皆様こんばんは。
本日は、第2回囲碁電王戦三番碁第2局が行われました。
結果は、趙治勲名誉名人が「DeepZenGo」に敗れ、1勝1敗となりました。
本局は、結果だけでは見て欲しくありませんね。
趙名誉名人は、何かテーマを持って打たれた印象がありました。
それでは、振り返っていきましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて、柳時熏九段の解説付きで中継されました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/33/95995a3c306179a0a3cb2f51ff7b2c96.jpg)
1図(実戦白4~6)
まず、趙名誉名人の白1、3に驚きました。
私は趙名誉名人の碁は、2000局ぐらい見たと思いますが、目外しに打った碁があったかどうか?
星と小目が多く、また三々を愛用していた時期もありましたが、それ以外に打っているイメージが全くありません。
しかし、前局に引き続いて目外しを採用、序盤から積極的に動きました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/a1/962861efbd6c16ac3047d4db6faadda8.jpg)
2図(実戦黒7~白16)
白10まで、お互いの石が切れている乱戦になりました。
想定される進行であり、白はこの展開を目指したのでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/27/05ab9f4e5b1e6fa92b35fb8b3d259d6b.jpg)
3図(実戦黒17~黒23)
黒1~7までは、流れるような進行です。
AIソフトは、人間の感性に無い手を打つ事が多々ありますが、このあたりは人間が打っているかのようです。
ここで、白も流れに乗るならAでしょう。
左辺白の頭を出しながら黒を分断して、自然な打ち方です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/ed/28c9a1bebef3d7c4ccd281379ab439cb.jpg)
4図(実戦白24~黒25)
ところが、実戦は何と白1と打ち、黒2の絶好点を許してしまいました!![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face2_shock_s.gif)
恐らく、殆どの棋士は白1を悪手と判断するでしょう。
しかし、元来趙名誉名人の碁には、そういう所があります。
本当に悪いのか、確かめてみようという・・・。
私には、悪さを感じつつ、あえて打った手のように見えました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/77/a6c89a589b375e0345a1fef0dab39d06.jpg)
5図(実戦黒45)
実際問題として、左下の分かれは黒が良いでしょう。
左下を白地にするために随分手数がかかり、その間に外側の黒がすっかり厚くなってしまいました。
そして、黒△の強手が飛んで来ました!
この手に対して、白Aと受けていれば無難ですが・・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/c9/0214928028cab38b4b2da4698c687976.jpg)
6図(変化図)
白1と受ければ、このような進行が想定されます。
しかし黒2~白7までは、黒にとって一方的に得な交換です。
黒8などと打ち、上辺一帯の黒模様が、いかにも大きそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/7d/c8a7d28093347cbbac9a29635d78416d.jpg)
7図(実戦白46~黒49)
とはいえ、白1と出て行ったのには驚きました。
確かにこう反発したい形ですが、左下の黒が厚く、岩に頭をぶつけているかのようです。
上下の白が弱くなり、危険な進行です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/c4/6f8c79aba0193828b1bb05c75e655c4b.jpg)
8図(実戦黒71)
その後、上手く両方を凌ぎましたが、小さく生かされてつらい結果です。
黒△に回られ、右上一帯が大きな黒模様になりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/9b/0acc75d27ebf6ff2d2350313fa1452f2.jpg)
9図(実戦白72~白82)
右下、右辺、右上と、白が走り回ります。
尋常では勝てないとみた、必死の打ち方に見えます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/70/9107154080ce1f93c2fb9748ceae45df.jpg)
10図(実戦黒83~白92)
黒は右上の白を取りかけに行きました。
しかし、黒7、9は手順が逆です。
AIならではのミスでしょうね。
後から黒9と打ったので、受けずに白10と飛び出されてしまいました。
これで、白は死ぬ心配が無くなりましたが・・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/1d/6793052f8e18d71cad9ef73fd0138f05.jpg)
11図(実戦黒115)
右上は攻めに切り替え、白を閉じ込める事に成功しました。
そして黒△まで進むと、中央の黒模様が膨大で、白△も睨み殺しにされそうです。
黒大優勢です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/f8/6705b48e5ad562255d3f96752cb65a24.jpg)
12図(実戦白116~白118)
しかし、白1、3から黒模様に突入!
生きるか死ぬかの勝負に持ち込みました。
これぞ全盛期の趙治勲、といった印象です。
これは想像ですが、趙名誉名人は、最初からこんな勝負がしたかったのではないかと思います。
全盛期の自分が最も得意とした碁形で、正体の知れない相手とぶつかってみようという・・・。
前局では自分を抑えて逃げ切りを図りましたが、本局では逆に、自分の碁で勝負しようとしたように感じました。
趙名誉名人も、最近はあまり極端な碁は打たなくなりました。
しかし、これが良い機会とみて、封印を解いてきたのではないでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/46/8350533a0b0198acb508474115260b5c.jpg)
13図(実戦黒119~黒127)
現実的な見方をすれば、これで白は苦し過ぎる形です。
いくら凌ぎの達人の趙名誉名人でも、生きる見込みは薄いでしょう。
黒の緩みもあって、かなり際どい所までいきましたが、最後は仕留められてしまいました。
相手に模様を好きなだけ広げさせておいて、ドカンと入ってガラガラにしてしまう・・・。
それが、趙名誉名人が得意とする作戦でした。
しかし、模様作戦はAIにとっても、最も得意とする所です。
承知の上とはいえ、AIの強さを引き出させる結果になりました。
さて、1勝1敗となって、最終局はどうなるでしょうか?
恐らく、趙名誉名人は再び、勝負に徹する打ち方に戻るでしょう。
AIの強さと弱さを知った上で、どう作戦を立てて臨むのか、見ものですね。
第3局は、3日後の23日(水)に行われます。
趙名誉名人の勝利を信じて、応援したいと思います!
本日は、第2回囲碁電王戦三番碁第2局が行われました。
結果は、趙治勲名誉名人が「DeepZenGo」に敗れ、1勝1敗となりました。
本局は、結果だけでは見て欲しくありませんね。
趙名誉名人は、何かテーマを持って打たれた印象がありました。
それでは、振り返っていきましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて、柳時熏九段の解説付きで中継されました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/33/95995a3c306179a0a3cb2f51ff7b2c96.jpg)
1図(実戦白4~6)
まず、趙名誉名人の白1、3に驚きました。
私は趙名誉名人の碁は、2000局ぐらい見たと思いますが、目外しに打った碁があったかどうか?
星と小目が多く、また三々を愛用していた時期もありましたが、それ以外に打っているイメージが全くありません。
しかし、前局に引き続いて目外しを採用、序盤から積極的に動きました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/a1/962861efbd6c16ac3047d4db6faadda8.jpg)
2図(実戦黒7~白16)
白10まで、お互いの石が切れている乱戦になりました。
想定される進行であり、白はこの展開を目指したのでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/27/05ab9f4e5b1e6fa92b35fb8b3d259d6b.jpg)
3図(実戦黒17~黒23)
黒1~7までは、流れるような進行です。
AIソフトは、人間の感性に無い手を打つ事が多々ありますが、このあたりは人間が打っているかのようです。
ここで、白も流れに乗るならAでしょう。
左辺白の頭を出しながら黒を分断して、自然な打ち方です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/ed/28c9a1bebef3d7c4ccd281379ab439cb.jpg)
4図(実戦白24~黒25)
ところが、実戦は何と白1と打ち、黒2の絶好点を許してしまいました!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face2_shock_s.gif)
恐らく、殆どの棋士は白1を悪手と判断するでしょう。
しかし、元来趙名誉名人の碁には、そういう所があります。
本当に悪いのか、確かめてみようという・・・。
私には、悪さを感じつつ、あえて打った手のように見えました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/77/a6c89a589b375e0345a1fef0dab39d06.jpg)
5図(実戦黒45)
実際問題として、左下の分かれは黒が良いでしょう。
左下を白地にするために随分手数がかかり、その間に外側の黒がすっかり厚くなってしまいました。
そして、黒△の強手が飛んで来ました!
この手に対して、白Aと受けていれば無難ですが・・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/c9/0214928028cab38b4b2da4698c687976.jpg)
6図(変化図)
白1と受ければ、このような進行が想定されます。
しかし黒2~白7までは、黒にとって一方的に得な交換です。
黒8などと打ち、上辺一帯の黒模様が、いかにも大きそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/7d/c8a7d28093347cbbac9a29635d78416d.jpg)
7図(実戦白46~黒49)
とはいえ、白1と出て行ったのには驚きました。
確かにこう反発したい形ですが、左下の黒が厚く、岩に頭をぶつけているかのようです。
上下の白が弱くなり、危険な進行です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0c/c4/6f8c79aba0193828b1bb05c75e655c4b.jpg)
8図(実戦黒71)
その後、上手く両方を凌ぎましたが、小さく生かされてつらい結果です。
黒△に回られ、右上一帯が大きな黒模様になりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/9b/0acc75d27ebf6ff2d2350313fa1452f2.jpg)
9図(実戦白72~白82)
右下、右辺、右上と、白が走り回ります。
尋常では勝てないとみた、必死の打ち方に見えます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/70/9107154080ce1f93c2fb9748ceae45df.jpg)
10図(実戦黒83~白92)
黒は右上の白を取りかけに行きました。
しかし、黒7、9は手順が逆です。
AIならではのミスでしょうね。
後から黒9と打ったので、受けずに白10と飛び出されてしまいました。
これで、白は死ぬ心配が無くなりましたが・・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/1d/6793052f8e18d71cad9ef73fd0138f05.jpg)
11図(実戦黒115)
右上は攻めに切り替え、白を閉じ込める事に成功しました。
そして黒△まで進むと、中央の黒模様が膨大で、白△も睨み殺しにされそうです。
黒大優勢です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/f8/6705b48e5ad562255d3f96752cb65a24.jpg)
12図(実戦白116~白118)
しかし、白1、3から黒模様に突入!
生きるか死ぬかの勝負に持ち込みました。
これぞ全盛期の趙治勲、といった印象です。
これは想像ですが、趙名誉名人は、最初からこんな勝負がしたかったのではないかと思います。
全盛期の自分が最も得意とした碁形で、正体の知れない相手とぶつかってみようという・・・。
前局では自分を抑えて逃げ切りを図りましたが、本局では逆に、自分の碁で勝負しようとしたように感じました。
趙名誉名人も、最近はあまり極端な碁は打たなくなりました。
しかし、これが良い機会とみて、封印を解いてきたのではないでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/46/8350533a0b0198acb508474115260b5c.jpg)
13図(実戦黒119~黒127)
現実的な見方をすれば、これで白は苦し過ぎる形です。
いくら凌ぎの達人の趙名誉名人でも、生きる見込みは薄いでしょう。
黒の緩みもあって、かなり際どい所までいきましたが、最後は仕留められてしまいました。
相手に模様を好きなだけ広げさせておいて、ドカンと入ってガラガラにしてしまう・・・。
それが、趙名誉名人が得意とする作戦でした。
しかし、模様作戦はAIにとっても、最も得意とする所です。
承知の上とはいえ、AIの強さを引き出させる結果になりました。
さて、1勝1敗となって、最終局はどうなるでしょうか?
恐らく、趙名誉名人は再び、勝負に徹する打ち方に戻るでしょう。
AIの強さと弱さを知った上で、どう作戦を立てて臨むのか、見ものですね。
第3局は、3日後の23日(水)に行われます。
趙名誉名人の勝利を信じて、応援したいと思います!