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24時間滞在すれば「日本贔屓」に? 仏人作家が見た 曖昧な国の武器 202307

2023-07-07 22:41:00 | なるほど  ふぅ〜ん

24時間滞在すれば「日本贔屓」に? 仏人作家が見た 曖昧な国の武器
 Forbes JAPAN 編集部 より 230707

『 理不尽な国ニッポン』📗(河出書房新社)はフランスでベストセラーとなった現代日本論の日本語版だ。

 著者であるジャン=マリ・ブイズはパリ政治学院日本代表であり、様々な大学で教鞭を執る歴史家である。
 本書は20年以上の日本在住歴を持つ著者の経験を活かした、ユーモアたっぷりのエッセイに仕上がっている。基本的にはフランス人へ向けた日本の案内といった体裁になっているが、日本人にとって参考になる部分も多く含まれている。 

⚫︎「理不尽」の意味
 内容の紹介へ入る前に、タイトルについて補足しておかなければならないだろう。『理不尽な国』という表現には少なからず批判的な意味が込められているが、しかし批判一辺倒というわけではない。むしろ日本を肯定する意味すらも含まれており、それこそが本書全体を取り巻く最も大きなテーマとなっているのだ。

 もう少し詳しく説明したい。ここで言う「理不尽」とはあくまで欧米的な、もう少し狭義に言えばフランス的な観点に基づいた「理不尽」に過ぎない。「理不尽」という単語は「フランスの価値観にそぐわない」と言い換えることもできるだろう。

 グローバリゼーションが標準となった現代では何かにつけ、欧米的な社会に追随することを迫られるし、それが唯一の選択肢であるかのように思わされる機会も多いのだが、かといって欧米社会も完璧であるわけではないし、中には日本より遙かに深刻で「理不尽」な問題も少なくないように思える。  

⚫︎曖昧な極東の島国が「いい」理由
 それを証明するかのように、本書の序文は以下のような一文から始まる。

 すでに四半世紀にもなる長い不況から抜け出せないでいるにもかかわらず、日本は世界第三位の経済大国のままである。

 当然、経済指標が全てというわけではないのだが、アメリカ、中国に次ぐ世界第三位の経済大国という立ち位置は、価値観以前の事実だ。また著者は、治安の良さや交通機関の利便性が多くの国から抜きん出ている点も見逃さない。これらは全てフランスよりも優れている日本の美点だ。
 挑発的なタイトルに反して、著者が日本に好意を抱いていることは、「「日本の方がいい!」──二四時間ですべてがわかる」という第1章の章題と内容からして明らかである。 

 様々な場面で(フランス的な)合理性を欠き、曖昧で、欺瞞が目につく極東の島国は、しかしその実上手く立ち回っているようである。であればフランスには日本から学ぶべき要素があるのではないだろうか──それが、本書の出発点である。

 取り扱われるテーマは膨大だ。死刑制度や難民といった議論の尽きない問題からNHKの受信料やスポーツなど私たちの生活に身近な問題、果ては全国各地の奇祭やアイドルのスキャンダルに至るまで多岐にわたる。少なくとも、私たちにとって物珍しい話題は殆どないだろう。
 しかしそういった日本の日常風景が著者にとっては珍奇かつ理不尽であるらしい。この価値観の違いを、具体的な例示とともに知るだけでも本書を手に取る価値がある。 

⚫︎「分断を避ける」国民性
 多くのテーマの全てを紹介するわけにはいかないので重要なポイントを抜き出したい。それは「分断」だ。

 日本とフランスを比較する中で,著者は何度かオーウェルの名を登場させる。『1984年』を代表作とし,全体主義国家や管理社会への警鐘を鳴らし続けたジョージ・オーウェルだ。

 著者は日本の習慣から繰り返しオーウェル的な世界を嗅ぎとっている。具体的には地域社会の相互監視的な視線や画一的な報道を続ける主要メディア、人々に思考する猶予を与えないほど連続して訪れる社会的、商業的イベント(ハロウィン、クリスマス、バレンタインデー……)などに対してだ。

 何かをオーウェル的だと例える文章には強い批判が含まれている場合が多い。しかし著者の場合はそうではなく、「このようなオーウェルはそう悪いものではなく、それなりのやり方で、日本国民がストレスの元となる分断に陥るのを避ける助けになっているのである」と言及している。「分断」という言葉が世界的な問題となっている中で、これは重要な指摘だろう。
 分断を避ける、という国民性は社会問題に対する姿勢にも表れているようだ。

 社会問題に対して、フランス人と日本人のアプローチは正反対である。フランス人は変えることを望むのに対し、日本人は治療を望む。私たちフランス人は古い世界を壊して新しい世界をつくろうとする。
(中略)社会の悪を公に告発し、見せしめに処罰して、同類の仲間全員を悔い改めさせようとする。害悪は完全に排除するか、または再教育して、社会を解放しようと闘うのである。

 いっぽうの日本人は、機械を直す、間違いを正す、病気を治療する、悪い習慣を取り除くのと同様の動詞を使う。
「生活、社会、世界」を立て直すときは、それら全体を一言にして「世」を立て直すという言い方をする。悪というよりは、機能不全に陥った共同体全体を立て直すという意味で、壊すのではなく、再出発するために活力を取り戻すという意味だ。

 変えることはスピーディーだが多くの綻びを生んでしまう可能性があり、一方で治療は時間がかかる代わりに入念におこなうことができる。

 フランス人の黄色いベスト運動や直近の年金改革への抗議デモ、度重なるストライキは、私たち日本人にはいささか過激で、暴力的にすら映る。逆に、フランス人から見た日本人の社会運動はあまりにも遅々として進展せず、生ぬるいとすら見えているのだろう。 

⚫︎「理不尽さ」こそが武器?
 しかし、もしかしたら社会問題に対する日本人の「遅さ」は副作用を減らす効果があるのかもしれない。
 著者は「問題に取り組むのは、長い熟成期間を経て、これらのテーマが何らかの事件をきっかけに、一般の人々の問題として認められるようになったときだ」としたうえで、「たしかにフランスよりは目立つやり方ではないが、しかし分断はきわめて少ない」と評価している。これは、普段「遅さ」に歯痒い思いをしている日本人にはない発想ではないだろうか。

 本書が刊行されたのは2020年。相変わらず日本は長い不況から抜け出せておらず、その他にも多くの問題が山積している。分断は少ないらしいが、必ずしもゼロではない。これらの解決がゆっくりとしたものになることは何となく見当がついてしまう。
 しかし、だからといって悲観しすぎる必要はないかもしれない。本書を、そして他国の例を見る限り、「遅さ」「理不尽さ」は十分効果的な武器になり得るからだ。

 最後にもう一つ、著者が「理不尽な」日本人を評した言葉を引用しておく。

 社会を変える能力と欲望があったのだとしても、急がず、目立たず、しかし、彼らなりに現在の状況に合わせて変化するのだろう。

 そしてこれは幸せとは言えないにしても、それに近いと言えるのではないだろうか?
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👫…伊藤久右衛門本店↩️ 🚶…仏徳山↩️ 🚙↔︎マツモト 230707

2023-07-07 21:38:00 | 🚶 歩く
👫…🏦…伊藤久右衛門🍵本店🌿↩️…H六原🥦🥩…>
🚶…右岸河川敷…宇治橋東詰…朝霧通…早蕨の道…仏徳山遊歩道↗︎仏徳山展望台👀↩️↘︎仏徳山遊歩道…早蕨の道…源氏物語ミュージアム小径…翔英高体育館沿…京都宇治線…宇治橋東詰…右岸堤防道…>
🚙⇄マツモトSP🥦🧴☂️

🚶11481歩2kg13F 展望台(102m)へのなだらか遊歩道で階数は少い,山道より楽

⛅️☂️:陽射し有り,曇天,雨:梅雨空:風やや強く心地よし。不安定な天気。

伊藤久右衛門特売日でお茶系色々
 入場制限有り

遊歩道で坂道走行を学生さん大変!



仏徳山展望台眼下の平等院



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 【脳にいい行動&悪い行動】うなずくだけで脳が喜ぶ!?意外と知らない10の説 2023/07

2023-07-07 02:07:01 | 生活編

【脳にいい行動&悪い行動】うなずくだけで脳が喜ぶ!?意外と知らない10の説
  美ST ONLINE  より 230707


 見た目の若さだけじゃなく、脳の若さも欲しい!「アレよ~アレアレ」が口癖になったら脳の老化のサインかも。最近物忘れが多い、今までしていたことが億劫になったなど、気になる変化を感じたら放置せずにできることから今すぐ始めてみましょう!
 脳を健やかに保つおすすめ習慣&NG習慣を紹介します。


1:【耳が悪くなる】のは脳からのSOS
 脳の老化に影響を及ぼす器官として気にしないといけないのが、耳。
脳老化のリスクNo.1は耳が悪くなることなのです。人間は聴覚を通して多くの刺激を受けて、それが脳への刺激となって老化を防ぐのですが、聴力が失われると視覚や触覚で補おうとするので、認知機能が落ちやすいと言われているのです。
 イヤホンなどで大音量で音楽を聴くのはNG。老人性難聴を防ぐためにも〝大きな音は聞かない〟ことが大切といえます。また、聞こえることが認知力回復につながることもあるので、高齢になって聞こえにくくなった場合は無理せず早めに補聴器をつけましょう。

2:リラックスタイムこそ【脳活タイム】
 ここでいうリラックスというのは、〝心がゆったりしていて難しいことを考えていない状態〞のこと。
 つまり、休息していると自分が認識している状態のことです。ストレスが脳にダメージを与えるため、リラックスは脳活には必須なのです。お風呂にのんびり浸かったり、カフェでお茶したり、好きなことをするのはもちろんですが、何もしていない時間が最も脳が活性化していることがわかっているので、実はボーッとすることも脳活のひとつなんです。

3:脳を活性化する【手帳術】とは
 脳の認知機能を高めるツールとしておすすめなのが手帳です。普段手帳を使わない人にもおすすめな活用術を紹介します。ぜひ試してみてください。

①毎朝〝今日したいこと〟を書く
どんな些細なことでもOK。

②一日の終わりに今日成功したことや良いことを書く
こちらも、日常の小さな出来事で充分。

③3キロ痩せたいなど、目標を数値化して書く
大切なのは目標に向かって具体的に項目や数値を書くこと。

④心がウキウキする予定を入れる
実現しなくてもOK。空想スケジュールだと思ってください。

4:認知機能を上げる【SNS】と【文通】
 認知機能向上におすすめなのがSNS。SNSは脳活効果が期待できるので、実は高齢者ほどおすすめなんです。
 SNSだけではなく、例えばGoogleEarthなどを活用した妄想旅行も◎。脳はイメージしたことと現実をあまり区別できないので、映像を見るだけのバーチャル体験でも充分効果があるんです。
 次に、文通。手で書くことは特に記憶の定着に効果があります。手紙を書くことでも効果はありますが、特に文通は、〝手書きの効能〟と〝人とのコミュニケーション〟がダブルで働くので、おすすめなんです。
 認知機能を高めるためにデジタルツールと手書き、用途によって上手に使い分けて生活に取り入れてみてください。

5:【食物繊維】が腸から脳を救う
〝第二の脳〞とも呼ばれている腸。腸から脳の老化を防ぐためには、腸活がおすすめです。
 特に食物繊維を摂ると、血糖値が上がりにくくなるため血糖値スパイクを防げます(急激に血糖値が上がると、酸化や糖化が起きて脳の血管が錆びるため、血管が詰まりやすくなり認知症になりやすくなります)。
 大豆などの豆類、野菜、高カカオチョコレートなどは食物繊維が豊富です。特に、高カカオチョコレートは、BDNFという記憶力を増強するホルモンの分泌を促進するため、記憶力まで高まる効果も期待できますよ。

6:脳が喜ぶ【うなずく】という行為
 普段、何げなくしている会話は、脳にとっては高度な作業。いろいろな人と会話をすることは、まさに〝脳トレ〟なんです。そんな会話をするときに大切なのが〝うなずく〟という行為。
 人の話を聞くときに、ただ聞くのではなく、うなずきながら聞くと脳が活性化します。また、うなずくことは話している相手の脳まで活性化させるので、まさに一石二鳥の脳活。
 人間は理解してほしい生き物なので、理解しているというサインになる〝うなずく〟という行為は、たとえ相手がロボットだとしても、脳はきちんと反応するんです。

7:【ホルモン療法】による認知症予防とは
 更年期と認知症を含む老人脳の関係については、現在、世界的にもデータが錯綜していて、正確な結論が出ていません。ただ、40歳以下で早期に閉経した人が、すぐにホルモン補充療法を受けない場合、認知症になるリスクが高いといわれています。早期閉経を迎えた場合は、ホルモン療法をしたほうが認知症の予防になることだけ覚えておいてください。

8:【甘えん坊タイプ】が老化しやすい理由
 なんでも人に頼る甘えん坊タイプの人、いませんか?人間は環境に適応する生き物なので、助けてくれる人がいると、ついつい頼って自分はラクをしようとしてしまうのです。
 その結果、脳の老化は明らかに進行します。なぜなら、脳は〝使わない機能はいらないもの〞と判断してしまうから。脳のためにも、安易に頼らず、自分でできることはできるだけ自分でやるようにしましょう。
 また、これは高齢者に対しては特に注意すべきポイントです。サポートがすべて親切とは限らないので気をつけましょう。

9:脳老化を速める【マイナス発言】を控える
 「疲れたー」「もう歳だから」「無理」など、ついついマイナス発言をしている人はいませんか?実は、使った言葉がその後の行動に影響を与えてしまうので、脳には悪影響なんです。
 とはいえ、使わないように我慢すると逆に感情が苦しくなりますよね。なので、マイナス発言をしたあとに、必ず〝でも〟を付け加えて、「疲れた。でも頑張った!」と言うようにするのがおすすめです。
 脳は、一番最後の情報を印象に残しやすい性質があるので、マイナスを否定してプラスな言葉で締めるクセを付けると脳にとってもプラスになりますよ。

10:【香り】で認知症の進行が防げる!?
 五感のなかでも伝達速度が速いのが嗅覚。それだけ嗅覚と脳はつながっているのです。
鼻腔と脳は場所も近く、ダイレクトに脳が活性化するので、香りを使えば手軽に脳活できます。シチュエーションに応じて使い分けると◎。

⚫︎脳の活性化が期待できる香りセレクト6
【1】レモン 副交感神経の活性化を抑え、交感神経を活性化する作用で集中力アップや疲労回復効果があります。 
【2】ラベンダー 短期記憶がアップして記憶力が向上するほか、神経の成長や維持を促進する効果も期待できます。 
【3】ペパーミント 集中力が高まり作業効率が良くなる効果が期待できます。ミントガムを嚙むこともおすすめです。 
【4】ヒノキ 副交感神経が活性化してストレスが軽減されるほか、記憶力への効果も期待できます。檜風呂も◎。 
【5】ローズマリー 展望記憶(将来の予定や約束などを覚えておく能力)がアップするので、忘れっぽい人におすすめ。 
【6】コーヒー 人の心をやさしくする効果があるので、イライラするときは香りを意識してコーヒーでリラックスを。



▶︎東京工業大学大学院生命情報専攻修了。博士号を取得後、特許庁に入庁。大学院の非常勤講師を兼任しながら、遺伝子や脳内ホルモンなど最先端の仕事を手がける。その後、書籍出版や講演をはじめ、企業はもちろん教育分野でも活躍中。『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム刊)ほか、著書多数。
▶︎教えてくれたのは……脳科学者(工学博士) 西 剛志先生
\こちらもオススメ!/
📗『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム刊)
2023年『美ST』7月号掲載 イラスト/香川尚子 取材・編集/鎌田貴子
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¿? AIの権威すら「生成AI」を恐れるのは、意識を生み出す「創発」が起きているから 202307

2023-07-07 01:34:00 | ¿ はて?さて?びっくり!

AIの権威すら「生成AI」を恐れるのは、意識を生み出す「創発」が起きているから
  ダイヤモンドOnline より 230707  小林雅一


 人工知能やクラウド技術などの進化を追い続けている小林雅一氏の新著📘『生成AI―「ChatGPT」を支える技術はどのようにビジネスを変え、人間の創造性を揺るがすのか?』が発売された。
 同書では、ChatGPTの本質的なすごさや、それを支える大規模言語モデル(LLM)のしくみ、OpenAI・マイクロソフト・メタ・Googleといったビッグテックの思惑などがナラティブに綴られており、一般向けの解説書としては決定版とも言える情報量となっている。

この連載では同書の一部の紹介に加え、生成AIの最新動向を著者・小林雅一氏に解説してもらう。

⚫︎「AI界のゴッドファーザー」ジェフリー・ヒントンの2つの懸念
 生成AIは史上最速にして最大の革命を人類にもたらす──『生成AI』の執筆を終えた今、筆者はそう確信している。

 OpenAIの共同創業者であるサム・アルトマン、グレッグ・ブロックマン、イリヤ・スツケヴァーらは、「国際原子力機関(International Atomic Energy Agency:IAEA)に匹敵する「AI開発の監督・規制機関」を設けるべきだと主張している。

 生成AIのような超先端技術を開発するOpenAIの関係者自らがAI開発の監督・規制を求めるのは若干奇妙な印象も受けるが、そこには恐らく政治的な駆け引きも作用しているのだろう。

 本書でも紹介した生成AIによる「フェイクニュースの拡散」や「雇用破壊」などの懸念に対し、今後各国・地域の政府は何らかの監視・規制策などを打ち出してくる。特にEU(欧州連合)の規制策はかなり厳しい内容になりそうだ。

 そうであるなら、むしろOpenAI自身が機先を制する形で生成AIの監督・規制を促していくほうが、自らの研究開発やビジネスへの悪影響を最小限に抑えることができる──そのようにアルトマンらは考えたのではなかろうか。

 しかし、こうした政治的駆け引きの一方で、OpenAIの創業者らが本気で生成AIの長期的な危険性を憂慮しているのも事実だろう。その監視・規制を求めるに際して、彼らが自社のウェブサイト上に掲載した内容には「人類の存亡に関わるリスクに対し、我々は受動的な姿勢に終始することはできない」と書かれている。

 これと同じことは、半世紀以上にわたってニューラルネットの研究開発をリードし、「AI界のゴッドファーザー」と称されるジェフリー・ヒントンも主張している。

 カナダ・トロント大学の教授であるヒントンは、2013年からグーグルの研究チームにも参画し、音声検索をはじめさまざまなAI製品の開発に従事してきた。その彼が2023年4月、突如グーグルを退社して注目された。理由は「グーグルに気兼ねすることなく、AIの危険性について語れるようにするため」という。

 以来、米ニューヨーク・タイムズや日本のNHKをはじめ世界各国のメディア取材に応じ、生成AIなど先端的な人工知能の危険性に警鐘を鳴らしている。

 ヒントンは生成AIの短期的な危険性として、(『生成AI』でも紹介した)「フェイクニュースの拡散」を挙げている。すでに米国では、野党共和党の広告動画に画像生成AIで製作した「中国が台湾を侵略するシーン」が使われるなど、その兆候が現われている。

 また2023年5月には、「米国防総省(ペンタゴン)での爆発事件を撮影した」とするフェイク画像がネット上に出回ったが、これも恐らく画像生成AIで製作されたと見られている。

 日本でも2022年9月、静岡県で水害が発生した際、「ドローンで上空から撮影された洪水の様子」とされる映像がツイッターで拡散したが、これも後日、画像生成AIで製作されたフェイク画像であることが確認された。

 すでに事実と虚構の境界線が消失しつつあり、この一点のみでも人類社会が大きな影響を受けることは明らかだろう。

 さらに、ヒントンが「AIの長期的な危険性」として挙げるのは、「AIが人間の知的能力を上回った場合、人類を支配しようとしてくる可能性」だ。

 これまで彼は、「AIが人類全体の知的能力を凌駕する」とされる「シンギュラリティ(技術的特異点)」などSF的なAI脅威論には懐疑的な姿勢を貫いてきた。
 それだけに、ここに来てそうした脅威論の支持者へと鞍替えしたことには、AI関係者の間でも高い関心が集まっている。

 ヒントンが最も警戒しているのは、生成AIのベースにある大規模言語モデル(LLM)だ。少なくとも、つい数年前まで彼は「LLMの能力は人間を上回ることはない」と見ていた。

 しかし2022年にグーグルが開発中の先端LLMを目の当たりにしたとき、その見方が変わった。それは全面的ではないが、少なくとも一部の知的能力では、人間の脳を上回っていると感じたという。

 1940~50年代にかけて、LLMのようなニューラルネットの原初モデルが開発された当時は、「ニューロン同士の接続部(シナプス)」など本物の脳を多少は参考にしていた。
 しかし、それ以降長年にわたる研究開発を経て「本物の脳」とは事実上異なる情報処理の仕方で「人工的な知能」を実現するに至った。

 つまりLLMのようなAIと私達の脳は「異なる種類の知能生成器」であると見るのが妥当だ。しかし、そのように「脳とは異なるAI」が(一部の分野にせよ)「脳よりも優れた知的能力」を形成するに至ったことはヒントンに衝撃を与えた。

「今から5年前(のLLM)と今(の実力)を比較してみなさい。このペースでAIが成長していったら一体何が起きるのか。(想像するだけでも)怖くなる」とヒントンはニューヨーク・タイムズの記者に語っている。

 前述のように彼が「AIは人類を支配しようとしてくる可能性がある」と語るとき、そこにはLLMのような生成AIが、いずれは自意識を育むことを想定しているはずだ。
 AIに自意識がなければ、どんなに超越的な能力を持っていたとしても、それは所詮「石器」や「刃物」のような道具と本質的に変わりがないからである。単なる道具が人類支配を試みようとするはずがない。

 LLMは人間の意識の源と見られるニューロン(神経細胞)のような生物学的な存在ではなく、単なる数学的なモデルに過ぎない。この点は最先端のトランスフォーマー・モデルになってからも同じだ。「所詮はその程度のAIが、人間のような自意識を育むことはあり得ない」と多くの人は思うはずだ。

⚫︎「創発」とは何か?
 しかし、ここで指摘したいのが「創発(Emergence)」という概念だ。

 たとえばグーグルが2022年11月に自社ブログで発表した「Characterizing Emergent Phenomena in Large Language Models(大規模言語モデルにおける創発現象の特徴)」というレポートには、創発とは何を意味するかがわかりやすく解説されている。

 この報告書によれば、LLMのトレーニング(機械学習)量やパラメーター数などをどんどん増やしていったとき、それらがある閾値を超えた時点で、急激かつ飛躍的な性能の向上を見せるという。たとえば突如「三段論法的な推論能力」を育んだり、米国の大学院入試に使われる「GRE(Graduate Record Examination)」と呼ばれる標準テストの問題を解けるようになったりする。これがAI開発における「創発」と呼ばれる現象だ。

 この「創発」とは本来、「生物の進化論」によく出てくるコンセプトだ。

 たとえば脳内の電気信号を伝達するニューロンのように個々の要素としては単純なものでも、それらが何十億、何百億個も複雑に絡み合うときに、突如として予想もしないような新しい能力や性格を育む。これが生物や生命現象における創発であり、私達人間が持つ「意識」も生物の進化のプロセスで、脳内のニューロン接続の複雑さがある閾値を超えた段階で現われた創発の一種なのではないか、と見られている。

 確かにLLMのような生成AIと私達の脳は異なる種類の知能生成器である。しかし、たとえそうだとしても今後AIがAIなりの仕方で進化を遂げるとき、そのメカニズムの複雑さがある閾値を超えた段階で、ある種の意識を育む創発が起きることは十分あり得る──。

 ヒントンはそこまで明言していないため、これは正直、筆者の推測に過ぎない。しかし逆にそうでなかったとすれば、「AIが人類を支配するかもしれない」といったヒントンの憂いが生じるとは考え難いのである。

 ウェブ上に蓄積された膨大な知識や英知、そればかりかさまざまな偏見や憎悪までも呑み込んで消化吸収する生成AIと、それを生み出した人類は、これまでの生物学的な進化の枠組みを超えて、新たな進化のフェーズに突入したのではないだろうか。
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