閑雲孤鶴の日々  - Fire生活者の呟き -

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物語日本史

2011年12月05日 | 書評 歴史
物語日本史/平泉 澄/講談社学術文庫/1979

著者の「少年日本史」を上中下に3分割して再発売された本である。

少年日本史は、著者原稿段階では、歴史的仮名遣いだったが、出版段階では
現代仮名遣いに変更されたそうだが、これは歴史に関する著者の思い入れを現している。

次に、見出しを見て、気づくことだが、ぬけている時代がある。あえてぬかしたのであろう。
つまり、著者はぬかした時代の歴史的価値を認めないということを意味する。

一  國家建設
二  神武天皇
三  皇  紀(上)
四  皇  紀(下)
五  神  代(上)
六  神  代(下)
七  日本武尊
八  神功皇后
九  應神天皇
一〇 繼体天皇
一一 聖徳天皇(上)
一二 聖徳天皇(下)
一三 大化改新
一四 天智天皇
一五 藤原京
一六 平城京
一七 記紀、風土記
一八 萬葉集(上)
一九 萬葉集(下)
二〇 大  佛
二一 和気清麻呂
二二 坂上田村麻呂
二三 最澄と空海
二四 平假名
二五 片假名
二六 古今集
二七 竹取物語
二八 源氏物語
二九 延喜式
三〇 菅原道真
三一 延喜、天暦
三二 藤原氏の全盛
三三 八幡太郎義家
三四 御三條天皇
三五 院  政
三六 保元の亂(上)
三七 保元の亂(下)
三八 平治の亂
三九 平家の全盛
四〇 源三位頼政
四一 平家の都落
四二 源義經(上)
四三 源義經(下)
四四 源頼朝(上)
四五 源頼朝(下)
四六 承久の御計畫(上)
四七 承久の御計畫(下) 
四八 北條時宗
四九 後醍醐天皇
五〇 楠木正成
五一 建武の中興
五二 吉野五十七年(一)
五三 吉野五十七年(二)
五四 吉野五十七年(三)
五五 吉野五十七年(四)
五六 室町時代
五七 織田信長
五八 豊臣秀吉
五九 徳川家康
六〇 徳川家光
六一 山鹿素行
六二 山崎闇齋(上)
六三 山崎闇齋(下)
六四 本居宣長
六五 水戸光圀
六六 井伊直弼
六七 橋本景岳
六八 吉田松陰
六九 孝明天皇
七〇 明治維新
七一 西郷隆盛
七二 明治天皇
七三 二大戰役
七四 大東亞戦争

次に、この本のはしがきについてであるが、実に感動的な内容である。
こんな感動的な歴史教科書的文献がほかにあっただろうか?

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http://www.1-em.net/sampo/Nihonshi/PC/index.htm
はしがき
日本の少年よ!我が愛する皆さんよ! 私は今、皆さんに、大切な贈物をしようとしているのだ。それは何か? 即ち此の「少年日本史」だ。之を贈ろうとする考を、私は前々からいだいていた。
それは二十年近く前に、ある中學校で、急に講演をした時に始まる。私は云った。「皆さん! 皆さんはお氣の毒に、長く敵の占領下に在って、事實を事實として教えられる事が許されていなかった。今や占領は終った。重要な史實は、正しく之を知らねばならぬ」。こう云って、二、三の重要な歴史事實を説いた。生徒一千人。その千人の目、二千の瞳は、私が壇上にある間は、壇上の私に集中し、壇を下りた時には、壇下の私に集中した。かえる歸ろうとして外へ出た時、生徒は一齊に外へ出て私を取卷いた。彼等は何も云わぬ。只穴のあくほど私を見つめるのみだ。私は自動車に乗った。車は生徒に取卷かれた。四、五人の生徒は、自動車の屋根の上へ這い上って來た。車はしばらく動きがとれなかった。此の感動以來、私は眞實の歴史を、ひろく日本の少年、皆さんに語りたいと思いつづけて來た。機會は途に到來した。今や私は、皆さんに語りたいと思う事を、少年日本史一冊にまとめ、之を皆さんに贈る事が出來た。皆さん、どうか之を受け、之を通讀して下さい。
皆さんは日本人だ。皆さんを生んだものは、日本の歴史だ。その顔、その心、その言葉、それは皆幾百年前からの先祖より受けついだものだ。それを正しく受けついだ者が、正しい日本人だ。
從って、正しい日本人となる爲には、日本歴史の眞實を知り、之を受けつがねばならぬ。然るに、不幸にして、戰敗れた後の我が國は、占領軍の干渉の爲に、正しい歴史を教える事が許されなかった。占領は足掛け八年にして解除せられた。然し歴史の學問は、占領下に大きく曲げられたままに、今日に至っている。從って皆さんが、此の少年日本史を讃まれる時、それが一般に行なわれている書物と、大きく相違しているのに驚くであろう。
皆さんよ、人の貴いのは、それが誠實であるからだ。誠實は一切の徳の根本だ。その誠實を守る爲には、非常な勇氣を必要とするのだ。世の中には、自分の慾の爲に、事實を正しく視る事の出來ない人もあれば、世間の人々を恐れて、正しく事實を述べる勇氣のない人も多い。今後の日本を携うべき少年の皆さん、敗戰の汚辱を拭い去って、光に充ちた日本の再興に當るべき皆さんは、何よりも先ず誠實でなければならぬ。そしてその誠實を一生守り通す勇氣を持たなければならぬ。日本の歴史は、さような誠實と勇氣との結晶だ。凡そ不誠實なるもの、卑怯なるものは、歴史の組成に與る事は出來ない。それは非歴史的なるもの、人體でいえば病菌だ。病菌を自分自身であるかのような錯覺をいだいてはならぬ。
私は今、数え年七十六歳だ。從って本書は、皆さんへの、最初の贈物であって、同時に最後の贈物となるであろう。私は戰で疲れ切った心身に、ようやく残る全力をあげて、一氣に之を書いた。
その原稿一千枚。それを私は歴史的假名遣で書いた。それが正しいと信ずるからだ。然し皆さんは學校で、現代假名遣しか學んでいない。よって時事通信杜は、皆さんの讀みやすいように現代假名遣に改めたいと希望した。私は他日、日本が正しい日本にかえる時、必ず歴史的假名遣にかえるに違いないと信じつつ、しばらくその申入を容認した。
昭和四十五年秋九月     
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再刊本はしがき

    花を追ひて 二十日旅して 思へらく
      日の本は猶(なほ) ひろくありけり

昭和三十年の春 九州より山陰へかけて、各地を巡遊した時の実感を、私は斯様に歌ひました。戦は悲運にも終わったとはいふものの、山河の秀麗依然たるのみならず、人々の心はあたたかく雄雄しく、昔に異ならぬを喜んだのであります。その後15年を経て、少年日本史を著すに及んで、知る、知らぬ、数多くの人々に歓迎せられ、共鳴せられました事は、いよいよその感を深めたのでありました。それはまことに、桜の花。色いまだ褪せず、日本魂(やまとだましひ)猶剛健なるを信じせしめるに、十分でありました。その後、不幸にして、初め之を出版した時事通信社の方針が変り、合意の上、契約を解除しましたが、今回、皇學館大學出版部の好意に依り、再刊の運びに至りました。願わくはひろく海内に流布して、正気の復活に貢献出来ますように。かように祈りつつ、再び之を純真なる日本の少年に贈るのであります。
表紙の絵は、旧刊と区別する為に、あらためて羽石(はねいし)画伯にお頼みしましたところ、御多用中にも拘らず快く之を容れて、十一歳の少年北條時宗が、将軍の御前に於いて、小笠懸(こかさがけ)を命ぜられ、駿馬を駈って、見事に的を射あてた英姿を描いて下さいました。その御好意に對し、厚く御礼申上げます。
昭和四十八年初冬     平泉 澄(ひらいずみ きよし)

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教科書裁判を起こしたり、反日自虐史観を捨てられない歴史学者よりは、平泉先生のこの本にて私は歴史を勉強したかった。

また、この本は、インターネットで、有り難いことにほぼ全文閲覧できるサイトがある。
http://www.1-em.net/sampo/Nihonshi/PC/index.htm

さて、この本の書評だが、通常の本の場合は、著者、編集者あるいは出版関係者によるなりすましブックレビューが見受けられるが、この本はどうもそんなことはなさそうだ。
つまり、この本の価値を認めている人が、それだけいるということなのだ。
私の知人でも愛読書としている方が多い。
かく言う私もこの本を知人から何度も薦められて知ったのだ。


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アマゾンブックレビューから引用

37 人中、35人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 日本の物語は面白い!歴史が苦手でもお気になさらず。, 2005/11/7
By koitch - レビューをすべて見るレビュー対象商品: 物語日本史(上) (講談社学術文庫 348) (文庫)
小室直樹博士は、皇国史観は3つあるという。ひとつは崎門の学(江戸時代の思想)、
ひとつは戦前の教科書、もうひとつが平泉澄である。
しかし辞書などを見ると、専ら3つ目の意味で使われている。
では平泉澄とはいかなる人物なのか。それはこの本だけでは分からない。
しかし、この本は平泉澄の、明日の日本を担う少年への遺書である。
平泉澄を知りたい人も、平泉澄から教わりたい人も、必読だ。
誰かが言うには、これは平泉澄の研究の集大成でもある。実際、建武中興や、
徳川時代の崎門の学や国学の変遷は、やけに詳しい。
例えば幕末では、坂本龍馬が出てこなかったりと、寂しい部分もあるが、
崎門の学などによって維新の説明をしているというのは、実にありがたい。
今の日本は幕末に似ているが、幕末に存在した思想は、明治には既に
失われてしまっていたからだ。青少年にはこの本と、幕末の志士の伝記に
ぜひとも触れていただきたい。御歴代天皇と多くの人物が中心の歴史は本当に面白い。
あくまで歴史観のひとつではあるが、甘く見ないように。
和歌が多いという指摘はもっともだが、昔の日本人の心を知るには、和歌が手っ取り早い。
しかし、和歌の現代語訳・解説が少ないのは難点だ。
「平泉寺 物語日本史」でグーグル検索すると、序文が読めます。参考に。
偉人を死と共に雲散霧消させることは、国家にとって限りない損失である。
ひとりでも多くの先人を知り、お手本としていこう。この本は修身の教科書とも言えるかも。
そして、武士中心の武士史観、武士道の本という気もする。大和魂を持とう。

11 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 日本史を総覧する「良いコンパス」になる, 2006/12/25
By 聞く耳 "Fox Three" (熊本県熊本市) - レビューをすべて見る
(トップ500レビュアー) レビュー対象商品: 物語日本史(上) (講談社学術文庫 348) (文庫)
 一応サーッと日本史を総覧してみたいという人にはオススメの本。何せ質・量とも適度で,歴史のアウト・ラインを把握してみたい初心者には打って付けだ。特に日本の神代の歴史から解き明かしている点などが他の本には見られない目新しい部分。それが正しいかどうかは読書が判断し,自分なりに調べて欲しい。この本ではそんなに的外れな事は言っていないはずだ。一応の目安にはなる。神話など,神代の事について,現実的に「当時の人々がどういう常識のもと暮らしていたのか」を知る手がかりになると思う。他のこのシリーズは上・中・下と有るので,揃えて読んで欲しい。

19 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 憂国の若人の必読書, 2007/2/12
By 天壌無窮 - レビューをすべて見るレビュー対象商品: 物語日本史(上) (講談社学術文庫 348) (文庫)
 文章は読みやすく、分かりやすい。そして、面白い。筆者の優れた筆致を通じて、我が国が生み出した偉大な人々の姿が生き生きと浮かび上がってくるからである。日本史を始めから学ぶ人には是非読んでもらいたい。
 我が国が皇室を中心として建国され、そしてそれゆえに豊かな国土と優れた国民性をはぐくむことができた、ということがよく理解できる。いたずらに外国とその思想にばかり憧れ、あげくに道徳や人間関係の崩壊を招いている現代日本。この本を少しでも多くの若者が読み、我が国の国柄と己の日本人たることに目覚め、我が国を再建することに力を尽くしてくれることを望む。

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