週30分の筋力トレーニングで寿命が変わる?研究結果でわかったこと
BAZAAR より 220414
近年、公衆衛生のさまざまな機関が、いつものフィットネスルーティンに筋力トレーニングを加えることの重要性を主張している。そして最近の研究では、筋力トレーニングが今の体の調子を整えるだけでなく、長生きにつながる可能性も示されているという。
これは、スポーツ医学専門誌「British Journal of Sports Medicine」のメタアナリシスで示された重要なポイント。この分析では、18歳から98歳までの約48万人が参加した16の研究からデータを収集。参加者は実践している筋力トレーニング量を自己報告するか、インタビューで質問に答えたという。
この研究の結果、30〜60分の筋力トレーニングを行なった人々は、すべての原因による早期死亡のリスクが10〜20%低いことが判明。また心臓病(46%)やガン(28%)を発症するリスクも減り、週に最大60分の筋力トレーニングを行なった人々は、糖尿病を発症するリスクも低いことがわかった。
筋力トレーニングが私たちの体にどのような影響を与えるのか、今知っておくべきことは以下の通り。
⚫︎今オススメの筋力トレーニングは?
2018年のアメリカ人に向けた「フィジカル・アクティビティ・ガイドライン」では、成人は有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて健康改善に取り組むことを勧めている。
内容としては,サイクリング,水泳,ウォーキングなどの中強度の有酸素運動を少なくとも週に150分行い,普段より強めの筋力トレーニングを少なくとも週に2回行うというもの。
ガイドラインでは、筋力トレーニングで脚、腰、背中、腹、胸、肩、腕など、全ての主要な筋肉群を動かすことを特に推奨。ここで指す筋力トレーニングには、ウエイトリフティング、レジスタンスバンド、腕立て伏せや腹筋などの自重トレーニング、ハードなガーデニング、いくつかのヨガポーズなどが含まれている。
⚫︎筋力トレーニングが「長生き」に役立つ理由
筋力トレーニングについては、骨密度向上や骨格筋量増加などのメリットがあるが、長生きの理由を示す研究はされておらず、関連性がわかっているだけ。それでも、専門家にはこれに関するセオリーがあるという。
「筋肉の強化は骨格筋量の維持に関連していますが、骨格筋量はグルコースの代謝に重要な役割を果たします」と話すのは、カリフォルニア州サンタモニカにあるセント・ジョンズがん研究所の医学部長・胃腸研究プログラムのディレクターを務めるアントン・ビルチク医師。「異常なグルコースの代謝は、心血管疾患とガンのリスク増加につながります」とビルチク医師は指摘する。(グルコース代謝は、体がグルコース=ブドウ糖を体のエネルギーに変えるプロセス)
認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(CSCS)兼管理栄養士のアルバート・マセニーさんは、筋力トレーニングで体脂肪を減らし、除脂肪筋肉量を増やすことができるとコメント。「これにより全体的な健康を促進し、減量にも役立つでしょう」とマセニーさん。肥満状態では、心臓病や2型糖尿病、ガンなど、さまざまなリスクがある、と彼は主張する。
ミシガン州立大学で運動学の教授を務めるジム・ピヴァルニック博士によると、筋力トレーニングの重要性については、有酸素運動など他の運動の重要性と“差異はない”とのこと。「筋力と持久力は、結合組織と骨の変性による筋肉の消耗や怪我を防ぐための鍵となります」とピヴァルニック博士。早期死亡のリスクが実際に低下するのは、筋力トレーニング(および他の運動)が心臓と血管の機能を改善し、コレステロールを低下させ、血圧を下げるためである可能性が高い、と彼は述べている。
筋力トレーニングは、有酸素運動とともに、「心血管疾患やガンの減少に関連しているかもしれない抗炎症効果をもたらす可能性があります」とビルチク医師。しかし、これには更なる研究が必要だと続けている。
⚫︎筋力トレーニングの取り入れ方
これまでのルーティンに筋力トレーニングが入っていなかった場合、ピヴァルニック博士は軽度のトレーニングやレジスタンスバンドから始めることを推奨している。
マセニーさんはプランクや腕立て、腹筋などの自重トレーニングを提案。「複雑なことをする必要はなく、機器を使う必要もありません」と述べている。テレビを見ながら踏み台昇降やスクワットなどの下半身を強化する筋力トレーニングをすることも可能。慣れてきたら、ウエイトを足してトレーニングしてみよう。
また、マセニーさんは週に30分のトレーニングなら目標を達成しやすいとアドバイス。週に5日行うとしたら、1日あたりは6分間という目安になる。
専門家たちの意見をまとめると、筋力トレーニングには健康上のメリットがあることは間違いなし。ただし、長生きにつながるかについては、今後さらなる研究が必要のようだ。
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。