空気電池や燃料電池を低コスト化、白金を使わない新触媒の開発に成功
スマートジャパン より 211221
東北大学は2021年12月13日、安価で高性能な燃料電池・空気電池用の非白金触媒の開発に成功したと発表した。燃料電池などの低コスト化と高性能化への大きな貢献が期待される成果だという。
燃料電池や金属空気電池などの正極において、空気中の酸素を還元する酸素還元反応を促進する触媒として、白金やマンガン酸化物に代わる安価で高性能な電極触媒の開発が求められている。白金は高価で資源制約があり、マンガン酸化物は安価な一方、性能が不十分であるなどの課題があるためだ。
これまで代替の触媒として、触媒活性点となる元素を含む原料を高温で焼成することで炭化したカーボンアロイや、ナノチューブやグラフェンなどのナノ炭素を用いた電極触媒が提案されてきた。
しかしながらこれらの手法は不活性ガス下での高温プロセスなどが必要であり、プロセスコストが高いという課題があった。また、複雑な炭化の過程によりその化学構造を制御することが難しい上、得られた触媒の構造と活性の相関を理解するのに多大な労力が必要だった。
これまで研究グループでは、青色顔料の一種である鉄アザフタロシアニンを多層カーボンナノチューブ(MultiWall Carbon NanoTube、MWCNT)に担持することにより、アルカリ条件下で白金炭素触媒と同等以上の触媒性能が得られることを発見していた。この触媒は、自然界に存在するヘモグロビンやシトクロムcに含まれるヘムに類似した構造を持ち、中心の鉄原子が触媒活性点として機能する。しかしMWCNTは高価であるといった課題があるほか、触媒の分子構造が性能に与える影響については系統的な研究が待たれている状態だった。
今回研究グループは、鉄だけでなくニッケルや銅を中心金属とするアザフタロシアニンや、同じ鉄を含むアザフタロシアニンでも窒素原子の導入位置を変えた異性体触媒分子を合成し、これらを安価なカーボンブラックの一種であるケッチェンブラック(Ketjen Black、KB)に担持することで、その酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction、ORR)を系統的に評価した。
これまで研究グループでは、青色顔料の一種である鉄アザフタロシアニンを多層カーボンナノチューブ(MultiWall Carbon NanoTube、MWCNT)に担持することにより、アルカリ条件下で白金炭素触媒と同等以上の触媒性能が得られることを発見していた。この触媒は、自然界に存在するヘモグロビンやシトクロムcに含まれるヘムに類似した構造を持ち、中心の鉄原子が触媒活性点として機能する。しかしMWCNTは高価であるといった課題があるほか、触媒の分子構造が性能に与える影響については系統的な研究が待たれている状態だった。
今回研究グループは、鉄だけでなくニッケルや銅を中心金属とするアザフタロシアニンや、同じ鉄を含むアザフタロシアニンでも窒素原子の導入位置を変えた異性体触媒分子を合成し、これらを安価なカーボンブラックの一種であるケッチェンブラック(Ketjen Black、KB)に担持することで、その酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction、ORR)を系統的に評価した。
その結果、異性体を含む鉄アザフタロシアニンをKBに担持させた電極触媒が最も高性能であり,ニッケルや銅では還元反応の中間体である過酸化水素が多く生じることが分かった。
さらに、これら触媒のエネルギー状態の指標であるイオン化ポテンシャルを紫外光電子分光により測定したところ、触媒分子結晶と炭素に担持した状態では、鉄アザフタロシアニンのエネルギー状態が異なり、炭素担持状態でORRに好適な状態に調整されていることが分かったという。
この研究で得られた高活性触媒は、安価な触媒分子とKBから高コストな焼成プロセスを必要とせず作製できるため、白金やマンガン酸化物に代わる触媒として燃料電池や金属空気電池などの低コスト化と高性能化に大きく貢献できるものと期待できるとしている。
なお、今回の研究成果は、東北大学材料科学高等研究所の藪浩准教授(ジュニアPI, 東北大学ディスティングイッシュトリサーチャー、同多元物質科学研究所兼任)、北海道大学電子科学研究所の松尾保孝教授、電気通信大学の中村淳教授、および東北大学発ベンチャーであるAZUL Energyからなる研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「ACS Applied Energy Materials」のオンライン速報版に2021年12月15日(現地時間)に掲載された。
さらに、これら触媒のエネルギー状態の指標であるイオン化ポテンシャルを紫外光電子分光により測定したところ、触媒分子結晶と炭素に担持した状態では、鉄アザフタロシアニンのエネルギー状態が異なり、炭素担持状態でORRに好適な状態に調整されていることが分かったという。
この研究で得られた高活性触媒は、安価な触媒分子とKBから高コストな焼成プロセスを必要とせず作製できるため、白金やマンガン酸化物に代わる触媒として燃料電池や金属空気電池などの低コスト化と高性能化に大きく貢献できるものと期待できるとしている。
なお、今回の研究成果は、東北大学材料科学高等研究所の藪浩准教授(ジュニアPI, 東北大学ディスティングイッシュトリサーチャー、同多元物質科学研究所兼任)、北海道大学電子科学研究所の松尾保孝教授、電気通信大学の中村淳教授、および東北大学発ベンチャーであるAZUL Energyからなる研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「ACS Applied Energy Materials」のオンライン速報版に2021年12月15日(現地時間)に掲載された。