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“福島の魔女狩り”に加担しないためには? 「福島第一原発廃炉図鑑」
一部引用
――廃炉に関する状況は、東京電力や政府のほか、新聞やテレビでも頻繁に報じられています。
しかし、あまりにも情報が多くて、ついていけない。だから、「もういいや」と諦めてしまう人も多いのではないでしょうか。
そうですね。3・11まわりを追っていると、「情報が隠蔽されている」「情報公開が進んでいない」という語りをよく聞きますが、
起こっている事態の背景にあるのが全く逆のことであるのに気づいていない人も多いでしょう。
事態を混乱させているのは「情報不足」ではなく、明らかに「情報過多」です。福島第一原発やその周辺地域に関する情報
を少しでも調べれば、ネットで公開されているだけでも膨大な書類、データが存在していることに気づきます。
放射線の状況、働いている人の労働環境、周辺地域がいかに急速に変化し続けているのか。
ただ、私たちの多くはそんなことは知らない。調べたこともない。それなのに「情報が足りない」と言う。
これは私たち「受け手/オーディエンス」が情報の洪水の中で溺れていることを示しています。溺れて必死にもがきながら「水をくれ」と叫んでいる。
一方、情報の「送り手」たる東電や省庁側は「現状、知りうる情報は細かく全部ネットで公開しています」と言う。これでもかというぐらいに水を放出しているわけです。
一言で言えば、情報がいくらあるからと言って、それが知識として伝わるかは別だということです。
見る側に伝わっていないなら、伝えたことにならないですよね。
それらの情報を「送り手」と「受け手」の間にたって、第三者として整理することも、この本でやりたかったことです。
例えば、「いまでも何かあったら、福島第一原発は再び危機的な状況になりえると思うか?」という質問に、どんな情報をつかって、
どう科学的に答えられるかを考えてみましょう。『福島第一原発廃炉図鑑』では、「廃炉を知るための15の数字」を挙げ、
それぞれの数字を知ることで何がわかるかを紹介していますが、このなかの、「福島第一原発1〜3号器の原子炉を冷却するために、
1時間あたり何㎡ほどの水が入れられているか」という数字がヒントになります。