Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

音に色,味に形

2006-04-03 | Cognitive Sc
 自分とは異なる分野の専門家との交流はとても勉強になる.

 先日,音大でピアノの講師をしながら,私の母校で情報学の博士号をとったY先生に,「色聴」(しきちょう:colored hearing) と,「共感覚」(きょうかんかく:synesthesia)という概念について教わった.

 「色調」とは,「音」を聴くと「色」を感じる現象である.絶対音感を持つ人の中には,この「色調」を持つ人が多いらしい.
 「共感覚」とは,視覚・聴覚・触覚・味覚・臭覚などの五感の刺激において,ある一つの系統の感覚の刺激が不随意(本人の意志とは関係なく)に他の感覚と共に感じられる現象である.例えば,味や臭いに形を感じたり,音や言葉に色を感じたりする.色調は共感覚の一種である.

 私は,絶対音感はもっていないが,以前から音に色を感じていた.例えば,オーディオの試聴などをしているとき,高音(12KHz or 15KHz ~)を聴くと,なんとなく世間が「白っぽく見える」,低音では「黒っぽく見える」ように感じていた.また,高音を聴くと,背筋がぞくぞくして「寒い感じ」がすることもあった.さらに,消え入るようなピアニシモの音は,なんとなく灰色ががった色が遠ざかるように感じていた.長い間「気のせい」かとおもっていたこのような感覚は,色聴としては,ごく標準的な現象だということだ.
 Y先生によると,私は「緩やかな色聴所有者」ということらしい.

 Y先生に「共感覚」の入門書として本書を紹介していただいた.冒頭に,共感覚の例として,「味」に「形」を感じる人の話しが出てくる.また,共感覚との関連で,直観映像記憶:写真記憶(撮影したようにはっきりとしたイメージとして残る記憶)の話しが出ている.これらのくだりを読んで,私も似た感覚が少なからずあることをを思い出した.

 全く驚きであるが,私は「緩やかな共感覚者」ということかもしれない.


共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人

リチャード・E・シトーウィック(著),山下篤子(訳)
草思社

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秋の読書月間 (6) 自分を高く売る心理法則

2005-09-15 | Cognitive Sc
 先の日曜日,選挙のあとに,地元の古本屋に寄って,数冊入手.
 その中からの一冊.

 筆者の樺 旦純(かんば わたる) 先生は,心理学者で,産業能率短期大学や同大学経営管理研究所で人事や能力開発,創造性開発の教育や研究をされ,現在は企業などの社員研修や能力開発のコンサルタントをされている.Amazon.co.jp で検索すると,心理学関係の著作が 150冊以上もあり,これまでにも他の著作もいくつか読んでいる.
 
 本書は,正しい自己認識をもち,自信を強め,自分の評価を高めるための,色々なポイントについて,発想法や心理学的アプローチについて,平易な表現で解説している.


 自己認識を再確認したい人,より自信を高めたい人,よりプラス指向の発想法をみにつけたい人に,広くオススメできる一冊.


自分を高く売るための心理法則―不安が自信に変わるとっておきの知恵
樺 旦純
PHP研究所

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# 表紙のシロクマの親子が目をひいた.
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夏休み読書月間 (25) 言語の認知科学入門

2005-08-30 | Cognitive Sc
 昨日に続く,今月入手した,認知科学関連の入門書.
 原題は「Patterns in the mind - Language and human nature」

 本書では,言語をヒトを他の動物と大きく隔てる特徴とし,言語をヒトの心の(==頭の中の)認知活動として位置づけている,認知科学的言語学の入門書.
 「さらに読むひとのために」という,文献一覧も,訳書があるものは訳書が示されており,初学者には親切.

 筆者の Ray Jackendoff 先生 は,MITで言語学のPh.D.を取得した チョムスキー教授 の門下.ブライダス大学教授を経て,現在は,タフツ大学の心理学部の教授で,米国言語学会,米国哲学心理学会の会長を歴任している.

 言語学,認知科学における言語に興味のある方にオススメ.


心のパターン―言語の認知科学入門
レイ・ジャッケンドフ(著) 水光雅則(訳)
岩波書店

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夏休み読書月間 (24) 認知心理学入門

2005-08-29 | Cognitive Sc
  8/15 の blog 8/17 の blog での紹介につづく,今月入手した認知科学関連の参考書.
 まだ,一部しか読んでいないが,紹介する.

 6人の第一線の心理学者,認知科学者,言語学者によって,認知心理学の歴史から,知覚,注意,表象,記憶,言語,問題解決と推論,という幅広いトピックスについて,コンパクトにまとめられている.

 読書案内,参考文献一覧,用語索引,人名索引なども充実している.特に,用語,人名に英文表記がついているのがとても親切である.

 認知科学,認知心理学,実験心理学について,これから学ぼうとうする方にオススメである.



認知心理学―知のアーキテクチャを探る
道又 爾 他(著)
有斐閣

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夏休み読書月刊 (19) 心理学からみた認知科学

2005-08-17 | Cognitive Sc
 土曜日に,Amazon から届いた,認知科学の入門書の一冊.

 心理学,認知心理学の立場からみた,学部レベルの認知科学の入門書.
 11人の第一線の専門家による分担執筆.
 章毎に,完璧な参考文献一覧と,読書案内(推薦図書)が付いているのがすばらしい.

 これから,認知科学を勉強してみようという,すべての人にオススメ.


認知科学パースペクティブ―心理学からの10の視点
都築誉史(編)
信山社出版

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夏休み読書月間 (16) 認知科学への招待

2005-08-15 | Cognitive Sc
  きさらぎけいすけ氏の 8/14 の blog に「ユビキタスネットワーク -- 活かすも殺すも人次第」という記事があった.
 『「客に対する気配り」が無ければ、ユビキタスなネットワークも活かされないだろう』というのは,全くおっしゃるとおりだ.

 システムの設計において「ユーザへの気配り」を充実させるためには,思いやりと心理学や認知科学の知識が不可欠なので,設計者への教育カリキュラムから見直す必要があると考えている.

 個人的にも,システム設計における,認知科学的アプローチに興味があり,参考書を集めている.この土曜日にも,Amazon から,3冊届いた.
 本書は,そのうちの一冊.日本を代表する,各分野の専門家19名による,初学者向けの認知科学ガイドブックである.

 「気配りのある設計」に興味のある人へオススメ.



認知科学への招待―心の研究のおもしろさに迫る
大津 由紀雄, 波多野 誼余夫 (編集)
研究社

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Jason's Library (認知科学)

2005-01-04 | Cognitive Sc
 この数年,認知科学や心理学に興味がある.この春に,いま博士論文をまとめている研究に一区切りつく予定なので,次は認知科学にも本格的に取り組んでみたいと思って,昨年後半から色々なテキストを読み始めた.
 スタンフォード大学の Terry Winograd 先生編著による「ソフトウェアの達人たち」は,ソフトウェアやシステムのデザインに関わる,様々な側面を「認知科学」またはその近傍から俯瞰したオムニバス形式のテキストである.Lotus社の元CEOで,Lotus 1-2-3 の開発者の一人である Mitchell Kapor が心理学を専門に勉強していたことは本書で知った.
 ソフトウェア,情報システム,情報機器のデザインを生業とするすべての人に推薦したい一冊である.


ソフトウェアの達人たち?認知科学からのアプローチ

Terry Winograd 編著

ピアソンエデュケーション


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