「地球の肺」と呼ぶことは、もはや神話に-アマゾンの熱帯雨林、CO2排出量が吸収量を上回る
(Source / Esquire ITこの翻訳は抄訳です 210701)
世界最大の熱帯雨林である南米に広がるアマゾンこそ、「地球の肺」である――。そう考えている方も多いことでしょう。なにせ、アマゾン全域の600万7000平方キロメートルにも及ぶ巨大な森林では、大量の二酸化炭素を吸収し、酸素を生み出す役割を果たしているのですから…。
ところが、その「非常に価値のあるプロセス」が、歴史上初めて逆転したことが明らかになりました。
イギリスの科学誌『ネイチャー・クライメート・チェンジ』に掲載された研究論文によると、2010年から2019年までの地域全体の二酸化炭素(CO2)排出量は166億トン。一方の二酸化炭素吸収量は、なんと139億トンに留まっていると報告されました。過去10年間に大気中に放出された二酸化炭素の量は、吸収された量よりも20%近く増加しているのです。
この結果は、アマゾン川流域で森林の成長に伴って吸収・貯留された二酸化炭素(CO2)量と、森林伐採や火災などによって大気中に放出されたCO2量を分析したことで判明しました。
「予想はしていましたが…。ブラジルのアマゾンが、これまでから一転して二酸化炭素純排出地域になったことを示すデータが出ました。これは初めてのことです」と、この研究の共著者であるフランス国立農学研究所の科学者ジャン・ピエール・ウィグネロン氏は語ります。
新型コロナウイルス対策をめぐっても、国内外から厳しい批判を浴びているブラジルのジャイール・ボルソナーロ氏が大統領に就任して以来、ブラジルでは環境保護政策の実施が激減しています。
環境保護団体は、「大統領が環境保護よりも開発を優先したことが、アマゾンの違法伐採や放火の横行を招いた」と非難しています。2019年のG7サミット(主要7カ国首脳会議)においては、フランスのエマニュエル・マクロン大統領がアマゾン火災を主要議題に取り上げ、約21億円の緊急支援を決定したものの、ボルソナーロ大統領はその受け取りを拒否していました。
『ネイチャー・クライメート・チェンジ誌』に掲載された論文によると、火災や開墾などによる森林破壊の面積は2017年、2018年にはいずれも100万ヘクタールでしたが、2019年には4倍近くに増加。その面積はなんと390万ヘクタールです。これはオランダの国土とほぼ同じ大きさです。
アマゾン研究の第一人者である、サンパウロ大学高等研究所の研究者のカルロス・ノブレ教授によると、1980年代や1990年代のアマゾンは大気中から年間20億トンものCO2を取り除く世界有数のCO2貯蓄タンクでした。それが現在では、年間10~12億トン程度のCO2吸収能力に減少しているとのことです。
長い間「地球の肺」と知られていたアマゾンは、「現在、病気を患っている」と言っていいでしょう。その責任は紛れもなく人類にあり、その行く末は、政治的な選択に委ねられていることは間違いありません。そして、その政治を動かすのも、私たち以外に存在しないことも確かな事実なのです。
(Source / Esquire ITこの翻訳は抄訳です。)