皆様こんばんは。
農心杯は、中国の范廷鈺九段が韓国の金志錫九段を破り、6連勝となりました。
スポーツ程ではありませんが、囲碁にもホームとアウェイがあります。
農心杯は韓国主催の棋戦ですから、韓国がかなりの好成績を収めてきたのです。
しかし、今年は1勝もできずに、残り1人となってしまいました。
中国の層の厚さを感じます。
さて、本日は第11回広島アルミ杯・若鯉戦本戦トーナメント、準決勝と決勝が行われました。
決勝は、本木克弥七段(黒)と一力遼七段の顔合わせとなりました。
それでは、振り返っていきましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて、平田智也七段の解説付きで中継されました。
対局のスピードにも負けず、また言いたい事を言っていて(笑)、面白い解説だったと思います。
1図(実戦白26)
1局の碁には、重大な分岐点が何回も現れます。
そこでどの道を選ぶかが、その後の展開や勝敗に大きく影響します。
白△と押されて、正にそんな場面を迎えています。
「2目の頭は見ずハネよ」という格言がありますが、正確に表記するなら、「2目の頭はハネよ(伸びよ)」でしょう。
語呂は悪くなりますが・・・。
黒Aは、白の2目の頭をハネる、相手にダメージを与える手です。
一方黒Bは、自分の2目の頭を守る、安全な手です。
理屈の上では、どちらも価値は同じです。
強気の黒A、安全第一の黒Bを、周囲の状況に応じて選ぶ事になります。
2図(変化図)
黒1と安全な伸びを選ぶと、こんな進行になります。
黒はしっかりとした形になりますが、白にダメージも与えません。
平和的な進行で、これも十分考えられますが・・・。
3図(実戦黒27~白28)
実戦は黒1と、2目の頭をハネ、白も2と、2目の頭を切りました!
お互いに弱みができるので、こうなれば戦いは必至です!
勢いのある若手は、こういう所を迷わずハネて行く傾向があります。
戦いが不利とみれば、流石にやらないでしょうが、五分五分ぐらいなら、まずやって行きますね。
若手の碁の魅力の一つでしょう。
4図(実戦黒29~白34)
黒3、白4は、共に大事な一手です。
白に3と打たれては、一気に形が崩れますし、黒に4の右に切られると、白はバラバラになります。
さて、白6とツケられた場面が分岐点です。
黒Aなど、右辺を受ければ安全で、白もBと繋がる進行になります。
比較的穏やかな戦いとなるでしょう。
5図(実戦黒35~白36)
が、実戦は黒1の強硬策!
これは非常に勇気がいる手です。
白2とハネられて、黒△も危険になるからです。
しかし、リスクは承知の上で、白をやっつけに行こうというのです。
本木七段らしい最強手です。
6図(実戦黒37~白42)
しかし、まだ本当に切羽詰まった状況ではありません。
白6となった所が、また分岐点です。
黒Aと繋がれば、右辺の黒は無事です。
すると右辺の白も生きる事になって、平和的な進行です。
黒Bと打てば、白の眼を奪う事ができます。
しかし、右辺の黒も生きていないので、逆に取られてしまうかもしれません。
もしここで潰れたら、公開対局が30分で終わってしまいます。
私なら、そんな心配をしてしまうかも・・・。
7図(実戦黒43~白44)
が、本木七段、ブレーキを踏まず!
本木七段の辞書には、怖いという言葉が載っていないのでしょうか?
一力七段も白2と、黒の退路を断って、決戦の雰囲気が漂いました。
8図(実戦白50)
その後、白△と押さえた場面になりました。
黒Aと白の眼を取りに行くか、黒Bで生きるか?
本木七段の選択は・・・。
9図(実戦黒51~白56)
実は本木七段には、何か誤算がありました。
このまま右辺の白を取りに行けば、逆に自分の石を取られます。
もはや勘ではなく、読み切れるレベルでしょう。
となれば、気合や勢いとは言っていられません。
黒1、3と生きを図ったのは、やむを得ない後退でした。
しかし、一力七段はこの機会を待っていました。
右辺の白を生きる前に、白4、6が厳しい切断です!
一転して、白が攻勢に立ちました。
10図(実戦白68)
白△までと進み、中央の黒が一方的に狙われる展開になってしまいました。
強気に黒△とハネた黒からすれば、不本意です。
一力七段、ここで奪ったリードを最後まで保ちました。
隙の無い勝ち方は、本木ファンに嫌われそうな程でした(笑)。
碁の技術的に言えば、本木七段の不出来な碁、という事になるでしょう。
しかし私としては、危険を恐れずに踏み込んだ姿勢を称賛したいですね。
こうでなければ、世界で戦える力は身に付かないでしょう。
両者の力の籠った、好局だったと思います。
明日は、農心杯第8戦が行われます。
日本チームからは、村川大介八段が登場します。
もしここで負けると、大将の井山裕太六冠が、5連勝しなければならなくなります・・・。
何としても、范九段の連勝を止めて貰いたいですね。
対局の模様は14時から、幽玄の間にて中継されます。
皆様、村川八段を応援してください!
農心杯は、中国の范廷鈺九段が韓国の金志錫九段を破り、6連勝となりました。
スポーツ程ではありませんが、囲碁にもホームとアウェイがあります。
農心杯は韓国主催の棋戦ですから、韓国がかなりの好成績を収めてきたのです。
しかし、今年は1勝もできずに、残り1人となってしまいました。
中国の層の厚さを感じます。
さて、本日は第11回広島アルミ杯・若鯉戦本戦トーナメント、準決勝と決勝が行われました。
決勝は、本木克弥七段(黒)と一力遼七段の顔合わせとなりました。
それでは、振り返っていきましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて、平田智也七段の解説付きで中継されました。
対局のスピードにも負けず、また言いたい事を言っていて(笑)、面白い解説だったと思います。
1図(実戦白26)
1局の碁には、重大な分岐点が何回も現れます。
そこでどの道を選ぶかが、その後の展開や勝敗に大きく影響します。
白△と押されて、正にそんな場面を迎えています。
「2目の頭は見ずハネよ」という格言がありますが、正確に表記するなら、「2目の頭はハネよ(伸びよ)」でしょう。
語呂は悪くなりますが・・・。
黒Aは、白の2目の頭をハネる、相手にダメージを与える手です。
一方黒Bは、自分の2目の頭を守る、安全な手です。
理屈の上では、どちらも価値は同じです。
強気の黒A、安全第一の黒Bを、周囲の状況に応じて選ぶ事になります。
2図(変化図)
黒1と安全な伸びを選ぶと、こんな進行になります。
黒はしっかりとした形になりますが、白にダメージも与えません。
平和的な進行で、これも十分考えられますが・・・。
3図(実戦黒27~白28)
実戦は黒1と、2目の頭をハネ、白も2と、2目の頭を切りました!
お互いに弱みができるので、こうなれば戦いは必至です!
勢いのある若手は、こういう所を迷わずハネて行く傾向があります。
戦いが不利とみれば、流石にやらないでしょうが、五分五分ぐらいなら、まずやって行きますね。
若手の碁の魅力の一つでしょう。
4図(実戦黒29~白34)
黒3、白4は、共に大事な一手です。
白に3と打たれては、一気に形が崩れますし、黒に4の右に切られると、白はバラバラになります。
さて、白6とツケられた場面が分岐点です。
黒Aなど、右辺を受ければ安全で、白もBと繋がる進行になります。
比較的穏やかな戦いとなるでしょう。
5図(実戦黒35~白36)
が、実戦は黒1の強硬策!
これは非常に勇気がいる手です。
白2とハネられて、黒△も危険になるからです。
しかし、リスクは承知の上で、白をやっつけに行こうというのです。
本木七段らしい最強手です。
6図(実戦黒37~白42)
しかし、まだ本当に切羽詰まった状況ではありません。
白6となった所が、また分岐点です。
黒Aと繋がれば、右辺の黒は無事です。
すると右辺の白も生きる事になって、平和的な進行です。
黒Bと打てば、白の眼を奪う事ができます。
しかし、右辺の黒も生きていないので、逆に取られてしまうかもしれません。
もしここで潰れたら、公開対局が30分で終わってしまいます。
私なら、そんな心配をしてしまうかも・・・。
7図(実戦黒43~白44)
が、本木七段、ブレーキを踏まず!
本木七段の辞書には、怖いという言葉が載っていないのでしょうか?
一力七段も白2と、黒の退路を断って、決戦の雰囲気が漂いました。
8図(実戦白50)
その後、白△と押さえた場面になりました。
黒Aと白の眼を取りに行くか、黒Bで生きるか?
本木七段の選択は・・・。
9図(実戦黒51~白56)
実は本木七段には、何か誤算がありました。
このまま右辺の白を取りに行けば、逆に自分の石を取られます。
もはや勘ではなく、読み切れるレベルでしょう。
となれば、気合や勢いとは言っていられません。
黒1、3と生きを図ったのは、やむを得ない後退でした。
しかし、一力七段はこの機会を待っていました。
右辺の白を生きる前に、白4、6が厳しい切断です!
一転して、白が攻勢に立ちました。
10図(実戦白68)
白△までと進み、中央の黒が一方的に狙われる展開になってしまいました。
強気に黒△とハネた黒からすれば、不本意です。
一力七段、ここで奪ったリードを最後まで保ちました。
隙の無い勝ち方は、本木ファンに嫌われそうな程でした(笑)。
碁の技術的に言えば、本木七段の不出来な碁、という事になるでしょう。
しかし私としては、危険を恐れずに踏み込んだ姿勢を称賛したいですね。
こうでなければ、世界で戦える力は身に付かないでしょう。
両者の力の籠った、好局だったと思います。
明日は、農心杯第8戦が行われます。
日本チームからは、村川大介八段が登場します。
もしここで負けると、大将の井山裕太六冠が、5連勝しなければならなくなります・・・。
何としても、范九段の連勝を止めて貰いたいですね。
対局の模様は14時から、幽玄の間にて中継されます。
皆様、村川八段を応援してください!