Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

最先端のネットワークと「尾張様御用」

2005-06-10 | IT
 6/6から,6/10まで,幕張で, Networld + Interop (N+I) が開催された.
 N+I は,コンピュータネットワークの世界では,日本の業界最大のイベント(セミナーと展示会)である.
 
 色々みどころはあるが,ネットワークシステムの設計や運用を生業とする者にとっては,例年会場に敷設されるネットワーク: ShowNet とそれを管理するNOC (Network Operation Center) の機材や構成が注目の的の一つである.なぜなら,それが,今日の最新機器の縮図となるためだ.それも,それは,机上のシステムではなく,展示会期間中,会場全体で,インフラやデモのために実際に動作する,非常に大規模なネットワークシステムである.

 今年も,NOCのメインの機器のコーナーには,最新の高速ネットワーク機材が使われていた.しかし,その機材の中で,ひときわ目を引いたのは,あるネットワーク機器に張られていた「尾張様御用」と書かれた「三葉葵」の御紋つきの札であった.(記念に,撮影しようと思ったが,NOCの機材のコーナーは「撮影禁止」なので断念した.)

 事情が判らないひとには,ただのインチキにみえたかもしれないこの「尾張様御用」のお札は,実はインチキではない.実際に NOCの管理チームのメンバー の中に, 尾張徳川家の22代目となる人物:徳川義崇氏 ,すなわち本物の「尾張様」が参加しているのだ.実際に6/8に会場で,義崇氏を御見かけした.
 実は義崇氏は,日本のUNIXとネットワークの業界では有名な存在だ.私は昔から義崇氏を知っているが,義崇氏は私のことは覚えていないだろう.今回,ご本人に確認したわけではないが,おそらく,御札が張られていた機器は,義崇氏の管理担当のものだと思う.


 I+N は,海外からの参加者も沢山いる,海外からきたネットワークエンジニア達が,NOCのあの御紋つきのお札に気づいたらどう思っただろうか?,また彼らは周りの日本人にどんな質問をしただろうか?大変興味深いところだ.
 まさか,「将軍」のご親戚が,ネットワーク管理をしているとは思わないだろう?


 


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ICPFセミナー第3回「テレビ局側から見た通信と放送の融合」 おしらせ

2005-05-20 | IT

  情報通信政策フォーラム(ICPF) から,早速,第3回セミナーのお知らせです.

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第1回と第2回のセミナーでは、通信と放送の融合が技術的に可能になっているに
もかかわらず、制度的な障害のためにテレビ番組のIP配信が自由にできない現状
が明らかになりました。最大の障害は著作権、特にテレビ局が番組の再配信を許
可しないことにあります。

このように新しい技術の発展を阻害することは、テレビ局にとっても好ましいこ
ととは思えませんが、彼らの本当のねらいはどこにあるのでしょうか?また、ど
うすればこうした障害を乗り越えて、通信と放送の融合した新しいメディアは可
能になるのでしょうか?今回は、放送業界にくわしい吉井さんにテレビ局の考え
方を解説していただき、政策提言の方向を考えます。

講師:吉井勇(月刊『NEW MEDIA』編集長)
モデレーター:池田信夫(ICPF事務局長)

日時:6月16日(木)19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料:2000円
    ICPF会員は無料(会場で入会できます)

申し込みはinfo@icpf.jpまで電子メールで

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どうして,自分が購入したPCでのTV録画が「私的複製」ではないとされるのか?

2005-05-20 | IT
 5/19の夜は, 4/23の記事 で紹介した, 情報通信政策フォーラム(ICPF) の第二回セミナーに参加した.前回につづき,今回も盛況で,活発な意見の交換があった.


 話題は,テレビ放送のキー局と, 「録画ネット」 を題材にした,「ハードディスク録画サービスと著作権」である. 
 セミナーの内容は,近日中に, ICPFの Web サイト に,議事録として公開されるはずなので,詳細はそちらを参照してほしい.


 さて,今回のセミナーで,はっきり,わかったことは...

  1) 日本のテレビのキー局は,内容の如何にかかわらず,テレビ(地上波)のコンテンツが,コンピュータやネットワークの世界で取り扱われることを恐れているらしいこと.

  2) 日本のテレビのキー局(およびキー局が放送するコンテンツに著作権をもつ人たち)は,どのような形態であれ,自分たちのコンテンツを,キー局やその関連会社等以外のもとで,ビジネスに利用されることを,(有料であっても)許すつもりがなさそうであること.

  3) 海外のイベント等の放送権の契約には,放送サービスの範囲に地域的な制約があるらしい.しかし,その契約は,視聴者である個人が,日本で受信した放送(コンテンツ)を自分のコンピュータをつかって,その地上波が届かない地域,例えば別の国にあるもう一つの自分のコンピュータにネットワーク経由(sshやVPNなどの暗号化された通信によってプライベート性は担保された状態)で送り,そこで放送を視聴する,というような現実の状況について想定していないということ.
 
 これは,技術的には非常に簡単であって,すでに彼方此方で実際に行われている. 今回のテーマとなった 「録画ネット」 はそれを支援するために日本で客が買ったPCサーバーをあずかるサービスである.
 アンテナやルータなどの設備を共用したら「私的複製」からはずれるというのであれば,すべて個人で買い取った設備としても大した金額ではない.また,一般には,PCサーバーの管理者権限のIDやパスワードを,PCをあずかってくれる人や会社に開示する必要もない.純粋にPCサーバーをあずかって,電源を供給してくれるだけで良いのだ.
 よく考えてみると,もちろん,おなじ方法で,録画機能付きのPCをあずかってくれる友人などが米国にいれば,10万円ぐらいの初期投資と,月に50-60ドルぐらいの経費で,米国のテレビ番組を日本でも観ることができそうだ.これは,仕事や趣味の分野によっては,個人でも十分に検討に値する投資であろう.
 つまり,オリンピック,サッカーのワールドカップ,F1などのイベントを,すべて個人のPCサーバーでまかなうのは(大元の放送地域が世界各地なので)簡単ではないが,特定の外国のテレビ番組を日本国内でいながらにして視聴するのは,その国に友人知人その他,自分のPC(テレビ録画機能付きのもの)をあずかってくれる人がいれば,良いだけということだ.

  4) 1)~3) にかかわる議論に関して,日本のテレビのキー局の幹部は,広告主の製品を購入する可能性のある視聴者の利益や,間接的な広告主の不利益については,全く考慮していないように見えること.

  5) テレビのキー局の幹部やキー局の顧問弁護士は,少しオタクの高校生や理工系の大学生でも理解しているレベルの,コンピュータとインターネットについての技術や,その技術によってすでに実現されているソリューションについて,技術的,社会的に理解していないらしいこと.

  6) 放送と通信に関わる係争を担当する裁判官(判事)の大半も,上で述べたようなこ(技術と事実)とについて理解していないと思われる状況であること.


 5/18の記事にも通じるが,官僚だけでなく,裁判官や,弁護士にも,早急に理工系出身者をふさなければ,日本では「科学的な正義が行われる」ことは,どんどん難しくなっているように思う.


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情報通信政策フォーラム

2005-04-22 | IT
 4/22の夜は, 情報通信政策フォーラム の最初のセミナーに参加した.

今回のセミナーは 「長野県栄村にみる通信と放送の融合」 というタイトルで,長野県で行われている,TV地上波の有線放送とインターネットの仕掛けを使ったIPマルチキャストによる配信の概要と,それにまつわる様々な問題についての解説があった.
 東京,文京区,東洋大学白山キャンパスの60名ほどの教室で,立ち見が出るほどの盛況だった.講演のあとの議論も活発で非常に勉強になるセミナーだった.

 一般の視聴者の立場からみると,CATV業者だろうが,ネットワーク業者だろうが,TV番組の再配信については,全く同じだと思うが,どうも放送業界では,そうではないらしい.今日はっきり判ったことは,総務省,文化庁とも,甚だ無責任であるということだ.
 「放送と通信の融合」にかかわる,法的問題は,郵政民営化の前に,先にかたづけてほしい問題だと思う.

 私は,これを機会に 情報通信政策フォーラム に正式に個人会員として入会申し込みをした.
 
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並列・分散処理時代の常識 -グーグル・データセンターの秘密-

2005-03-07 | IT
 2005/3/4のCNET-Japanに 「いま明かされる、グーグル・データセンターの秘密」という,ちょっと興味をひくタイトルの記事がでていた.そのポイントは「...その洞察とは「PCはクラッシュする」というものだ。 」,「...ハードウェアのコストを検討していた同社のエンジニアが、強力なプロセッサを8基以上搭載するようなハイエンドサーバを数台購入するのに比べ、もっと簡単なつくりの「コモディティ」サーバを何十台も購入するほうが、はるかに安上がりなことに気付いたからだ。」ということだが,これら,私にとっては,特に目新しい話しではない.しかし,独自のファイルシステム,データの冗長化,障害対策ソフトウェアなどの話しは「さすがGoogle」と思わせるものである.
 PCの並列処理による大規模システムは,PCのCPUが32bit仕様のものになってからは,一部では「当たり前のこと」として認識されていたことだ.私のように,その昔,本来なら大型計算機でやらせるようなシミュレーションをPCや小型のWSでやってきた人間からみると,「将来,必ずPCの並列分散処理で,大型機を超える計算ができるようになるはずだ」というのは「歴史的な必然」であったといえよう.
 特に,この数年は,ネットワークの高速化,オープンソースの並列処理支援のミドルウェア,PC用の64bitCPUなどのおかげで,一昔まえなら,20-40億円のスーパーコンピュータがなければできなかった処理が,PCを数台ネットワークでつないで並列処理させるだけで簡単にできるようになった.事実, スーパーコンピュータの計算速度ランキングのTop20のうちの7つまでは,市販のPCサーバーを沢山並列に接続したシステムによるものだ.
 しかし,日本のSI業界,特に業務システムの構築の世界では,これらの「技術的な常識」はあまり知られていないし,本来はHWの性能や信頼性の議論にアプリケーションの分野は関係ないはずなのに,技術計算での最新技術やノウハウは業務システムとは関係ない話しと考えられている.(たぶん,日本のSEやそのマネージャの半分以上が所謂「文系」の出で,ハードウェア,基本ソフトウェア,技術計算等の世界に疎いことが少なからず関係していると思う.).また,いまだに,ブランドで,物理的な安心や性能が担保されると考えているビジネスマンも多い.
 その意味で,この記事は,普段「日経コンピュータ」を主な情報源にしているような,情報システム担当の部長,事業部長クラスの人に,是非一読していただきたい内容であると思う.
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ITの省エネルギー -トランスメタの行方-

2005-01-24 | IT
 低消費電力CPUの開発会社のTransmeta は, 経営支援を受けられる戦略的パートナー を探していると報じられている.
 同社は,一時期, ライセンス事業に特価してCPU開発からは手を引く可能性 も伝えられていた.いまのところは,製品ラインを縮小して,従業員のリストラなどと並行して,経済的支援をうけられる戦略的パートナーを探していこうという戦略のようだ.
 元来の,X86互換の低省電力CPUという着眼そのものは,そう悪いものではなかったと思う.しかし,IntelやAMDが,Transmetaの製品に刺激され,それまでの自社CPUよりも"比較的低消費電力な"製品を出してきたことによって,性能と低消費電力性のバランスにおいて,IntelやAMDの対抗製品との差が出しにくい状態になってからは,差別化が難しくなっていたように見える.
 ソフトウェアの開発の容易さから,ユビキタス,情報家電などの組み込み製品にも高性能なX86互換のCPUもどんどん使われているし,また,組み込みシステムでの高性能と低消費電力へ相反する要求はどんどん上がっている.日本では,昨年, NECが技術提携 しており,その成果は今年の何らかの製品に反映されてくるだろう.
 省エネルギーというと,発電や冷暖房,交通システムなどに注目しがちだが,ITの省エネルギーも重要な課題である.低消費電力CPU技術の本当の勝負はこれからと言えるかもしれない.
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Mac mini 登場!

2005-01-13 | IT
 かねてから噂だった Mac mini が,サンフランシスコで始まった Macworld Conference&Expo 2005 でついに発表された.デザインについては,賛否両論あるだろうが,このコンパクトな Mac mini の米国での価格が499 USD (日本では,55,800円) からとなったことは大変喜ばしいことだと思う.長い間,ユーザから「Macは高いコンピュータ」だと理解されていたが,これからは新たな認識となるだろう.
 以前にiMacがモデルチェンジしてユニークな液晶ディスプレー付きになったときにも,一部の業界アナリストらは,ディスプレーを別売りにした胴体だけの低価格のエントリーモデルを発売すれば,それがAppleの新規ユーザ取り込みに大きく貢献するはずであることを強く主張していた.しかし,Appleの経営陣は長くその意見を黙殺していたように見えた.そのことに関して,今回の Mac mini の発表は,これまでMacを使っていない沢山のユーザがAppleの直営店やAppleのWeb SiteからiPodを購入するようになったことで,それらの新しいユーザに対して「手頃な価格のMac」あるいは「iPodの母艦となるようなcoolな単体のPC」がAppleから提供されることの意義にAppleの経営陣がやっと気がついたということだろう.
 しかし,この Mac mini は,単なる「安くて小さなMac」なだけでなく,「世界で最も手頃な価格」な「高性能RISC-CPUを搭載した汎用計算機」あるいは「ロボストなUNIXベースのワークステーション」でもあるのだ.今後は,教育や研究の現場で,Mac mini を大量導入するところも出てくるだろう.
 今回,Mac mini と同時に発表された,Appleとしては初めての USB メモリタイプの iPod shuffle も人気をよびそうだ.今月末には,銀座や心斎橋のApple Storeで,Mac mini と iPod shuffle をセットで買ってそのパッケージを見せながら帰るのが音楽とITに敏感な人の定番となりそうだ.
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