goo何気無い日々が心地よい安寧

何気無い日々が続く様に。生きていく事の大変さがカナン。ある種空気の様な存在になりたいもの。

⚠️ 結局、日本の中高年はガソリンエンジン車とともに「逃げ切る」ことになるだろう 202204

2022-04-17 22:36:00 | なるほど  ふぅ〜ん

結局、日本の中高年はガソリンエンジン車とともに「逃げ切る」ことになるだろう
 Newsポストセブン より 220417


 スイカがモチーフのヘルメットをかぶり、オーバーオール姿で電動の原付バイクで旅するバラエティ番組『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』(テレビ東京)の見どころのひとつは、バッテリー残量が0%になったときに充電をさせてくれる近辺の民家や店舗などを探し回るところだろう。
 その慌てた様子はバラエティ番組なので楽しんで見られるが、自分が電動バイクや電気自動車を普段使いするかといえばどうなのか。SDGsに貢献する取り組みのひとつとして国策にもなり、各メーカーが急ピッチで開発をすすめるBEVを現在のガソリン車ユーザーはどう見ているのか、俳人で著作家の日野百草氏が聞いた。

 * * *

「BEVねえ、よくわかんないけど、電気でしか動かないんだろ。そんな大量の電気なんてどこで入れんのよ」
 都心から50kmほど離れた関東近郊、ガソリンスタンドで缶コーヒーを飲みながらテレビを見ている高齢男性に話しかけてみる。着の身着のままで軽トラのオイル交換待ち、農家も多いこの辺で軽トラは都会のママチャリ感覚だ。

「家で電気入れて、途中で止まったら大変でしょ、近所で入れさせてもらうわけ?」

 実に素朴な疑問、この「入れる」は充電の意味だ。もちろん、このガソリンスタンドに専用の充電設備はない。BEVとはバッテリーの電力のみで動く電気自動車。日本では約8000万台の化石燃料車(HV・PHV含む)が走っている。いまやHV(ハイブリッド車・ガソリンと電気の併用・HEVとも)やPHV(外部充電できるハイブリッド車・PHEVとも)など珍しくもないが、純然たる電気自動車であるBEVとなるとその中のわずか数万台といったところ。
 将来的には内燃機関による自動車を全廃し、このBEVによって、ガソリンを使わず電気のみで脱炭素を目指すとしている。

「テレビで見たな、スクーターで田舎走って『電気入れさせてください』ってやつ、あれ面白いな」
 その番組は『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』ではないかと話すと「そうそう、でも自分じゃやりたくないな」とのこと。確かに人気番組で有名タレントだからこそ成立する話で、「充電させて」と言って「どうぞ」という家も少ないだろう。またフル充電でも実用距離は20kmくらい(乗り方、地形にもよるだろうが)だろう。

「昔は家に『トイレ貸して』なんてのも来たけど、いまじゃおっかねえしな」

⚫︎充電設備じゃスタンドは食えないよ
 筆者の生まれ故郷も負けず劣らず関東の田舎だったのでよくわかる。1970年代,幼少のころは「トイレ貸してください」と何度か大人の人が来た。昔は当たり前のように案内したが,さすがに都会も田舎も関係なく,現代ではおいそれと赤の他人を家には入れないだろう。
 それはともかく、日本政府(菅義偉内閣)は2021年の衆議院本会議の施政方針演説で「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と表明した。それが本当ならあと10年ちょっとでガソリン・ディーゼルの新車は(もちろんHV・PHVも、理由は後述)順次、消えることとなる。外に出てスタンドの店主にも話を聞く。

「充電設備じゃ食えないよ、いまだってカツカツなのに」
 レギュラーガソリンは170円後半、補助金の効果はいまのところない様子。
「いろいろあるからね、補助金出たから下がるわけじゃないんだ。複雑なんだよ」

 本旨ではないのでここまでとするが、充電設備の計画はあるか。BEVやPHVを販売するディーラーの多くは充電設備を拡充している。

「ないよ。全額補助してくれたって嫌だね。あっても電気じゃ単価が安くて儲からない。30分とか充電なんて回転率も悪すぎる」

 バッテリーにもよるが急速充電でも30分から40分はかかる。家庭用コンセントなら10時間くらいだろうか(設備、車種にもよる)、BEVについてとにかく言及されるのが、この充電時間の長さである。

「まあ、ガソリン給油するのと同じ5分とか10分で充電完了になるくらい技術が進めばいいけど、俺が現役のうちにそうなるかね」

 BEVとは違うがFCV(水素で走る燃料電池車・FCEVとも)なら数分で済むがどうか。

「水素ステーションにする金なんかないよ」
 笑われてしまった。確かに水素ステーションなんて都心ですらレア、費用も数億円は掛かる。そもそもFCV自体が将来的にはともかく、現状は相当なレアキャラだろう。

 別の日、同じく関東近郊の中古自動車店のオーナー(個人経営)に話を聞く。

「リーフ(日産のBEV車)を引き取ったことはあったけど、うちでは手に負えないから業販に流しちゃったよ」

 2021年の乗用車販売台数は239万9862台、そのうちBEVの販売台数は2万1139台と100分の1もない。ましてその2万台のうち日産が約1万台、あとはテスラを始めとする外国車がほとんどである。後発のトヨタやホンダは約700台という現状だ。

「とにかく充電する場所が少ないからね。この辺は砂利駐も多いからさ、そんなところに充電器はなかなか置いてないよね、まして200Vだろう?」

 都市部のマンションや施設の一部にはBEV用の200V充電設備が導入され始めているが、今でもこの地域にかぎらず都市部以外は砂利駐、いわゆる砂利を敷いただけの駐車場や空き地を利用したロープを張っただけ、舗装しただけの青空駐車場も多い。

「マンションや団地だってこの辺じゃ充電設備なんて少ないよ。東京じゃ増えてるんだろうけど、車を一番使うのは田舎だからね、距離も乗るし」

 充電設備を設置するとなると「誰が負担するか」という問題が発生する。補助金で対処できるはずなのだが、ごく一部のBEVユーザーのために設置するとなると地権者はもちろん管理組合、全住民の理解を得るのはなかなか難しい現実がある。

「高速のサービスエリアと、あとはショッピングモール、ディーラーなら充電設備はあるけど、まだまだだね。個人的には距離がとにかく不安だな」

 距離の問題は技術の進歩と普及率が解決するのだろうが、前述のリーフでフル充電した際の可走行距離は400km(試験走行時)、十分じゃないかと思う人は都会の人か至便な場所に住む人だろう、北海道はもちろん雪国や山間部の住人もBEVで、というのは酷な話、暖房を使えば先の可走行距離は当たり前だが縮む。
 2020年12月、新潟県の関越道上り線で2000台以上が巻き込まれた立ち往生の大騒動は記憶に新しいが、BEVの場合ガソリンのように持ってきてすぐ給油、とはいかない。単独のガス欠ならぬ「電欠」もそうだろう。

⚫︎いまの40代から上はガソリンエンジン車で逃げ切りでしょう
「まあ国が決めたことだし、何十年後とかには全部電気(自動車)になるんだろうけど、俺はそのころ生きてないだろうし、生きてる間は普通にガソリンエンジンの中古車売るよ」

 非常に正直な意見で、先のガソリンスタンドのオーナーも「俺の代で終わりだから、このまま灯油とガソリン売るよ」と言っていた。石油や天然ガス、石炭などの化石燃料の廃止および長期契約禁止は各国、各地域によりばらつきがあるがおおよそ2040年から2049年ごろを予定している。都心の高齢者サークルで聞いても同様の回答だった。

「軽で十分よ。そこまで生きないし、生きてても免許は返納してるでしょうよ。いまだって免許をそろそろ返したらって娘がうるさいのに」
 そう言って笑う女性は70代半ば、確かに現状はガソリンエンジン車、せいぜいトヨタのプリウスに代表されるHVで済む話。別の60代男性もこう語る。
「いちいち不便な電気自動車にする必要なんかないですよ。それが便利になるころには私たちはあの世だ」

 もちろん冗談で笑い合うような雰囲気だったが、これは他人事ではなく筆者も今年で50歳、まあいつまで生きるかは知らないが、加齢による免許返納を加味してもガソリンエンジン車で生涯を終えるだろう。
 これが実のところ国内のBEV普及の最大障壁になるのではと思うのだが,「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」とする政府方針とは裏腹に,仮に80歳前後で寿命,もしくは免許返納とするなら現在の65歳以上の運転免許所有者2000万人そのものは消える。
 2049年とするなら筆者も入ってしまい、おおよそ4000万人の運転免許所有者が消えることとなる(令和2年度版、運転免許統計から独自に算出)。
 もっと長生きするかもしれないが、それこそ90代まで運転というのは現実的ではないし、例の池袋の事故ではないが控えるべきだと思う。

 また、ただでさえ30歳未満の自動車保有率は半数前後、二輪に至っては国産車新規購入ユーザーの平均年齢が54.7歳(日本自動車工業会・2019年度二輪車市場動向調査)という「中高年しか乗り物を買わない」という現状にあって、その中高年の大半がBEVの世に消えてしまう。
 もちろんこれはBEVに限った話ではなく、これから迎える内需を脅かす急速な人口減の話にもつながるが、2021年の出生率は84万人、彼らが免許を取得する2040年代、国内メーカーが現在の自動車ユーザーの主要世代とその数を収益面でリカバリーできるとはとても思えない。国内自動車メーカーの元エンジニアにこれらの話をしてみると笑って答えてくれた。

「いや、もっと簡単に考えましょうよ。ガソリンはあちこちで給油できるし数分で終わる、ガソリン車のほうが選択肢は多いし中古で安く買える車種もある、軽だってある。
 車検や修理、整備士も含めていまだにガソリン車が前提、日本の大半が地方で車は趣味より生活の足、そう考えると、ぜんぶ逆のBEVを選ぶ人っているんですかね、BEVの超高級外車はともかく、国産の安いので補助金あっても最低200万とか300万はするでしょ、買いますか?」

 確かに200万、300万出すならガソリン車(HV・PHV含む)のほうが現状は魅力的な車種がよりどりみどり。エコというだけでわざわざ面倒で選択肢も限られ、電気インフラそのものも未整備なBEVを選ぶというのはそうとうに意識の高い人、もしくは新しもの好きの人に限られるだろう。
 幸いにして日本の自動車メーカーは世界を制した丈夫で高性能なガソリンエンジン(内燃機関)を有している。すべてにおいて質も高い。私たちもその恩恵にあずかっているわけだが、このアドバンテージすら消えるのはとても怖い気がする。

「BEV車ばかりになれば充電待ちも増えるでしょう。HVは国内的に理想的ですが、あれも結局のところガソリン(もしくはクリーンディーゼル)使ってますからね」

 自動車における化石燃料の全廃となればHV(PHV含む)も消える。欧米や中国といったBEV先進国はHVにも否定的であり、実際にEUのガソリン車販売禁止(2035年を予定)にはHVも入っている。
 EUの方針が国際基準として通るなら、日本が唯一アドバンテージを持つとされるHVも消える。日本メーカーのBEV、FCV開発の挽回に期待したいところだが、欧米はもちろん中国、韓国は国策による強引ともいえるインフラ政策も手伝って遥か先を行っている。
 とくに中国の電気自動車メーカーの躍進はめざましく、SGMW、BYDといった日本では馴染みのない新興企業が世界市場の上位にいる。もちろん圧倒的な首位はイーロン・マスク率いる米テスラだ。

「資源のない日本にとって脱炭素って不利だと思いますよ。仕方のない話ですが、さっきお話していた国内のインフラ面も含めて遅れたためにHVでいくしかなかった。旧来の日本車が優秀過ぎたのもあったと思いますし、国内の人口減が決定的な状態で既存顧客を捨てられないというのもあると思います。いまの40代から上の方々はガソリンエンジン車を生涯使っても問題ないでしょうからね、逃げ切りというか」

 幸い、と言っていいかわからないが、寿命にしろ免許返納にしろ、現在の中高年から上はBEVとそれほど付き合わずに済むだろう。
 そもそも言い方が難しいが、BEVも含めた「2050年カーボンニュートラル」を宣言する内閣の平均年齢そのものが61.8歳,それでも次世代のために尽くしているのだ,と考えたいが「今だけ金だけ自分だけ」が跋扈して久しい近年の政治を見るにつけ正直、信用しづらい。

「環境関係の補助金や助成金は美味しいですからね。それはBEVも同じでしょう。政治の道具にもなっているようにも思います」

 これは本旨ではないため割愛するが、とにかくBEVという命題に絞って考えれば車種の充実や補助金よりも脱化石燃料の社会を前提にしたインフラの整備、それに移行することに対する国民の理解と安心を確保することが先なのではないか。

「日本は電力も不足していますからね、今後さらに不足するのに脱原発、火力発電もいずれ禁止になるかもしれない、それですべてを電気自動車って、どうするつもりなのでしょうね」

 資源もなく,脆弱な日本の電力事情で将来的に完全な脱化石燃料,BEVを進められるのか。
イギリスはこれから原発を8基、フランスに至っては14基(!)計画しているが日本はどうするのか。
 ロシアのウクライナ侵略が長引けば、資源の乏しい日本はさらなる買い負けと資源の高騰に苦しむだろう。この戦争により欧州のグリーンディール路線もさっそくあやしくなってきた。主義主張で電力は賄えない。BEVが増えても肝心の電力が不足しては本末転倒だ。
 広大な国土はもちろん資源大国でもある中国はBEVやFCVでも構わないのだろうが、日本にとってはディスアドバンテージでしかない気がする。せっかくの世界に誇るガソリンエンジン技術も捨てざるを得ないとは。

「でも企業は政治家なんかより先を見てますよ、日本の自動車メーカーがBEVで立ち遅れたくないのは海外で売るためですから、国内需要なんて将来的な柱には入ってないでしょう」

 なるほど、2050年でもうひとつ付け加えるなら日本の人口は1億人を切る。そのうちの約60%は65歳以上の高齢者である。日本の自動車メーカーはユーザーそのものが減り続けることの決まっている国内より、国外で生き残りを賭けている、ということだろう。

 なんだかもう、BEVがどうこうでない気がする。実のところ、化石燃料禁止と脱炭素に懐疑的な人たちは大きな観点で日本の将来を不安視しているのかもしれない。
 お国によって事情は様々なはずなのに、何でも世界に、とくに欧州に迎合することが、本当に資源の乏しい日本のためになるのだろうか。


【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 🌕 2022年4月の月の出 立待月 ... | トップ | 実はスギと違う?「ヒノキ花粉... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿