コピーできないQRコードを実現――甲虫や蝶の羽のように発色するコレステリック液晶を開発
fabcross for エンジニア編集部 より230811
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名古屋大学の研究チームが、輝度の高い艶があって見る方向によって色が変化する、甲虫の外殻表面や蝶の羽根の発色メカニズムを模倣することによって、偽造防止が可能なQRコードを作成する手法を考案した。
研究成果が、2023年7月9日に『Advanced Optical Materials』誌に公開されている。
同研究チームは、螺旋構造を持つ特殊な液晶であるコレステリック液晶(CLC)について、直径が数μmと小さく、サイズ分布が均質な球状粒子を作成することに成功した。
同研究チームは、螺旋構造を持つ特殊な液晶であるコレステリック液晶(CLC)について、直径が数μmと小さく、サイズ分布が均質な球状粒子を作成することに成功した。
そして粒子直径や螺旋ピッチに依存して、さらに見る角度によるピッチ投影長さの変化に対応して、特定波長だけを選択的に反射することを確認するとともに、非対称性によって鏡像に重ね合わせることができないキラリティー特性を利用して、特殊な円偏光子を使用しないと読み取れないQRコードに応用できることを実証した。
CLCは、長い分子が幾重にも螺旋状に重なる層状構造を持っており、分子構造に基づいたユニークな光学特性を持っていることで、近年注目を集めるようになっている。
CLCは、長い分子が幾重にも螺旋状に重なる層状構造を持っており、分子構造に基づいたユニークな光学特性を持っていることで、近年注目を集めるようになっている。
螺旋周期に対応した特定波長を選択的に反射し、螺旋ピッチの短いCLCは青と紫を、螺旋ピッチの長いCLCは赤とオレンジの色合いを発生する。更に、見る角度によってピッチ投影長さが変化することで色の変化が生じ、甲虫の体表や蝶の羽ような輝かしく変化する色あいを発生する。
CLCをさまざまな用途に応用し、色合いを高精度に制御するには、粒子として成形することが最も有効と考えられ、研究レベルでCLC粒子が作成されてきた。
だが,これまでの手法で得られるCLC粒子は直径が100μm程度であり,多くの用途に向けた応用には大きすぎるという課題があった。
だが,これまでの手法で得られるCLC粒子は直径が100μm程度であり,多くの用途に向けた応用には大きすぎるという課題があった。
名古屋大学の研究チームは、溶媒混合による分散重合を用いた手法により、この問題を解決することにチャレンジした。
その結果、直径がわずか数μmの小さなCLC球状粒子を創成することに成功した。CLCは本来的に柔らかい性質を持つため、サンプルを損傷せずに特性評価する手法を確立するのに苦労したが、粒子サイズが発現構造色に顕著な影響を与えることを発見し,粒子サイズに対応してさまざまに発色できる一方、一貫した色合いを確保するには、均質なサイズ分布を持つ単分散のCLC球状粒子を得ることが重要であることを確認した。
また、高分子ポリジメチルシロキサンによってCLC粒子を被覆すると、色合いおよび熱的安定性が向上することも見出した。
さらに研究チームは、開発したCLCと入手が容易な顔料を組み合わせることにより、複製が困難でセキュリティの高いQRコードを創成する手法を考案した。
さらに研究チームは、開発したCLCと入手が容易な顔料を組み合わせることにより、複製が困難でセキュリティの高いQRコードを創成する手法を考案した。
これは、非対称性によって鏡像に重ね合わせることができない、キラリティーと呼ばれるCLCの性質を利用するものであり、キラリティーのあるCLCとキラリティーのない顔料の組み合わせにより、キラリティーに関わる偏光性を持つ特殊な円偏光子によってのみ読み取りが可能なように設定できることを実証した。
CLCのユニークな光学特性により、自然を模倣するだけでなく、高度なセキュリティや認証、色関連応用技術などの可能性を切り拓くものだと期待している。
▶︎関連情報
NU Research Information – Nagoya University
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