白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

カス石と要石

2019年01月14日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
<本日の一言>
グロービス杯の国内予選が進行中です。
これまでに芝野虎丸七段、大西竜平四段、広瀬優一三段、上野愛咲美二段が日本代表に決定しています。
残りの2枠は誰が勝ち取るでしょうか?
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日、合宿から帰ってきました。
社会人になってからあまり碁を打たなくなってしまう方も結構多いですが、こういう集まりがあるかどうかでだいぶ違ってくる気がしますね。
さて、それでは本日の合宿での一局を題材にしたいと思います。





1図(テーマ図)
今回は白番視点です。
黒△に対して、白AとBのどちらに打ちますか?





2図(正解)
黙って白1とつなぐのが正解です。
黒2、6と愚形につながせれば、黒の動きは不自由になっていますね。





3図(変化図)
黒2の方をつないでくれば、白3が利いてやはり黒は団子石になります。





4図(失敗)
この手の場面で、先手で打てるからと白1と切ってしまう方はかなり多いです。
しかし、黒△の石にどれだけの価値があるでしょうか?
右下白を切り離している要石は黒×ですから、本図はカス石を取って要石を逃がす打ち方になってしまいますね。
黒10までは一例ですが、2図や3図と違って黒が楽な戦いになってしまいました。


カス石と要石を区別しておくことは非常に大切です。
それは局地戦の最中であっても変わらないのです。

地を作る場所

2019年01月13日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
<本日の一言>今年もこども棋聖戦が行われました。
レベルも高いですが、子供特有の勢いが感じられるのも観戦していて楽しい理由の一つです。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
現在、中央大学囲碁部OBの合宿に参加しています。
本日はその中の一局を題材にしてみましょう。



1図(テーマ図)
3子局です。
次は黒番ですが、黒AとBのどちらに向かいますか?




2図(正解)
周囲の黒が薄いので、黒1としっかりつながっておくところです。
これで薄みが消え、かなりの地もできます。
また、下辺に関しては白2、4などと入ってこられても黒石に心配は生じませんし、白地もほとんど増えません。




3図(失敗)
下辺を地にしたくなってしまう方も多いのではないでしょうか。
高段者でも黒1と打ってしまいがちです。
まず、白2、4とはみ出されてしまうのが問題点です。
白Aの嫌みも残っていますね。

それでも、下辺にできた黒地も大きいと思われるかもしれません。
しかし、ここに一生懸命地を作る間に、別の問題が生じているのです。



4図(失敗)
白△に石が増えたのが問題です。
これを生かして白5まで、左辺黒を攻められてしまいました。
白AやBが心配です。
つまり、下辺の黒地ができた分全てプラスではなく、実際の成果は割り引いて考えなければいけません。
2図は地にプラスアルファがありますから、逆になっていますね。


今回は少々高度な図になりましたね。
大事なことは薄い石の周りに地を作るということで、それだけご理解頂ければ十分です。

溝上知親九段-杉内寿子八段戦

2019年01月12日 17時14分36秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
本日は永代塾囲碁サロンにて講座と指導碁を行いました。
お越し頂いた皆様、ありがとうございました。
指導碁を打っていて楽しいことの1つは、お客様が上達を感じる打ち回しを見せてくれることです。
今回もそんな場面がありました。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は溝上知親九段(41)と杉内寿子八段(91)の対局をご紹介したいと思います。
溝上九段と言えばNHK杯の常連で、三大棋戦のリーグ戦には何度も入っています。
杉内八段が強いことは知っていましたが、そんな棋士にまで勝ってしまうとは・・・。

最近、仲邑菫さんが最年少棋士になることが決まりましたが、ぜひ杉内八段と記念対局を行って欲しいですね。
歴史に残る対局になりますし、菫さんにとっても素晴らしい経験になるでしょう。
もちろん、公式戦で対局できる可能性もゼロではありませんが、2人の所属が違うのでかなり難しいです。

さて、それでは対局を見ていきましょう。
なお、棋譜は日本棋院ネット対局幽玄の間にてご覧頂けます。



1図(実戦)
溝上九段の黒番です。
杉内八段が白1とツケていきましたが、この石の張った打ち回しに敬服しました。
これは、単に左辺を白地にしたいという打ち方ではありません。
白△の存在を生かし、左辺黒に狙いを付けているのです。





2図(実戦)
ですから、黒1に対しては白2と反発しました。
黒3と飛び込まれても戦えるとみています。

もっとも、これは杉内八段としては当然の一手ですね。
もし白2で白3などと受けたら、今後杉内八段の碁を見ることをやめるレベルです(笑)。





3図(実戦)
白△は地味ながら逃せない急所ですね。
こういうところはすぐに見えるのでしょう。





4図(実戦)
白1と黒の急所に迫り、黒2、4を強いて白5と伸びたのは名調子ですね。
これが上辺、左辺、中央の黒を睨む絶好の手になっています。





5図(実戦)
しかし、溝上九段も簡単には勝たせてくれません。
黒1のつなぎから黒7まで、コウを仕掛けたのが勝負手です!
黒がコウに勝てば隅の白が死ぬので、白もかなり怖いことになりました。

途中まで順調に打っていても、こういうところから崩れてしまうベテラン棋士は少なくありません。
私も心配しながら観戦していました。





6図(実戦)
白がコウに勝つ代償に、上辺で黒に生きられてしまいました。
ですが、杉内八段は白△という厳しい手をみていたのです。
これで上辺での損を取り返し、ゴールに近付くことができました。





7図(実戦)
下辺は色々な打ち方が考えられるところですが、白1~5とは目一杯の打ち方ですね。
こういうところで緩まないのは流石です。
この時点で白の勝ちが確定したと言って良いでしょう。
最後は白中押し勝ちとなりました。

本局は91歳の対局ということを抜きにしても素晴らしい内容ではないでしょうか。
皆様もぜひ総譜をご覧ください。

棋聖戦第1局感想

2019年01月12日 00時27分57秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
有名人の離婚はよくニュースになりますが、あまり興味を持てません。
しかし、7兆4千億円分の財産分与と聞くと話は別です。
そんな現実感の無いほどの財産が個人間を移動するとは、凄い時代ですね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は棋聖戦第1局の2日目が行われました。
早速振り返っていきましょう。
注目の封じ手は・・・。





1図(封じ手)
白△でした!
まさか選択肢から外した手を打たれるとは・・・。
実は結構自信があって、それで3回当てたいなどと言ってしまったのですが。





2図(実戦)
その後は、まず黒の山下挑戦者が上辺白に猛攻をかけ・・・。





3図(実戦)
さらに、中央でも勢い良くハネていきました。
1日目は白が良いと思っていましたが、こうなってみると勝負は分からなくなってきた気がしました。





4図(実戦)
しかし、形勢が接近する中で2線のハネツギとは、実に落ち着いていますね。
白Aと打ち込んでみたい気もしますが、あてがないとみたのでしょう。
それよりも細かいヨセ勝負の方が勝ちやすいとみているわけで、井山棋聖が終盤力に自信を持っていることが伺えます。

その後は井山棋聖が黒の隙を衝き、一瞬で勝負を決めました。
山下挑戦者としては、少々不本意な一局だったかもしれませんね。


ともあれ、七番勝負はまだ始まったばかりです。
楽しい碁を沢山見せて欲しいですね。

棋聖戦七番勝負、開幕!

2019年01月10日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
木曜日は日本棋院棋士の公式対局日です。
日本棋院ネット対局幽玄の間でも多くの対局が中継されました。
その中でも、私が特に注目したのは溝上知親九段と杉内寿子八段の対局ですが・・・。
なんと杉内八段が勝ちました!
10歳で入段する棋士が注目されていますが、91歳の活躍もそれに劣らず凄いことだと思います。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
昨日は投稿をお休みしました。
今年も無理せず続けていこうと思います。

さて、本日第43期棋聖戦挑戦手合七番勝負が開幕しました!
6連覇中の井山裕太棋聖に挑戦するのは山下敬吾九段です。
天元戦に続いての挑戦ですね。
タイトルに挑戦することは、防衛するよりも難しい面もあると思いますが、山下九段は当たり前のように勝ち抜いてきますね。
それでは、1日目の対局を振り返っていきましょう。



1図(実戦)
山下挑戦者の黒番です。
ここで井山棋聖、いきなりのツケ!
最近はツケが当たり前のように打たれるようになりました。
小ゲイマ締まりにツケる手が打たれるようになり、その対策で大ゲイマ締まりが流行りましたが、それでもツケ。
ならばと一間や二間に締まったとしても、それでもツケてくることがあります。
昔の人が見たら目を丸くしそうですね。





2図(実戦)
黒△までの進行は黒石が内側に篭り、山下挑戦者らしからぬ進行のようにも見えました。





3図(打ち掛け局面)
しかし、山下挑戦者は上辺白を狙っていたのでしょう。
黒△のツケ!
ここで打ち掛けとなり、井山棋聖が次の白の手を封じて1日目が終わりました。

封じ手は白Aと反撃するか、周囲の黒に敬意を表して白Bと受けるかの2択でしょう。
1つはっきりしているのは、井山棋聖が打ちたいのは白Aで、それが上手くいかない場合に白Bを選択するであろうということです。





4図(封じ手予想)
ということで、封じ手は白△と予想します。
本局が1局目であるということも、多少は判断材料になるでしょうか。
私の封じ手予想は成績が悪いですが、今回は3回当てるのが目標です。
そのためにも、シリーズは最終局までいってほしいですね。


明日も午前9時から各所で対局が中継されます。
お楽しみに!