「ヒトゲノムの8割は太古のウイルス」「遺伝子は想定の五分の一」…山中伸弥が解説するヒトゲノム計画で明らかになった「意外な事実」
現代ビジネス より 241118 山中 伸弥、羽生 善治
「iPS細胞技術の最前線で何が起こっているのか」、「将棋をはじめとするゲームの棋士たちはなぜ人工知能に負けたのか」…もはや止めることのできない科学の激動は、すでに私たちの暮らしと世界を変貌させつつある。
人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う📗『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋してお届けする。
『人間の未来AIの未来』連載第8回
『将来は「全人類のゲノムを把握」…科学の常識を“破壊”した「ゲノム解析技術」驚異の最前線』より続く
⚫︎ゲノム解読の可能性
羽生ー多くの人のゲノムが解析されていくと、具体的にどういうメリットがあるのでしょうか。
山中ーこれまでは一つの病気に対してどの人にも同じ薬を投与して、効く人はよかったけれども、効かない人もたくさんいました。さらに、ある人には効くどころか副作用が起こってしまいます。人間には当然、個人差があります。その辺りがまったく予測できず、やってみなければわからないのが実情でした。
しかし、ヒトゲノムが解読されてから、ゲノム配列の細かな個人差が体質の差につながる可能性が明らかになっています。
一人ひとりの“設計図”が読めるようになってきたことで、ゲノム情報から一人ひとりの病気のかかりやすさや薬の効き方を予測できるのではないかと期待されているんです。
いわゆる「オーダーメイド医療」とか「プレシジョン・メディシン」(精密医療)と言われています。
実際、「東北メディカル・メガバンク計画」では、東日本大震災後に東北地方の何万人という人のゲノムを全部解読して医療情報とゲノム情報を組み合わせたバイオバンクを構築する計画が進んでいます。
ただ、ヒトゲノムの30億塩基対もの情報量が手に入るようにはなりましたが、問題はその意味がまだわからないことだらけ、ということです。
実際、「東北メディカル・メガバンク計画」では、東日本大震災後に東北地方の何万人という人のゲノムを全部解読して医療情報とゲノム情報を組み合わせたバイオバンクを構築する計画が進んでいます。
ただ、ヒトゲノムの30億塩基対もの情報量が手に入るようにはなりましたが、問題はその意味がまだわからないことだらけ、ということです。
今までほとんど知らなかった言語の百科事典が一冊簡単に手に入るようになった、でもそれを開いて見ても、何が書いてあるかまったくわからないページがいっぱいある――現状はそんなところです。
⚫︎「ガラクタではなかった」
羽生ーその文字というか塩基の配列の意味が解けないわけですね。
山中ーはい。ごちゃごちゃして余分だったり無駄だったりして見えるので「ジャンクDNA」「ガラクタ遺伝子」と呼ばれていますね。ジャンクDNAは面白いんですよ。
⚫︎「ガラクタではなかった」
羽生ーその文字というか塩基の配列の意味が解けないわけですね。
山中ーはい。ごちゃごちゃして余分だったり無駄だったりして見えるので「ジャンクDNA」「ガラクタ遺伝子」と呼ばれていますね。ジャンクDNAは面白いんですよ。
ヒトゲノムの“下書き版”が完成した2000年、アメリカのクリントン大統領とイギリスのブレア首相が共同で記者会見を開いて完成を世界に高らかに宣言しました。
羽生ー大々的にニュースになっていましたね。
山中ー当時、ゲノムの7、8割は、意味のない繰り返し配列だったり、太古の昔に入り込んだウイルスの配列だったりで、もうまったく無駄な「ジャンク配列」だと思われていました。
羽生ー大々的にニュースになっていましたね。
山中ー当時、ゲノムの7、8割は、意味のない繰り返し配列だったり、太古の昔に入り込んだウイルスの配列だったりで、もうまったく無駄な「ジャンク配列」だと思われていました。
でもその後、十年も経たない間に、そのジャンクにいっぱい意味があることがわかってきたんです。
羽生ーガラクタではなかったんですね。
山中ーということになってきています。
⚫︎ヒトゲノムはまだまだ未知の世界
山中ーだいたい、ゲノムが解読されるまで、僕を含めて研究者たちはみんな、自分たちには遺伝子が10万個くらいあるだろうと信じていたんですね。それが解読を終わってみると、2万個くらいに減ってしまって(笑)。
羽生ーいきなり5分の1に。
山中ーはい。でも今また、だんだん増えていって、約3万個と言われています。
羽生ー若干の増減があるんですね。
山中ーそれもまだ確定していません。だから配列を全部読むことはできたんですけれども、意味はまだまだつかみきれていないのが実情です。
⚫︎『遺伝子を「シュレッダーで破壊」!?…ノーベル賞科学者・山中伸弥が語る、ゲノム解読の意外過ぎる「ウラ側」』に続く
羽生ーガラクタではなかったんですね。
山中ーということになってきています。
⚫︎ヒトゲノムはまだまだ未知の世界
山中ーだいたい、ゲノムが解読されるまで、僕を含めて研究者たちはみんな、自分たちには遺伝子が10万個くらいあるだろうと信じていたんですね。それが解読を終わってみると、2万個くらいに減ってしまって(笑)。
羽生ーいきなり5分の1に。
山中ーはい。でも今また、だんだん増えていって、約3万個と言われています。
羽生ー若干の増減があるんですね。
山中ーそれもまだ確定していません。だから配列を全部読むことはできたんですけれども、意味はまだまだつかみきれていないのが実情です。
⚫︎『遺伝子を「シュレッダーで破壊」!?…ノーベル賞科学者・山中伸弥が語る、ゲノム解読の意外過ぎる「ウラ側」』に続く