧あれ。
Na15Ca6(Fe2+,Mg2+)3Zr3[Si25O73](O,OH,H2O)3(OH,Cl)2
ナトリウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、ジルコニウム。そしてケイ酸、塩素、水酸基、水。
さらにセリウム、イットリウム、ニオブなどの希土類を含むこともある。

赤い石だけど、色よりもこの化学式ゆえにコレクターに人気があるらしい。
しかしねえ、何ですかねこれ。寄せ鍋というか闇鍋というか。一応ケイ酸が鍋のうどんのように(おいw)中心になっているのかな。それに金属の具がくっついて、さらに水/水酸/酸素/塩素がお出汁のようにお供する。
ジルコニウムが入っているのは珍しい。ジルコン(ZrSiO4、風信子鉱)と多少近いのかも。ジルコンはきつねうどんですな。あ、出汁がないか。(こらw)

希産なのでけっこう高い。まあ無縁かなと思っていたら、パーフェクトストーンさんのクリアランスで、スライスが千円で出てたので、衝動買い。
未研磨品なので、片面だけ磨いてみた。ピカール(研磨剤)はなかなか偉大です。
緑の部分が何かは知らない。

なんか勘違いしていて、蛍光するものだと思っていた。でもしない。
どうもユーパーライトと混乱していたらしい。ユーパーさんは、スペリオル湖で採れる混合岩石で、方ソーダ石を含むため蛍光するとのこと。
ところが、ごく小さくピンクに輝くものがある。Vec Stone さんの説明では、ユージアライトは「紫外線でピンク色に蛍光するアグレル石、黒いエジリンを伴うことが多い」とあるので、アグレルちゃん(NaCa2Si4O10F)かもしれない。こいつも似たような形をしている。小うどんかな。(もうよしなさい)

小品ですけど、それなりに味わいはある。少しばかり鉱物マニアになったような気分にもなる。
寄せ鍋化学式を思い浮かべながら鑑賞するのがよろしいかと。

で、その後もうひとつ、複雑な化学式の石を見つけた。
それは次に。


翡翠

2021-11-25 19:11:26 | 国産鉱物

翡翠は、他の石とはちょっと違う。
何かしら茫漠とした、懐かしさともの悲しさが混じり込んだ、独特な感懐を覚える。

翡翠は日本の「国石」。一万数千年の昔から、縄文人・日本人は翡翠を愛でてきた。
それがDNAのどこかに刻まれている。そんな気もする。

ちなみに、中国の緑色の「玉」は、ネフライト、軟玉で、硬玉(翡翠、ジェイド、ジェイダイト、ヒスイ輝石)とは別物。中国では硬玉の翡翠は採れないという。その代わりネフライトに対する熱愛はものすごいらしい。お金持ちは家中ネフライトで飾り立てる。そう言えば近くの中国人経営の料理屋もそこら中にネフライトを飾っていたなあ。

軟玉の強い緑とは違って、翡翠の見た目は、派手ではない。ぼやけた感じで、緑(時に青や黒)が滲んでいる。
けれどその茫洋さが、心の内に湧き起こる茫洋たる感懐と溶け合って、見つめている時間はこの世の時間とは違うものになる。
もしかしたら、私は何度か前世で日本に生まれ、翡翠を愛でたり、得たいと渇望したりしたのかもしれない。そんな空想さえ浮かぶ。

翡翠と言えば糸魚川。実際は糸魚川という川はなくて姫川らしいけど。あちきもずっとあそこにあるのは糸魚川だろうと思っていた。そういう市名を付けるからいけない。
糸魚川と言えば、泣く子も黙るフォッサマグナ。(いや黙らんだろ)「糸魚川富士川断層」と昔は習ったけれど、大断層ということではなさそう。
「本州の中央をU字型の溝が南北に走り、その溝に新しい地層が溜まっている地域」(ウィキ)
けれど、「現在のプレートテクトニクス理論ではアメリカプレートとユーラシアプレートの境界に相当するとされる」(ウィキ)のだそうで、やはり大きな「裂け目」であることは間違いない。活断層もたくさんあるみたいだし。結局のところ何なのかよくわからないけど、面白い。
まあ、何ですね、フォッサマグナの西と東では、どうも人の性質も文化も違う感じがする。何かやはりあるみたい。
ちなみに姫川では「姫川薬石」というものが採れる。これば別に。

糸魚川の翡翠は、もうあまりいいものが採れないという人もいる。
それでもたくさんの翡翠ハンターが相変わらず採取に訪れているらしい。なかなかいいものが出ている感じ。地元の翡翠屋さんのツィッターにはそんな報告がよくある。

これは、名取貴石さんという老舗の通販で購入したもの。割と安くてありがたかった。
このお店はもう一つの伝統石「黒曜石」の本場・和田峠からさほど遠くないところにあって、黒曜石はもとより、十勝石、佐渡の赤石など、日本の伝統石も扱っている。自社で磨きや修理も行うレアなお店で、これもつるっつるに磨かれている。少しつるつる過ぎるかもしれない(笑い)。

最近はミャンマーの翡翠が多く出回っていて、美しいものもけっこうある(特に青色の強い模様が入ったものは素晴らしい)。でも、その表情は、どうも糸魚川産とは趣が異なるような気がする。
もっともミャンマーも変なことになっているから、翡翠はそのうち入手困難になるかもしれない。
今のうちだぞ、というのは天然石業界でよく言われる言葉。実際そうだったりそうでなかったり。いずれにせよ高いから買えない(笑い)。

翡翠の特質は、「理想型」というのがないということではないか。
「これこそ理想の翡翠です」というのは、ない。青でなければいかんとか、模様はこういうふうでなくてはだめだ、とかいうことはない。様々な色や模様があって、それぞれなりに美しい。自分で採取した人なら、それが世界で一番美しい翡翠になる。
この「理想型を作らない」というのは、日本文化の一つの特質かもしれない。あまりに理想的・典型的なものを嫌う。
盆栽だって、あまりに型にはまった五葉松なんていうのは、感心するけれど人気があるかというと疑問。どこかいびつだったり、枯れていたりする姿に、人は魅了される。
茶碗だって、歪んでいたり、欠けたのを金継ぎしたものだったりを愛する。
「数寄」の世界と言うのか。何なのかよくわからないけれど、とても面白い。

日本の翡翠は、中国人のように部屋のあちこちに飾り立てるようなものではない。小さいものを一つ引き出しに入れておいて、時々取り出して眺めて、茫洋とした時間を過ごす。そんな愛で方がふさわしいような気がする。


シリマナイトもうひとつ

2021-11-24 19:58:11 | 単品

シリマナイトを探して奇妙なビーズに遭遇したまでは前に書きました。
その後。
またまたクリスタルワールド五反田TOC店(長い)に掘り出し物を探しに行ったら、何とシリマナイトがある。
原石が袋に入って2個で800円。は?
アンダルサイトも同じように探していたらここで出会った。
石の神様はあちきの思いを読み取って差配してくださっているのだろうか。
それともクワ五T(その略称はないだろ)店長さんにテレパシーが伝わったのだろうか。(あほか)
アンダルサイトは2個で450円。シリマナイトは2個で800円。ありがたい。
ありがたいけれども、同じ石を2個手に入れてどうするのか。1個は飾って、もう1個は……一緒にお風呂に入るか。(何だその発想は)
1個で売るとそれぞれ225円、400円。それじゃ商売にならないということなのだろうか。けど200円の石とか売ってるじゃん。(余計な詮索すな)

で、買った。
家に帰って改めて眺めると、はて。シリマナイトってこんな石だっけ。

白っぽくて、緑がほの混じる。ううむ。
滑石? 石灰石?
まあいろんな色があるらしい。美しくないというわけではないけれど……

で、果敢に挑戦した。(また大仰な)
一つはベビーオイルのお風呂に入れた。(一緒に入らなかったのか?)
もう一つは途中で折れ掛かっていたのを分離して、磨いてみた。100均のダイヤモンドヤスリとピカール。(暇人だね)

オイル風呂のほうは、まああまり変わらない。少し白っぽさが取れたくらい。
でもちょっと翡翠に似てない?(似てないと思う)

磨いたほうは、小さくなったけれど、ちょっと様になっているような。



「これがレアストーンの○○ですよ」と言われたらありがたく感じる、かもしれない。(ないと思うよ)
翡翠に似てない?(似てないと思う)

まあ、そのうちまた面白いシリマナイトが出るでしょう。
しかし正体不明の石だな。


プレナイト・ボウフラ入り

2021-11-23 17:31:39 | 単品

前にもちょっと触れましたけど、カミさんのちょっと変わった趣味の石がありまして。
こういうプレナイトです。

実物はもう少し暗い。
「淀んだ水溜まりにボウフラがわいているみたい」なのが好きなんだそうで。
Stone of Wakou さんで1780円とお安かった。

プレナイト(Prehnite 葡萄石) Ca2Al2Si3O10(OH)2。
カルシウムとアルミニウムのケイ酸塩でなぜか水酸基付き。繊維派(イノ)と平面派(フィロ)の中間だとか。意味わからん。
名前は発見者のオランダ人プレーン男爵から。変なところにhが入っているのは蘭語のせい。最初に人名が付けられた石だそうで。
ちなみになぜかウィキペディアにはプレナイトの項目がない。誰か書いてください。

ふつうは丸っこい、それこそ葡萄のような結晶で売られています。明るい緑で本当に葡萄みたい。
しかしそれではつまらん、と。濁りを含んだ重めの色で、エピドートの針状結晶がインクルージョンとなっている、これがいいのだ、と。
で、こっちは誠安さんの1000円バーゲンで買ったブレスレット。やはりボウフラ入り。


表面が少しつや消しみたいになっていて、ますますどよーんとした感じ。ううむ。

けれど、どちらも強い光を透過させると、とても美しい。



あちきはあんまり心揺れない。面白いとは思うけど。
「好きずき」という単純な警句(か?)があるけれど、人が何を好むか、何を美しいと感じるかは、本当に千差万別。純粋な結晶じゃなきゃいやだ、という人もいる。地味な石を好む人もいる。緑が好き、赤が好き、という好みもある。まあそれぞれ。
純粋結晶派は、いわば大トロ好きですかね。(また食いもんかよ)地味石派は、コハダとか地場の貝とか。まあ寿司屋へ行ったら大トロばかり食ってないで、ほかのものも食べてはいかが、と。(余計なお世話だ)うーむ、たまには大トロ食いたい。
(え? 大トロで終わるのか?)


石はどうやってできるか

2021-11-22 19:55:19 | 岩石生成論

という話は奥が深くて、素人にはなかなかわからない。
つか、そもそも誰も現場を見たことがないし、人間が再現できないし、結局推論にとどまるわけだしね。
おまけに時間スケールも長大だし、物質は通常とは異なる姿を採るしで、どうやってもうまくイメージできない。想像力の限界。
ま、仕方ない。テキトーに把握するしかない。(君は何でもそうなんじゃないかな)

単純に言ってしまえば、石のでき方は3種類。
1.マグマ
2.堆積
3.水

1.マグマというのがどこからやって来るのか、実は確定していないらしい。
地殻の下の上部マントルから、というのが普通の考え方みたいだけど、下部マントルの上部から、とか、いや、最深部マントルと外核の接触面から吹き上がってくるのだ(「スーパープリューム理論」)とか。

東工大ニュース」より引用。

まあいずれにせよ、地球を構成している岩石が溶けたものがマグマ。火山から噴き出すやつもマグマ。それが冷えて固まって石になる。普通、石というものはそういうものだというイメージがある。
つか、地球というのは大きく言えばマグマでできているわけで、それが冷えて固まった薄皮の「地殻」に、人間は乗っかって生活している。「板子一枚の下は地獄」は漁師の形容だけど、地殻一枚下は火焔地獄。踏み外せば焼けて死ぬ。(どうやって踏み外すんだよ)
このマグマがゆっくりと冷えて、様々な鉱物の結晶が大きく育った複合体になったものが「ペグマタイト」。鉱物マニアには垂涎の言葉。(言葉が垂涎ておかしくないか?)
花崗岩なんかもペグマタイトに入るらしい。ペグマタイト墓石なんて言うとかっこいい。(花崗岩というと墓石を出すのはおかしいぞ)
大きな結晶ができるためには、ゆっくりと冷えるといった特殊な条件が必要らしい。融点が高いものから順番に冷えて微小固体になって、それが集まって結晶に……溶岩の中でそんなことが行なわれているなんて、どうもうまくイメージできないけど。

といっても、結晶クラスターなどは、成岩中にできる空洞(ジオード)の中に熱水が入り込むことで形成されるわけで、それは3の「水」によるものということになる。

2.堆積は、風化した岩石や生物の死骸が積もって、圧縮されてできるもの。
砂岩とか泥岩とかいうやつね。人間が大変お世話になる石灰岩も、サンゴや貝などの死骸が堆積して、圧縮されてできたもの。「生物由来の鉱物」なのですね。
まあ鉱物マニアにとっては、どちらかというと縁の薄い部類かもしれない。けれど砂金やウランの鉱床なんかは堆積による鉱床で、鉱工業の面では重要なものらしい。時には風化しにくい鉱物が泥の中に残って、思わぬ美石となって現われたりもする。

3.で、これが不思議。
水というのは、飲んだり手を洗ったりするあの水ではない。高圧で高熱で、様々な元素や鉱物成分が溶け込んでいる「熱水」。ケイ素だろうが金属だろうがばんばん溶ける。これがちょっと驚きというか、イメージできない。さらさらなのかどろどろなのか。
その熱水がいろいろと暗躍して(まあ確かに光はないわな)、たくさんの鉱物・岩石が造られる。様々なものを溶かし込みながら、柔らかい所、溶けやすい所、ガスが作った亀裂や空洞に侵入していく。そして溶けていたものを吐き出して純粋な成分だけの結晶を作り出す。
石好きが愛する美結晶は、だいたい熱水から造られるわけで。それどころか大規模な銅や金の鉱床なんかも熱水が造ったものだと言う。

なぜかうちにある水晶クラスター。数百年前に買ったらしくて記憶がない。(君は妖怪か?) まあこれも水が作ったものということになるのかな。

ただ、その熱水もマグマから出たものだから、1と3の境界は微妙。「スカルン鉱床」というかっこいい名前の、いろんな鉱物標本が出る鉱床は、マグマと石灰岩(堆積岩)が接触した場所で形成される特殊な熱水鉱床。これも鉱物マニアには垂涎の言葉。けれどこれももう一つうまくイメージできない。

地球の水と言うと、普通「海」をイメージして、海・雲・雨という地上だけの水の循環をイメージするけれど、とんでもない。「地球内部には、地球表層を覆う海水の数倍から数十倍の水が存在すると見積もられています」とのこと(出典同上)。ただし「その水の状態や量についてはほとんどわかっていません」とも。
水を大量に含んだ岩石や土砂が「プレート沈み込み」によって地球内部にまで入り込む。地殻やマントルに含まれる水は、火山噴火の蒸気となって大気に放出される。そうやって、大気・海・地球内部を貫く超巨大な「水の循環」がある。やはり地球は「水の惑星」なのですねえ。(詩的だね)

その水こそが美しい石を作る。古い五行思想だと「金」(鉱物)が「水」を生じるということになっているけれども、実は逆で、「水」が「金」を生み出している。
あちきらは普通、マグマが固まって石ができ、それが崩れて、堆積して固まってまた石ができる、というようにイメージしてしまう。実際そういう石が多いわけだけれど、その巨大なマグマと堆積物の合間に、水によって作られる「美稀石」の世界がある。スカルン鉱床はその典型かもしれない。
そう考えると実に不思議ではないですか。

まあ素人の石好きとしては、このくらいでいいでしょう。(ずいぶん安直だな)
いくら説明されたところで、この結晶複合標本はどうやってできたのか、とか、アゲートやジャスパーの縞や模様はどうやってできたのか、とかはよくわからない。
それぞれの石を前にして、あれこれ考え、想像するしかない。謎は謎のまま楽しむのがよろしいかと。