よしーの世界

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あばらかべっそん   桂文楽

2021-10-13 06:41:06 | 
名人八代目・桂文楽の半生記。文楽師匠の人情味がとてもよく出ています。噺家でも色々な人がいて

「ナメクジ長屋」でお馴染みの志ん生師のように極貧ながら、酒を浴びるように呑み、家庭を顧みな

い落語のまんまの噺家もいれば、圓生師のようにひたすら芸を磨くことに邁進し、その記憶力の良さ

で昔気質の芸人、そして芸を後進に伝えようと努力した人もいます。それぞれに生き方が噺によ~く

出ていて興味は尽きない。


明治から昭和の半ば位までの話ですから、相当荒っぽいエピソードもあります。若い頃にチンピラの

ような生活をしていて半死半生の目に合ったり、何しろ女性にもてたので間男をして這う這うの体で

逃げたというような、落語に出てきそうなものもあります。稽古にしても、文楽師は若い頃に「エー

」という癖があって「エー」という度に、立花屋左近(三代目三遊亭円馬)師匠にガラスのおはじき

を投げつけられ、一回の稽古でなんと70個もあったという。(三代目三遊亭円馬師匠が病気になって

後の文楽師とのエピソードは泣けました)


「あばらかべっそん」という意味不明の言葉はもててもてて仕方のなかった文楽師のテレを含んだ造

語です。本書にもその一端が書かれていますが、噺家として本当に幸福だったと思います。今のよう

にテレビがあったり、様々な媒体があるわけではないので、噺家がどれだけ売れていてもその行状を

誰でも知っているということはなかったでしょう。知る人ぞ知る世界で、そこだけで通用した常識も

あったと思います。今は芸人でもちょっとしたことで叩かれまくります。もう少し寛大さがほしいも

のです。



あばらかべっそん        桂文楽          旺文社

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