何故、この本を読もうと思ったのか?
著者の父上が、あの「たそがれ清兵衛」の著者・藤沢周平だから。
その藤沢周平がシングルファーザーだったから(その後、再婚)。
「たそがれ清兵衛」は、シングルファーザーである(その後、再婚)。
著者・遠藤展子さんは幼い頃に母上を亡くされている。
だから、『もしかしたら、自分の娘が考えている事、感じている事が分かるんじゃないか?』と思ったからだ。
妻が亡くなったその時、そばにいたのは幼稚園年長さんの娘だけ。
娘には当時の状況は聞くことは出来ない。そう、怖くて聞く事ができない。
恐らく、これから一生涯、私から聞くことはないだろう。
ただ、彼女自身が語りたくなったときには、覚悟して聞くつもりだ。
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愛娘が「母のいない環境」をどう考え、どう思っているのか?
その感情の僅かでも分かればといつもいつも考えている……。
そんな状況下で、この本に巡り会った。
前半は父・小菅留治(藤沢周平の本名)の素敵な思い出。
終盤は「生と死」を見つめたエピソードだ。文章自体は読みやすい。
「父と娘」の似たもの同士の関係は、藤沢ファンでなくても楽しめる。
ただ、当初の目的だった「母を亡くした娘」の気持ちは、藤沢氏が再婚した為にこっちの予想より少なかった。
藤沢氏はその後再婚され、お相手の方は「母と娘」の関係も立派に構築されたようだ。
あぁ、俺もこんな再婚ができるのだろうか……。
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本の帯にはこう書いてある_____
生涯、「普通が一番」と言い続けた父。
何気ない日常が宝物だった---
若くして「妻の死」を経験した藤沢周平が言う「普通が一番」。
凄く良く分かる。私も痛感する。
そうなんだよ、「何気ない日常」は宝物なのだ。私はそれに気付くのが遅すぎた。
その大切さは、失わないと分からないのだろうか……。