白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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穹窿山兵聖杯世界女子囲碁選手権

2016年11月12日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、第7回穹窿山兵聖杯世界女子囲碁選手権が開幕しました。
日本からは謝依旻六段藤沢里菜三段牛栄子初段が出場しましたが、残念ながら全員敗退となりました。
それでは、それぞれの対局のハイライトをご紹介しましょう。
なお、この対局の棋譜は幽玄の間にてご覧頂けます。



1図(実戦黒55)
謝依旻六段と王祥雲三段(黒)の対局です。
黒△と出られた場面ですが、白はどう打ったでしょうか?
白A、黒B、白Cのシチョウは成立しません。





2図(実戦白56)
実戦は、白1のツケ!
思い切った手が飛び出しました。
突飛な手のようですが、これはコウ材作りならぬ、シチョウ当たり作りです。





3図(変化図)
黒1、3が素直な対応ですが、白2、4が先手になり、白8のシチョウが成立します。
これは白成功です。





4図(実戦黒57~黒65)
実戦は黒1の伸びでしたが、あくまで白2、4と絡んでいきます。
黒5までとなれば、念願の白6、8が成立しました!
謝六段らしい、積極的なサバキでした。
この後は難解な戦いになりましたが、最後は黒3目半勝ちとなりました。





1図(実戦白74~黒77)
藤沢里菜三段と王晨星五段(黒)の対局です。
白1と、黒にプレッシャーをかけた場面です。
ここで黒2、4が「耳赤の一局」にも出てくる手筋で、好手でした。
白Aと切るのは、黒Bで白△が取られますし・・・。





2図(変化図)
白1と取れば無事ですが、黒2、4の後、黒Aに対して白Bと後手で生きなければいけません。
白1がBの所にあれば、黒Aは利かないのですが・・・。





3図(実戦白78~黒81)
という訳で白1の方から抱えましたが、今度は黒2、4が好手で、白の眼形を脅かしています。
Aの所のコウ争いになりました。
白としても承知の上で、あえてコウを受けて立つ構えです。





4図(実戦白144)
右上に加えて、右下でもコウ争いが起こる難解な戦いになりました。
結果は、右上、下辺を黒が全部取り、白が中央を大きくまとめる派手な振り替わりに!
元々は白が苦しい形勢だったでしょうが、こうなっては追いついたかもしれないと思いました。
しかし、最後は1目半負けでした。
日本ルールなら、コミ7目半でも黒半目勝ちだったでしょうが、中国ルール特有の粘りに遭って差が広がりました。
かなり際どい勝負でした。





1図(実戦白102~黒104)
牛栄子初段(黒)と呉侑珍三段の対局です。
牛初段がいつも通りに腕力を発揮していきましが、呉三段が上手くいなして白優勢です。
白1では、白Aと控えておいて十分だったでしょう。





2図(実戦黒103~黒109)
ここで黒1、5と仕掛けていきました!
白に傷が多く、この黒は簡単には取られません。
牛初段、ずっと狙っていたのでしょう。





3図(実戦白110~黒119)
白1~9と眼を取りに来ましたが、黒10がぴったりです。
白Aと止めれば、黒Bで2目取って生きてしまいます。





4図(実戦白120~黒123)
白1は止むを得ませんが、黒4までと見事脱出しました。
こうなっては、流石に逆転でしょうね。
しかし相手もさる者、ここから追い込まれて再逆転されてしまいました。
残りはダメ詰めという状況まで打ちましたが、黒半目負けを読み切って投了しました。


以前投了のタイミングという記事を書きましたが、その時書いていなかったマナーがあります。
それは「終局直前まで行ったら最後まで打つ」というものです。
ですから、この碁のタイミングでの投了は、日本ではマナー違反になります。

しかし、中国の棋士は、よくこのタイミングで投了します。
国民性の違いもあるでしょうが、一番の理由は「整地が面倒」という説があります。
中国ルールでの整地はややこしいですし、公式戦ですと審判に整地を任せなければいけません。
それを嫌って投了するというのです。

中国ルールの利点として、ルール上の問題が起こりにくいというものがあります。
しかし、碁を気持ち良く打つという点では、やはり日本ルールが一番ですね。