白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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伊田八段、及ばず

2016年11月10日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
自分の対局はどうにか勝ちました。
内容はどうあれ、やはり勝てば嬉しいものですね。

さて、本日はお知らせしていた通り、伊田篤史八段と柯潔九段の対局が行われました。
結果は、柯潔九段の白番中押し勝ちでした。
健闘していたと思いますが、相手が1枚上手でしたね。
それでは、対局の模様を振り返っていきましょう。



1図(実戦黒35)
黒△の当ては、白△の所を欠け目にする最強手です。
もしこの手でコウを恐れ、黒Aと打ったとすれば、その人はプロではないと断言できます。

そして、黒の伊田八段も、最強手で対抗します。
まず、白1とコウ立てを作っておいて・・・・。





2図(実戦白38~黒43)
白1からコウ仕掛け!
勢い黒6までの、派手な振り替わりとなりました。
このまま白△を飲み込まれてはいけないので・・・。





3図(実戦白44~黒55)
白1から逃げますが、黒12までと強攻!
事と次第によっては、白を全部取るぞと脅かしています。
白としては、こういう時に弱気になってはいけません。
相手の弱みを探すのが凌ぎのコツです。





4図(実戦白56~白62)
伊田八段の選択は、白1、3の二段バネから、白7のツケ!
白AとB、2つの狙いを持っています。
こうやって相手の弱みを衝いていくと、相手は自由に攻められなくなります。





5図(実戦黒83)
白△まで、上辺の白は無事治まりました。
とはいえ、黒の想定の範囲内でもあったのでしょう。
黒1に回って、黒優勢です。
黒△のラインによって、大きな黒模様ができている事が感じられるでしょう。





6図(実戦白84~黒87)
という訳で、白1は必死の突入です!
黒2、4と退路を断たれ、いかにも白が苦しそうですが・・・。





7図(白88~白98)
ここでも、白は黒の薄みを衝いていきました!
白11まで、黒も心配な石ができてきました。





8図(実戦白104)
結果、白△までとなりました。
黒の勢力圏から、白が見事に脱出しました!





9図(実戦白126~白128)
その後、白1、3は手筋です。
黒が白3の石を取りに行くと・・・。





10図(変化図)
すぐに黒1と白石を取りに行くと、黒5まで、巨大な団子ができてしまいます。
その上白6に対して、黒はAの傷を守らなければいけません。
先手で左辺の白地を大きくまとめられてしまいます。





11図(実戦黒129)
しかし、流石柯潔九段です。
団子にされる事を嫌い、黒1と反発しました!
一見、白Aが心配ですが・・・。





12図(変化図)
白1には、黒2(7の所)から黒10まで、黒AとBが見合いで白潰れます。





13図(実戦黒131~白138)
実戦は、左下の黒を取るのは無理なので、白1、9と変化しました。
黒△と〇がバラバラになり、白が上手くやったように見えますが・・・。
※黒2は7の所





14図(実戦)
黒1~7まで、白△の超大石に狙いを定めました!
柯潔九段としては、攻めによってポイントを挙げる見通しが立っていたのでしょう。





15図(実戦黒161)
その後、黒△と打った場面です。
ここで白Aと打っていれば大石は生きていますが、黒Bで白△を取り込まれると、白負けです。





16図(実戦白162~黒171)
そこで白1と頑張りましたが、黒2が厳しい追及です。
白としては覚悟の上とはいえ、黒10までの振り替わりは黒が得をしました。
伊田八段の頑張りもここまでです。

伊田八段、負けたとはいえ、世界一の打ち手を相手に、全く怯まずに戦いました。
当然悔しさはあるでしょうが、自信にもなったのではないでしょうか?
いずれ雪辱を果たす日を、楽しみに待ちたいと思います。


さて、明日は別の若手が脚光を浴びる日です。
第42期天元戦第2局、井山裕太天元一力遼の対局が行われます!
第1局は、井山天元が強烈パンチで先勝しました。
しかし、一力七段は決して調子が悪いわけではありません。
ツボにはまれば、十分に勝利のチャンスがあるでしょう。
熱戦をご期待ください!