まず人口の推移です。
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今大河ドラマでやっている鎌倉殿の13人の時代は1000万人もいなかったんですね。江戸時代になって150年ほどで約3倍に増加しています。平和な時代になって経済成長が著しかったのでしょう。その後の100年間は安定した時代のようです。まさに持続可能な社会のお手本です。明治になって急速な人口増加がみられます。2004年にピークとなりますが、その間3330万人から12784万人と約4倍になっています。
現在人口の減少が始まっていますが、この推計によるとこれまでの増加と変わらない勢いで減少していくのがわかります。推計は太い線と上の破線(はせん)と下の一点鎖線(させん)は推計の幅で破線の方は高位推計〔人口減少に対する対策が最も効果的に表れた場合〕、一点鎖線は低位推計〔人口減少に対する対策が最も効果的でなかった場合〕となります。太い実線は中位推計で確実に達成すべき人口数となります。
次は年齢3区分別の人口の推移です。
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1950年から2050年の100年間の推移です。
〇一番上の青い線は総人口を現わしています。
〇水色の帯は若年人口〔0~15才未満〕
〇薄い緑の帯は生産年齢人口〔15~65才未満〕
〇濃い緑の帯は高齢人口〔65才以上〕
となります。総人口だけ見ると左右対称のように見えますが、その内訳はずいぶん違っています。若年人口の減少はグラフの最初(1950年)からず~とです。その子どもたちが大人になっていきますから生産年齢人口も減少する方向になっていきます。高齢人口は戦後のベビーブーム時代の赤ちゃんが高齢人口になっていきますし世界一の平均寿命で膨れていっています。2050年まで増加の一途です。総人口が減少していきますから2050年以降は減少していく見込みです。
次は"世帯(家族)"についての世帯類型別世帯数の推移の帯グラフです。
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左から"単独(ひとり)世帯""夫婦のみ世帯""夫婦と子世帯""ひとり親と子世帯""その他の世帯"です。
"三世代家族"の区分なんてないですね。ないというより“その他の世帯”に集約されているんです。どの年代もわずかな数しかありません。親戚家族を見渡しても父方の本家(もとえ(方言))だけです。
単独世帯が多くなっているのには驚かされます。結婚しないでひとり、離婚してひとりとひとり、夫婦のみ世帯で死別でひとり・・・・色々あるでしょうが増えていくんでしょうね。私は夫婦のみ世帯ですからいずれはどちらかがひとりになります。
年金が生活を支えてくれますし健康ですからまだまだ2人で生活していけます。2人の子どもたちには"自分の人生"を歩んでほしいと願っているのが親ですからこうなっていくんでしょう。
健康でなくなれば、高齢者施設がいっぱいあります。私のところは地方の小都市で大きな工場がありますが、その周辺の市町村は高齢者施設が最も大きな地域産業となっています。
次は単独世帯数の推移〔高齢者単独世帯とその他の単独世帯〕です。
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単独世帯が増加することは前のグラフで知りましたがここではその内訳です。
高齢者単独世帯が2020年は単独世帯の3分の1ほどでしたが2050年は半分以上に増えています。それ以後も増える勢いのグラフです。
先のグラフでわたし自身のことをお話ししましたが、このように単身でも暮らせる社会ができつつあることがわかります。ほんとにこれでいいんでしょうか。単身世帯ということは"ひとりぼっち"ということですよね。
次は人口問題のそれぞれの地域の問題を考えてみましょう。
居住地域・無居住地域の推移という図です。
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居住地域・無居住地域ってなに?
全国を1km四方のメッシュを考えてそこに住んでいる人の人数(人口/㎢)の推移を考えたものです。無居住地域はそれが0人/㎢のところです。
図は3つの部分に分かれていますので、ひとつひとつを見ていきます。
まずは人口規模別メッシュ数です。2005年と2050年の比較です。
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注目するところは、かつて国土の5割の地域に人は住んでいるがこの45年間に4割となり、無居住地域のメッシュが約20%ほど増えているところです。このことを無居住化と言っています。
次は広域ブロック別無居住化割合のグラフです。
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前のグラフから"無居住化割合"の全国平均は約20%でした。それを広域ブロック別に求めたものです。
中国と四国が平均より大きい割合です。北海道はもっと大きな割合で50%ほど無居住化が進みます。大変厳しい状況になります。
それを日本地図に落とすと
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緑のところは2050年までに無居住化するするところです。
赤い
〇が無居住化する割合が高いところです。
「国土の長期展望最終とりまとめ」にはこのような長期展望の情報があって、これから地域ブロック・各都道府県・各市町村がどのように取り組んでいけばいいかの基礎資料を示しています。
それぞれの地域では「住みやすい町」「子どもを産み育てやすい町」「仕事のある町」・・・を目指して取り組み始めました。
このような将来の展望の中で子どもたちをどのようの育てたらいいかというのが、これからの学校教育です。
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それをわかり易く説明したものです。
学習指導要領というのは日本の学校でどのような内容をどのような方法で学習して、どのようなことができるようになるかなどを記述したものです。それを皆さんに周知してもらうための前文の抜粋です。〔これからの時代に求められる教育〕として書かれています。
「一人一人の児童が、・・・」で始まる文章ですが、わかり易くするためにその下に人の絵を描いてみました。
〇一人の子ども:一人一人の児童が、自分のよさや可能性を認識するとともに
〇その周りに何人かの人々:あらゆる他者を価値ある存在として尊重し
〇協働する:多様な人々と協働しながら
〇みんなで乗り越える:様々な社会的な変化を乗り越え
〇一人の子どもが輝く:(子どもたちの個々が)豊かな人生を切り拓き
〇みんなが輝く:持続可能な社会の創り手となる(社会が輝く)
少し見方を変えたのが「よりよい学校教育を通してよりよい社会を創る」という言葉です。先の文にも「持続可能な社会の創り手となる」という言葉があります。
これからの教育は子どもの個々としての成長だけでなく、よりよい社会を創ろうとする社会人を育てようとしています。『社会を創る』『社会を創ろう』という言葉が学校教育の大きな目標に掲げられたのはこれまではありません。
新しい学習指導要領が発表されたときから、このことを教育委員会や学校、地域の皆さんに紹介してきました。
最初の学校の捉え方は「子どもたちを育てるのが学校の役割なのに、今度は社会づくりの役割も担わなくてはいけないんですか。そんなことはごめんです。」という意見が多かったです。学校の多忙さに加えて〔〇〇教育〕〔△△教育〕〔◇◇教育〕・・・・と学校で学習することは増える一方です。その一つとして受け取られることが多かったです。これからの社会人としての必要不可欠な資質〔持続可能な社会の創り手となる〕として育成するということなのです。
地域の皆さんの反応は違いました。「これからの子どもは社会性を持つことは大事です。そのために私たちが学校教育に参画するのは必要なことですね。」という皆さんが多くおられました。お話をした皆さんは集まってくれた方々でしたからよくわかっていただけたのかもしれません。
学校教育では授業がどう変わるかを示したのが
先ほど人の絵で紹介した〔これからの時代に求められる教育〕と重なりませんか。
主体的:一人一人の児童が、自分のよさや可能性を認識するとともに
対話的:あらゆる他者を価値ある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的な変化を乗り越え
深い学び:豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となる
(〔深い学び〕は次に紹介する授業の記述とは違っていますが、私自身はこの〔深い学び〕が、自身の豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となる"力(=生きて働く力)"になると解釈すればよいと理解しています。)
もっと詳しくは
赤の枠で囲んだところが中核です。
先生が黒板の前にいて講義をして知識を授けるのが昔の学校でした。教科書に書いてあることをひとつひとつ知識として自分のものにすることです。
最近は〔主体的に学ぶ〕〔学び合う〕〔自ら考えて気づく〕など知識は授けられるものでなく自ら学習によって獲得するものであるとされました。生きて活かせる技能や知識を獲得するのです。
これからは子ども同士や先生と対話したり協働することはもちろん、地域の皆さんも学習の場に参画してもっともっと豊かな学習環境の中で学んでいくのです。教室も学校の中だけではなく町や自然の中に出ていって学びます。そこで生きて働く人々が先生となることもあるはずです。
最後の「先哲の考えを手掛かりに」というところは"読書"の大切さです。先哲が時間と空間を超えて参画してくれるのが読書です。その大切さをうたっています。過去を学ぶことは未来を考えることにとっては大変重要です。
まとめ
まずこれからの日本という側面からまとめます。
日本の人口が減少していくことは仕方のないことですが、人が都市に集中して地方に人がいなくなってはますます地方は疲弊(ひへい)してしまいます。無居住化も新しい課題です。自然に返すべきところもありますが、日本の素晴らしいところとして津々浦々にいたるまで地名が付けられています。「壹岐・対馬・松浦(まつら)などは魏志倭人伝(約1800年前の中国歴史書)に書かれている地名です。その時の器であれば地下に埋もれて掘り出されます。地名は継承されて今でも使われている大切なものです。(民俗学者谷川健一の言葉)」とあるように、地名の大切さその地に生きる文化継承の大切さを説いています。日本の政府も同じように考えています。地域の繁栄なくして日本の繁栄はないのです。地方創生をどのように成し遂げるかがこれからの日本の未来の成否を決めます。それぞれの地域に住む皆さんが自分の住む地域の良さを知り大切に思う心が、力を合わせてこれからの未来を創っていってほしいと願います。
単独世帯がそれも高齢者の単独世帯が増えていく傾向は心配ですね。社会全体がそれを助長する方向で動いていくのがいいんでしょうか。現実の問題として仕方のないことでしょうが、それに対して必要なことは、それを支える対策だけでなくそうであっても豊かに生きていける仕組みではないでしょうか。
そこでそういう時代の学校の役割です。
これからの日本人に必要なことは何でしょう。実はもう私たちは気づいています。東日本大震災の時に地域の人と人のつながりの大切さに気付きました。ネットでつながっていても災害のときには手を引っ張って助けることはできませんよね。抱き合って温もりを感じることはできません。今の若い人は方言を話すことを厭(いと)いません。宮崎弁はフランス語に似ているとか、佐藤唯さんや朝倉唯さんの山形弁はほっこりとしていいですね。若い人たちはそれぞれの地域に誇りを持っています。
自分の生まれた地域につながりを持ち、その地でどのように生きていくか考えるのもよし、日本に世界に大きく羽ばたいてもよし、その地とつながっていれば、何かあった時大きな力を発揮してくれて、地域に貢献する人材となってくれるのではないかと思います。
これからは予測不能な未来社会に突入します。それに対応するには一人一人ではできないでしょう。互いにつながり合い協働することで乗り越えることができると思います。学校もその地域の学校として、地域の未来を担える人材を育成する必要があります。これまでの教育に"加えて"というのでなく、これからの人材として必要な資質であると考えてほしいと思います。
学校を支援する人々についてです。誰が協働
者になりえるか考えてみてください。児童生徒の学習に必要な人材はそこに生きて働く皆さんです。しかしそのような皆さんは授業中は働く時間です。働く時間でも対応してほしいですができないときもあります。そこで私のような年金者です。将来増えるという高齢者です。高齢単独世帯の皆さんです。
このような皆さんはこれまで色々な経験をして知識と技能を持っておられます。それは協働する場で活かされます。一度学校で協働して初めて"自分の経験が活かせるんだ"ということに気づきます。私もその一人でした。この経験は新しい自分の“発見”であり、地域とのつながりを持つきっかけともなります。これからの生きがいになれば最高です。特に嬉しいのは街中で子どもたちから「作って遊ぼうのおじちゃ~ん!」と声をかけてもらうことです。小さい友達がいっぱいできました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。日本の未来を考えるという壮大な動きを現在進行で書かせてもらいました。
最初の人口の推移のグラフで明らかなように2050年までには持続可能な社会を創りたいとの取り組みですが、人口減少の勢いはそれ以降にも取り組まなければならない課題であることを示しています。それでも"豊かに生きられる日本(それぞれの地域)"を目指して頑張っていきましょう。