皆様こんばんは。
本日は、第64期王座戦挑戦手合第2局が行われました。
結果は、思い切った構想を見せた井山裕太王座が黒番中押し勝ちを収め、シリーズ2連勝となりました。
それでは、早速振り返っていきましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて、蘇耀国九段の解説付きで中継されました。

1図(実戦白8)
余正麒七段が、序盤から仕掛けて行きました。
子ゲイマジマリに対して、白1といきなりつける手は、近年よく見られます。
この場合の白の狙いは・・・。

2図(変化図)
白6までと進行すると、黒△と白△の交換が、白にとって都合が良いのです。
黒がわざわざ狭い所に入って、弱い石を作った事になっています。

3図(実戦黒9~黒13)
そこで井山王座、裏をかいて行きました!
黒1から5の進行は、初めて見ました。
打たれてみればなるほどと思える手ですが、自分ではなかなか浮かびません。
何故なら、多くのプロには、白2のハネを利かされてはつらいという先入観があるのです。
しかし井山王座は、常識には囚われません。

4図(実戦白14~白18)
白5までの分かれとなりました。
白石の位が低く、黒成功ではないでしょうか。

5図(実戦黒19~黒29)
そして、このように進みました。
黒11まで、黒は上段の構え、白は下段の構えという印象です。
この後は下辺の黒模様が大きくならないよう、制限に向かう事も考えられますが・・・。

6図(実戦白30~黒37)
ここでなんと、隅に潜り込みました!
黒8と広げて、黒模様はいかにも雄大ですが、そこで白Aと「ドカン」と突入する作戦です。
まるで武宮正樹-趙治勲戦のようですね!

7図(実戦黒47)
尤も、この時点では、まだ穏やかに打つ事はできました。
大抵のプロなら、白Aと早く逃げるか、白Bとゆとりを持たせるかのどちらかを選ぶでしょう。

8図(実戦白48~黒49)
ところが、実戦は白1!
前図の白Bと比べて、黒模様に向かって1路踏み込んでいます。
攻められている筈の白にこんなに威張られては、黒としても許せません。
黒2は、怒りの反撃です!

9図(実戦白52~黒57)
白1とかわそうとしますが、黒2からごりごり切って行きました!
トッププロの碁では滅多に見られない、強引な切り方です。

10図(実戦白58~白64)
ひとまず白1と右上の白を逃げ、黒2となりました。
中央に浮いた白3子が凌げるかどうかが問題です。
ここで一歩一歩逃げているようでは、光明は見出せません。
白3のおまじない一本から、白5、7と軽快に動きました。
ここで黒Aと怯んでいるようでは、白Bで簡単に形を作られてしまうので・・・。

11図(実戦黒65~黒73)
黒1と切り、白8に対しても黒9の切り!
黒は最強手で対応していきました。
もはや、攻めて得をするという段階は通り過ぎました。
本気で取りに行っているように見えます。

12図(実戦白74~白76)
しかし、簡単に取られる余七段ではありません。
白1、3と、凄い手筋が飛び出しました!

13図(実戦黒77~白88)
黒1と伸びる一手ですが、白2がまた手筋です!
白12まで、黒を分断して攻め合いの形に持ち込みました。

14図(実戦黒89~黒93)
黒△と白△の攻め合いです。
黒Aの切りがありますが、黒△も手数が短いです。
そこで黒は、まず自分の手数を延ばしにかかりました。
中央の黒8子も危ない形をしており、超難解な戦いです。

15図(実戦白114~黒115)
そして結果は、白1と右下の白が生還、一方上辺の黒も、2と打って生きる事になりました。
どちらかが取られるのかと思っていたら、なんと「生き生き」の分かれでした。
面白いものですね。
そして次に白Aと繋がっておき、黒Bという進行を予想していました。
ヨセ勝負ですが、両対局者の感想からすると、どうやら黒有利のようです。
そこで実戦は・・・。

16図(実戦白116)
繋がらず、白1と頑張りました!
しかし、黒2と分断する手が強烈です。
覚悟の上とはいえ、白は非常に苦しくなりました。

17図(実戦黒135)
白は紛れを求めましたが、黒の正確な対応に遭いました。
白△を取り込まれて、形勢は大差になりました。

18図(実戦白136~黒141)
白1や白5と大きい所に回りましたが、黒6がとどめの侵入になりました。
黒△が働き、白はなかなかこの石を取れません。
隅を荒らしては、黒の勝ちが決まりました。
最終的には大差になりましたが、余七段も迫力のある打ち方を見せてくれました。
勝ってもおかしくない内容だったと思います。
スリリングな戦いの中で、僅かに井山王座の読みが上回ったようです。
第3局は、11月18日(金)に宮城県仙台市「茶寮宗園」で行われます。
次も激しい戦いが期待できそうです。
お楽しみに!
本日は、第64期王座戦挑戦手合第2局が行われました。
結果は、思い切った構想を見せた井山裕太王座が黒番中押し勝ちを収め、シリーズ2連勝となりました。
それでは、早速振り返っていきましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて、蘇耀国九段の解説付きで中継されました。

1図(実戦白8)
余正麒七段が、序盤から仕掛けて行きました。
子ゲイマジマリに対して、白1といきなりつける手は、近年よく見られます。
この場合の白の狙いは・・・。

2図(変化図)
白6までと進行すると、黒△と白△の交換が、白にとって都合が良いのです。
黒がわざわざ狭い所に入って、弱い石を作った事になっています。

3図(実戦黒9~黒13)
そこで井山王座、裏をかいて行きました!
黒1から5の進行は、初めて見ました。
打たれてみればなるほどと思える手ですが、自分ではなかなか浮かびません。
何故なら、多くのプロには、白2のハネを利かされてはつらいという先入観があるのです。
しかし井山王座は、常識には囚われません。

4図(実戦白14~白18)
白5までの分かれとなりました。
白石の位が低く、黒成功ではないでしょうか。

5図(実戦黒19~黒29)
そして、このように進みました。
黒11まで、黒は上段の構え、白は下段の構えという印象です。
この後は下辺の黒模様が大きくならないよう、制限に向かう事も考えられますが・・・。

6図(実戦白30~黒37)
ここでなんと、隅に潜り込みました!
黒8と広げて、黒模様はいかにも雄大ですが、そこで白Aと「ドカン」と突入する作戦です。
まるで武宮正樹-趙治勲戦のようですね!

7図(実戦黒47)
尤も、この時点では、まだ穏やかに打つ事はできました。
大抵のプロなら、白Aと早く逃げるか、白Bとゆとりを持たせるかのどちらかを選ぶでしょう。

8図(実戦白48~黒49)
ところが、実戦は白1!
前図の白Bと比べて、黒模様に向かって1路踏み込んでいます。
攻められている筈の白にこんなに威張られては、黒としても許せません。
黒2は、怒りの反撃です!

9図(実戦白52~黒57)
白1とかわそうとしますが、黒2からごりごり切って行きました!
トッププロの碁では滅多に見られない、強引な切り方です。

10図(実戦白58~白64)
ひとまず白1と右上の白を逃げ、黒2となりました。
中央に浮いた白3子が凌げるかどうかが問題です。
ここで一歩一歩逃げているようでは、光明は見出せません。
白3のおまじない一本から、白5、7と軽快に動きました。
ここで黒Aと怯んでいるようでは、白Bで簡単に形を作られてしまうので・・・。

11図(実戦黒65~黒73)
黒1と切り、白8に対しても黒9の切り!
黒は最強手で対応していきました。
もはや、攻めて得をするという段階は通り過ぎました。
本気で取りに行っているように見えます。

12図(実戦白74~白76)
しかし、簡単に取られる余七段ではありません。
白1、3と、凄い手筋が飛び出しました!


13図(実戦黒77~白88)
黒1と伸びる一手ですが、白2がまた手筋です!
白12まで、黒を分断して攻め合いの形に持ち込みました。

14図(実戦黒89~黒93)
黒△と白△の攻め合いです。
黒Aの切りがありますが、黒△も手数が短いです。
そこで黒は、まず自分の手数を延ばしにかかりました。
中央の黒8子も危ない形をしており、超難解な戦いです。

15図(実戦白114~黒115)
そして結果は、白1と右下の白が生還、一方上辺の黒も、2と打って生きる事になりました。
どちらかが取られるのかと思っていたら、なんと「生き生き」の分かれでした。
面白いものですね。
そして次に白Aと繋がっておき、黒Bという進行を予想していました。
ヨセ勝負ですが、両対局者の感想からすると、どうやら黒有利のようです。
そこで実戦は・・・。

16図(実戦白116)
繋がらず、白1と頑張りました!
しかし、黒2と分断する手が強烈です。
覚悟の上とはいえ、白は非常に苦しくなりました。

17図(実戦黒135)
白は紛れを求めましたが、黒の正確な対応に遭いました。
白△を取り込まれて、形勢は大差になりました。

18図(実戦白136~黒141)
白1や白5と大きい所に回りましたが、黒6がとどめの侵入になりました。
黒△が働き、白はなかなかこの石を取れません。
隅を荒らしては、黒の勝ちが決まりました。
最終的には大差になりましたが、余七段も迫力のある打ち方を見せてくれました。
勝ってもおかしくない内容だったと思います。
スリリングな戦いの中で、僅かに井山王座の読みが上回ったようです。
第3局は、11月18日(金)に宮城県仙台市「茶寮宗園」で行われます。
次も激しい戦いが期待できそうです。
お楽しみに!