貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

佐渡産球顆流紋岩

2023-04-08 21:15:45 | 国産鉱物

佐渡産球顆流紋岩。ん? 何だこりゃ。「きゅうか」か。
キラリ石さんより。



流紋岩というのは、安山岩マグマが熱水の作用によってよりシリカ質になった「流紋岩マグマ(花崗岩マグマ)」が地上に噴き出して固化したもの。「流紋岩マグマ」は地中でゆっくり冷えると花崗岩になる。つまりは花崗岩の同質異像。(岩石にそんな概念はないぞ)
これが噴火で地上に出て急激に冷えると非結晶質の「火山ガラス」黒曜石になる。さらに激しく噴き上がってすかすかになると軽石になる。だそうで。
つまりは「花崗岩=流紋岩=黒曜石=軽石」ということになるわけ? 知らなかったですねえ。

流紋岩はゆっくり冷えた花崗岩でもなく急激に冷えた黒曜石でもない、中間体ということになるわけですかね。いろいろ形態はあるらしい。学術的説明はこちら
中間体のせいかあんまりお目に掛からない。純粋鉱物でもないので商品にはなかなかならないんでしょう。これはそんな稀少品の一つ。
球顆とは「マグマが急に冷える時、その中で針状のクリストバライトや長石類などの鉱物が放射状集合体をなしたもの」だそうで。
クリストバライトって時々聞くけど、何かと思って調べたら、「石英=SiO2」なのですね。「石英の高温結晶形」だとか。特殊な成分でもあるのかと思った。これのマイクロメートル球はプレシャス・オパールの遊色を作り出す元だそうです。ううむ。わからん。

それをラフに磨いてある。キラリさんは信州名取さんの系列店で、名取さんは自社で研磨している。その研磨の技術で、出っ張った部分をうまく磨き球体がピカピカになっていたり、削られて中の断面が見えていたり、へっこんだ所はそのままだったりと、とても面白い。このやり方、とてもいいんじゃないでしょうか。ちと雷おこしを思い出させる。(また食いもんかよ)

左下の緑の丸は直径4ミリくらい。丸の中に四角が散らばっていて不思議。



美麗というわけではないけれど、それなりに美しいし、何より「岩石・鉱物ができていくプロセス」が実感できて、いたく魅力的な石だと思うのです。


ウニ!

2023-04-07 11:04:22 | 単品

(また変なタイトルを)
前々から一つは欲しいなと思っていた石。アラゴナイトの「ウニ状クラスター」。Happy Gift さんより。割と安い。
壊しそうで恐い。

オジジがこういう表現を使うのはどうかと思うけど、「カワイイ!」。小さくて一所懸命棘を伸ばしているのがいとおしい。
一応蛍光するけど、白っぽくてあまり美しくはない。

こういう「ウニ!」っていう結晶はナトロライト(ソーダ沸石)やメソライト(中沸石)でもある。モルデナイト(モルデン沸石)なんかはもっと繊細。沸石はいろいろ形とか面白そうなのがごろごろしているけど、超巨大な沼なので踏み入りたくない。

アラゴナイトというのは、カルサイトと同質異形。前に「カルサイト・アラゴナイト問題」というのを載せましたけど、両者の関係は複雑。
ただアラゴナイトはカルサイトに較べて、奇妙な格好のものが多く、少し稠密な質感がある、という面白さがあるように思います。
これは前に上げた「山サンゴ」。真っ白白で美しいし形も精妙。

単純素朴な炭酸カルシウムもガイアの手に掛かると実に複雑至妙なものになるんですね。


熱水性多種結晶混合石

2023-04-05 20:01:36 | ややレア

(そんな言葉はないぞ) うん、何かいい名前作ってほしいよね。「ばらちらし」とか。(サイテー) ブルガリアン・ミックスとしとこうか。

「何じゃこりゃあ?」というのは、石集めの楽しさの一つ。
初めの頃はしょっちゅうあったけど、だんだん少なくなってきたのは致し方ない。
しかしこの商品写真を見た時にはびっくりしましたねえ。ちびちびのいろんな結晶がわんさか固まっている。ほんと何これ? の驚き。
Mineral Quest さん産。ブルガリア産。長辺45ミリ。



類似の標本がいくつか並んでいて、お店の説明では、「熱水鉱床で産する様々な鉱物群です」(君の好きな「水成鉱物」ですなw) 「パイライト(黄鉄鉱)、キャルコパイライト(黄銅鉱)、ガレナ(方鉛鉱)、スファレライト(閃亜鉛鉱)、クォーツ(水晶)、カルサイト(方解石)、クローライト(緑泥石)等で構成されてる標本が多いです」「金色→黄銅鉱、白っぽい金色→黄鉄鉱、銀色→方鉛鉱、黒・オリーブ色→閃亜鉛鉱、濃緑・抹茶色→クローライト」とある。
買ったものは「クォーツ、パイライト、キャルコパイライト、スファレライト」と書かれていました。



写真では写らないけど、きらっきらのきらっきら。
そして細部を覗き込むと、まあ何というか……何と言うんでしょう。(何か言えよ)
とにかくいくつも貼る。























(こんなに貼ったら飽きるだろw)

オジジの老眼に加えて鑑別知識もないので、どれがどれだかは定かではない。(なんだよw)
パイライトがミニサイズながら結晶の表面模様をきちんと見せて金色に輝く。水晶が軽やかな光を添える。赤紫はスファレライトか。
しかし水晶が他と一緒にちびちび結晶になっているのは何となく笑える。サイズお付き合いしたのか?
お宝の山、という感じですな。痺れる。
おまけにちょびっと蛍光したりもして、サービス満点。



しかしこれ、不思議なのは、母岩にがっしりついていた痕跡がないのです。全面細かい結晶がびっしり。どういうことですか?
熱水の中でできたとしても転がれば結晶はばらばらと落ちてしまう。どうやってこの「全面結晶まぶし」ができたのか、さっぱりわからない。
そしてこれ、けっこう落ちるんですわ。写真を撮る時に回していたら、ぽろぽろと4つくらい落ちたorz。この落ちた結晶もまた美しいのですけど。

     *     *     *

スファレライトやパイライトやガレナなどの混合というと、シャーレンブレンドが思い浮かびますね。あれは丸模様。結晶ではない。急速に冷えたとか。こちらは短い時間だけどゆっくり冷えたということなのかな。
硫化鉱物主体というからには、酸素や二酸化珪素が少ないということなのでしょう。特殊なマグマや熱水なのですかね。
シャーレンブレンドはボーランド産。こちらはブルガリア産。似たようなものだ。(こら。全然離れてるわw) あのあたりは何となく大陸の真ん中でマグマ隆起が起こるような地形なんかありそうもないイメージだけど、違うんでしょうね。

ブルガリア産というと、淡くて美しいアメジストをちょくちょく見ます。うちにも一つある。

けど、ブルガリア産のほかの鉱物というのはあまり目に付かない。これは新しい鉱床なのかな。

ともあれ、いろいろな元素を溶かし込んだ熱水が地中深くの空洞の中で、こんな細やかな造形を生み出す。その神秘に驚嘆するばかりです。
高いものではないけど、あちきのお宝の一つになりそう。


スリーピングビューティ・ターコイズ

2023-04-02 10:51:33 | 単品

トルコ石。英語風表記の原則でいくとターコイズなんだけどやっぱトルコ石。「せき」じゃなくて「いし」。「いし」だけど岩石ではなくて鉱物。トルコでは採れない。ややこし。(また長々しい予感w)

CuAl6(PO4)4(OH)8・4H2O。リン酸塩含水鉱物。生成過程は不明で、銅の二次鉱物からできる「三次」鉱物っぽい。大きな結晶はほとんどない。
ちなみに銅のリン酸塩鉱物には、リベテナイト(Libethenite 燐銅鉱 Cu2(PO4)(OH))、ベゼリアイト(Veszelyite ベゼリ石 (Cu,Zn)3(PO4)(OH)3・2H2O)がある。どちらもレアですな。リン酸塩鉱物には美しいものがたくさんあるけど、銅は少数派。

正直、あんまり好きじゃなかった。昔からあったけどちょっと安っぽい感じで。
カミさんの話だと、
「昔、若い女子が買えるアクセサリーは、トルコ石と珊瑚くらいであった。ダイヤ・ルビーなどは高く、オパールやガーネットは地味。ラピスラズリが出回りだした時は驚いたものである。」(ずいぶん硬い文体だな)
ま、すいぶん昔の話。どのくらい昔かは内緒。(そうしておきなさい)
確かに男性用でもトルコ石のアクセサリーはあった気がする。後はブラックオニキス。
今みたいに安くてきれいなルースが溢れているわけではなかった。
そんな具合なので、トルコ石は古くさいイメージ。

その後、アリゾナの「スリーピング・ビューティ」という有名鉱山産のなかなか美しそうなものをあちこちで見掛けたけど、古いイメージのせいで食指は動かなかった。
ところが過日、Cute Stone さんで、えらく軽やかな色のものが割と安く出た。「まあやっぱりトルコ石も一度ちゃんと味わうのがよいのではないか」などと思ってポチっ。

無研磨、無処理。なのでマットな質感。それがとてもいい。なんか石ではない不思議なものを見ているような不思議な感覚になる。

トルコ石は多孔質で汚れやすいのでたいていワックス処理をされる。また樹脂で固める「スタビライゼーション」処理も多いらしい。そういった処理をすると、ピカピカになるけれど色は濃くなる。へたをすると何となく安っぽくなる。
これが本来のトルコ石の美しさなのでしょう。驚きでした。

     *     *     *

トルコ石は古来、様々な文明で装飾に用いられてきた。で、どうも掘り尽くした感じで、ハウライト(Ca2B5SiO9(OH)5)やマグネサイト(菱苦土石 MgCO3)を着色した代用品が出回っている。ハウライト使用と書いてありながら、実はマグネサイトでしたというものもあるとか。ハウライトもマグネサイトも同じくらいの稀少性らしいのに、ハウライトと言うほうが受けがいいらしい。ハウライトは「白水牛石」としてアクセサリーにもなるとのこと。見たことはない。
これはミニ標本のマグネサイト。黒い模様がなかなかいい味出してる。

黒い模様が入っているのは、ハウライトもトルコ石も同じ。

トルコ石は大きな塊になりにくく、母岩の模様が出ることが多い。スリーピング・ビューティ産は模様なしのものがよく出るので人気だったとか。ただし、白い模様が入るものもあって、それはわざと黒く染めて出荷したともいう。国によっては青と黒のコントラストが評価されることもあるらしい。

このスリーピング・ビューティ鉱山、美しいトルコ石が出るから「眠れる森の美女」なのかと思ったらそうではない。山塊自体の名前で、横たわった女性のように見えるのでそう名付けられた。mindat から拝借。まあそう見えなくもない。

もともとは金鉱山だったが次第に枯渇して、1960年頃からは銅鉱山になり、それとともにトルコ石も採掘された。70年代頃からは「スリーピング・ビューティ・ターコイズ」は大人気となったが、これも次第に枯渇して2012年に閉山。だから絶産、とよく言われるけれど、再開されたという噂もある。不確か。天然石業界の「絶産もの」は鵜呑みにしてはいけない。ロードクロサイトのスイートホーム鉱山も再開されたらしいし。
スリーピング・ビューティ産は白っぽいものからかなり青が濃いものまであったけれど、売りは模様無しというところ。欧州ではそれが好まれたという。けれど模様無しだと偽物が作りやすいという弱点もある。有名石には偽造問題が付きものということですな。

ついでに記しておけば、トルコ石の青は「コマドリの卵の青=ロビンズエッグ・ブルー」と表現されるという。
コマドリって何じゃい。三味線持った「こまどり姉妹」は朧げに覚えている。(古っ)
ネットで見てみたら、確かに似ている。実に美しい青。ツグミやムクドリの卵も青いらしい。鳥や蝶などがしばしば見せる極彩色というのも、鉱物と同様、実に奇妙なものですね。