Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

オープンソースを使いこなすために必要な課題

2005-10-31 | Software
 来月早々,某所で,オープンソースソフトウェア(OSS)についてのセミナーで講師をすることになっている.
 この週末に,そのセミナーの資料をまとめた.

 OSSを活用しようとした場合の課題(技術的な課題)としてよく言われているのは,以下のようなものだ.

 1. 技術、マーケティングともに変化が激しい
   最新の状況を ウオッチするのは大変 ==>「継続学習」

 2. 新しい情報、重要な情報は、英文である場合が多い ==>「英語力」

 3. 大量のソースコードを読みこなす力 ==> 「構造把握力」

 4. 日本語、日本語フォントの処理に制限があるものがある

 5. Note-PCや特徴のあるハードウェアへのインストールに問題が多い
   現在,日本で販売されるPCの大半はNote-PCである

 6. 既存のソフトとの互換性は完全ではない


 このうち,1~3は,人材の問題であるが,実はOSSに限ったものではない.
 4~6は,海外の技術,最新の技術にはつきものといえる.

 今日,どのような専門分野でも,プロたるもの「継続学習」「英語力」は,必要とされている. 
 また,「読む力」すなわち「構造把握力」も,技術分野にかかわらず重要である.結局は,プログラム,文章,設計図,建築,機械,電子回路,どれをとっても,人の書いたもの,人の設計したものを,沢山読み,沢山観ることが,一番の学習であると思う.


 今回は,「オープンソースソフトウェア」「読む力」「構造把握力」などについての参考書として,以下の3冊をオススメする.

 # ソフトウェア工学における継続学習については, 2005-10-02の blog で紹介した「ソフトウェア開発の持つべき文化」が参考になる.


 
オープンソースを理解する
秋本 芳伸, 岡田 泰子 著
ディーアート

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Code Reading―オープンソースから学ぶプログラミングテクニック
Diomidis Spinellis 著,トップスタジオ 訳, まつもと ゆきひろ, 平林 俊一, 鵜飼 文敏 監訳
毎日コミュニケーションズ

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# 表紙の画像がみえなくなったので、別のURLの表紙にしました。小さくてすいません。

勝つための論文の書き方
鹿島 茂 著
文藝春秋

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日本語によるソフトウェアアーキテクチャの教科書

2005-10-24 | Software
 本書は,日本語で書かれた,数少ない「ソフトウェアアーキテクチャ」についての教科書である.

 前書きには,「本書は,ソフトウェアアーキテクチャに関して,ソフトウェア技術者が知っておくべき知識や開発への活用の方法について,実務的な視点を重視しながら解説したものです.」とある.
 実践的視点を重視していることは確かだが,相当のソフトウェア工学の知識を前提としており,所謂,「現場での叩き上げのエンジニア」向きの記述というよりは,大学院修士レベルの教科書という印象をもった.
 しかし,ある程度経験を積んだエンジニアが,「ソフトウェアアーキテクチャ」についてに系統的に勉強しなおすという用途にも活用できると思う.

 ソフトウェアアーキテクチャの基礎から,プロダクトライン開発まで,最新の内容を網羅しながら,274ページとコンパクトにまとまっている.

 目次

  第 1章 はじめに
  第 2章 アーキテクチャの基礎
  第 3章 アーキテクチャの記述
  第 4章 ソフトウェアの諸特性との関連
  第 5章 アーキテクチャの評価
  第 6章 アーキテクチャパターン
  第 7章 ソフトウェアアーキテクチャ設計
  第 8章 プロダクトライン開発
  第 9章 ソフトウェアアーキテクチャの現状と将来
  第10章 さらに知りたい人のために
  参考文献

 第10章の「さらに知りたい人のために」と,参考文献が充実している.


 筆者の岸知二 先生は,某メーカーで長年ソフトウェア工学,ソフトウェアアーキテクチャについて研究してきた,日本を代表するソフトウェアアーキテクチャの研究者.現在は,北陸先端科学技術大学院の客員教授.
 3章,5章担当の,野田夏子 氏は,某メーカーでソフトウェア工学の研究をしている研究者で,岸先生の元部下.
 9章と全体の統一感の確認を担当された,深澤良彰 先生は,ソフトウェア工学,オブジェクト指向,コンポーネント指向,エージェント指向等の研究で著名な,早稲田大学教授.


 ソフトウェアの設計を生業とするすべての技術者,ソフトウェア工学を学ぶ大学院生にオススメの一冊.


ソフトウェアアーキテクチャ ―アーキテクチャとドメイン指向トラック
岸知二,野田夏子,深澤良彰 著
共立出版

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考えるための「読む」技術

2005-10-18 | Business
 「考える」ためには,情報をどう「読む」か?「解読」「解釈」が重要であると思う.
 また,情報の「読み方」には色々なアプローチがある.

 本書は, 産能大学大学院 での,「社会調査法特論」の講義資料をもとに,書き下ろされた,「読む」技術についての教科書である.
 あとがきに,その講義では『「読む」という行為を「知的消費」の技術と位置づけ,「知」という栄養をいかに吸収するか,ということに焦点を合わせた』とあるが,これは,普段の私自身のアプローチに近い.

 筆者の 妹尾堅一郎 先生 は,慶応大学経済学部卒業.化学メーカーで人事,マーケティング等を担当したあと,英国ランカスター大学で経営情報学の博士号を取得.産能大学,慶応を経て,現在は,東大 先端科学技術研究センター特任教授という,少し変わった経歴の持ち主.現在は,知識創造/知的財産マネジメントとMOT(技術経営)の研究,および関連する先端人財育成の方法論開発などを行っている.


 情報社会を生き抜くための,情報の「読み方」==「考え方」に興味のあるビジネスパーソンや大学院生に,オススメの一冊.


考える力をつけるための「読む」技術?情報の解読と解釈
妹尾堅一郎
ダイヤモンド社

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ネットを通じてパキスタンに援助を!!

2005-10-11 | Environment
 今回の,パキスタン北部の大地震は 「ヒマラヤ山脈を形成したプレート衝突」 だそうだ.簡単にいえば,インドがユーラシア大陸を押し上げていて,そのしわ寄せでできたのがヒマラヤで,今回の地震も,そのインドの押し上げるエネルギーの揺り戻しらしい.
 報道によれば, 被害者は3万人を超え,被災者は400万人にのぼる見通し ということだ.


 このようなときこそ,アジアを代表する経済大国として,日本政府にはもっと積極的な支援策を打ち出してほしいと思うが,現実はなかなかうまくいかないようだ.

 一方,日本ユニセフでは, インターネットのサイトでクレジットカードによる緊急募金 を受け付けている.普段,インターネット通販に慣れている人なら,ほんの2-3分で募金することができる.とても簡単である.
 一人一人の募金額がほんの数千円でも「塵も積もれば山となる」である.また,現地での物価や平均所得を考えれば,日本からの募金は現地で使うときには50倍以上の価値となるはずだ.


 私は,パキスタンともユニセフとは何のつながりもありませんが,この記事をみて,一人でもパキスタンの地震被災者のために募金する人が増えることを期待しています.

追記:
  民間のNPO法人 Peace Winds Japan でもパキスタン等への被災地への支援活動をおこなっています.
コメント (2)
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家族や親戚が脳の病気になったら

2005-10-10 | Medicine
 お医者さんにも,「上手い下手」があることは,ある程度は一般に知られている.特に,歯科は患者も医者も多いし,下手な先生にかかると,痛みがあったりできあがりの美観に問題があったりするので,素人の患者にも技量の差がすぐにわかる.

 現在の臨床医学の中で,医者の技術の差が一番大きいのは,おそらく「脳神経外科」の分野であろう.
 本書は,世界中で,(同業者からも)「神の手を持つ」といわれている,日本人脳外科医 福島孝徳 先生 の経歴や活動等を紹介したものである.

 福島先生は,脳外科の中でも頭蓋底の難しい部位の手術を,「鍵穴手術」と呼ばれる,1-2cmの比較的小さな穴から顕微鏡や特殊な器具を用いて行う手法を確立,発展させたことで世界的に知られている.現在は,米国の デューク大学 ウェストバージニア大学 の医学部の教授を兼任している.
 また,おそらく,現時点で,地球上で,一番沢山の脳外科手術の臨床経験,執刀経験をもつ脳外科医である.
 福島先生の一番凄いところは,ご自分の技術や器具を広く外部に開示している所だと思う.世界各地でご自分の実際の手術に現地の医師を立ち会わせて指導されている.さらに,後進の育成のために,国際脳神経外科教育基金(INEF)を設立している.


 家族,親戚,友人などに,難しい脳の手術が必要になったら,福島先生かその弟子先生の手術を受けることをお勧めする.
 # 年に1-2回は,日本にもどり執刀されるそうです.

 問い合わせ先は,以下ののとおり.(日本語でOK)
  fukushima@carolinaneuroscience.com
  Fax: (919) 239-0266


福島孝徳 脳外科医 奇跡の指先

PHP研究所

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 しかし,それにしても,東京生まれで東京育ち東大卒である,福島先生の活動の本拠地が東京でないというのは,非常に大きな日本の社会システム上の問題だと思わざるを得ない.
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失敗から学ぶ,教訓から学ぶ「環境問題」

2005-10-09 | Environment
 賢人は「歴史」から学ぶといわれるが,我々のような普通の人は「失敗」から学ぶのがやっとだ.多くの場合,過去の「失敗」もうまく「教訓」として活かすことができない.

 本書は,欧州共同体(European Community)の独立行政庁として1993年に設置され,環境問題に関してEUの政策決定組織と加盟国へ客観的情報を提供することを目的としている欧州環境庁(European Environment Agency:EEA)による,教訓的な事例を集めた報告書集である.
 原題は「Lete Lessons from early warnings: The Precautionary Principle 1896-2000」という.

 以下のような構成となっており,20世紀で欧米を中心に問題となった14の環境問題の事例を集めている(2章から15章まで).
 また,16章では,それらの事例から12の「環境に関わる予防原則」の「遅ればせの教訓」を導きだしている.

 第1章■序
 第2章■漁業:資源の評価
 第3章■放射線:早期警告・遅れて出る影響
 第4章■ベンゼン:米国と欧州の労働規準設定についての歴史的考察
 第5章■アスベスト:魔法の鉱物から悪魔の鉱物へ
 第6章■PCBと予防原則
 第7章■ハロカーボン、オゾン層、予防原則
 第8章■DES物語:出生前曝露の長期的影響
 第9章■成長促進剤としての抗生物質:常識への抵抗
 第10章■二酸化硫黄:ヒトの肺の保護から遠い湖の回復まで
 第11章■鉛の代替としてガソリンに入れられたMTBE
 第12章■予防原則と五大湖の化学汚染に関する早期警告
 第13章■トリブチルスズ(TBT)防汚剤:船、巻貝、そしてインポセックスの物語
 第14章■成長促進剤としてのホルモン:予防原則かそれとも政治的リスクアセスメントか?
 第15章■「狂牛病」1980年代から2000年にかけて:安全の強調がいかに予防を妨げたか
 第16章■事例から学ぶ12の遅ればせの教訓
 第17章■結論

 各事例は,その分野の専門家が記述しており,章毎に独立したサーベィ論文風にまとめられている.文献リストも整備されている.
 6章のPCBの事例では,日本の「カネミ油症事件」についても言及されている.


 専門的な記述が少なくないので,内容をちゃんと理解するには,生物,化学,物理,環境等の予備知識が必要となろう.
 しかし,科学的な詳細の理解よりも,各事例での歴史的な流れ,その様々なポイントでの「我々の判断の失敗」,それがもたらした「結果」,さらにそこからえら得た「教訓」こそが重要だと思う.

 監訳者の言葉の冒頭に以下のようにある.
 「環境問題の対策に予防原則の適用を求める声は強いが、現実はなかなか進展せず規制の歩みはのろい。強い逆風すら吹いている現状である。他の先進国でも似た状況が起きているようだが、この本は欧州の環境庁がその遅い歩みを少しでも速めようとして出版した調査報告書である。事例研究として14の環境問題の歴史を概観し、新しい考え方も提案しているので、大学で講義している先生方にたいへん便利にお使いいただけると思う。」

 全体に,科学的論文調の内容なので,翻訳も正確さを重視してややスムースさにかける部分もあるが,このような内容の事例が日本語で読めるメリットは大きい.

 本書は,やや専門的な記述が多いが,環境問題について,「失敗」や「教訓」から学ぶことに興味のある方には,広くオススメできる一冊である.
 また,監訳者のいうとおり,環境問題等について学んでいる,大学生,大学院生,また,若手の研究者,技術者には,良い参考書になると思う.
 さらに,本書は,環境,食品,衛生,医療などにかかわる,行政にたずさわっている方,関連する問題に取り組んでおられる政治家の方々にこそ,必読書である.
 


レイト・レッスンズ―14の事例から学ぶ予防原則
欧州環境庁(編),松崎早苗(監訳),水野玲子,安間武,山室真澄(訳)
七つ森書館

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秋の読書月間 (10) ソフトウェア開発技術者必読の書!!

2005-10-02 | Software
 Amazon.co.jp より,「ソフトウェア開発の持つべき文化」 が届く.
 本書は,2005/6 の出版で,当初からタイトルがとても気になっていたのだが,入手し忘れていたのに気がついて先日注文したものだ.

 筆者の カール・E・ウィーガーズ (Karl E. Wiegers) 博士 は,Eastman Kodak社で写真技術に関する研究やソフトウェア開発に18年間かかわり,現在は, Process Impact 社 を主宰して,ソフトウェア開発に関するコンサルテーション,講演,執筆などを行っている.

 本書は,1996年に出版され,ソフトウェア開発者向けの専門雑誌 Software Development Magazine 誌 の Productivity Award を受賞した話題作である.1996年の出版と聞くと内容が古いという印象があるかもしらないが,決してそんなことはない.流行の技術には殆ど左右されない本質的な内容である.

 私自身の経験では,この手の本では,「80%以上賛成」できるものは非常に少ないが,この本書は,その少ない例の一つだと言える.

 目新しい技術や,魔法のような手法ではなく,確実に効果があると知られているものについて,判り易い文章と豊富な参考資料とともに,うまくまとめている.
 原題は「Creating a Software Engineering Culture」であり,ソフトウェア工学のお作法を,単に技術としてではなく,文化ととらえている点が,本書と他のソフトウェア工学の本との大きな違いである.
 さらに,品質と,継続的な学習を重視している点が,とても良いと思う.例えば,226.p には「顧客にではなく,同僚に欠陥を発見してもらうように努力しなさい.」,350.p には「しかし,プロのエンジニアであるということは,貴重な自由時間を自分の勉強に充てるということです.」とある.


 プロとしてソフトウェア開発に関わるすべての人,これからソフトウェアの道を歩もうとする人に,強くお勧めする.ソフトウェア開発技術者必読の一冊.


ソフトウェア開発の持つべき文化
カール・E・ウィーガーズ
翔泳社

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