Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

秋の読書月間 (9) イノベーションがもたらす破壊とは?

2005-09-29 | Business
  9/26 の blog で紹介した,『「経験知」を伝える技術』と一緒に届いたもう一冊.たまたま,2冊とも,Harvard business school press のシリーズである.
 こちちらも,まだ読んでいないが,注目の書であることは間違いないので紹介する.

 筆頭筆者の クリステンセン先生は ハーバード・ビジネス・スクールの教授 であり,1997年の『The Innovator's Dilemma』(イノベーションのジレンマ) で,広く知られている.
 本書(邦訳)は,イノベーション・シリーズの最新刊として今月発売されたばかりである.568ページもある大冊なので,複数の本を並行して読み進むスタイルの私の場合,ちょと時間がかかりそうだ.
 
 Amazon.co.jp の紹介によると,「企業という範疇、さらには経験則という不確実性を超えて、業界全体の未来を理論で見通す画期的業績。本書が示す手法は、従来のクリステンセン読者だけではなく、広くビジネスの明日を読もうとする読者にとっての福音となる。」とある.

 「未来を見通す」「変化を予測する」ことに興味のある方に参考になりそうな一冊.



明日は誰のものか イノベーションの最終解
クレイトン・M・クリステンセン, スコット・D・アンソニー, エリック・A・ロス (著)
ランダムハウス講談社

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OSSAJ「ミニ セミナー (勉強会) 」のおしらせ

2005-09-27 | Software
   第4回目のOSSAJミニセミナー(勉強会)の開催のお知らせ


 各位

 OSSAJ主催の第4回ミニセミナー(勉強会)を下記要領で開催致します。
ふるってご参加頂きますようご案内申し上げます。

 1. 日時:2005年10月13日(木) 15:30-18:00
                (15:15受付開始)

 2. 場所:(株)オープンテクノロジーズ セミナールーム
 (下記URLをご参照ください)
  http://www.opentech.co.jp/AboutUs/Map/map-koishikawa-j.html

 3. テーマ:「大学教育教材として開発したOSS(Sabaphy)の紹介と今後の展開」
 概要:Webアプリケーションの世界では、入門レベルとフレームワーク・コンテナを
   駆使するレベルとの間に大きな段差があり、この間を埋める教材が欠けている
   ように思われます。
   Sabaphyは学生教育用に開発した軽量コンテナ/フレームワークで、
   言語にPHP5を使用し、特別なインストールは不要、簡単なことは
   簡易に実行でき、段階的に学習できるといった特徴があります。
   本セミナーでは、Sabaphyの概要をご紹介するとともに、
   オープンソースの教育用教材として発展させていくための方策について、
   また、実用化に向けての素材として応用することについて、
   参加者を交えてディスカッションを行います。

  3.1 セッション1:Webアプリケーション学習用軽量コンテナSabaphyの紹介
   講師  東京国際大学 佐藤 英人 教授

  3.2 セッション2: Sabaphyの今後の展開についてのディスカッション
    司会  OSSAJ 事務局にて人選中

 4. 参加費:(当日受付にてお支払い下さい)
  正会員、賛助会員         無料
  一般会員、協賛団体会員    1,000円
  ※ FSIJ, SEA, JLA, OSDLは協賛団体扱いとなります.
  会員外参加者         2,000円

 5. 募集参加人数:20名

 6. 申し込み方法:
 OSSAJ事務局宛 (adm@ossaj.org) にメールにてお申し込み下さい。
 お申し込みの際、氏名、会員種別をご記入下さい。
 参加申込みメールの先着順に事務局より参加受付のメールをさせて頂きます。
 
 以上
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秋の読書月間 (8) 「経験知」をどう伝えるか?

2005-09-26 | Business
 最近,自分のもっている,専門知識の学習法,暗黙知,経験知を,どのように周りに伝えるかを,模索している.
 特に,習ったり,読んだりして学習したものでなく,様々な場面での経験の結果として身に付いている「経験知」をどのように伝えるかは,非常に難しい課題だと思う.
 現に今も,ことを考えながら,あるプロジェクトのためにオフィスで二日目の朝を迎えようとしている.

 そのようなときに,Amazon.co.jp で偶然,本書をみつけて,早速注文した.
 私自身もまだ,読んでいないが,紹介することにした.

 Amazon.co.jp の紹介には「蓄積された経験知をいかにして組織内で移転するのか?「暗黙知」の形成段階にまで立ち返ってその性質を解き明かし、豊富かつ具体的な事例に基づいて移転方法を分析・解明した画期的な一冊。 」とある.
 
 筆者は,以下のハーバード大とタフツ大の先生である.

  ドロシー・レナード:
  ハーバード・ビジネススクール名誉教授。イノベーション、創造性、
  新製品開発、知識移転などをテーマにビジネススクールで25年近く
  教鞭を執るかたわら、ダイムラー・クライスラーなどの有力企業や
  政府機関のコンサルタントを務めた経験ももつ.

  ウォルター・スワップ
  タフツ大学名誉教授(心理学)。同大学の心理学部長、学長も歴任。
  現役エンジニアやマネジャー向けプログラムでの教育経験もある。
  集団力学、態度変容、人格理論、利他的行動、攻撃性などのテーマ
  に関する学術論文を多数執筆している.


 「経験知」の伝達に悩むすべての人に,参考になりそうな一冊.


「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質
ドロシー・レナード,ウォルター・スワップ
ランダムハウス講談社

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社会システム,交通システムとしての空港のロケーション

2005-09-24 | Transportation
 今週,福岡に出張した.
 一番印象に残ったのは,福岡空港の福岡の中心街からの距離(近さ)であった.


 www.jorudan.co.jp での経路表示によると,博多駅から福岡空港までは,

  博多駅 -> 福岡空港
   5分 3.3km (市営地下鉄)

 また,他の国内の主要な空港のJRのメインターミナルからの時間と距離は,
  
  東京駅 -> 羽田空港
   33 - 38 分 3.1+17.8 km 6.8+14.5 km (モノレール/京急)

  東京駅 -> 成田空港
   1時間26分 79.2km (成田エクスプレス)

  新大阪 -> 関西空港
   55分 7.6+42.8 km
 
  札幌 -> 新千歳空港
   48分 46.6km
 
  名古屋 -> 中部国際空港
   46分 4.2+35.1km


 これに対して,私が行ったことのある米国の大きな空港の,ダウンタウンからの所用時間は,

  サンフランシスコ市内 -> SFO
   25-30分 シャトル,タクシー等
 
  ロサンゼルス市内 -> LAX
   20分 シャトル,タクシー等
 
  シカゴ市内 -> O'Hare
   20分 シャトル,タクシー等
   30分 地下鉄

  アトランタ市内 -> Hartsfield-Jackson
   15分 タクシー等
   15分 MARTA

 また,(私はニューヨークには行ったことがないが)ニューヨークの3つの空港のダウンダウンからの距離は,
  ジョンF.ケネディ国際空港: 19km
  ラガーディア空港:     10km
  ニューアーク空港:     19km
であり,どれも,タクシー,バスなどで,15-25分程度のロケーションである.

 米国の国土は日本の25倍ほどもあるので,空港の立地の自由度が,日本よりも数倍高いことは明らかだが,それにしても日本の空港は,街の中心から遠すぎるのではないだろうか?
 地域住民との騒音や環境についての補償などが,ロケーションの足かせになるのは,日本もアメリカも基本的には同じはずだ.

 ニューヨークで,ダウンタウンから20kmのところ空港が3つ設置できているのに,ほぼ同じ規模の世界的大都市の東京で,二つ目の空港(それもメインの国際空港)が約80kmはなれていて,滑走路もすくなく,かつ24H運用でないのは,政策的な失敗でしかないと思う.

 駐留米軍との航空管制の範囲の問題や,港区,大田区,千葉県などの自治体との問題については承知しているが,それらも「政策」上の懸案であろう.
 空港の立地については,近隣の他のアジアの国(韓国,香港,シンガポール)では,国レベルの交通システムの要として,他に優先して政策的に考慮しながら検討されている.


 東京およびその周辺の都市の規模からいって,また,東京の国際都市としての航空システム上でのこれ以上の地盤沈下をさけるためは,東京近郊にもう一つ空港が必要だと思う.

 政治的,政策的視点で考えると,(沖縄の基地問題もないがしろにはできないが)ここはまず,横田基地を管制区域ごと返還してもらって民間空港として拡張するというのはどうだろうか?
 さもなければ,お台場かみなとみらいの沖合に,メガフロートで4000mの滑走路を2-3本浮かべるか?
 東京の北側なら,埼玉の自衛隊大宮駐屯地の周辺の土地を買収して,新幹線も引き込むか?

 いずれにしても,空港の設置には,国の予算を割いて,大規模な土木工事が必要となるが,同じ国家予算を使うなら,まず,交通システムとして,マスタープランの企画,設計にお金をかけて,しっかりとした長期的な戦略にもとづくプランを立ててもらいたいものだと思う.

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小児救急医療の整備を!!

2005-09-19 | Medicine
 先週の 東洋経済 の 2005 9/17 号(pp.102-106) に,「小児救急が危ない!!」という特集記事があった.

 日本は,地方の医療,特に,救急医療に問題があると聞いていたが,小児救急はとても「先進国」とは言えない状態である.
 なんと全国の4割の地域が,小児科については,24時間対応の体制になっていないという.

 今回の特集の冒頭は,2002年に岩手県一関で起きた「佐藤頼(らい)ちゃん事件」(生後8ヶ月の頼ちゃんが,インフルエンザで高熱がでていたが,小児救急の体制が不十分だったために,脱水症状で亡くなった事件.)について綴られている.
 米国なら,適切な診察や指示をださなかった医療関係者が,すぐに訴えられて負けているような話しだ.
 「シンポジウム小児医療を考える」の記録のページ には,この事件の頼ちゃんのお母さんや,他の小児医療事件のご遺族の声がある.
 是非,「これが自分の家族だったら」と考えながら読んでほしい.
 
 この頼ちゃん事件が,一つの契機となって,厚生労働省もやっと,輪番制,拠点病院の態勢整備などに力を入れ始めたという.

  遠隔医療システム の導入や研究も少しづつ進んでいるが,まだまだこれからの状態だ.
 
 医療環境の整備,特に,救急医療や小児医療の整備こそが,全国レベルで態勢整え,いかにして都市と地方の格差をなくすべきかという,地方における最も重要な命題の一つだと思う.
 病院の救急態勢整備にも,遠隔医療システムにも,救急に対応できる小児科医の育成にも,とにかくお金がかかることははっきりしている.
 地方交付税はの予算は,土木や建築工事にではなく,このような分野にこそ重点的に計上すべきだ.
 このような問題こそ,地元の国会議員のイニシアチブが必要なのではないだろうか?


 また,誤解を恐れずいえば,老人福祉よりも,小児医療の充実の方が明らかに重要である.子供たちが,元気に成長できなかれば,我々に将来はないことだけは確かだ.


追記:
   子育て支援サイトの e-mama に「小児救急が危ない!?」という特集記事があります. 参考になります.

 
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Sun の新しいサーバー

2005-09-18 | IT
 昨日の午後, Sun Microsystems の新製品発表会に行った.

 今回発表された, AMD の64bit CPU Opteron を用いた,新しいサーバー ,特に,X4100/X4200 は,久しぶりに「すばらしい」出来映えの製品だと思う.
 X4100は,マザーボードが見えるように展示されていたが,一目でわかる「エレガントな設計」である.

 これは,昨年の2月に, Andy Bechtolsheim 会社を買収して結果的に,Andy が再び Sun に戻ったことの成果の一つといえるだろう.Andy は,Sun 創業者の一人で,この業界では有名なコンピュータの設計者である.


 発表会は,日本法人の人たちだけでやるものと思っていたら,CEO の Scott McNealy がちゃんと出てきて,少しスピーチをした.うれしそうに,「性能,消費電力,スペース,価格の面で大きな差のある,この製品(==X4200)の発表で,DELLは困ったことになるだろう」という主旨の発言をしていた.
 これからは,技術のわかるのコンサルタントやSEなら,中規模のサーバーとして,DELL PowerEdge 6850,2850 を提案することはないだろう.

 日本法人の人のプレゼンは,やや準備不足で,あまり面白くはなかったが,製品が良いことはわかった.
# 予定されていた,デモがキャンセルされたことは,残念だったと思う.


 また,今回の一連の製品は,Sun の 自前UNIXである Solaris や,オープンソースの Linux だけでなく,なんと,MS-Windows までも動作する.


 今後の新しいプロジェクトで,サーバーの選定も任せてもらえる時は,是非推薦しようと思う製品である.


追記:
hrefのミスタイプ直しました.
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秋の読書月刊 (7) マネジメント心理学

2005-09-17 | Business
 先週の選挙のあとに買ったなかの一冊.

 筆者の 金井壽宏 (かない としひろ)先生 は, 神戸大学大学院経営学研究科 教授である.
 リーダーシップ,モティベーション、クリエイティブなマネジメント,ネットワーキング,キャリア・マネジメントなどについて研究されている.Amazon.co.jp をみると,啓蒙書から研究書まで 29 冊の著書/訳書がある.私も,他にも数冊読んでいる.

 本書では,組織のマネジメントを,組織の中で働く個人の「気持ち」「元気」「志」などの視点から見つめなおし,それらのバロメータを「心的エナジー」とらえている.そして,その働く個人の「心的エナジー」を活かし上げることによって,組織を動かし,より力づけることができると説く.
 一見当たり前のように見えるが,「経営学」の教授で,マネジメントの参考書にこのような心理学的なアプローチを全面に押し出す人は少ない.

 マネジメントにおける心理学的アプローチに興味のある方にオススメの一冊.

組織を動かす最強のマネジメント心理学―組織と働く個人の「心的エナジー」を生かす法
金井壽宏
中経出版

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秋の読書月間 (6) 自分を高く売る心理法則

2005-09-15 | Cognitive Sc
 先の日曜日,選挙のあとに,地元の古本屋に寄って,数冊入手.
 その中からの一冊.

 筆者の樺 旦純(かんば わたる) 先生は,心理学者で,産業能率短期大学や同大学経営管理研究所で人事や能力開発,創造性開発の教育や研究をされ,現在は企業などの社員研修や能力開発のコンサルタントをされている.Amazon.co.jp で検索すると,心理学関係の著作が 150冊以上もあり,これまでにも他の著作もいくつか読んでいる.
 
 本書は,正しい自己認識をもち,自信を強め,自分の評価を高めるための,色々なポイントについて,発想法や心理学的アプローチについて,平易な表現で解説している.


 自己認識を再確認したい人,より自信を高めたい人,よりプラス指向の発想法をみにつけたい人に,広くオススメできる一冊.


自分を高く売るための心理法則―不安が自信に変わるとっておきの知恵
樺 旦純
PHP研究所

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# 表紙のシロクマの親子が目をひいた.
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秋の読書月間 (5) 大人の勉強 

2005-09-12 | Education
 私は,自己実現のための,自己投資や継続的な「学び」に興味がある.
 
 本書で用いられている「勉強に年齢は無関係!」「いくつになっても学びの場はある」「勉強で長い人生を楽しくする」という言葉は,本質的であり,良いキャッチフレーズであると思う.

 筆者の西山昭彦先生 は,自らも大学を卒業し東京ガスに就職してから,海外留学して修士号,社会人博士課程での博士号を取得しており,「大人の勉強法」の元祖的な存在である.
 現在は, 東京女学館大学 で,マネジメントリテラシー,ビジネスリテラシー,経済政策,経済とジェンダー,経営学などを教え,また,東京ガスグループの東京ガス西山経営研究所の所長も務めている.

 本書で,西山先生は,自身の経験から,単なる叩き上げや現場での勉強だけでなく,専門資格取得のための勉強,社会人向けの大学/大学院での勉強,体系的な学習の重要性について述べている.
 また,カーネルサンダースがKFCの事業をはじめたは65歳の時であったこと,フランチャイズのビジネス形態にはそうせざるを得ない理由があったことを,本書で知った.


 「学びつづける」ことに興味のある,ビジネスパースンにオススメする一冊.


勉強するのに遅すぎるということはない!―勉強に年齢は無関係!
西山昭彦
技術評論社

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秋の読書月間 (4) 知識社会と情報共有

2005-09-11 | Business
 今月になって,知識社会,ナレッジマネジメント,情報共有等についてちょっと勉強しなおしてみようと思った.Amazon.co.jp やマーケットプレースで何冊かみつくろって購入した.

 先週は,その中から,たまたま, 田坂広志 先生 の著作2冊を読んだ.
 筆者の田坂先生は, 多摩大学大学院 の教授で会起業家論を講じ, シンクタンク・ソフィアバンク 代表でもある.また,様々な会社の社外取締役や顧問も務めている.
 Amazon.co.jp で検索すると著作の数は,1996年からの9年間で38冊もある.単純に平均すると年に4冊以上執筆していることになる.38冊すべてを読んだわけではないが,ものによっては,言い回しがややクドいと感じる場合もあように思う.しかし,どの本にも共通する特徴は,平易なことばで記述されていることだろう.

 
これから知識社会で何が起こるのか―いま、学ぶべき「次なる常識」

東洋経済新報社

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 知識社会についてのまとめの中で,「言霊」(こどだま)や,Linux等のオープンソースソフトウェアの哲学の骨子の一つである「コピーレフト」(Copyleft)を持ち出すあたりは,さすがというべきだろう.


なぜ日本企業では情報共有が進まないのか―ナレッジ・マネジャー7つの心得

東洋経済新報社

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 情報共有についてまえがきの中で,情報共有が進まない理由として「情報の囲い込み」があげられていた.さらに自身が客員研究員をしていたバテル研究所での経験をふまえて「知恵の出し惜しみをしない」ことの重要性をあげていた.まとめの中では,電子メールや電子掲示板をうまく活用した「共鳴場」の形成とそれによる「こころの生態系」のマネジメントを説く.


 どちらも新しい本ではないが,知識社会,ナレッジマネジメント,情報共有などに興味のある方に広くオススメできる.

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博士課程「短期コース」と「頭の構造改革」

2005-09-11 | Education
  4/17 の blog 「大学院と博士号」 に,「論文博士」とその周辺の話題について書いた.

  9/6 のニュース「中教審“規制緩和”答申 博士号取得、最短で1年 乱造防止、質の確保課題」によると, 9/5 中央教育審議会から,大学院改革について,新しい答申がまとめられたらしい.


 結局,前回の答申で話題になった「論文博士」の扱いについては,色々なところから,相当の軋轢があったようで,廃止ということにはならなかったらしい.

 また,規制緩和の方針の中で『論文博士縮小につなげるため、答申は短期コース創設を提言。現在、博士課程修了には大学院での三年以上の在学が省令で義務付けられているが、短期コースなら一-二年で博士号取得が可能になる。』という.

 1-2年の「短期コース」というのは,悪くない方針だと思う.しかし,仮に,1年の「短期コース」の場合,これまでのように「論文の水準を間接的に説明する方法」が「学位論文の内容を含む査読つき論文の件数」というだけでは難しくなってくるだろう.

『背景には日本の大学院生・博士号取得者の少なさがあるが、短期コースという“規制緩和”が「博士号の粗製乱造につながりかねない」との懸念もあり、質の確保が課題となりそうだ。』という指摘があるが,そもそも,現在の審査の前提や形態が適切かどうかという視点での議論が必要だと思う.

 現在の日本の博士号は,基本的には各大学の判断で授与されている.つまり,大学毎の「それぞれの分野の専門家としての免許皆伝の免状」である.博士論文審査の前提とされる「査読つき論文の件数」のような内規も各大学毎のものであり,大学/学部でまちまちである.
 米国でも英国でも,通常の博士論文の審査には「査読つき論文の件数」などは前提とされない.大学院でのコースワーク(授業や演習)の成績,博士候補者資格試験の成績,そして,最終的に博士論文そのものの審査(3-4名の教授らからなる小委員会による審査)によって,博士号の授与が判断される.
 実は,日本でも,一部の大学の教授会では,学会の論文審査委員の権威よりも,自分達の方が権威があるという「自信と暗黙の了解」があり,博士論文の審査の要件には「学位論文の内容を含む査読つき論文の件数」は問題とされないところもある.しかし,これは,「本来の大学毎の判断」であるともいえよう.

 
 知的職業/専門家の卵の人数が多ければ良いという単純な問題ではないが,日本の人口あたりの大学院生の数は,まだ,米国,英国,フランス等に水をあけられていることも事実だ.
 今後の知識社会==脱工業化社会に向かう日本の将来のためには,やはり,大学院生の人数,学位取得者を増やして「専門家の質を保ちながら裾野を広げる」努力が必要だと思う.
 今後は,単に「コース」の期間だけでなく,大学院教育の中身,博士号の論文審査の前提やそのあり方そのものも変化が求められるだろう.


 日本の博士号取得者につて『「質が低下している」「プライドは高いが視野が狭い」などの企業側の指摘もあり』と報道されている.しかし,私の個人的な意見では,これは企業側で「資格や学位をもつ様々な分野の専門家」等(==ほとんどの場合プライドの高い人材)の活用が上手くできていない言い訳にすぎない.
 「修士ではなく,博士までとると視野が狭い」という意見もあると聞くが,これも,ほとんどの場合ただの「思い込み」に過ぎない.守備範囲の広さや柔軟性は,学歴ではなく個人の「頭の中の姿勢の差」の問題である.
 例えば,経営戦略に関するコンサルタントや大学院の教授として著名な,大前研一氏と,田坂広志氏の経歴上での最も典型的な共通点は,実は,お二人とも「原子力」関係の工学博士号(経営学の博士号ではない)をもち,専門技術者としてキャリアをスタートしたという点である.


 「大学院の改革」も必要だろうが,同時に,学ぶ大学院生自身,博士の職場となる,大学,研究機関,そして企業の側にも「頭の構造改革」が必要だと思う.
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海辺の高層マンションの地盤?

2005-09-07 | Environment
 今週買ったある週刊誌に,ある高層マンションの広告が出ていた.

 ちょっと気になったのは,工法的にどれくらい高度か==安全かという説明だけでなく,地盤についての説明であった.
 地盤的にも,比較的良好な地盤であることの説明に,公的な情報を引用し,また,関係している役所の人間のインタビュー的なコメントまで載せている.それによって,安全性が担保されているかの印象を与えようとしていると思われる.
 
 たとえ,現在の公的な情報では「比較的良好」であっても,それはあるお役所の調査による一つの情報でしかないし,地理や土木の専門家でなければ,情報の信頼性そのものの判断もつきかねる.
 実際には,地下のことは科学的に充分にわからないことが多いのにこんなところで広告に活用してもいいのだろうか?.

 過度に安全を印象づけようとしているような気がして,とても気になった.
 

 関連する話題は,5/13のblogにも書いた
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Theo de Raadt@OpenBSD on Forbes October 2005

2005-09-05 | Software
 先週, OpenBSD の創始者である, セオ・デラード(Theo de Raadt) の印刷された写真を初めてみた.
 なんと,ビジネス雑誌の Forbes 日本語版 (October 2005, pp.106-109) の紙面でである.大きな写真が2枚も出ていて,彼の自宅の地下と思われるマシンルームの様子も判る.

  OpenBSD は,所謂 BSD系 のOSであり,オープンソースのOSの中でも,最もセキュリティと暗号機能に力を入れたものとして知られている.
 その開発中心メンバーである,セオ・デラードは,偏屈な性格や,他のオープンソース開発者との間で色々と軋轢があることでも知られている.
 IT関係で,サーバーの仕事をしている人の多くは,知らないうちに,彼の開発した OpenSSH のやっかいになっている.


 それにしても,IT関係や,ソフトウェアの雑誌ではなく,Forbrs のようなビジネス雑誌に,セオ・デラードが写真入りの記事で取り上げられるというのは,一般にも,ITテロなどが相当懸念されてきているということだろうか?
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秋の読書月間 (3) ITと組織のモジュール化

2005-09-05 | IT
 昨日紹介した2冊につづいて,博士論文の研究をベースとした本.

 筆者の 池田信夫 先生 の経歴は,ちょっと興味深い.東大の経済卒,NHKの報道局等で勤務した後退職し, 慶應SFC 政策・メディア研究科に進み,博士課程を中退して, 国際大学GLOCOM の教授や, 経済産業研究所(RIETI) の上席研究員をへて,現在は,須磨国際学園 情報通信研究所 研究理事. ITNY & パートナーズ というコンサルティング会社のチーフ・エコノミストも務めている.

 池田先生は,私とは専門分野が違うが,偶然にも私と同じ時期の今年のはじめに,慶応大学から「情報通信産業のアーキテクチャーについての研究」で,博士(政策・メディア)の学位を取得している.
 本書は,その博士論文を加筆修正した単行本であり,インターネット時代のITのアーキテクチャと,組織,技術,情報の所有,通信政策,制度設計等について,「モジュール化」をキーワードとして,経済学的な視点から論じている.
 元の博士論文の一部となったRIETI時代の論文にML上でコメントした関係で「はじめに」のおわりの方に私の名前もでている.

 広い意味でのITと経済学,あるいは,ITのおける技術経営について興味のある方にオススメの一冊.



情報技術と組織のアーキテクチャ
池田信夫
NTT出版

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秋の読書月間 (2) 環境思想の歴史

2005-09-04 | Environment
 私は,同業者でも他の分野の専門家でも,同年代の人の書いたものや作品や研究には興味を惹かれる.

 本書の筆者,海上知明(うなかみ ともあき)氏は,私と同じ1960年生まれである.専門分野は異なるが,偶然にも私と同様に,企業に勤務しながら(日常の仕事とは別のテーマで),大学院で博士の学位を取得している.
 知り合いの環境関連分野の研究者から,「昔自分が講師をしていた公開講座をうけていた人が,その後学位をとって,博士論文を単行本としてまとめた本」として,本書を紹介された.
 博士論文の題目は「環境思想の体系と史的分析 : 多様化するエコロジー思想」である.本書は,280ページ以上あるが,「あとがき」によれば,元の博士論文を 1/3 程度に縮小したという....とすると,元の論文のページ数は?


 本書は,環境問題を,経済史,思想史の視点から,分類し体系的にまとめたものである.どんな分野でも,一見,技術の問題と思われる分野でも,思想や歴史的な背景を知ることは非常に重要である.それは,機械や情報通信の分野でも同様だと思う.


 環境問題について,技術や目先のことだけでなく,その背景の思想や歴史についても興味のある方にオススメの一冊.日本には,この手の分野の総説的な本は少ないらしいので,貴重な一冊と言えよう.



環境思想 歴史と体系
海上知明
NTT出版

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