大佛次郎賞を受賞した「覚書 幕末の水戸藩」で有名な山川菊栄氏が書いた本書は日本の歴史物では
珍しい女性を中心にしたもので、しかも幕末、維新を過ごした母親や親族に聞いた話を元にしている。
本が面白いのは全く知らない時代の世界に連れて行ってくれることで、幕末に武家の女性たちがどう
いう暮らしを送っていたのか詳細に著していて非常に興味深い。
当時男性優先社会で父や夫の人生によって多大な影響を受けることになるが、それでも自分たちの楽
しみを見出し、過酷な運命に弄ばれながらも必死に生きていく姿がいきいきと描かれている。幕末に
政府に対峙した烈公、藤田東湖の倹約令が武士の間で評判が悪かったことも書かれていて、その後の
水戸藩の混乱に拍車をかけたことがよく分かる。
倒幕の発端は水戸藩にあった。しかし天狗党とはじめとした改革派、幕府を守ろうとした保守派、さ
まざまに入り乱れ、血で血を洗う凄まじい争いで、水戸藩では有為な人材が払底し、維新に完全に取
り残されてしまった。薩摩、長州、土佐と維新に関わり政治を動かす立場の藩と異なり、明治維新に
参加することも叶わず、水戸藩の希望だった慶喜が将軍を止めたことに水戸藩の人々は呆然とするば
かりだった。
幕末の水戸藩の惨状は暗い影を色濃く残すが、それでも本書には淡々としながら、不思議な明るさを
感じる。著者の語り口のうまさだろうが、女性の強さもあるのだと思う。
武家の女性 山川菊栄 岩波文庫
珍しい女性を中心にしたもので、しかも幕末、維新を過ごした母親や親族に聞いた話を元にしている。
本が面白いのは全く知らない時代の世界に連れて行ってくれることで、幕末に武家の女性たちがどう
いう暮らしを送っていたのか詳細に著していて非常に興味深い。
当時男性優先社会で父や夫の人生によって多大な影響を受けることになるが、それでも自分たちの楽
しみを見出し、過酷な運命に弄ばれながらも必死に生きていく姿がいきいきと描かれている。幕末に
政府に対峙した烈公、藤田東湖の倹約令が武士の間で評判が悪かったことも書かれていて、その後の
水戸藩の混乱に拍車をかけたことがよく分かる。
倒幕の発端は水戸藩にあった。しかし天狗党とはじめとした改革派、幕府を守ろうとした保守派、さ
まざまに入り乱れ、血で血を洗う凄まじい争いで、水戸藩では有為な人材が払底し、維新に完全に取
り残されてしまった。薩摩、長州、土佐と維新に関わり政治を動かす立場の藩と異なり、明治維新に
参加することも叶わず、水戸藩の希望だった慶喜が将軍を止めたことに水戸藩の人々は呆然とするば
かりだった。
幕末の水戸藩の惨状は暗い影を色濃く残すが、それでも本書には淡々としながら、不思議な明るさを
感じる。著者の語り口のうまさだろうが、女性の強さもあるのだと思う。
武家の女性 山川菊栄 岩波文庫