舞台は6,7世紀頃のブリテン島(イギリス・グレートブリテン島)。主人公は老夫婦のアクセルとベ
アトリスの二人、彼らは傷ついた少年と若き騎士と一緒に旅に出る。さらに登場するのは悪鬼、雌龍。
旅の途中で出会う老騎士。まるでゲームの世界ではないか。しかし読めば読むほど入り込んでしまう。
作者の文章力はリアルで力強い世界を構築していく。経験したことのない古い過去の荒涼たるブリテ
ン島を目の前にくっきりと広げて見せてくれる。
老夫婦も村の人々も老いでも病でもなく、自分達の記憶を常に失ってしまう。過去の記憶が失われて
いる世界は怖いものだが、そのことに気が付かなければ怖さもない。それでも老夫婦は断片的な記憶
が時々思い出されるので、過去への興味が表出し息子を探しに行くという行動に移る。旅に出ること
で記憶が戻されていくので、過去の楽しいことも、嫌な記憶も辿ってしまうのは二人に厳しい現実を
突きつける。
ブリトン人とサクソン人の確執は未だに人類が解決できない移民の問題である。老夫婦や村人たちの
記憶の喪失は移民間の争いを忘れさせている。この作品のテーマはそこにある。大いなる困惑と共に
不可思議な余韻を残す長編小説だった。
忘れられた巨人 カズオ・イシグロ 早川書房
アトリスの二人、彼らは傷ついた少年と若き騎士と一緒に旅に出る。さらに登場するのは悪鬼、雌龍。
旅の途中で出会う老騎士。まるでゲームの世界ではないか。しかし読めば読むほど入り込んでしまう。
作者の文章力はリアルで力強い世界を構築していく。経験したことのない古い過去の荒涼たるブリテ
ン島を目の前にくっきりと広げて見せてくれる。
老夫婦も村の人々も老いでも病でもなく、自分達の記憶を常に失ってしまう。過去の記憶が失われて
いる世界は怖いものだが、そのことに気が付かなければ怖さもない。それでも老夫婦は断片的な記憶
が時々思い出されるので、過去への興味が表出し息子を探しに行くという行動に移る。旅に出ること
で記憶が戻されていくので、過去の楽しいことも、嫌な記憶も辿ってしまうのは二人に厳しい現実を
突きつける。
ブリトン人とサクソン人の確執は未だに人類が解決できない移民の問題である。老夫婦や村人たちの
記憶の喪失は移民間の争いを忘れさせている。この作品のテーマはそこにある。大いなる困惑と共に
不可思議な余韻を残す長編小説だった。
忘れられた巨人 カズオ・イシグロ 早川書房