男性は「平均9年」、女性は「平均12年」。“日本人は長生き”の中身をよく見たら【医師が解説】
幻冬社ゴールドOnlineより 230331 和田 秀樹
人生100年時代、「死」と距離が生まれてしまった現代では、自分の死について考える機会がめっきりと減ってしまいました。ですが、死は誰にでも確実に訪れます。
50万部超の大ベストセラー『80歳の壁』の著者、高齢者専門の精神科医である和田秀樹氏が、35年以上の高齢者診療で辿り着いた「極上の死に方」について、新刊『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)より解説します。
⚫︎男性は平均9年、女性は12年。
ここで改めて、日本人の平均寿命と健康寿命を見てみましょう。
⚫︎男性は平均9年、女性は12年。
ここで改めて、日本人の平均寿命と健康寿命を見てみましょう。
まず平均寿命は、男性が81.47年、女性は87.57年(2021年)です。
一方、心身ともに自立した生活を送れる「健康寿命」の平均は、
一方、心身ともに自立した生活を送れる「健康寿命」の平均は、
男性が72.68歳、女性が75.38歳(2019年)で、
その差は、男性約9年、女性約12年です。
「健康寿命」の定義は、WHOによると「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、健康寿命を過ぎると、なんらかの健康上の問題で、日常生活に制限が生じます。その期間が、男性は約9年間、女性は約12年間あるわけですが、それがそのまま介護や公的な支援を受ける期間というわけではありません。
もちろん介護や支援を受ける人もいますが、要するに「若い頃より不自由になったと感じる期間」と捉えてよいでしょう。この期間がこれほど長いことに驚かれた読者の方も多いかもしれません。
言うまでもなく、これは統計上の数字にすぎません。前章で話したように70代以降は個人差も大きい。実際、90歳を超えても畑仕事をしながら一人暮らしを続けているすこぶる元気な高齢者も少なからずいます。
しかし、そういう人も含めて、だれでもいつかはだれかの世話にならざるをえないことも事実です。
年代別に見ると、要支援・要介護認定者の割合は、
「健康寿命」の定義は、WHOによると「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、健康寿命を過ぎると、なんらかの健康上の問題で、日常生活に制限が生じます。その期間が、男性は約9年間、女性は約12年間あるわけですが、それがそのまま介護や公的な支援を受ける期間というわけではありません。
もちろん介護や支援を受ける人もいますが、要するに「若い頃より不自由になったと感じる期間」と捉えてよいでしょう。この期間がこれほど長いことに驚かれた読者の方も多いかもしれません。
言うまでもなく、これは統計上の数字にすぎません。前章で話したように70代以降は個人差も大きい。実際、90歳を超えても畑仕事をしながら一人暮らしを続けているすこぶる元気な高齢者も少なからずいます。
しかし、そういう人も含めて、だれでもいつかはだれかの世話にならざるをえないことも事実です。
年代別に見ると、要支援・要介護認定者の割合は、
65~69歳では2.9%ですが、
70~74歳は5.8%、
75~79歳は12.7%。
80歳以上になると比率はぐっと上がり、
80~84歳では26.4%、
85歳以上では59.8%となっています
(厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」、総務省「人口推計月報」の各2021年10月データをもとに公益財団法人・生命保険文化センターが作成したデータ)。
高齢者の場合、それまで元気に暮らしていても、うっかり転んで大腿骨を骨折し、1ヵ月寝ていただけで、まったく歩けなくなってしまうことはよくあります。
⚫︎「私だけは大丈夫」と高を括ってはいられません。
そこで、どこを「終ついの棲家すみか」にするか、どこでどのように最期を迎えたいか、だれの世話になるのかも含めて決めておくことが、死ぬまでの「生」を充実させるためには重要になってきます。
⚫︎最期を迎えたい場所は自宅が6割、介護施設は3割
最期を迎える場所は大きく分けて、病院、介護施設、自宅です。特徴を簡単に説明すると次のようになります。
【病院】
医師や看護師が常駐しているため、いざというときにすぐ対応してもらえる安心感があります。しかし、延命のために無駄な治療を施される可能性が高いというデメリットもあります。
延命治療を拒否するリビング・ウイルを書いていても、家族や医師としっかり共有されていないと、自分が望む死に方をかなえることはかなり難しいと言っていいでしょう。
また、介護施設のように生活を重視する環境ではないため、面会の人数や時間に制限があって、終末期に家族と満足に会えない可能性もあります。特にコロナ禍が続く現在はそうです。
【介護施設】
看取り介護に対応している施設であれば、そこで最期を迎えられます。看取りというのは、治療による延命をせず、残された時間を充実させるために苦痛や不快感を緩和させつつ、最期の瞬間まで世話をすることです。
最近は、公的な特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)をはじめとして、民間の介護付き有料老人ホームや認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などでも看取りをしてくれるところはめずらしくありません。
介護施設の看取りは、介護スタッフのケアによって支えられています。終末期において、それなりに住み慣れた施設で顔なじみのスタッフに介抱してもらえるという安心感があります。
一方、ほとんどの施設では医師や看護師などの勤務は限定的であるため、夜間や緊急時に迅速な医療対応を受けることが難しいのがデメリットと言えます。
施設のなかには、いよいよ最期だというときに病院へ送る施設もあるので、確認が必要です。
【自宅】
住み慣れた環境で自由に過ごせて、最期を迎える瞬間は家族に看取ってもらえます。家族はもちろん、医師や看護師などの医療スタッフや介護スタッフ、ケアマネジャー(介護支援専門員)などの協力と連携が不可欠です。
看取りをしてくれる訪問看護も増えてきているので、おひとりさまでも在宅死は可能です。ただし、在宅看取りを希望している場合でも何かあった場合に救急車を呼べば、ほぼ100%、病院での延命治療に移行します。
2017年度の厚生労働省の調査では、約8割が人生の最期を「自宅」で迎えたいと答えています。厚労省よりサンプル数は少ないものの、貴重な資料として参考になるのが、日本財団が2020年に行った「人生の最期の迎え方に関する全国調査」です。
67~81歳の対象者に調査を行ったところ、死期が迫っているとわかったときに人生の最期を迎えたい場所として、58.8%が「自宅」、次いで33.9%が病院などの「医療施設」と答えています。自宅を選んだ理由の多くは、「自分らしくいられる」「住み慣れている」からでした。
一方、避けたい場所として42.1%が「子の家」を挙げているのが興味深い。人生の最期をどこで迎えたいかを考える際に重視するのは95.1%が「家族等の負担にならないこと」だそうですが、子ども世代の35~59歳の男女は、85.7%が「(親が)家族等との十分な時間を過ごせること」と回答。親子の考えにギャップがあることがわかりました。
人生の最期を「自宅」で迎えたいと答える人が多い一方で、実際には約8割の人が病院で亡くなっています。このことは、できるなら自宅で死にたいけれど現実問題としては難しい、という事実を表していると言えるでしょう。
高齢者の場合、それまで元気に暮らしていても、うっかり転んで大腿骨を骨折し、1ヵ月寝ていただけで、まったく歩けなくなってしまうことはよくあります。
⚫︎「私だけは大丈夫」と高を括ってはいられません。
そこで、どこを「終ついの棲家すみか」にするか、どこでどのように最期を迎えたいか、だれの世話になるのかも含めて決めておくことが、死ぬまでの「生」を充実させるためには重要になってきます。
⚫︎最期を迎えたい場所は自宅が6割、介護施設は3割
最期を迎える場所は大きく分けて、病院、介護施設、自宅です。特徴を簡単に説明すると次のようになります。
【病院】
医師や看護師が常駐しているため、いざというときにすぐ対応してもらえる安心感があります。しかし、延命のために無駄な治療を施される可能性が高いというデメリットもあります。
延命治療を拒否するリビング・ウイルを書いていても、家族や医師としっかり共有されていないと、自分が望む死に方をかなえることはかなり難しいと言っていいでしょう。
また、介護施設のように生活を重視する環境ではないため、面会の人数や時間に制限があって、終末期に家族と満足に会えない可能性もあります。特にコロナ禍が続く現在はそうです。
【介護施設】
看取り介護に対応している施設であれば、そこで最期を迎えられます。看取りというのは、治療による延命をせず、残された時間を充実させるために苦痛や不快感を緩和させつつ、最期の瞬間まで世話をすることです。
最近は、公的な特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)をはじめとして、民間の介護付き有料老人ホームや認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などでも看取りをしてくれるところはめずらしくありません。
介護施設の看取りは、介護スタッフのケアによって支えられています。終末期において、それなりに住み慣れた施設で顔なじみのスタッフに介抱してもらえるという安心感があります。
一方、ほとんどの施設では医師や看護師などの勤務は限定的であるため、夜間や緊急時に迅速な医療対応を受けることが難しいのがデメリットと言えます。
施設のなかには、いよいよ最期だというときに病院へ送る施設もあるので、確認が必要です。
【自宅】
住み慣れた環境で自由に過ごせて、最期を迎える瞬間は家族に看取ってもらえます。家族はもちろん、医師や看護師などの医療スタッフや介護スタッフ、ケアマネジャー(介護支援専門員)などの協力と連携が不可欠です。
看取りをしてくれる訪問看護も増えてきているので、おひとりさまでも在宅死は可能です。ただし、在宅看取りを希望している場合でも何かあった場合に救急車を呼べば、ほぼ100%、病院での延命治療に移行します。
2017年度の厚生労働省の調査では、約8割が人生の最期を「自宅」で迎えたいと答えています。厚労省よりサンプル数は少ないものの、貴重な資料として参考になるのが、日本財団が2020年に行った「人生の最期の迎え方に関する全国調査」です。
67~81歳の対象者に調査を行ったところ、死期が迫っているとわかったときに人生の最期を迎えたい場所として、58.8%が「自宅」、次いで33.9%が病院などの「医療施設」と答えています。自宅を選んだ理由の多くは、「自分らしくいられる」「住み慣れている」からでした。
一方、避けたい場所として42.1%が「子の家」を挙げているのが興味深い。人生の最期をどこで迎えたいかを考える際に重視するのは95.1%が「家族等の負担にならないこと」だそうですが、子ども世代の35~59歳の男女は、85.7%が「(親が)家族等との十分な時間を過ごせること」と回答。親子の考えにギャップがあることがわかりました。
人生の最期を「自宅」で迎えたいと答える人が多い一方で、実際には約8割の人が病院で亡くなっています。このことは、できるなら自宅で死にたいけれど現実問題としては難しい、という事実を表していると言えるでしょう。