よしーの世界

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ノモンハン 責任なき戦い   田中雄一

2020-10-04 07:44:54 | 
歴史は繰り返す。私たちは第二次大戦の教訓を充分に生かすことが出来ない。何しろ学んでおくべきだっ

た学生時代に日本史は縄文、弥生に始まり江戸、明治維新にたどり着くのがやっとで、大正デモクラシー

から昭和初期の動きをほとんど学ぶ時間がなかった。教える側もあの戦争を教えるのに時間を割いて考察

させることを避けたようにしか思えない。親や親戚に断片的な体験を聞くか、映画やテレビで知ること、

もしくは自分で本書のような取材に基づく良書を探し読むしかない。


恐るべきは日本であらゆる事態に当事者が責任を全くとらない姿勢は今も変わらず、周囲に居た人々が完

全に傍観者になっている点で、本書に登場する軍幹部たちも重大事態を他人事のように話している。日本

の綿々と続く負の歴史はその時に権力を持つ、或いは権力を有し行使できる立場の者が後々責任追及を免

れているため史実が曖昧なまま放っておかれることにある。


101歳の元兵士は「ノモンハンはまったく無駄な戦争だった」と話している。関東軍の幹部は参謀本部

の制止も聞かずに無謀な戦争に突入し多大な犠牲を払うことになる。当時のソ連と関東軍の装備の差は歴

然で、ソ連駐在武官の情報を関東軍幹部は黙殺し、日本の参謀本部は危機感を抱くことがなかった。元兵

士の証言では日本軍の明治時代に作られた古い銃では、ソ連戦車の操縦席の窓でさえ貫通すること出来な

い。関東軍の幹部は結局精神論だけで勝つつもりになっているというお粗末さだった。


後から思えば悪夢のような話だが、今を振り返れば相変わらず一部権力者に都合の良いような政治が行わ

れている。日本は間違った方向に進んでいるとしか思えないことばかりだ。歴史を知り、学び、考察し、

論理的な思考を持たなければ、大多数の国民が幸福を感じる社会は訪れない。


ノモンハン 責任なき戦い    田中雄一       講談社現代新書
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