長期エネルギー貯蔵技術(LDES)とは何か?再エネ活用に欠かせない7つの技術の動向
ビジネス+IT より 211004 編集協力:グローバルインフォメーション
長期エネルギー貯蔵技術(LDES)の技術開発が世界中で加速しています。
長期間かつ大容量のエネルギー貯蔵技術は、再生可能エネルギーによる不安定な電力供給に対し、安定性と信頼性をもたらし、電力需要の変化により柔軟に対応できるシステムの構築に寄与する可能性があります。
この記事では、米国の市場調査会社Power Technology Research(PTR)社発行の市場調査レポート「エネルギー貯蔵の世界市場:概要、詳細分析 (プロジェクト4500件、全122カ国・5地域、2015年~2020年)、建設中のプロジェクト情報 (2028年まで)」をもとに、長期的に脱炭素化された電力系統を実現するために必要なLDES(長期エネルギー貯蔵技術)で有望な7つの技術について詳細を紹介します。
さまざまなエネルギー貯蔵技術について解説します
さまざまなエネルギー貯蔵技術について解説します
⚫︎LEDSとは? 再エネ普及率8割を目指すのに必須の理由
太陽光発電などの再生可能エネルギーは、常にその電力系統において蓄えることのできるエネルギーの量と時間による制限を受けます。
これは、再生可能エネルギーの普及率を80%以上に高めるだけでなく、長期的に地球温暖化と気候変動抑制の目標を達成するために必要な脱炭素化された電力系統を実現する上で、大きな課題となっています。
この問題は、長時間にわたってエネルギーを蓄えられるシステムであるLDES(Power Technology Research社では、8時間を超える放電時間を持つシステムをLDESと呼んでいます)の導入により、解決することができます。
この記事では、揚水式貯蔵、液体空気エネルギー貯蔵、圧縮空気エネルギー貯蔵、フライホイールエネルギー貯蔵、熱エネルギー貯蔵、水素エネルギー貯蔵、そしてバッテリーエネルギー貯蔵などの有望なLDESについて紹介していきます。
⚫︎LDESに関する有望な7つの技術
LDESにはいくつか競合する技術があり,その中でも特に有望なものは下記のとおりです。
*バッテリーエネルギー貯蔵(リチウムイオン電池)
*水素エネルギー貯蔵
*揚水式貯蔵(PHS)
*液体空気エネルギー貯蔵(LAES)
*圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)
*フライホイールエネルギー貯蔵(FES)
*熱エネルギー貯蔵(TES)
それぞれの技術について、以下に解説をしていきます。
⚫︎リチウムイオン電池
新規の多くの再生可能エネルギープロジェクトにおいて、リチウムイオン電池やその他の種類の電池が蓄電設備として選択されてきていますが、一般的には長期的な貯蔵として必要な、4時間以上にわたる最大出力による送電を、コスト効率よく提供することは不可能でした。また、今後も再生可能エネルギーを完全に補完し、持続可能なエコシステムを実現するためには、非常に高いコストが必要になることが予測されています。
⚫︎水素
水素は一般に水の電気分解によって製造されますが、そこで使われる電気が再生可能エネルギーによって作られている場合は、グリーン水素と呼ばれます。水素は加圧された容器、塩や岩盤で作られた容器などに貯蔵できます。必要に応じて、水素を燃料電池(効率は最大50%-Energy Storage Associationによる)に変換するなど、コンバインドサイクル発電装置での発電用燃料として使用できます。
NextEra Energy社は、同社の既存の太陽光発電設備を利用して、20MWの電解槽で水素を製造する実証プラントを2022年に建設することを提案しています。その水素の一部は、Florida Power Light社のオキーチョビー発電所において、天然ガスの代わりに燃料としてタービンへ供給される予定です。
この問題は、長時間にわたってエネルギーを蓄えられるシステムであるLDES(Power Technology Research社では、8時間を超える放電時間を持つシステムをLDESと呼んでいます)の導入により、解決することができます。
この記事では、揚水式貯蔵、液体空気エネルギー貯蔵、圧縮空気エネルギー貯蔵、フライホイールエネルギー貯蔵、熱エネルギー貯蔵、水素エネルギー貯蔵、そしてバッテリーエネルギー貯蔵などの有望なLDESについて紹介していきます。
⚫︎LDESに関する有望な7つの技術
LDESにはいくつか競合する技術があり,その中でも特に有望なものは下記のとおりです。
*バッテリーエネルギー貯蔵(リチウムイオン電池)
*水素エネルギー貯蔵
*揚水式貯蔵(PHS)
*液体空気エネルギー貯蔵(LAES)
*圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)
*フライホイールエネルギー貯蔵(FES)
*熱エネルギー貯蔵(TES)
それぞれの技術について、以下に解説をしていきます。
⚫︎リチウムイオン電池
新規の多くの再生可能エネルギープロジェクトにおいて、リチウムイオン電池やその他の種類の電池が蓄電設備として選択されてきていますが、一般的には長期的な貯蔵として必要な、4時間以上にわたる最大出力による送電を、コスト効率よく提供することは不可能でした。また、今後も再生可能エネルギーを完全に補完し、持続可能なエコシステムを実現するためには、非常に高いコストが必要になることが予測されています。
⚫︎水素
水素は一般に水の電気分解によって製造されますが、そこで使われる電気が再生可能エネルギーによって作られている場合は、グリーン水素と呼ばれます。水素は加圧された容器、塩や岩盤で作られた容器などに貯蔵できます。必要に応じて、水素を燃料電池(効率は最大50%-Energy Storage Associationによる)に変換するなど、コンバインドサイクル発電装置での発電用燃料として使用できます。
NextEra Energy社は、同社の既存の太陽光発電設備を利用して、20MWの電解槽で水素を製造する実証プラントを2022年に建設することを提案しています。その水素の一部は、Florida Power Light社のオキーチョビー発電所において、天然ガスの代わりに燃料としてタービンへ供給される予定です。
オハイオ州のロングリッジでは,General Electric (GE)社がNew Fortress Energy社と共同で,GE社製タービンに水素と天然ガスを混合して使用するプロジェクトを進めており,ユタ州では三菱パワー社が発電所に水素燃料を組み入れるプロジェクトを複数進めています。
⚫︎揚水式貯蔵(PHS)
揚水式貯蔵(PHS)は最も古いエネルギー貯蔵技術で、現在最も広く採用されています。2019年の世界のエネルギー貯蔵のうち、158GW以上をPHSが占め、米国では公共セクターによる電力貯蔵容量の94%に上り、その容量は約21.9GWに達しています (U.S. Energy Department:米国エネルギー省)。
⚫︎揚水式貯蔵(PHS)
揚水式貯蔵(PHS)は最も古いエネルギー貯蔵技術で、現在最も広く採用されています。2019年の世界のエネルギー貯蔵のうち、158GW以上をPHSが占め、米国では公共セクターによる電力貯蔵容量の94%に上り、その容量は約21.9GWに達しています (U.S. Energy Department:米国エネルギー省)。
このLDES技術では電力需要が少ないときに、水を高い位置にある貯水池にくみ上げて位置エネルギーとして蓄え、電力需要が多いときには、高い位置にある貯水池の水を放出し、タービンを回して発電します。
世界の揚水発電の容量のほとんどは、EU(欧州),日本,中国,インド,韓国そして米国が占めています。欧州は30GWと最も多い容量を保有しますが、中国が最も急速に成長しており、2020年までに40GWの容量を確保することを目標としていました。
世界の揚水発電の容量のほとんどは、EU(欧州),日本,中国,インド,韓国そして米国が占めています。欧州は30GWと最も多い容量を保有しますが、中国が最も急速に成長しており、2020年までに40GWの容量を確保することを目標としていました。
メキシコ、中南米を含む地域ではEUより多くの水力発電が導入されていますが、それらの発電所には揚水式貯蔵設備は備わっていません。
⚫︎液体空気エネルギー貯蔵(LAES)
LDESの一つである液体空気エネルギー貯蔵(LAES)では、電力需要が低いときには空気を冷却して液化し、地上にある断熱タンクに貯蔵します。電力需要が高いときにはこの圧縮された空気を放出してタービンを駆動させ、発電します。
最初のLAESプラントは英国のグレーター・マンチェスターに建設され、MAN Energy Solutions社がターボ機械が採用されました。このLAES設備は50MWの発電容量を備え、2022年に運転を開始する予定です。
⚫︎圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)
圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)技術では、電力が余っているときに空気を圧縮し、地下または地上のコンテナに加圧して貯蔵します。電力需要があるときに、空気を暖めて膨張させ、タービンを駆動して発電することができます。
米国ではCAESを使ったプロジェクトがいくつか開発されてきましたが、現在稼働しているのはアラバマ州にある1基のみです。世界で初めて稼働した例は1997年にドイツで導入されたもので、定格出力は290MWでした。近年では2020年に中国で100MWの出力を備える設備が導入されました。
⚫︎フライホイールエネルギー貯蔵(FES)
フライホイールシステム(FES)は、モーターで回転させた回転体(ホイールやシリンダー)に運動エネルギーを蓄えるものです。そのエネルギーは、モーターを発電機として逆回転させることで電気エネルギーとして回収されます。
⚫︎液体空気エネルギー貯蔵(LAES)
LDESの一つである液体空気エネルギー貯蔵(LAES)では、電力需要が低いときには空気を冷却して液化し、地上にある断熱タンクに貯蔵します。電力需要が高いときにはこの圧縮された空気を放出してタービンを駆動させ、発電します。
最初のLAESプラントは英国のグレーター・マンチェスターに建設され、MAN Energy Solutions社がターボ機械が採用されました。このLAES設備は50MWの発電容量を備え、2022年に運転を開始する予定です。
⚫︎圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)
圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)技術では、電力が余っているときに空気を圧縮し、地下または地上のコンテナに加圧して貯蔵します。電力需要があるときに、空気を暖めて膨張させ、タービンを駆動して発電することができます。
米国ではCAESを使ったプロジェクトがいくつか開発されてきましたが、現在稼働しているのはアラバマ州にある1基のみです。世界で初めて稼働した例は1997年にドイツで導入されたもので、定格出力は290MWでした。近年では2020年に中国で100MWの出力を備える設備が導入されました。
⚫︎フライホイールエネルギー貯蔵(FES)
フライホイールシステム(FES)は、モーターで回転させた回転体(ホイールやシリンダー)に運動エネルギーを蓄えるものです。そのエネルギーは、モーターを発電機として逆回転させることで電気エネルギーとして回収されます。
貯蔵されたエネルギーの80%以上を回収できる高効率のフライホイールシステムは、蓄えられるエネルギーが限られるため、従来は周波数安定化や需要増加時のバッファーに使用されてきました。
⚫︎熱エネルギー貯蔵(TES)
熱エネルギー貯蔵では、熱や冷気の形で生成された熱エネルギーを,後に使用するために貯蔵することができます。熱せられた物質をシンプルなコンテナに入れて常温で保存することができ,エネルギーのロスなく,物質の化学ポテンシャルを長時間維持することができます。
⚫︎熱エネルギー貯蔵(TES)
熱エネルギー貯蔵では、熱や冷気の形で生成された熱エネルギーを,後に使用するために貯蔵することができます。熱せられた物質をシンプルなコンテナに入れて常温で保存することができ,エネルギーのロスなく,物質の化学ポテンシャルを長時間維持することができます。
TESの利用例として、集光型太陽熱発電(CSP)があります。ここでは、太陽光のピーク時に発生する余剰エネルギーを溶融塩の形で貯蔵します。夕方になると、その熱は蒸気に変換され、その蒸気がタービンを駆動して発電します。
TESの一種であるポンプ式熱電併給システム(PHES)では、2つの大きな熱容器に接続された蓄電エンジンを電気で駆動させます。エネルギーを貯蔵するために、エンジンがヒートポンプを駆動させ、冷えた容器から熱い容器へ熱を送ります。エネルギーを回収するには、ヒートポンプを逆回転させ、排熱を冷えた容器に送り込むという機械的な作業が行われます。
⚫︎これから注目すべき企業とその強み
この記事では、長期的に脱炭素化された電力系統を実現するために必要な長期エネルギー貯蔵技術(LDES)を紹介しました。
Power Technology Research(PTR)によると、LDESの技術革新につながる可能性のある、新たな電気化学の技術開発に取り組んでいる新興企業に注目することが重要であると言います。
特にスタートアップ企業であるForm Energy社は、硫黄溶液貯蔵システムを開発しているとされ、最近ではミネソタ州の電力会社Great River Energy社と1MWの系統接続型システムの開発について発表しています。このシステムは、実に150時間という長時間にわたって定格電力を供給する能力を持つといわれています。
その他、e-Zinc社、Eos社、ESS社、Invinity社、Primus Power社などの企業にも注目する必要があるでしょう。
■この記事は、米国の市場調査会社Power Technology Research (PTR) 社発行のレポート「Energy Storage Market Overview and In-depth Market Analysis covering 4500 Projects, 122 Countries and 5 Regions through 2015-2020 with Pipeline Projects till 2028( エネルギー貯蔵の世界市場:概要、詳細分析 (プロジェクト4500件、全122カ国・5地域、2015年~2020年)、建設中のプロジェクト情報 (2028年まで))」を基に同社が書いた記事をグローバルインフォメーションが再構成しています。
TESの一種であるポンプ式熱電併給システム(PHES)では、2つの大きな熱容器に接続された蓄電エンジンを電気で駆動させます。エネルギーを貯蔵するために、エンジンがヒートポンプを駆動させ、冷えた容器から熱い容器へ熱を送ります。エネルギーを回収するには、ヒートポンプを逆回転させ、排熱を冷えた容器に送り込むという機械的な作業が行われます。
⚫︎これから注目すべき企業とその強み
この記事では、長期的に脱炭素化された電力系統を実現するために必要な長期エネルギー貯蔵技術(LDES)を紹介しました。
Power Technology Research(PTR)によると、LDESの技術革新につながる可能性のある、新たな電気化学の技術開発に取り組んでいる新興企業に注目することが重要であると言います。
特にスタートアップ企業であるForm Energy社は、硫黄溶液貯蔵システムを開発しているとされ、最近ではミネソタ州の電力会社Great River Energy社と1MWの系統接続型システムの開発について発表しています。このシステムは、実に150時間という長時間にわたって定格電力を供給する能力を持つといわれています。
その他、e-Zinc社、Eos社、ESS社、Invinity社、Primus Power社などの企業にも注目する必要があるでしょう。
■この記事は、米国の市場調査会社Power Technology Research (PTR) 社発行のレポート「Energy Storage Market Overview and In-depth Market Analysis covering 4500 Projects, 122 Countries and 5 Regions through 2015-2020 with Pipeline Projects till 2028( エネルギー貯蔵の世界市場:概要、詳細分析 (プロジェクト4500件、全122カ国・5地域、2015年~2020年)、建設中のプロジェクト情報 (2028年まで))」を基に同社が書いた記事をグローバルインフォメーションが再構成しています。