「AI先進国」になれるチャンスが日本にも到来
東洋経済Online より 240212 井上 智洋:駒澤大学経済学部准教授
多くの日本人が抱える「デフレマインド」こそ、日本が世界的に1番になれない理由といえます
文章や画像、音楽などを自動的に生成する「生成AI」は、その進化が著しく、もはや「SFの世界」の話ではなくなってきました。
2023年12月には、アメリカ・インテルがパソコンでAIが効率的に使えるようになる半導体を正式発表。設備投資においても、AIの普及で通信企業がデータセンター(DC)の整備を急ぐなど、経済への波及効果も見られます。
このようなAIの経済効果や労働への影響について,駒澤大学経済学部准教授・井上智洋氏の最新著書『AI失業』より,日本がAI先進国になるために必要な施策についてご紹介します。
⚫︎生成AIの利用が盛んな日本
現在は、ChatGPTなどによってAIの世界が劇的に変わろうとしており、ある意味で日本にとってはチャンスが到来しています。
【図表を見る】ChatGPTへのアクセス数が多い国は?
図4‐5のように、ChatGPTへのアクセス数が多い国は、アメリカ、インド、日本の順番です。アンケート調査によってはChatGPTを使っている日本人は少ないというデータもありますが、「アクセス数」がデータとしてはもっとも客観的です。
このようなAIの経済効果や労働への影響について,駒澤大学経済学部准教授・井上智洋氏の最新著書『AI失業』より,日本がAI先進国になるために必要な施策についてご紹介します。
⚫︎生成AIの利用が盛んな日本
現在は、ChatGPTなどによってAIの世界が劇的に変わろうとしており、ある意味で日本にとってはチャンスが到来しています。
【図表を見る】ChatGPTへのアクセス数が多い国は?
図4‐5のように、ChatGPTへのアクセス数が多い国は、アメリカ、インド、日本の順番です。アンケート調査によってはChatGPTを使っている日本人は少ないというデータもありますが、「アクセス数」がデータとしてはもっとも客観的です。
そこを見る限り、日本は世界3位です。
ちなみに中国は、中国独自の言語生成AIを使っており、ChatGPTは使えません。
ちなみに中国は、中国独自の言語生成AIを使っており、ChatGPTは使えません。
たとえば、ChatGPTに「天安門事件とは?」と聞いたらもちろん答えてくれますが、中国の言語生成AIは答えてくれません。中国では、インターネットでも「天安門事件」が検索できないようになっています。
こうした障壁を「グレート・ファイアウォール」と言います。目に見えない万里の長城のような巨大なインターネットの障壁が中国全土を覆っていて、政府にとって不都合な情報にアクセスできないようになっているのです。
ChatGPTを使わせないことも、グレート・ファイアウォールの一種とみなすことができます。ChatGPTがもし中国で利用できるのであれば、中国がアクセス数でトップになる可能性があります。
いずれにせよ日本は、アメリカ、インド、中国に比べても、人口が少ないので、1人あたりの平均アクセス数を考えたら主要国で1位になるでしょう。少数のヘビーユーザーが過度にアクセスしている可能性もありますが、かなり利用されていることに間違いはありません。
⚫︎AI好きな日本人の国民性とドラえもんの関係性
日本で、ChatGPTのような言語生成AIに夢中になる人が多いのはなぜでしょう? 日本では以前から『ドラえもん』のような、人と友だちであるかのようなフレンドリーロボットが漫画やアニメで描かれてきました。
おそらく日本人は潜在的に、友だちのようなAI、自分とコミュニケーションができるAIが欲しかったのではないでしょうか? 『ターミネーター』のような、AI・ロボットが人間に反旗をひるがえす映画を作るアメリカとは対照的です。
実際、イーロン・マスク氏や、スティーブ・ジョブズ氏とともにアップルを創設したスティーブ・ウォズニアック氏は、2023年3月にAIの開発を一時停止すべきであると提言しました。それだけAIを脅威としてとらえている人がアメリカには多いのです。
ヨーロッパにも、物理学者のスティーヴン・ホーキング氏や哲学者のニック・ボストロム氏のように、AI脅威論を唱えた著名人が何人もいます。
それに対し日本では、AIの開発を停止すべきだと言う人はあまりいません。日本ではAI脅威論が少ないので、それゆえにチャンスだということです。
ChatGPTは、ビジネスパーソンに広く浸透しつつあるのに対して、画像生成AIは日本のオタク文化と相性がよいと言えます。画像生成AIは、同人誌的な2次創作に似たような面があります。人が作った画像をかき集めてきて、それを改良してまた新たな画像を作っているからです。2次創作そのものであるかのような創作活動をしている人もいます。
私のある知り合いは、アニメに登場する女性キャラクターの、たとえば浴衣を着ている姿などを画像生成AIで作って大人気になっています。その画像を2万円で売ってくださいという人まで現れるほどです。でも本人はあまり儲ける気はないそうです。
これはまさに同人誌的な2次創作を、今度は画像生成AIを使って楽しんでいるということになります。なお、2次創作については著作権的な問題があるのですが、黙認されている状況です。
⚫︎GPUなどを買う資金力が足りない
生成AIの利用という面では、日本はむしろ進んでいる面があるという話をしました。それでは、研究のほうはどうやったら推し進められるでしょうか?
今後、日本の企業や大学が、OpenAIと提携して共同研究をさせてもらえることもあるでしょう。そうすればノウハウが直接手に入るので研究がより早く進み、先端的なレベルに到達しやすくなります。したがって、このような動きは歓迎すべきです。
ただし、日本はAIに関わるノウハウや人材が不足しており、海外から取り入れる必要がありますが、もっとも足りないのは資金力です。
いまのChatGPTと同レベルの言語生成AIを開発するには、数百億円が必要だと言われています。特に、生成AIを動かすには高性能な「GPU」(グラフィック処理装置)がいくつも必要なので、それを購入するための資金がなくてはなりません。
私たちが持っている普通のパソコンで情報処理に使われているのは、「CPU」(中央処理装置)です。GPUは、元々コンピュータのグラフィックを描くために使われていた専用の処理装置です。
こうした障壁を「グレート・ファイアウォール」と言います。目に見えない万里の長城のような巨大なインターネットの障壁が中国全土を覆っていて、政府にとって不都合な情報にアクセスできないようになっているのです。
ChatGPTを使わせないことも、グレート・ファイアウォールの一種とみなすことができます。ChatGPTがもし中国で利用できるのであれば、中国がアクセス数でトップになる可能性があります。
いずれにせよ日本は、アメリカ、インド、中国に比べても、人口が少ないので、1人あたりの平均アクセス数を考えたら主要国で1位になるでしょう。少数のヘビーユーザーが過度にアクセスしている可能性もありますが、かなり利用されていることに間違いはありません。
⚫︎AI好きな日本人の国民性とドラえもんの関係性
日本で、ChatGPTのような言語生成AIに夢中になる人が多いのはなぜでしょう? 日本では以前から『ドラえもん』のような、人と友だちであるかのようなフレンドリーロボットが漫画やアニメで描かれてきました。
おそらく日本人は潜在的に、友だちのようなAI、自分とコミュニケーションができるAIが欲しかったのではないでしょうか? 『ターミネーター』のような、AI・ロボットが人間に反旗をひるがえす映画を作るアメリカとは対照的です。
実際、イーロン・マスク氏や、スティーブ・ジョブズ氏とともにアップルを創設したスティーブ・ウォズニアック氏は、2023年3月にAIの開発を一時停止すべきであると提言しました。それだけAIを脅威としてとらえている人がアメリカには多いのです。
ヨーロッパにも、物理学者のスティーヴン・ホーキング氏や哲学者のニック・ボストロム氏のように、AI脅威論を唱えた著名人が何人もいます。
それに対し日本では、AIの開発を停止すべきだと言う人はあまりいません。日本ではAI脅威論が少ないので、それゆえにチャンスだということです。
ChatGPTは、ビジネスパーソンに広く浸透しつつあるのに対して、画像生成AIは日本のオタク文化と相性がよいと言えます。画像生成AIは、同人誌的な2次創作に似たような面があります。人が作った画像をかき集めてきて、それを改良してまた新たな画像を作っているからです。2次創作そのものであるかのような創作活動をしている人もいます。
私のある知り合いは、アニメに登場する女性キャラクターの、たとえば浴衣を着ている姿などを画像生成AIで作って大人気になっています。その画像を2万円で売ってくださいという人まで現れるほどです。でも本人はあまり儲ける気はないそうです。
これはまさに同人誌的な2次創作を、今度は画像生成AIを使って楽しんでいるということになります。なお、2次創作については著作権的な問題があるのですが、黙認されている状況です。
⚫︎GPUなどを買う資金力が足りない
生成AIの利用という面では、日本はむしろ進んでいる面があるという話をしました。それでは、研究のほうはどうやったら推し進められるでしょうか?
今後、日本の企業や大学が、OpenAIと提携して共同研究をさせてもらえることもあるでしょう。そうすればノウハウが直接手に入るので研究がより早く進み、先端的なレベルに到達しやすくなります。したがって、このような動きは歓迎すべきです。
ただし、日本はAIに関わるノウハウや人材が不足しており、海外から取り入れる必要がありますが、もっとも足りないのは資金力です。
いまのChatGPTと同レベルの言語生成AIを開発するには、数百億円が必要だと言われています。特に、生成AIを動かすには高性能な「GPU」(グラフィック処理装置)がいくつも必要なので、それを購入するための資金がなくてはなりません。
私たちが持っている普通のパソコンで情報処理に使われているのは、「CPU」(中央処理装置)です。GPUは、元々コンピュータのグラフィックを描くために使われていた専用の処理装置です。
それがAIの処理にも適しているということで、今ではAIを動かすのに欠かせないハードウェアになっています。ほかにも、グーグルの開発したTPUをはじめとするAI用の処理装置がありますが、今のところGPUが広く利用されています。それゆえ、GPUを開発している企業であるエヌビディア社の株価が劇的に上昇していて、10年前の100倍以上になっています。
そういうこともあって、最近日本では、GAFAMに代わって「MATANA(マタナ)」という言葉が使われ始めています。これは、マイクロソフト、アップル、テスラ、アルファベット(グーグル)、エヌビディア、アマゾンの頭文字をとっています。比較的時価総額の低いフェイスブック(メタ社)が抜けて、それより時価総額が高いテスラとエヌビディアが入っているのです。
⚫︎日本の半導体産業の凋落
GPUの世界シェアは、アメリカのエヌビディアとインテル社、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)社の3社にほとんどが占められています。インテル社は、元々はCPUの最大手で「インテル入ってる」というCMで有名な企業です。AMD社もGPU以外にCPUも作っていて、インテルと競合しています。
残念ながら、CPUと同様にGPUでも日本企業の世界シェアはゼロに近いです。おまけに、CPUやGPUの材料となる半導体の世界シェアで、日本は最盛期の1988年には50%を超えていましたが、今では6%ほどに凋落しています。
経済産業省の予測によると、2030年頃には日本のシェアはほぼゼロに近くなります。
そういうこともあって、最近日本では、GAFAMに代わって「MATANA(マタナ)」という言葉が使われ始めています。これは、マイクロソフト、アップル、テスラ、アルファベット(グーグル)、エヌビディア、アマゾンの頭文字をとっています。比較的時価総額の低いフェイスブック(メタ社)が抜けて、それより時価総額が高いテスラとエヌビディアが入っているのです。
⚫︎日本の半導体産業の凋落
GPUの世界シェアは、アメリカのエヌビディアとインテル社、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)社の3社にほとんどが占められています。インテル社は、元々はCPUの最大手で「インテル入ってる」というCMで有名な企業です。AMD社もGPU以外にCPUも作っていて、インテルと競合しています。
残念ながら、CPUと同様にGPUでも日本企業の世界シェアはゼロに近いです。おまけに、CPUやGPUの材料となる半導体の世界シェアで、日本は最盛期の1988年には50%を超えていましたが、今では6%ほどに凋落しています。
経済産業省の予測によると、2030年頃には日本のシェアはほぼゼロに近くなります。
凋落の最初のきっかけは、1986年の「日米半導体協定」です。安い価格で半導体を輸出しないことや外国製品を20%輸入することなどがアメリカから日本に要求されたのです。
そのうえ,パソコンの普及で品質が悪くても安価な半導体が大量に必要になったのですが、台湾や韓国の企業のほうが日本よりもさらに安価な半導体を生産できるようになりました。
また、半導体製造のための工場を建てるといった設備投資には莫大な費用がかかり、日本はデフレ不況のただ中でそのような余裕はありませんでした。
そのうえ,パソコンの普及で品質が悪くても安価な半導体が大量に必要になったのですが、台湾や韓国の企業のほうが日本よりもさらに安価な半導体を生産できるようになりました。
また、半導体製造のための工場を建てるといった設備投資には莫大な費用がかかり、日本はデフレ不況のただ中でそのような余裕はありませんでした。
さらには、研究開発投資を減らしたために、技術革新が進みませんでした。ここでも、思い切った投資ができないというデフレマインドが足を引っ張っています。
それにしても凋落が劇的すぎると思われるでしょうが、これは半導体産業では「規模の経済」が働いているからです。すなわち、規模の大きな企業ほど、安いコストで商品を作ることができて有利という法則です。この法則が働いているために、規模が小さくなると競争において不利になり、ますます規模が小さくなるという悪循環が生じたのです。
⚫︎「規模の経済」が半導体産業の悪循環を生み出している
私は、企業は市場経済の中で自由にビジネスを展開すべきであって、政府が関与すべきではないと基本的には考えています。政府が支えるべきなのは国民の暮らしであり、個々の企業の儲けではありません。
ただし、いくつか例外があって、「生活必需品や戦略物資に関わる産業」と「規模の経済が働く産業」については、政府が関与したほうがよい場合があります。
それにしても凋落が劇的すぎると思われるでしょうが、これは半導体産業では「規模の経済」が働いているからです。すなわち、規模の大きな企業ほど、安いコストで商品を作ることができて有利という法則です。この法則が働いているために、規模が小さくなると競争において不利になり、ますます規模が小さくなるという悪循環が生じたのです。
⚫︎「規模の経済」が半導体産業の悪循環を生み出している
私は、企業は市場経済の中で自由にビジネスを展開すべきであって、政府が関与すべきではないと基本的には考えています。政府が支えるべきなのは国民の暮らしであり、個々の企業の儲けではありません。
ただし、いくつか例外があって、「生活必需品や戦略物資に関わる産業」と「規模の経済が働く産業」については、政府が関与したほうがよい場合があります。
生活必需品と戦略物資はかなりこうむっており、食料、石油や金属などの資源、兵器、そして半導体などです。こういったものを輸入にばかり頼り、非常時に輸入が途絶えたら、国民が飢えたり、国を守れなくなったりします。
こう考えていくと、戦前の日本が満州などに侵攻し、自給自足できるような広域経済圏を建設しようとした動機が、支配欲だけによるものではないことが理解できるでしょう。
しかし、今の日本は専守防衛を国是としており、私もむろん専守防衛に徹するべきだと思っています。そうであれば、経済安全保障の観点から、国がそういった産業を支援して自給率を可能な限り高めていく必要があります。
特に半導体は、パソコンやスマホばかりでなく、今や自動車やあらゆる家電製品にも使われていて、これなしでは現代的な生活を送ることができません。
こう考えていくと、戦前の日本が満州などに侵攻し、自給自足できるような広域経済圏を建設しようとした動機が、支配欲だけによるものではないことが理解できるでしょう。
しかし、今の日本は専守防衛を国是としており、私もむろん専守防衛に徹するべきだと思っています。そうであれば、経済安全保障の観点から、国がそういった産業を支援して自給率を可能な限り高めていく必要があります。
特に半導体は、パソコンやスマホばかりでなく、今や自動車やあらゆる家電製品にも使われていて、これなしでは現代的な生活を送ることができません。
それゆえ、半導体は「産業のコメ」とか「現代の石油」などと言われてきました。のみならず、兵器にも組み込まれているので、戦略物資でもあります。
さらに、あらゆる物理的なモノがAIやIoTによってスマート化されていくとするならば、今とは比べものにならない量の半導体が必要となります。第4次産業革命で主力になるのはAIですが、それを土台で支えるのは半導体なのです。
さらに、あらゆる物理的なモノがAIやIoTによってスマート化されていくとするならば、今とは比べものにならない量の半導体が必要となります。第4次産業革命で主力になるのはAIですが、それを土台で支えるのは半導体なのです。
したがって、可能であるならば、日本は国を挙げて半導体産業をよみがえらせるべきでしょう。
⚫︎「第4次産業革命」はAI×半導体で加速する
2022年8月にトヨタやNTT、ソニーなどが共同出資して、「ラピダス」という半導体メーカーが設立され、日本の半導体産業における最後の希望のように見なされています。そして2023年4月に、政府はラピダスに対して2600億円もの支援を決定しました。
ただし、ラピダスの成功は危ぶまれており、2ナノレベルという極小の半導体を量産する計画も無謀なものだと思われています。日本の半導体産業の復活は、困難を極めているのです。
可能であればGPUやそれに代わるAI用処理装置も国産できるようになったほうがいいでしょう。AIのベンチャー企業として有名な日本のプリファードネットワークス社は、独自のAI用処理装置「MNCore」を開発していますが、量産しているわけではありません。
⚫︎「第4次産業革命」はAI×半導体で加速する
2022年8月にトヨタやNTT、ソニーなどが共同出資して、「ラピダス」という半導体メーカーが設立され、日本の半導体産業における最後の希望のように見なされています。そして2023年4月に、政府はラピダスに対して2600億円もの支援を決定しました。
ただし、ラピダスの成功は危ぶまれており、2ナノレベルという極小の半導体を量産する計画も無謀なものだと思われています。日本の半導体産業の復活は、困難を極めているのです。
可能であればGPUやそれに代わるAI用処理装置も国産できるようになったほうがいいでしょう。AIのベンチャー企業として有名な日本のプリファードネットワークス社は、独自のAI用処理装置「MNCore」を開発していますが、量産しているわけではありません。
政府はせめて、優れた研究組織が生成AIの研究開発に必要なGPUを確保できるように資金を提供すべきでしょう。
経産省は、GPUを搭載したAIクラウドの設備に対し、68億円の補助金を出しています。このサービスは、さくらインターネット社が2024年1月から提供を予定しており、スタートアップ企業の活用が想定されています。こういった取り組みを拡充する必要があるのです。
⚫︎政府は2000億円くらいの予算を出すべき
私は、AIの研究開発を劇的に進めるために、政府が年間2000億円ほどの予算を組んでもいいのではないかと考えています。2023年度のAI関連予算が1000億円ほどで、2024年度の概算要求が1600億円ほどなので、2000億円というのはそれほど無茶な額ではありません。
経産省は、GPUを搭載したAIクラウドの設備に対し、68億円の補助金を出しています。このサービスは、さくらインターネット社が2024年1月から提供を予定しており、スタートアップ企業の活用が想定されています。こういった取り組みを拡充する必要があるのです。
⚫︎政府は2000億円くらいの予算を出すべき
私は、AIの研究開発を劇的に進めるために、政府が年間2000億円ほどの予算を組んでもいいのではないかと考えています。2023年度のAI関連予算が1000億円ほどで、2024年度の概算要求が1600億円ほどなので、2000億円というのはそれほど無茶な額ではありません。
それでも今よりも多くの予算があれば、開発環境の整備に充てられるだけでなく、世界各国から優秀な研究者を引き抜くことができます。
極端な話、世界中から根こそぎ優秀な研究者を引き抜くことができれば日本の圧勝です。
極端な話、世界中から根こそぎ優秀な研究者を引き抜くことができれば日本の圧勝です。
もちろん、そこまで横暴なことをすべきだとは思いませんが、先端的な研究ができるレベルには持っていく必要があります。
国内の優れた研究者を登用するのはもちろんですが、日本だけにとらわれる必要はありません。
中国がどうしてこれだけの科学技術大国にのし上がったのかを見ていくと、1つには世界中から研究者を引き抜いてきたからです。
中国がどうしてこれだけの科学技術大国にのし上がったのかを見ていくと、1つには世界中から研究者を引き抜いてきたからです。
これは、「千人計画」あるいは「万人計画」と呼ばれていて、当初はアメリカなどに留学した学生を中国に引き戻すための政策でした。
しかしそのうちに、中国人でなくてもいいということになり、ほかの国からどんどん研究者の引き抜きを始めたのです。
じつは、最初にそのような政策を採用した国はシンガポールです。私は中国を「大きなシンガポール」と呼んでいます。シンガポールは国が小さいので、ベンチャー企業的な発想で優秀な人材を世界中から集めて成功し、瞬く間に日本の1人当たりGDPを追い抜きました。
しかしそのうちに、中国人でなくてもいいということになり、ほかの国からどんどん研究者の引き抜きを始めたのです。
じつは、最初にそのような政策を採用した国はシンガポールです。私は中国を「大きなシンガポール」と呼んでいます。シンガポールは国が小さいので、ベンチャー企業的な発想で優秀な人材を世界中から集めて成功し、瞬く間に日本の1人当たりGDPを追い抜きました。
それを中国のような大国が真似て成功するのかという話なのですが、これが成功してしまったのです。
たとえば今、大学の世界ランキングで、北京にある清華大学は16位、北京大学は17位で、香港大学は31位です。日本のトップである東京大学は、そういった大学に抜かれて39位まで落ちています。特に清華大学の研究レベルは、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)を超えていると言われています。
日本もある程度は中国を見習って、ほかの国と摩擦を起こさない程度に世界中からAI人材を呼び込むべきだと思います。日本から中国への人材流出は深刻な問題でしたが、これまでさして意識されることがなく、ほとんどなんの手も打たれませんでした。
私の関わる経済学の分野でいうと、数年前に一橋大学の経済学の先生が香港工科大学に移ったことが話題になりました。年収が600万円から1500万円と2倍以上にアップしたうえ、マンションをあてがわれ、福利厚生も充実しているというのです。
たとえば今、大学の世界ランキングで、北京にある清華大学は16位、北京大学は17位で、香港大学は31位です。日本のトップである東京大学は、そういった大学に抜かれて39位まで落ちています。特に清華大学の研究レベルは、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)を超えていると言われています。
日本もある程度は中国を見習って、ほかの国と摩擦を起こさない程度に世界中からAI人材を呼び込むべきだと思います。日本から中国への人材流出は深刻な問題でしたが、これまでさして意識されることがなく、ほとんどなんの手も打たれませんでした。
私の関わる経済学の分野でいうと、数年前に一橋大学の経済学の先生が香港工科大学に移ったことが話題になりました。年収が600万円から1500万円と2倍以上にアップしたうえ、マンションをあてがわれ、福利厚生も充実しているというのです。
ところが現在では、習近平体制に対する警戒心から、中国に行くことを避ける人が増えています。いつ財産を取られたり、横暴な弾圧をされたりするかわからないという怖さがあるからです。
逆に、中国の金持ちが日本に逃げてきて、六本木辺りのタワーマンションの上層階に移り住むようなことすら起きています。そこに日本の勝機があると考えられます。
逆に、中国の金持ちが日本に逃げてきて、六本木辺りのタワーマンションの上層階に移り住むようなことすら起きています。そこに日本の勝機があると考えられます。
つまり、日本は安心安全で、政府に財産を取られることもなければ、政府を批判して捕まることはない、そういうことを売りにして、世界から優れた人材を獲得すべきでしょう。
⚫︎政府の姿勢にも変化の兆し
優れた研究者に対して破格の報酬を出すというのは、これまでの日本ができなかったことです。学者なんてどうせ道楽でやっているのだから、給料なんて安くていいという価値観すらあります。ある意味で正しいのかもしれませんが、それではほかの国に勝てません。
⚫︎政府の姿勢にも変化の兆し
優れた研究者に対して破格の報酬を出すというのは、これまでの日本ができなかったことです。学者なんてどうせ道楽でやっているのだから、給料なんて安くていいという価値観すらあります。ある意味で正しいのかもしれませんが、それではほかの国に勝てません。
政府の姿勢は、ようやく変わってきました。
文部科学省は、2024年度からAI分野の優れた若手研究者に年2000万円を支給します。目的は人材流出を防ぐことです。ですがそれは最低ラインで、さらに世界中から人材を呼び込むべきでしょう。
たとえば、年俸1億円で外国からトップクラスのAI研究者を10人ほど引き抜いて、東京大学の付近に住んでもらいます。それでもたった10億円しかかかりません。
文部科学省は、2024年度からAI分野の優れた若手研究者に年2000万円を支給します。目的は人材流出を防ぐことです。ですがそれは最低ラインで、さらに世界中から人材を呼び込むべきでしょう。
たとえば、年俸1億円で外国からトップクラスのAI研究者を10人ほど引き抜いて、東京大学の付近に住んでもらいます。それでもたった10億円しかかかりません。
彼ら・彼女らに週に1回だけ大学で講義を行い、残りの時間は研究に専念してもらいます。もちろん研究アシスタントには大学院生を雇います。
こうするだけで、日本の学生のレベルが上がるだけでなく、世界中の学生が優れたAI研究者を目当てに日本に留学します。そのうえで、AI系ベンチャー企業の立ち上げ支援を強化すべきでしょう。
こうするだけで、日本の学生のレベルが上がるだけでなく、世界中の学生が優れたAI研究者を目当てに日本に留学します。そのうえで、AI系ベンチャー企業の立ち上げ支援を強化すべきでしょう。
元々東京大学の周辺は「本郷バレー」と呼ばれていて、AI系ベンチャーが集まっています。それを拡充させて、シリコンバレーを超えるような街へと本郷を発展させてはどうでしょうか?
ここでみなさんは「シリコンバレーを超えるのは絶対無理だろう」と考えたかもしれません。でも、それこそがデフレマインドなのです。1980年代の日本人なら、「やってやろうじゃん」と思ったはずです。
ここでみなさんは「シリコンバレーを超えるのは絶対無理だろう」と考えたかもしれません。でも、それこそがデフレマインドなのです。1980年代の日本人なら、「やってやろうじゃん」と思ったはずです。
💋観光立国と言う政治や災害で容易くダメになる、適当な曖昧な事より、地についた科学立国こそが!