goo何気無い日々が心地よい安寧

何気無い日々が続く様に。生きていく事の大変さがカナン。ある種空気の様な存在になりたいもの。

🤖 SFの世界が現実に、JR西「人型ロボット」のド迫力  202111

2021-11-29 21:41:00 | 気になる モノ・コト

SFの世界が現実に、JR西「人型ロボット」のド迫力
   大坂 直樹:東洋経済記者  より 211129

 日本信号、JR西日本、ベンチャーの人機一体が開発したロボット「零式人機」(記者撮影)

 千葉県の幕張メッセで11月24〜26の3日間にわたって開催された「鉄道技術展」。国内唯一の鉄道技術に関する総合展示会で、今回が7回目。コロナ禍の中での開催となったが多くの来場者で賑わった。

 ドイツの大手ブレーキメーカー、クノールブレムゼのブースに設置された実物大の鉄道車両モックアップなど目玉展示は数多いが、中でも来場者の度肝を抜いたのが、日本信号のブースに展示されていた高所作業用の人型ロボットである。

 腕の長さは1.4m。体の幅は1.7mなので両腕を伸ばすと4.5mになる。足はなく、腰からの高さは1m。重量は650kgある。頭に相当する場所にはカメラが取り付けられており、これで空間を認識し、アームを使って作業を行う。離れた場所に設置されたコックピットに作業員が座ってロボットを操縦する。

⚫︎汎用人型重機「零式人機」
 このロボットの名前は「零式人機 ver.1.1」。日本信号、JR西日本、そして立命館大学発のベンチャー企業「人機一体」の3社が開発した汎用人型重機である。その姿形はまさにSF映画の世界から抜けだしたようだ。

 特撮ドラマやロボットアニメの世界において人間が操縦して動く人型ロボットといえば、「ガンダム」のようにレバーで操縦するタイプと、「ジャンボーグA」や「ダイモス」のようにロボットが操縦者の動きをトレースして動くタイプがある。

 零式人機はその中間だ。操縦者が頭を動かすと零式人機のカメラもその方向を向く。腕と指の操作はレバーで操縦する。もっとも、零式人機はガンダムやダイモスのように巨大ではないので、内部に人が乗り込むわけではない。

 会場では1時間おきに5〜10分程度、零式人機による実演が行われた。開始10分前くらいになると、青いジャンパーを着たスタッフがコックピットに搭乗して準備作業を行う。零式人機のカメラと連動するゴーグルを装着して、頭を前後、左右に動かすと、零式人機の頭も同じ方向に動き出した。そして、このスタッフがレバーを操作すると、零式人機の腕がぐいと伸びた。まるで本番前のウォーミングアップをしているようだ。

 そして実演本番。零式人機が行うのは高所への配管取り付けである。3本指のアームが右手で配管をつかんで、左手に持ち替えて高所に配管をはめ込む。作業には別のスタッフが立ち会い、零式人機の動きを監督している。配管を掴む際にちょっと時間を要した場面もあったが、この程度ならまったく問題ない。人の手なら数人がかりで行う作業が、零式人機なら操縦者1人で済むし、高所作業がなくなるため安全性も格段に高まる。

⚫︎人間が操縦する強み
「予定と違う場所に配管を取り付けてほしい」という指示にも零式人機はうなずいて対応した。あらかじめプログラムされた行動しかできないロボットとは異なり、臨機応変に行動できるのが人間が操縦する強みである。実演の合間には、ローラーを使って高架の柱を清掃するパフォーマンスも見せてくれた。実演の様子を見ていたJR西日本の広報担当者は「事業化されれば保守作業の効率化につながる」と興奮を隠さない。

 操縦者の動きは100倍に増幅され、片手50kg、両手なら100kgの重量を持ち上げられるという。逆にロボットの腕が何かにぶつかり動かせなくなると、それが操縦者にも伝わり腕を思うように動かせなくなるという。操縦者とロボットがシンクロしているのだ。

 零式人機には足がないが、コックピットに座った操縦者は足も動かしていた。零式人機の腰に当たる部分の動作を行うのだという。よく見ると操縦者が履いているブーツは市販のスキー靴だ。「ありものの組み合わせで造りました」と、人機一体・開発部スタッフの中村太一氏が笑う。

 実演を食い入るように見つめていた日本信号の徳渕良孝常勤監査役に感想を聞いてみたら、「私も操縦席に座って動かしてみたいなあ」という返事が返ってきた。子供の頃に思い描いていたロボットの操縦が今、目の前で実現しているのだ。

 現在のモデルは「完成度でいえば8合目」(中村氏)。とはいえ,残りの2合は困難を極めそうだ。まだ鉄道の現場における作業を行ったことはないため,人間のように繊細で複雑な作業ができるかは未知数だ。また,屋外での作業ともなれば防水,防塵対策を施す必要がある。

 そもそも、零式人機は高所作業を行う重機として開発されており、実用化の際には軌陸車などの作業用車両に搭載されることになるが、車両に載せて作業するには今のモデルはやや大きすぎる。
 そのため、現在はもう少し小型化した屋外仕様の「零式人機 ver.2.0」を開発中だという。「幅を1.3m程度に抑えるとともに重量も軽くしたい」(中村氏)。2021年度中にver.2.0を完成させ、その性能を十分に確認した上で屋外の鉄道現場での実証実験を行ってどこまで機能するかを検証し、そこでの知見を取り入れた後に製品化モデルの開発に乗り出すというのが、今後のスケジュールだ。

⚫︎人材難に悩むJR西が名乗り
 人機一体は2007年に設立された。当初の社名は「マン・マシン・シナジー・エフェクタズ」。日本語に直せば「人間と機械の相乗効果」という意味で、零式人機のコンセプトは創業当初から示されていた。2015年に現在の社名に変更した。

 その後、エイベックス系のファンドなどが出資し研究開発が軌道に乗り、さらに同社の技術を事業化するために手を組める会社を探していたところ、JR西日本が名乗りを上げた。

 その頃、JR西日本は線路や高架など鉄道インフラの点検・保守作業を行う人材確保に悩んでいた。近畿エリアでは日々100カ所以上で、およそ1500人の社員や建設会社作業員が保守作業に従事しているという。こうした作業は終電から始発までの夜間の限られた時間に行われるが、線路保守に従事する作業者は年々減少しており、働きやすい環境の整備を喫緊の課題と位置付けている。

 同社では終電時刻を繰り上げ、1日の作業時間を拡大することでしのいでいるが、将来はそれだけではまかないきれない可能性もある。作業を少人数で実施可能とする機械の導入や新規開発にも取り組んできたが、そんな折に人機一体の技術力と出会った。

 重労働で危険な高所における保守作業を機械に置き換えることができる可能性があるという点で、人機一体とJR西日本の思惑が一致した。ベンチャー企業に投資を行う同社の子会社・JR西日本イノベーションズが2020年5〜6月に人機一体に対して出資を行うとともに、JR西日本から社外取締役も派遣した。

 さらに2021年3月には日本信号も開発に参加することが発表された。同社が得意とするフェールセーフ技術やセンサー技術が零式人機に取り入れられるが、それ以上に同社に期待されているのは、メーカーとして零式人機の事業化の道筋を付けることだ。
 JR西日本は日本信号と2016年に業務資本提携を締結し、同社に3%出資するとともに共同で鉄道の安全性の向上、工事・オペレーション、メンテナンスの効率化などに取り組んでいる。零式人機の事業化を託す相手として日本信号は大きな役割が期待されている。

「零式人機の開発への参加が決まったときには社内がざわついた」と、日本信号の社員が話す。日本信号は駅案内ロボットや自動清掃ロボットも手掛けており、実際の現場で活躍中。
 しかし、どちらも箱型でありロボットというよりは同社がこれまで開発してきた自動改札機や自動券売機の延長線上にあるともいえる。その意味で人間の形をした零式人機は明らかに「ロボット」だ。ロボット事業への本格的な進出に社内がざわついたもの当然だ。

⚫︎「人型ロボット」でなく「人機」
 日本信号の塚本英彦社長は「もの作りのノウハウがあるのは当社だけ」と胸を張る。今回のver.1.1は人機一体の工場で開発されたが、将来の実用化モデルの開発は日本信号が担うことになる。

 JR西日本はソフトバンクと組んで自動運転・隊列走行BRTの開発を行うなど、近年、外部リソースを活用した新技術導入に積極的だ。「今までは自前主義でやってきたが、技術的にも限界がありスピード感にも欠ける。今後は専門技術を持つ相手と共同で積極的に新技術を開発していきたい」と長谷川一明社長は意気込む。

 一方で、人機一体の中村さんは「零式人機は汎用性があるので鉄道以外にも土木、建築などいろいろな分野への導入も考えられる」と話し、幅広い産業で零式人機が採用されることを夢見る。
 同社のモットーは「人型ロボットを造るのでなく、人機を造る」である。これまでのロボットといえば、ソフトバンクが開発した「ペッパー」のようにコミュニケーション用途のものや、自宅で使うおもちゃのようなものが主流だったが、人機一体が商用化されれば、現実世界は本格的なロボット時代を迎えることになる。鉄道の現場に実際に出て、人間が行っている作業をこなすことができるか。次のモデルの登場が楽しみだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 🏆質の高い研究を促進する賞金6400万円の新しい科学賞「アイ... | トップ | 🚶‍♂️ 一万歩歩くとダイエット効果はどのくらい?食べ物で見... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿