Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

「自由なソフトウェア」のためのフォーラムのお知らせ

2005-05-30 | Software

 6月の SEA(ソフトウェア技術者協会) & FSIJ(Free Software Initiative Japan) 合同フォーラムのお知らせです.

......................................................................


開 催 案 内

SEA & FSIJ 合同フォーラム
~開発最前線シリーズ: uimのこれまでとこれから~
~リポート: CodeFest日本2005~

主催
ソフトウェア技術者協会(SEA)
フリーソフトウェアイニシアティブ(FSIJ)


***************** 開 催 要 領 *****************

1. 日時: 2005年6月18日(土曜日) 13:00~15:00

2. 場所: 東京都文京区本駒込ニ丁目28番8号
文京グリーンコートセンターオフィス
18階 産総研 グローバルITセキュリティ会議室

交通:
*都営三田線千石駅より徒歩4分(A1またはA4出口)
*JR山手線駒込駅より徒歩10分
*JR山手線巣鴨駅より徒歩12分

地図:
   http://www.ipa.go.jp/about/ipajoho/location.html


3. 講演内容

・テーマ: uimのこれまでとこれから

話者: 徳永 拓之

多言語入力ライブラリuimの大まかな構造と特徴、最近実装された機能、今後
の課題などについて説明する。また、後半ではかな漢字変換エンジン用辞書を
分散メンテナンスするためのツールについての構想も少し取り上げる。


・テーマ: CodeFest日本2005報告

話者: 鈴木裕信、g新部裕 (FSIJ)

さる6月3日から6月4日にかけて開催された「CodeFest日本2005」の報告と今後
の日本における活動についてのディスカッションを行なう。


4. 参加費: 無料


5. 申込み方法:下の申込用紙に必要事項をご記入の上、
SEA SIGOSS 事務局 <sea-sigoss-office@media.osaka-cu.ac.jp>まで
E-Mailでお申込みください。

......................................................................
To: SEA SIGOSS 事務局 <sea-sigoss-office@media.osaka-cu.ac.jp>
Subject: [参加申込]SEA & FSIJ Forum
--------------------
SEA & FSIJ 合同 Forum (Jun. 2005) 参加申込書

※氏名(ふりがな): ( )
所属:
連絡先郵便番号:
連絡先住所:
※Tel:
Fax:
※E-Mail:
※種別(該当欄を黒四角(■)に変更してください):
 □ FSIJ会員(正/賛助) (会員No. )
 □ SEA会員(正/賛助) (会員No. )
 □ OSSAJ会員(正/賛助) (会員No. )
 □ JLA会員
□ 一般
先頭に"※"がある項目は必須項目です。他はオプショナル項目です。
......................................................................
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この数日は,南関東では,埋め立て地や高層ホテルはさけようか...

2005-05-29 | Environment
 民間の天文台で,長年,FM電波の変動と地震活動の関連現象を観測研究(VHF電波伝播観測による地震前兆研究)している, 八ヶ岳南麓天文台 地震前兆観測研究センター から,「5/27前後4日に南関東圏でマグニチュード7級の地震が発生する可能性」についての情報が出ているという記事を,週刊FRIDAY 2006.6.10 号で読んだ.
 八ヶ岳南麓天文台の情報は,過去にも何度かメディアでもとりあげられていて,2003年の9月の千葉県南部を震源とする地震のときは,発生時期が少しずれた(遅れた)だけで,だいたい予測どおりだったことを思い出した.
 八ヶ岳南麓天文台 Webサイトの最近の記述によると,様々な間接的な観測妨害活動が行われていること,事情を知らない人からの不条理な電話問合わせ等への対応の負担があること等から,今後は,一般への情報公開はしないことにしたらしい.

 google で少ししらべたら,電波と地震前兆との関連では, 行徳高校 自然科学部 でも,地震前兆電波観測のWebを立ち上げてている.こちらは,計測データのグラフなども出ていて興味深い.また,付属のblogの「ちきうの気持ち」 5/28の記事 は,非常に冷静だと思う.(顧問の先生の記述かなぁ?)

 私は地球物理の専門家ではないが,「(地震などと関連した)地殻の大きなひずみが,電磁波を発生したりして,それが大気中である周波数の電波に影響を与える」という八ヶ岳南麓天文台所長の串田嘉男氏の説は,原理的には理解できる.
 実験をみたことがあればするとすぐにわかるが,石や岩に大きな圧力をかけて粉砕すると,結構な電磁波が観測される.地震ほどのエネルギー地殻に変動があるときは,相当の電磁波が発生するだろう.プレートのずれなどによる地震の場合,実際に地殻が動く(すべる)まえに地殻にはとても大きな力が加わっていいるはずなので,そこでの地殻の歪みが電磁波として,地震の前に観測されるのかもしれない.


 いずれにしても,しばらくは,千葉,東京,神奈川方面では,埋め立て地や,高層ホテルなどは,避けた方がよいかもしれないと思う.

 幕張メッセの敷地は,埋め立て地だったはずだ. 「幕張メッセのそのむかし」 というサイトによると,元々の海岸線はだいたい京葉線のあたりだそうだ. イベントの予定がある人は,「地震があるかもしれない」ことを頭に入れておこう.


 
コメント (3)
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杉並病!

2005-05-26 | Environment
 きさらぎけいすけ氏の 5/25のblog に, 「第8回全国化学物質過敏症患者の会」 「杉並病」 に関する記事があった.

 私は,小学校3年の秋から修士を出るまで,中野区に住んでいた(区内で数回引っ越し)ので,杉並はお隣の区であり,杉並区民である友人や知人も沢山いる.しかし,「杉並病」については,ほとんどしらなかった.
 「杉並病」あるいは「杉並シンドローム」とは,1996年頃から東京都杉並区の都清掃局杉並中継所井草森周辺の住民が,視神経異常,呼吸器の異常,皮膚の異常,発汗,その他の様々な化学物質過敏症に類似した健康被害を訴え続けている問題である.
杉並不燃ごみ中継所が原因物質の発生源ではないかという住民運動が起きている.
 すでに,被害者支援グループなどによって,ある程度疫学的な研究も行われており,問題の原因と疑われている不燃ゴミ中継所健から半径750mの範囲での被害状況については,だいぶはっきりしているらしい.

 しかし,「廃棄物系化学物質による健康被害者支援科学者グループ」によれば,以下のような状況にある.
-----------------
 杉並病は廃棄物処理にかかわる行政が起こした大気汚染被害である。すでに第28回、29回の発表会で報告し、「人間と環境」(1)で被害の原因について紹介した。不燃ゴミの圧縮過程で起きたこの事件は国の公害等調整委員会が「化学物質を特定せずに杉並不燃ゴミ中継所との因果関係を認めた」にもかかわらず、なぜかその時期を稼働から5ヶ月しか認めなかったために現在も稼働中であり、新たな被害者が発生している。杉並区では平成15年度の環境白書で影響がないと公表しており、区議会議員のなかには「杉並病」すら否定している者がいる。このことを受けて一般区民の中にはすでに被害が収束したと考えている人がいる。また、杉並区の安全宣言を信じて全国で同様な施設が建設されている。しかし、重大な落とし穴がある。現在の環境を守る法律、特に大気に関しては抜け穴だらけなので、環境基準や条例が守られているといっても被害がないことにはならない。重要なのは被害の実態調査を行政が実施しないだけなのである。さらに問題なのは世界では当たり前の「化学物質過敏症」が環境省によって否定され、健康保険が適用されていないことである。シックハウスはさすがに厚生労働省や他の省庁も認めることとなり、指針値や基準も設けられ、一部の病院では被害者に健康保険も適用されているとのことである。

 このような社会的環境で杉並病の被害者は移住派も含め、現在、精神的、身体的、経済的に限界状態にある。声をあげる力も残されていないように見える。なお、この事件で賠償を受けた人はいない。
-----------------
(http://www.suginamibyo.com/ より引用)


 つまり,国,都,区ともに「被害の存在を公式に認めていない」ということのようだ.また,2000年に「硫化水素が原因物質」であるとの都の見解が出されたが,結局,問題の詳細は解明されていない.
 東京都には,「東京都環境科学研究所」というりっぱな研究所があるので,本来,政府あるいは環境省の政治的意図とは異なるスタンスで,原因究明ができるはずなのだが,そうならないのは,都知事やその側近が「物理」「化学」「生物」や「大気」あるいは「化学物質過敏症」について,基本的な知識を持ち合わせていないことがネックになっているのかなと思う.

 きさらぎ氏の blog の中で,
----------------
春の芽吹きの時期の新芽や若葉に、ゴミ中継所から出るヒラヒラした小さなものがびっしりついてとても気持ちが悪いと言っていた。写真には写らないので信じてもらえず、困っているようだ。きっと透明な高分子化合物なのだろう。
----------------
 ...という記述があったが,実際に何かの物質が葉っぱに付着して肉眼で見えるなら,まず,現物のサンプルを10セットぐらい,日時,場所のメモとともにガラス瓶などにいれて保存して,それを,しかるべきところで調べてもらいことができる.
 また,最近のデジカメは,400-500万画素のCCDを搭載した高解像度で近接撮影できるものもあるので,普通に肉眼で見えるものは,撮影して画像の資料として捉えることができるはずだ.


 すでに,半径750mの範囲の地域について疫学的調査がされているとすると,その倍の半径1500mぐらいの範囲の大気について,特定のすでに知られた有害物質の量をトラッキングするのではなくて,どの物質がポテンシャル面的に減衰しているかを調べると,結果的にどの物質が問題の原因の一つであるかが判るのではかいとと思う.
 都内なので「そらまめ君」のシステムですでに計測24時間されている大気汚染データとの面的,時間的な相関について比較,考察する必要があるだろう.
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Jason's Library 文化としての科学

2005-05-23 | Weblog
 知人から教えられて,プロセス工学や遺伝子工学の専門家である,東京大学名誉教授 西村肇先生 のエッセイを読んだ.

 西村先生は,機械工学科の出なのに学部時代は物理ばかり勉強されていて,後に化学工学の教授になった少し変わった経歴の先生である.
 公害の研究では特に大きな業績があり,助教授時代に,本当のことを言い過ぎて,あちこちから圧力がかかり危なく東大から追い出されそうになったという話しは有名.
 水俣病の研究では,東大定年後に,チッソの工場内でどのようにメチル水銀が生成されたかを明らかにして,「水俣病の科学」(日本評論社)としてまとめ,毎日出版文化賞を受賞している.
 
 本書は,西村先生の戦争体験から,日本の将来,科学,科学者,ノーベル賞,教育,語学,日本語,日本人,歴史などなど,色々なテーマについて,経験と信念に基づいて書かれている.

 個人的には,私が普段から考えていている「もののみかた」で,どうも多くの人と意見が会わないことに関して,多くの点で西村先生と合致している点があったので,「私の独りよがり」ではないことがわかった.


 科学や教育に携わっている人,現代の日本に疑問を持っている人,日本の将来を心配している人,大学生などに,広くオススメの一冊.


日本破産を生き残ろう

日本評論社

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ICPFセミナー第3回「テレビ局側から見た通信と放送の融合」 おしらせ

2005-05-20 | IT

  情報通信政策フォーラム(ICPF) から,早速,第3回セミナーのお知らせです.

------------

第1回と第2回のセミナーでは、通信と放送の融合が技術的に可能になっているに
もかかわらず、制度的な障害のためにテレビ番組のIP配信が自由にできない現状
が明らかになりました。最大の障害は著作権、特にテレビ局が番組の再配信を許
可しないことにあります。

このように新しい技術の発展を阻害することは、テレビ局にとっても好ましいこ
ととは思えませんが、彼らの本当のねらいはどこにあるのでしょうか?また、ど
うすればこうした障害を乗り越えて、通信と放送の融合した新しいメディアは可
能になるのでしょうか?今回は、放送業界にくわしい吉井さんにテレビ局の考え
方を解説していただき、政策提言の方向を考えます。

講師:吉井勇(月刊『NEW MEDIA』編集長)
モデレーター:池田信夫(ICPF事務局長)

日時:6月16日(木)19:00~21:00
場所:東洋大学白山キャンパス 5号館5202教室
東京都文京区白山5-28-20
   地下鉄三田線「白山」駅から徒歩5分
   地下鉄南北線「本駒込」駅から徒歩5分
入場料:2000円
    ICPF会員は無料(会場で入会できます)

申し込みはinfo@icpf.jpまで電子メールで

--

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どうして,自分が購入したPCでのTV録画が「私的複製」ではないとされるのか?

2005-05-20 | IT
 5/19の夜は, 4/23の記事 で紹介した, 情報通信政策フォーラム(ICPF) の第二回セミナーに参加した.前回につづき,今回も盛況で,活発な意見の交換があった.


 話題は,テレビ放送のキー局と, 「録画ネット」 を題材にした,「ハードディスク録画サービスと著作権」である. 
 セミナーの内容は,近日中に, ICPFの Web サイト に,議事録として公開されるはずなので,詳細はそちらを参照してほしい.


 さて,今回のセミナーで,はっきり,わかったことは...

  1) 日本のテレビのキー局は,内容の如何にかかわらず,テレビ(地上波)のコンテンツが,コンピュータやネットワークの世界で取り扱われることを恐れているらしいこと.

  2) 日本のテレビのキー局(およびキー局が放送するコンテンツに著作権をもつ人たち)は,どのような形態であれ,自分たちのコンテンツを,キー局やその関連会社等以外のもとで,ビジネスに利用されることを,(有料であっても)許すつもりがなさそうであること.

  3) 海外のイベント等の放送権の契約には,放送サービスの範囲に地域的な制約があるらしい.しかし,その契約は,視聴者である個人が,日本で受信した放送(コンテンツ)を自分のコンピュータをつかって,その地上波が届かない地域,例えば別の国にあるもう一つの自分のコンピュータにネットワーク経由(sshやVPNなどの暗号化された通信によってプライベート性は担保された状態)で送り,そこで放送を視聴する,というような現実の状況について想定していないということ.
 
 これは,技術的には非常に簡単であって,すでに彼方此方で実際に行われている. 今回のテーマとなった 「録画ネット」 はそれを支援するために日本で客が買ったPCサーバーをあずかるサービスである.
 アンテナやルータなどの設備を共用したら「私的複製」からはずれるというのであれば,すべて個人で買い取った設備としても大した金額ではない.また,一般には,PCサーバーの管理者権限のIDやパスワードを,PCをあずかってくれる人や会社に開示する必要もない.純粋にPCサーバーをあずかって,電源を供給してくれるだけで良いのだ.
 よく考えてみると,もちろん,おなじ方法で,録画機能付きのPCをあずかってくれる友人などが米国にいれば,10万円ぐらいの初期投資と,月に50-60ドルぐらいの経費で,米国のテレビ番組を日本でも観ることができそうだ.これは,仕事や趣味の分野によっては,個人でも十分に検討に値する投資であろう.
 つまり,オリンピック,サッカーのワールドカップ,F1などのイベントを,すべて個人のPCサーバーでまかなうのは(大元の放送地域が世界各地なので)簡単ではないが,特定の外国のテレビ番組を日本国内でいながらにして視聴するのは,その国に友人知人その他,自分のPC(テレビ録画機能付きのもの)をあずかってくれる人がいれば,良いだけということだ.

  4) 1)~3) にかかわる議論に関して,日本のテレビのキー局の幹部は,広告主の製品を購入する可能性のある視聴者の利益や,間接的な広告主の不利益については,全く考慮していないように見えること.

  5) テレビのキー局の幹部やキー局の顧問弁護士は,少しオタクの高校生や理工系の大学生でも理解しているレベルの,コンピュータとインターネットについての技術や,その技術によってすでに実現されているソリューションについて,技術的,社会的に理解していないらしいこと.

  6) 放送と通信に関わる係争を担当する裁判官(判事)の大半も,上で述べたようなこ(技術と事実)とについて理解していないと思われる状況であること.


 5/18の記事にも通じるが,官僚だけでなく,裁判官や,弁護士にも,早急に理工系出身者をふさなければ,日本では「科学的な正義が行われる」ことは,どんどん難しくなっているように思う.


コメント (1)
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中央官庁に各分野関連の理工系修士レベルの事務官を!

2005-05-18 | Weblog
  5/16の記事 へ,きさらぎけいすけ氏から,以下のようなコメントをいただいた.
-------
 環境省の担当者に対して、ご指摘のような要望をしても無理だと思います。http://blog.goo.ne.jp/keisukekisaragi/d/20050430 で書きましたように、彼らは数年で担当を変わります。なおかつ多くが文系出身です。基本的なことが分かっていません。
極論すれば、今の日本のひずみの多くは、いわゆる「お役人」の専門性の無さと、理系的な知識の欠如にあると、僕は思っています。
-------
 おそらく,ご指摘のとおりだろう.
 昨今の,交通,エネルギー,環境,医療などの問題をみると,日本を動かす中央官庁の官僚(事務職)の方々こそ,ある一定レベルのそれぞれの本務たる省庁の分野にかかわる専門知識が必要不可欠であると思う.

 例えば,以下のような省庁では,後述のような分野で,修士レベルの教育をうけている人材が,事務官の半数程度は必要なのではないだろうか?

  国土交通省: 自動車工学,交通工学,交通システム学,土木工学,環境学...
  資源エネルギー庁: エネルギー学,エネルギー変換工学,電力工学,地球科学...
  環境省:   環境学,地球科学,地学,生物学,化学...
  厚生省:   医学,公衆衛生学,薬学,生物学,化学,環境学...

 これらの「人間や地球を相手にする」ような分野では政策を検討するにも法律を立案するにも,「相手」とそこでの「現象」を理解するために,ある程度の科学的,工学的な知識が不可欠であることは容易に理解できるはずだ.
 事務官が,その役所の担当分野について,ある程度の,科学的,工学的な知識がなければ,専門の技官や研究官,さらには外部の諮問員の専門家の先生方と,話しも通じないことになってしまう.

 交通災害,エネルギー問題,環境問題,薬害などのトラブルや,将来の課題への戦略の欠如は,このような,事務方の,広い意味での理工医系的な専門知識の欠如が,原因の一つであるという指摘も多く聞かれる.


 ここで,教育上一つはっきりしていることは,「学習の順番」の実質的な制限である.
 現在の我々の高等教育の技術では,科学,工学,医学等の分野に関して,若い時期に,各専門分野ごとの,演習,実習,実験,研修などのタイプの一定のトレーニングが不可欠である.
 それに対して,経済,法律,政策,行政などの,社会科学的分野は,ある程度の年齢になってから,再度専門の学習をしても,ほとんど問題はない.
 
 つまり,上記に上げたような,分野の省庁においては,事務方であっても,上述のような科学,工学などの分野の修士卒程度のものを採用して,何年間か実務経験を積んだのちに,必要に応じて,法律や政策などにかかわる修士課程の勉強をする方が,効率的かつ,実利的であるということになる.

 もちろん,ある程度は,最初から,政策のプロ,法律のプロとして訓練された人材も必要であろう.しかし,現在のように,大半が「法学部」という状況では,交通,エネルギー,環境,医療などの必然的に先端の科学や技術と結びつく分野の政策立案などは「無理」だ.問題が科学的に理解できなければ,対策がうてるはずはない.

 
 中央官庁だけでなく,各都道府県でも,同様の人材の問題があるようだ.いずれも,その仕事を目指す若者の勉強の仕方,人材の集め方等根本的な見直しが必要だと思う.

  
コメント (4)
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自動車排気ガスとせんぞくの関係

2005-05-16 | Environment
 5/15 の産經新聞に,「排ガス -> ぜんそく 関係は?」という見出しで,環境省が「気管支ぜんそくをはじめとする呼吸器疾患と自動車の排ガスとの因果関係を突き止めようと ...今年度から5年がかりで大規模な調査に乗り出す」という記事があった.

 ちゃんとした,疫学調査をすること自体は良いことだが,「いままで,何してたの?」という違和感を強く感じた.


 ちょっと調べると,毎日新聞では,以下のように報じていた.
-----
環境省:
ぜんそくなど、排ガスとの関係研究へ--幹線道沿いの小学生対象に

 環境省は26日、首都圏と中京地区、阪神地区の交通量の多い幹線道路沿いに住む小学生約1万6000人を対象に、自動車排ガスと気管支ぜんそくなど呼吸器疾患との関連を調べる大規模疫学研究を始めると発表した。今年度から5年間、ぜんそく発症の有無や症状の重さなどを追跡調査し、排ガスが健康に与える影響を明らかにする。これほど大規模な研究は世界にも例がないという。
 ディーゼル排気微粒子などの排ガスは、呼吸器疾患の発症と関係があるとみられている。しかし、大気の汚染度とぜんそくの発症率、吸い込む汚染物質の量と症状の重さなど具体的な因果関係はよく分かっていない。
 そこで同省は、東京都内の環状7号、同8号と名古屋市内の国道302号、阪神地区の国道43号のそれぞれ沿線に住む小学生1~3年生を対象に研究を計画。保護者の同意を得て血液を検査し、ぜんそくを発症しやすいアレルギー体質かどうかを確認したうえで、健康状態の推移を追跡。幹線道路と自宅の距離や、対象者の生活実態、汚染状況のサンプル調査などから、一人一人が吸い込む汚染物質の量を推計し、健康状態とつき合わせて、排ガスの影響を評価する。【江口一】
毎日新聞 2005年4月27日 東京朝刊
-----
(http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/env/news/20050427ddm003040019000c.html より)

 ぜんそくと排ガスについては,4/25日の記事に書いた 「ディーゼル排ガスと健康」のシンポジウムでも発表された,嵯峨井勝先生(青森県立保健大学健康科学部教授)が,国立環境研におられたころから色々と研究されていて多くの論文がでている.
 二酸化炭素濃度だけをみてもだめで,二酸化炭素とPMの相乗効果がはっきりと,ぜんそくを引き起こす引き金になっていることが判っている.

 環境省の担当者は,まず,これまでに発表されている世の中の論文を,もう一度勉強すべきではないだろうか?


 先の産経新聞の記事によると,環境省では,以下のように話しているらしい.
-----
 「緻密に暴露量を算出し,継続して調査することで汚染物質がどのくらいぜんそくの発症の要因になっているのかを明確にしたい」
-----

 その前に,すでに我が国で定められた環境基準が諸外国の最新の基準と比べてどうか?実際の幹線道路およびその周辺の大気汚染が,24時間365日どのように変動するか?(天候風向きも考慮して)などを,緻密に解析し直すべきではないだろうか?

 実は,大気汚染のデータそのものは豊富にあるのだ.
 せっかくの 「大気汚染物質広域監視システム」  からの24時間測定データがあるのだから,これを,気象,大気環境,呼吸器医療,小児科臨床,疫学等の学際的研究チームを組んで,継続的に研究すべきだと思う.
 4/24のシンポジウムでの「酸性雨調査研究会/日本環境学会プロジェクトチーム」の東京の大気汚染についての発表もこのデータが用いられていた.

 そうえば,山本英二先生(岡山理科大学総合情報学部教授)が,日本の環境関連の研究は「疫学的な視点が弱い」とおっしゃっていたなぁ...
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Jason's Library 「建築家」から「ソフトウェアアーキテクト」

2005-05-15 | Software
 ちょっと建築づいていますが,その勢いに乗って.

 「建築家」というのは,単に「建物を設計する」だけではなくて,「哲学者」「思想家」としての側面があると思う.そういう部分も含めて,日本を代表する27人の建築家のインタビューを集めた本書はとても興味深い内容である.駆け出し時代のことや,仕事へのこだわり,建築以外のこと,未来へ視座など色々と示唆に富んでいる.
 建築だけでなく,なにかの「計画」「設計」「デザイン」などに興味があるすべての人に.

建築家という生き方―27人が語る仕事とこだわり

日経BP社

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 もう一冊は,建築とソフトウェアのアナロジーの視点で,ソフトウェアシステム構築における思想家==ソフトウェアアーキテクトについて,そのプロフェッショナルとしての仕事についてまとめている.狭い範囲のソフトウェア工学とは違ったエッセンス興味深いが,建築とソフトウェアのアナロジーにこだわりすぎて,建築とソフトウェアの違いについての視点も必要かもしれない.
 情報システムの「計画」「設計」に興味のあるすべての人,職業としてのソフトウェアの設計等に興味のあるすべての人に.

職業としてのソフトウェアアーキテクト

ピアソンエデュケーション

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Jason's Library 「建築構造力学」「超高層への果てなき闘い」

2005-05-15 | Environment
 前の記事の補足.

 武藤 清先生の「建築構造力学」の古典的教科書と,プロジェクトXのDVDです.
 特に,建築構造,耐震建築に興味のある方に.

大学課程建築構造力学

オーム社

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(表紙の画像がないのが残念ですね.)


プロジェクトX 挑戦者たち 第3期 Vol.4 霞が関ビル 超高層への果てなき闘い

NHKエンタープライズ

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(番組は見ましたが,こちらのDVDは私自身は持っていません.あしからずご了承ください.)
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霞ヶ関ビル,貿易センタービル... 「本番テスト」されていません.

2005-05-15 | Environment
 昨日の高層マンションの話しのづつき.

 我が国最初の高層ビルは,1968年にできた,地上36階,地下3階,147mの 霞ヶ関ビル だ.施主は三井不動産,建築施工は鹿島建設であるが,構造設計は,東京大学工学部名誉教授の武藤清先生らによるものである.所謂「柔構造」の耐震建築である.
 この武藤先生の「柔構造理論」は,関東大震災でも壊れなかった, 上野の寛永寺 五重塔(寛永16年1639年の建築) にヒントを得たものであるのはよく知られている.この「霞ヶ関ビルの建築ストーリー」は, NHKのプロジェクトX にもとりあげられている.
 二つ目の高層ビルは,1970年にできた,地上40階,地下3階,152mの世界貿易センタービル(浜松町)だ.そのあとは,新宿副都心にも沢山の高層ビルができた.

 私の記憶が正しければ,1968年の霞ヶ関ビルの竣工,東京の高層ビルは,一度も震度5以上の大きな地震を経験していない.たとえ,武藤先生の理論や,その理論に基づく構造シミュレーションと設計が正しくても,実際の建物トータルとして,設計どおりに出来上がっているか?動的な構造や耐力は設計どおりになっているかどうかはわからない.

 同じ理論で設計されたいくつかのビルは,阪神の震災の中でちゃんと生き残った.しかし,東京や神奈川,埼玉の建物は,一度も「本番テスト」はしていない.また,阪神の震災でも,実際の施工の違い==工事の実装の出来不出来によって,多くの建物が倒壊したことも忘れてはならない.
 大地震で,一度も「本番テスト」されていないのは,最新設計の免震ビルも同じだ.

 私がソフトウェアの道に進んだのは,シミュレーションの面白さに取り憑かれたためだ.実験が難しいからこそシミュレーションが行われている.しかし,シミュレーションだけでは判らないことは沢山ある.
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関東にはしばらく大地震がありませんが...海辺の高層マンション本当に大丈夫ですか?

2005-05-13 | Environment
 本日,電車の中で,ある高層マンションの広告をみた.

 私の記憶では,私が東京およびその近郊に住むようになってから(38年ほど前),東京には,震度5以上の地震は来ていないと思う.
 しかし,この1000年ぐらいのスパンでは,70-80年に一度の大きな地震が,来ていることについては相当色々なデータがそろっている.
 また,東京の海辺の多くは,400年ぐらい昔からすこしづつ埋め立てられたところが沢山あることは,広く知られている.

 そういう中で,関東大震災でも被害がすくなかった地域ではなく,海辺,それも周辺のあちこちが埋め立て地であるようなところに,50F立て以上の高層マンションを立てて,本当に大丈夫なのだろうか?
 どのような境界条件と,どのようなパラメータで,どの程度の分解能(空間的,時間的)のあるコードで,構造的なシミュレーションをした結果の設計なのか?大変興味がある.
 あのような地域での建築確認時には,どれくらい,大地震での構造的安全が検討されるのだろうか?
 また,建物の構造が大丈夫だとしても周辺の地盤や道路,橋は大丈夫なのだろうか?

 もし,マンションだけのこっても,道路や橋,(同時に,上下水道や電気,ガス)が保たなければ,そこでは当然生活してはいけないのだが...周辺のインフラの被害についてはどのようにシミュレーションしているのだろうか?

 
 わたしは,一応,材料力学や構造力学,建築工法等も,少し勉強した.もし,私に豊富な資金があって,1億円以上のマンションを買う場合でも,海辺や川沿いの高層マンションを買う度胸は持ち合わせていない.目の前で,構造シミュレーションのコードと結果を見せてもらっても,無理だなぁ...

 
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Jason's Library 「水」の怖いおはなし.

2005-05-12 | Environment
 きざらぎけいすけ氏の 5/11のblogは「日本における水資源問題」の記事 だったので,それに関連した本を2冊紹介する.この2冊は,期せずしてどちらも,2003年に出版されたものだ.

『地球の水が危ない』の著者,高橋 裕 先生は,東大名誉教授の河川工学,水循環の専門家である.

 もう一方の『「水」戦争の世紀』の筆者,Maude Barlow 女史 は,政治活動家,評論家であり,オタワのカナダ人評議会(Council of Canadians)の理事を努めている.Tony Clarke 氏 は,市民運動家であり,市民活動を支援するポラリス研究所(Polaris Institute)の理事を努めている.どちらもクローバリゼーション国際フォーラム(International Forum on Globalization)の理事も努めている.世界でもっとも水資源に恵まれている国の一つである カナダのNPOの理事がこのような本を著わしているのは凄いことだと思う.
 それぞれ,経歴も,立場も違う筆者による,異なる切り口の本だが,共通するテーマは「資源としての淡水が不足している」ということである.

 日本は,イオン交換システムによる淡水ブラントでは世界一の技術をもっていると思う.個人的な意見としては,飲み水が不足している国々には,日本政府の援助(借款ではなく)で淡水化プラントを設置するのが良いと思う.


 それにしても,フランスやイタリアのミネラルウォーターの末端での市場価格が,カリフォルニアと,東京でこうも違うのは何故だろうか?どこかに,暴利をむさぼっている人たちがいるに違いない.


 水資源に関心があるすべての人に,オススメの2冊.




岩波書店

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集英社

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そろそろ貴重な化石==石油を燃やすのはやめよう.

2005-05-11 | Energy
 本書は,私が博士課程の研究の準備を始めた,2000年に出版された.
 5年前のデータや予測が含まれているが,基本的な自動車のエネルギー問題のトレンドに対する考察は,現時点でみても全く色褪せるものではない.

 筆者の舘内 端氏は元自動車設計エンジニアの自動車評論家であり, 日本EVクラブ を主宰しており,低公害車の普及啓発に貢献などにより,1999年に,環境庁長官より表彰を受けている.
 日本で自動車評論をしている人には,実は「工学」がちゃんと判っている人が少ないなかで,ちゃんとした「科学」「工学」を前提とした,評論,執筆ができる数少ない人材である.
 
 私自身は,水素+燃料電池には懐疑的だ.(国内向け分だけでも,どうやって,毎日 FCV 4000-5000万台分の水素を作るのかだれも研究していない!カナダは水力による電力が余っているのでFCのバラード社に国も投資しているのだ.)
 我が国は,自前のエネルギー資源を殆ど持たず,大きな自動車産業を抱えており,国内の自動車登録台数も増え続けているので,次世代自動車のエネルギー源の選択は非常に大きな問題である.
 いずれにしても,エネルギーとして化石を燃やすのは,そろそろやめなければダメだという話しである.

 また,本書の「あとがき」は,非常に示唆に富んでおり,私のその後の研究にも参考になった.


 自動車だけでなく,広くエネルギー問題に,関心のあるすべての方にオススメの一冊.


ガソリン車が消える日

宝島社

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専門家の裾野の広さ,層の厚みと,若手の育て方

2005-05-10 | Education
 「空飛ぶ教授」こと九州大学の矢原先生の 5/9のblog に,以下のような,興味と示唆に富んだ記述があった.

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...
私は10年前に九大に教授として着任して以来、自分の研究テーマ(性の進化など)に関しては、大学院生やポスドク、助教授・助手にたよらずに、学外の共同研究者、および科研費などで雇用するRAの協力を得て、成果を出してきました。いま、屋久島で進めている研究プロジェクトにも、大学院生は関与していません。したがって、「研究協力者」という点で言えば、(1)型です。

自分の研究は、自分でやるのが一番責任がもてるし、楽しいし、納得がいきます。

大学院生には、最初から自分のプロジェクトを持ち、自立した研究者としての訓練を積んでもらっています。助教授・助手も、私とは完全に独立した研究プロジェクトを持っており、それぞれ国内で指導的立場にあり、国際的な業績をあげています。大学院生は、私を含むスタッフのいずれかと共同研究を行う形で自立の道を歩みますが、プロジェクトの下僕ではありません。ポスドクも、もちろん同様です。最近、私の科研費プロジェクトに、大学院生やポスドクの協力を仰いでいるケースがありますが、その場合にも、大学院生やポスドクのインディペンデンスを保証しています。

このスタイルは、生態学の分野では例外的ではありません。ただし、分子生物学・細胞生物学などのいわゆるライフサイエンスの研究室のスタイルとはかなり違うと思います。

私が大学院生やポスドクに期待しているのは、早く自立して、分野の研究者層に厚みを加えてくれることです。

昨日のブログで紹介したY君の「学問は一握りの天才・秀才だけで進められるものではない。裾野の広さこそ重要だと思う。」という意見には、よくぞ言ってくれた、と思いました。
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 これは,サイエンスの研究分野での話しとして書かれているが,ある種の「技術的専門分野」に関しては,基本的には同じことが云えるのではないだろうか?

 私が日常の生業としている「情報システム / ソフトウェア」の分野でも,裾野こそ広がっているが,「層の厚み」が出ているとはとても思えない.(それに比べると,もう一つの専門である「機械工学」の分野は,裾野が広がったかどうかはやや疑問だが,厚みは増えてきていると感じられる.この違いは,どこから来るものだろうか?)
 これは,矢原先生が指摘されている,大学院生への指導の仕方にも問題があると思われる.多くの研究室では,大学院生や若手研究者を「安いプログラマ」として利用している場合がある.

 また,同じことは,就職した後にも云えるかもしれない.

 「...自立した研究者としての訓練を積んでもらっています。」
 「...早く自立して、分野の研究者層に厚みを加えてくれることです。」

 これは,上記の「研究者」を「プロのエンジニア」に置き換えても,本質的に成り立つ話しである.また,

 「自分の研究は、自分でやるのが一番責任がもてるし、楽しいし、納得がいきます。」

 上記の「研究」を「プロジェクト」,「仕事」と置き換えても同様であろう.


 自分のことを振りかえってみると,修士でも,就職して2-3年のころも,
  「自分でやるのが一番責任がもてるし、楽しい」
 ...という環境を与えられていた.それらの経験が,今日に活きていると思う.

 やはり,若いうちから,「自立した,プロ」としての自覚を持てる仕事を沢山経験する機会を与えることが重要であることを,あらためて痛感させられた.

 

 
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