先日、玄葉外務大臣が、ビルマ(ミャンマー)に対する政府開発援助(ODA)を再開する方向であることを表明しました。これは、最近のビルマにおける民主化の動きを受けたもの。しかし、今後の展開にはまだまだ注視が必要です。
ご存じの方も多いと思いますが、ビルマ(ミャンマー)では軍事独裁体制に対する民主化運動が1988年に勃発。多くの政党が誕生しますが、NLD(国民民主連盟)を結成したアウン・サン・スー・チー女史は1989年に自宅軟禁に。1990年に行われた総選挙ではNLDや民族政党が圧勝するのですが、軍部は選挙結果を認めずに民主化勢力の弾圧を激化。この間、多くの民主化運動家が国外に逃避していて、国外からビルマ(ミャンマー)民主化のための運動を展開しています。
変化の兆しが見えたのは、昨年11月のこと。11月7日に新憲法に基づく選挙が行われて、軍政側の政党が圧勝したわけですが、その直後、アウン・サン・スー・チー女史が自宅軟禁を解かれました。そして、今年1月、連邦議会が招集され、3月、軍政のテイン・セイン首相が大統領に就任して新政府が発足。軍政の下での最高決定機関だったSPDC(国家平和発展評議会)が解散して権限が新政府に移譲されたことで、長年続いた軍政に一応の終止符が打たれたことになります。
ただ、新政府は軍関係者が多数を占めているので、実質的な軍政支配は今後も続くと見られています。そのような中で、果たして民主化が進むのか否かが問われていて、国際社会も注目しているわけですね。
日本政府は、アウン・サン・スー・チー女史の自宅軟禁が解かれたこと、新政府への権限移譲で軍政が終了したこと、政治犯の釈放が始まったこと、などの展開を前向きに受け止めて、ODA再開を表明しました。ただし、民主化の流れが本物なのかどうか、引き続き今後の展開を注視しながら段階的に進めていくことが必要です。
そのような中で、今日、古くからの友人であるFTUB(ビルマ労働組合連盟)のマウン・マウン書記長が国会の事務所を訪問してくれました。彼も、現在の民主化の流れを前向きに評価していて、日本政府がODAを再開することについても積極的に受け止めたいと言ってくれました。ただし、日本のODAが本当に国民のためになることが必要で、そのためにODAの計画、実施、評価などに民主勢力を含めた幅広いステークホルダーを含めることが重要だ、との見解でした。その通りだと思います。
私自身は、今後の展開として(1)政治犯の完全釈放(民主化活動家を含む)、(2)国外に亡命している民主化活動家の帰国、(3)アウン・サン・スー・チー女史はじめ、NLDや民族政党の政治活動の完全自由化、などが進むかどうかが大きな判断材料になると思っています。引き続き、情勢の見極めが必要です。
実は、参議院が派遣する超党派のODA調査団の一員として、来年1月初旬にビルマ(ミャンマー)を訪れることになりました。念願の訪問になりますので、ぜひ、現地の現状を見ながら、情勢を見極めてきたいと思っています。