Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

日本における,分野別の博士号の授与状況

2007-10-24 | Education
一口に,博士といっても,色々あります.

mixi のあるトピックでの議論で,気になったので,
日本における分野別の博士号の授与状況について,公式の数字を,
情報学研究所の
 学術情報データベース/博士論文書誌データベース
 http://dbr.nii.ac.jp/
で,ざっくりかぞえました.

2007/10/24 現在の検索結果です.
キーワード検索なので,一部に「ダブリ」があるかもしれません.
# 例えば,政治学博士は,国際政治学博士も含んでいます.
# また,たまに,登録間違いもあります.
# 先月,数件発見して報告しました.

このデータベースには,419,698 件の博士の学位論文が登録されています.
# 1957年以降の学位論文の国内で授与された学位論文の大半が登録
# されています.
# どうも,少し調べた範囲では,1970年代までの登録は100%ではありません.
# また,大学によっては,旧制の学位も登録されています.


分野は,博士の学位が「博士(...)」になる前からあったものです.
# 漏れがあるかもしれませんが,メジャーなものは網羅しています.
文系,学術,理工系,医薬関連 の順で,「....博士」の件数の少ない順にしてあります.


確かに,いわゆる文系は件数が少ないのですが,大学院の定員について,同等の粒度の情報がないと,最近でも「学位が授与されにくい」かどうかは一概にはいえません.

私の経験では,理工系でも,30-25年前は,私立大学の大学院で,旧帝国大学出身の先生は,そう簡単には博士号は出しませんでした.
文部省の方針と,旧帝国大学出身の先生の引退の時期とがからみあって,1991-92年ごろから,どの分野も,明らかに,博士号はとりやすくなっているようです.
# 引退前に,滑り込みで,教え子に,博士を出した先生が沢山います.

文系は,商学博士から,博士(法学)までは,思ったよりも少ない感じですが,個人的には,知り合いの先生や,親戚に,商学博士,博士(商学),博士(教育学),博士(法学)がいます.先輩には,文学博士もいますので,「こんなに少ないのか」というのが,正直なところです.


日本で,実際の博士号の件数が,おおまかに分野別にみて,
 
 医学/歯/薬関連 >> 理工系 >> 社会学系 > 人文系

ということになっているのは,確かです.

しかし,文系でも/理工系でも,「大学」「研究科」「担当教授」によって,相当にばらつきがあるというのが,私の実感です.

この数年のみじかな例でいえば,理工系でも,単位取得満了退学で,学位がとれない人もいれば,文系でもちゃんと課程の規定内で学位のとれる人もいます.

大学の教員なのに,学位をもたないまま過ごしている人は,やはり「怠慢」なところがあるかもしれません.
自分の母校や勤務校で,学位がとりにくければ,他の大学あるいは,海外に留学してでも,博士号をとる気があるかどうかということでしょう.
実際に,そのようにして,大学教授として勤務しながら,他の大学,あるいは,海外の大学で学位を取得した例を複数知っています.


----------------------------------------------------

[文系]

芸術学博士 1件
博士(芸術学) 124件

国際学博士 1件
博士(国際学) 12件
博士(国際関係学) 29件

言語学博士 2件
博士(言語学) 123件

仏教学博士 3件
博士(仏教学) 44件

歴史学博士 3件
博士(歴史学) 188件

心理学博士 13件
博士(心理学) 518件

神学博士 32件
博士(神学) 26件

政治学博士/国際政治学博士 55件
博士(政治学) 214件
博士(国際政治学) 9件

経営学博士 163件
博士(経営学) 792件
博士(国際経営) 13件
博士(経営管理) 2件

社会学博士 174件
博士(社会学) 639件

商学博士 449件
博士(商学) 686件

教育学博士 561件
博士(教育学) 1336件

法学博士 1291件
博士(法学) 1573件

経済学博士 1571件
博士(経済学) 2617件

文学博士 2947件
博士(文学) 5297件


[学術]

学術博士 1356件
博士(学術) 7357件


[理工系]

水産学博士 554件
博士(水産学) 853件

農学博士 14943件
博士(農学) 12701件

理学博士 23885件
博士(理学) 19882件

工学博士 35482件
博士(工学) 49061件


[医薬関連]

栄養学博士 9件
博士(栄養学) 200件

保健学博士 345件
博士(保健学) 677件

獣医学博士 1233件
博士(獣医学) 1878件

薬学博士 7338件
博士(薬学) 7148件

歯学博士 11290件
博士(歯学) 10604件

医学博士 110723件
博士(医学) 71091件

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夏休み読書月刊 自分の人生をどう進めるのか

2007-08-24 | Education
色々立て込んでいて,blog の更新がすっかり途絶えてしまった.

いつも,ビジネスや工学の本ばかりを,推薦しているので,少し違うタイプの本を取り上げる.
生き方や人生について,考える良いきっかけを与えてくれるオススメの3冊.



原題は,"You'll See It When You Believe It",すなわち「あなたが(それを)信じれば,(あなたには)それが見えてくる」というような感じで,ここで,it は,人生の夢や目標のこと.原著は1989年の出版.

作者のウエイン・W・ダイナー博士 (Wayne W. Dyer)は,元米国St. John's Universityの準教授の心理学者で,ベストセラー作家.

自分の「未見の力」に気づき,自己実現の人生を獲得するための指南書.

小さな自分で一生を終わるな! (知的生きかた文庫)
ウエイン・W・ダイアー,渡部 昇一
三笠書房

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原題は,"Success is Never Ending Failure is Never Final",つまり「成功には終わりがない,失敗は最後ではない」という感じ.原著は1988年の出版.

作者のロバート・シュラー博士(Robert Schuller)は,米国で著名なキリスト教(プロテスタント)の牧師,ロサンゼルスの郊外にある,クリスタル・カテドラル(Crystal Cathedral)とよばれる大教会の創設者.
TVを通してのシュラー博士の伝道の様子も,クリスタル・カテドラルも思わず引き込まれるものがある.

シュラー博士が提唱している「可能性思考」(The Possibility Thinking) によって,どのように,人生をきりひらくのかについての,アドバイス集.


いかにして自分の夢を実現するか (知的生きかた文庫)
ロバート シュラー,Robert H. Schuller,稲盛 和夫
三笠書房

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原題は,"The Intellectural Life",つまり「知的生活」そのものズバリ.
原著は1873年の出版.

作者の,P.G.ハマトン(Philip Gilbert Hamerton)は,英国人の美術雑誌編集者で,随筆家.

紳士の「知的」生活とは,かくあるべきという,ライフスタイルをのべた書簡形式で綴られたエッセイ集.100年以上の年月を経ても,示唆に富んだ内容である.

知的生活 (講談社学術文庫)
渡部 昇一,下谷 和幸,P・G・ハマトン
講談社

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春の読書月間 「研究する意味」

2007-06-02 | Education
前日、知り合いの先生からお借りして、読んだ本。

以下の、11名の大学や研究所の先生方の対談やインタビューをまとめたもの。
# 肩書きは、出版時のもの

それぞれの、先生が、これまでの研究者としての生い立ちや、研究に取り組む心得や信念等について、述べている。

対談
 小森陽一 東京大学大学院総合文化研究科教授 (監修)
 金子 勝 慶応大学経済学部教授
 高橋哲哉 東京大学大学院総合文化研究科教授

インタビュー
 大澤真幸 京都大学大学院人間・環境学研究科 助教授
 藤原帰一 東京大学大学院法学政治学研究科 教授
 竹村和子 お茶の水女子大学大学院人間文化研究科 教授
 刈谷剛彦 東京大学大学院教育学研究科 教授
 岡 真理 京都大学大学院人間・環境学研究科 助教授
 吉見俊哉 東京大学社会情報研究所 教授
 臼杵陽  国立民族博物館地域研究企画交流センター 教授
 神野直彦 東京大学大学院経済学研究科 教授

 膨大な量の脚注がついており、専門用語等について、読者の理解を助け、新しい分野を勉強するとっかかりにもなるように考慮されている。

 インタビュー記事の中でも、刈谷先生、神野先生の章の記述が参考になった。
 特に、神野先生のやや過激な発言にはとても共感が持てる。浅学のため、本書を読むまで、神野先生を存じ上げなかったが、この本をきっかけに、神野先生の本を何冊か Amazon.co.jp に注文した。

 多少なりとも「研究」に興味のある人、大学院の学生で将来何らかの形で、研究に関わる職業を目指す人には、特におすすめしたい一冊。


研究する意味

東京図書

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 ※小森先生のお名前がまちがっていましたので、訂正いたしました。
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社会人の継続学習のすすめ

2006-07-17 | Education
 友人と共同で計画していたある出版企画が、その友人の紹介による某出版社の企画会議で承認された。

 自分が筆者(共著者)となるのは、久しぶりだ。
 これまで執筆(分担執筆、共同執筆)した、 Mookや単行本は、コンピュータやソフトウェアに関するものだが、今回は、全く違う分野である。
 ある種の「社会人の継続学習のすすめ」にかかわるテーマだ。
 
 私自身は、生来のナマケモノで、小学校から高校まで、いわゆる学校の勉強はあまり一生懸命には取り組んで来なかった。特に、予習復習はほとんどしない生徒だった。

 通常、高校での進学指導は、成績の良い科目に関連した学部学科を主たる進学先としてすすめられることが多いようだ。
 私の場合には、当時の高校の成績からすると社会科学に関連する学科に当然進学すると思われていた。しかし、機械工学に非常に強い興味があったので、英語や数学の成績が不調だったにもかかわらず、無謀にも機械工学科だけを受験した。
 滑り止めに受けた某大学の2部の機械工学科に進学し、2年生にあがるときに1部に転部した。その後、修士課程まで進学した。
 いまになって考えると、機械工学は、ある意味ですべてのエンジニアリング=工学、工業技術の基本となる学問であると思う。結果的には、機械系メーカーには就職しなかったので、高校時代に考えた方向とは少しちがっていたが、最初に機械工学を学んだこと、多くの一流の教授の教えを受ける機会を得られたことは、非常に恵まれていたと思う。
 学部の4年生のとき、自分用の8bitCPUのパソコンを購入したことをきっかけに、コンピュータとソフトウェアに本格的な興味をもったため、修士論文の研究は、流体現象の数値シミュレーションに決め、ほぼ独学で取り組んだ。
 そのころからずっと、私のコンピュータやソフトウェアの知識は、ほぼ独学によるものである。

 修士課程修了後、最初の就職から現在まで、ソフトウェア関係の仕事をしている。いつも「自分は情報工学、計算機科学の出身ではない」ということが頭から離れたことはない。そのことは、ある種の「ひけめ」であり、それが、20数年来、私をコンピュータ/ソフトウェア分野の独習に駆り立て続けてきた原動力であったといえる。
 一方、「自分は機械工学の出身である」というこをと忘れたこともない。高校時代から持ってきた、機械工学への興味とその分野の学習も継続してきた。そのことが、母校の大学院博士後期課程機械工学専攻での博士号取得につながったのだと思う。この二つの分野の、継続的な学習は、足し算ではなくかけ算的効果を相互にもたらしている。
 また、ビジネス/経営の分野についても、日常の仕事の場だけでなく、色々な形で学習してきた。


 そのような私の経験と、友人(共著者)の異なる分野での異なる経験と知見を、ふまえた上で「社会人の継続学習のすすめ」のある種の型について、まとめてみようと思う。


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相乗効果

2006-07-09 | Education
 最近、ビジネスモデル、マーケティング等の分野を専門に研究している人から色々と教えてもらう機会がある。

 自己紹介にもあるように、私の、学術的な専門は、工学、特に、機械、流体、交通、エネルギー、環境等の分野であり、日常の生業としての専門は、ソフトウェアや情報システムである。

 当然、カテゴリあるいはドメインとしての専門分野は、お互い異なるわけだ。
 しかし、自分とは異なる専門分野の人と、情報交換したり、相手の専門分野について少し教えてもらったりすると、様々な効果がある。


 まず、どんな分野でも、現在それを研究しているその分野専門家から、直に、ホットな話題を直に聞くことがその分野の勉強の一番の早道である。話しを聞く前後で、その人が書いた論文や著作を読んだり、そこに上げられている参考文献を見たりすると、さらに理解が進む。

 もし、幸運にもその専門家の書架を魅せてもらう機会があれば、さらにすばらしい効果がある。自分が少しでもその分野について既に知っていていくつか参考書をもっていれば、自分の書架になにが足りないのか、次にどんな参考書に目を通すべきなのか判る。

 本屋にはいっても、書籍や雑誌を物色しているとき、その専門家から見聞きした情報が頭にのこっていると、そこからくるある種の連想から、その分野に関係する雑誌や本へのアンテナが敏感にしてくれる。

 そのようにして、仕入れた、他の専門分野の文献や知識は、不思議なことに、自分の専門分野においても参考になる情報や知見を沢山与えてくれる。
 また、知的刺激にバラエティが増えるためか、色々な場面で柔軟なアイデアが出るようになるという効果もあようだ。

 そのようなことから、気分転換の読書には、自分の主な専門とは違う分野の本をよむことが多い。これが、また相乗効果を助長するようだ。


 以前にも、地学や水環境の専門家と知り合いになったとき、生化学や抗生物質の大家と知り合いになったときにも、とても大きな効果があった。

 もちろん、自分の専門分野の日々の勉強、すなわち継続学習は当然必要である。しかし、専門以外の分野を少しづつでも専門的に勉強すると、自分の守備範囲も少しづつ広がるし、自分の専門分野にも様々なすばらしい相乗効果がある。


 これからも、色々な専門家の人から、どんどん教えてもらおう!!


追記:
 すっかり忘れていましたが、2005/7/11のブログで、同じテーマの記事がありました。

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ヨーロッパの学位と米国流

2006-06-12 | Education
 この blog や,mixi の中のコミュニティで,学位について色々と書いているせいか,学位制度等について,相当に詳しいと思われているのかもしれない.
 

 日曜日に,マイミクでない人から,mixi のメールで
 「オーストリアのディプローム/マギスターの学位が,修士相当かどうか,日本とオーストリアで意見が別れている」
 ことについて,コメントを求めるメッセージをいただいた.

 私は教育システムや学位制度の専門家ではないが,判る範囲で答えることにした.
 ドイツ圏の事情についてはある程度は知っていたが,念のため,オーストリアとドイツの学位制度などについてインターネット上の資料を再度確認してから,少し前に返信した.

 折角なので,その返信の内容に加筆修正して,今日の blog の記事にすることにした.


 まず,何度も書いていることだが,教育システム,特に大学や大学院の教育システムは,異なる国(異なる文化圏の国)同士では,先進国同士でくらべても,内容的に互換性が無い部分が少なくない.
 また,日本の教育システムは,戦前は,当時の英国/ドイツの影響をうけており,戦後は(敗戦後のGHQの占領政策により)米国の影響を受けている.

 オーストリアとドイツは,歴史的/文化的な理由で,似通った教育システムになっている.歴史的には,オーストリアの方が先に発展した経緯があったためか,大学も,
 オーストリア最古 ウィーン大学 1365年設立
 ドイツ最古 ハイデルベルグ大学 1386年設立
と,ウィーン大学の方が古い.
 元々,ディプローム(Diplom)とマギスター(Magister)は,オーストリアでもドイツでも,大学卒業を示す学位であった.ディプロームは主に自然科学系,マギスターは主に人文科学系の分野の学位である.
 これらは,最短で4年で取れることになっているが,一般的には4-6年かかると言われている.つまり,平均5-6年だと思えば,修士相当という認識もうなづける.
# ドイツでは,大学の前に兵役がはいる.

 しかし,このオーストリア/ドイツ独自のディプローム/マギスターの制度は,ヨーロッパの高等教育の共通化のためのボローニャ宣言(1999)という協定によって,米国風のバカロレア(Bakkalaure),バカラウレウス(Bakkalaureus)すなわちバチュラー(Bachelor)とマスター(Master)のシステムに移行することになっている.


 オーストリアでもドイツでも,大学進学率は,日本の水準よりもだいぶ低い.オーストリアでは25%程度,ドイツでも20%強程度であるらしい.これは,若いうちに,職業とそれに学校を選ぶ社会システムになっているためである.
 つまり,大学へ進学する人の層が,そもそも,日本や米国とはちがっていて,既に「選別された人々」==社会的なエリート候補になっていると考えた方が良いだろう.
 また,オーストリアでは,大学の前の課程であるギムナジウム(Gymnasium)の最終試験が難しく,大学入学資格試験となっているので,通常は,大学の入学試験はない.

 近年,EUの統一や米国の文化的な浸食などによって,オーストリアやドイツの大学進学率はあがってきているようですが,現時点で20-25%程度ということは,日本なら1970年代の水準と言える.
 現在,日本の大学進学率は,男子では既に46-7%程度であり,米国は62-67%の範囲である(年によって結構違う).つまり,日本や米国では,学士の学位は,相対的ににインフレしていると言える.

 先のボローニャ宣言対応による,ディプローム/マギスター制度を,国際化==英国/米国風の学士/修士にするにあたって,バカロレア,バカラウレウス(学士)の最低終了年限が3年(平均は3.5年程度らしい)となり,このごろのドイツ語圏の産業界では,特に理工系の場合,学士の平均的な実力が,従来のディプローム/マギスターのレベルに劣っていることが社会問題となっているらしい.


 これらのことから,一般論としては,(ボローニャ宣言対応の問題がどうあれ),旧来のディプローム/マギスターの学位が修士相当であるというのは,少なくとも欧米では,通常の認識であると考えて差し支えないと思う.
 このような場合,現在の日本では,米国以外の海外のことを知らない人が多いことも問題かもしれない.

 学位は,単純に最短修了年限の比較ではなく,その背景や内容を総合的に判断する必要があるだろう.
 たとえば,日本の旧制大学は,3年の課程だったが,実際の旧制大学卒業の先生方の若いころの業績をみると,殆どの場合,旧制の学士は現在の修士レベル相当であったと考えて差し支えないと思う.これは,旧制の大学だけでなく,旧制高校の内容が高い水準であったことによると考えられる.
 また,米国の場合医師(Doctor of Medicine, M.D.)になるには,
  学部4年(物理学・化学・生物学の履修必須)
  大学院メディカルスクール(4年)
で,普通8年かる.これに対して,日本の医学部は6年の課程である(卒業後研修は2年間なので,それを入れてやっと米国並みとなる).この 2年の差は,日本で医学部を出て(国家試験もとおって)から,すぐに米国の大学へ留学するときに,問題になることがあるらしい.


 全く別の視点の話しとしては,大学/大学院の国ごとのシステムが少なからず違うにも関わらず,博士号(doctor's degree)への認識は,先進国ではほとんど統一的に確立している(概念として,互換性がある)と言える.
 つまり,どこで学位を取ったかに関わらず,「修士以下ではなく,博士号相当の学位があるかないか」で,はっきりと峻別されることだけは間違いない.




参考文献

http://www.jasso.go.jp/study_a/oversea_info_14.html
http://www.jpf.go.jp/j/japan_j/oversea/kunibetsu/2004/austria.html

http://www.jasso.go.jp/study_a/oversea_info_12.html
http://www.jpf.go.jp/j/japan_j/oversea/kunibetsu/2004/germany.html
http://www.ovta.or.jp/info/europe/germany/07policy.html

http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/200511_658/065804.pdf
http://www.jsps.go.jp/j-news/data/kaigai02/27.pdf
http://www.svrrd2.niad.ac.jp/journal/journal_no11/sno11_4.pdf

http://en.wikipedia.org/wiki/Master%27s_degree
http://en.wikipedia.org/wiki/Doctor%27s_degree
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%A6%E4%BD%8D
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数学界の長老,彌永昌吉先生,100歳で逝去

2006-06-05 | Education
 インターネット上ではほとん報道されていないようだが,東京大学名誉教授,日本学士院会員、日仏会館顧問、元学習院大学教授の彌永昌吉(いやながしょうきち)先生 が,亡くなられたことを知った.
 ついさきほど,偶然にも勤務先の近くの交差点(文京区,千石一丁目)で,「彌永昌吉式場 東京諸聖徒教会」という立て看板を発見したのだ.

 彌永先生は 高木貞治先生 の門下で,日本数学界の最長老のお一人であった.日本人ではじめて,フィールズ賞を受賞した 小平邦彦先生 をはじめとして,多くの著名な数学者の指導教授としても知られている.
 
 90歳を過ぎてからも,ガロアの論文の解説書を執筆されるなどの活動をされており,昨年は, 8/14 の blogで紹介した 「若き日の思い出 数学者への道」という半生記も出版された.
 つい,この4月にも,6年がかりでまとめたという,フランス語で61ページの論文が 日本数学会の「日本数学誌」に採録となった ことが話題になったばかりだ.100歳の長老学者の論文が,理工系の学会に掲載されるというのは,世界的にみても非常に稀なことである.


 心からご冥福をお祈りします.


 
 
ガロアの時代 ガロアの数学〈第1部〉時代篇
彌永昌吉 著
シュプリンガー・フェアラーク東京

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ガロアの時代 ガロアの数学〈第2部〉数学篇
彌永昌吉 著
シュプリンガー・フェアラーク東京

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研究者と研究方法 モデルとアドバイス

2006-05-15 | Education
 先週入手した本。偶然だが、どちらも「共立出版」の書籍である。
 共立出版は、創業80年の科学や工学の分野に強い出版社である。情報系の分野では、2001年4月号で休刊になった「bit」という月刊誌が有名であった。バイオ系では50年の歴史をもつ「蛋白質 核酸 酵素」がよく知られている。
 

 「研究者のテイスト」は、1988年に「 bit 」に連載されていたもので、筆者の鈴木則久氏は、当時、日本IBMの東京基礎研究所の所長を務めていた。現在は、米国でビデオサーバーなどを開発している Zaxel 社 の CEO を務めている。鈴木氏は、現在の多くのコンピュータで活用されている、スヌープ・キャッシュという、メモリ管理方式の共同発明者である。
 先週、Amazon.co.jpで、なにか別の本について、検索していて、偶然発見。
 連載等当時は、とても熱心に読んだ記憶がある。1990年に出た単行本は、すでに購入済みであるような気もしたが、すくなくとも、いまの家に引っ越してからは見た記憶がないので、とりあえず注文。

 鈴木氏の経験と当時の最新の技術動向などをあわせて解説し、研究者(大学だけでなく、企業における研究者も含めて)、特にコンピュータサイエンス分野について、研究や研究開発をする研究者/技術者のあるべき姿を説く。

 1章 計算機の科学研究を志す
 2章 研究者としての独り立ち
 3章 西暦2000年の計算機
 4章 科学的RISC論
 5章 パーソナル・スーパーコンピュータの技術
 6章 オブジェクト指向言語の動向
 7章 研究所の運営
 8章 3次元グラフィックス
 9章 プログラミング・エンバイロンメント
 10章 パーソナル・コンピュータの将来を予測する
 11章 行列の掛け算を現実の計算機で行なうには
 12章 急速な技術の進歩

 15年も前の本だが、現在よんでも、示唆に富んだ部分が少なくない。


 もう一つの「グリンネルの研究成功マニュアル」は、 テキサス大学サウスウエスタン医療センター Frederick Grinnell先生 による、研究者/科学者ガイドブック。
 翻訳は、「白楽ロックビル」のペンネームをもつ、お茶の水大学の林 正男教授
 こちらも、紀伊国屋本店で、他の本を検索していて偶然発見。表紙だけみて購入。
 日本語版は、1998年の初版、2005年で6刷なので、バイオ/医療系の若手研究者の間ではよく知られている本のようだ。

 グリンネル教授が長年の経験をふまえて、主に大学や公的な研究機関での、科学者、研究者の業界や生き方について、幅広いトピックについて解説している。各トピックの最後に、まとめとして「グリンネルの教訓」というコラム風のひとことがある。
 元々、米国の大学院や学会の仕掛けを前提に書かれているが、白楽先生が翻訳時に日本の事情も考慮してアレンジしている部分もあるようだ。

 第1章 研究は普通の人間の普通の行為
 第2章 観察するとはどーいうことか
 第3章 実験のデザインとデータの解釈
 第4章 学会・大学院・研究室とはこんなところだ
 第5章 いい評価を得る
 第6章 科学には不正、落とし穴、危険がいっぱい
 第7章 科学も社会の一部である

 これから大学院をめざす学部生だけでなく、すでに博士号をとった人にも役に立つアドバイスが満載。
 バイオ/医学系以外の人にも参考になる。


研究者のテイスト―1990年代のコンピュータ
鈴木則久(著)
共立出版

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グリンネルの研究成功マニュアル―科学研究のとらえ方と研究者になるための指針
Frederick Grinnell(著)、白楽ロックビル(訳)
共立出版

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「不確実性の時代」ガルブレイス先生を偲ぶ

2006-05-02 | Education
 ハーバード大学名誉教授の ジョン・ケネス・ガルブレイス (John Kenneth Galbraith) 先生は,20世紀を代表する経済学者である.そのガルブレイス先生は,残念ながら,2006/4/29 97歳で逝去された.

 世界的な大ベストセラーとなった「不確実性の時代」(THE AGE OF UNCERTAINTY) の邦訳は1978に発売された.当時高校生だった私は,なぜかガルブレイス先生と本書にとても興味があり,購入して熟読した.当時私は,ビジネスマンや大学生が読むようなたぐいの本を色々と読んでいた.
 翌年1979年の春に発売された,「ほとんどすべての人のための 現代経済入門」ジョン・K・ガルブレイス(著),ニコル・サリンジャー(著),鈴木哲太郎(訳)[現在入手困難]も,すぐに購入して読んだ.

 「不確実性の時代」と「現代経済入門」は,私が読んだ,経済学者が書いた最初の本となった.
 経済学は私の専門ではないし,もちろんハーバードに留学して講義を受けたわけでもないが,私にとっては,ガルブレイス先生が,最初の経済学の教授であった.


 「不確実性の時代」の監訳を担当され,日本の20世紀を代表する経済学者であった, 都留重人先生 も,2006/2/5 に逝去された.

 ガルブレイス,都留両先生のご冥福を祈るりながら,「不確実性の時代」と「現代経済入門」をもう一度読んでみよう.


不確実性の時代 (上)
都留重人監訳,斎藤 精一郎訳
講談社
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不確実性の時代 (下)
都留重人監訳,斎藤 精一郎訳
講談社
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ガルブレイスわが人生を語る

日本経済新聞社
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23年前の約束

2006-03-27 | Education
 土曜日に,母校のある会合に出席した.
 その会は,母校で博士の学位を取得した人,あるいは,母校の出身者で他の大学から博士の学位を取得した人で構成されている,いわば,博士号取得者のOB会である.

 その会合の懇親会に,前理事長のH先生が来賓として出席されていた.
 H先生は,東大の出身で,若いころは母校で助教授,教授を務められ,その後東大で教授となり,東大を定年して東大名誉教授となってからは,母校で再び教授,主任教授,さらに,学長,理事長を歴任された,80代半ばの大先生である.


 23年前,学部4年生の秋,修士課程への進学を審査する面接試験があった.その面接試験は,私の所属する学科の殆どの教授が出席されていた.H先生は丁度東大を定年して教授として復帰し,わたしの指導教授のとなりに座っていた.何人かの先生の質問のあと,H先生は最後の質問として以下のようなことをおっしゃった.

  「君は,修士に進んだあと,博士までやる気はありますか?」

 私はちょっとドキッとした.それほど,自信があったわけではないが,以下のように答えた.

  「はい.修士修了後すぐには無理かもしれませんが,最終的には博士号を目指しています.」

 このやりとりは,H先生との約束として,私の頭の片隅にいつもとどまっていた.
 5年前の博士課程の入学の口頭試問でも,私はこの約束のことを説明した.


 懇親会の中盤,私は窓際に腰掛けられていたH先生の前に進み,身をかがめながら名刺を出して自己紹介した.そして,23年前のH先生とのやりとりを説明し,昨年博士号を取得できたことをご報告した.H先生はもちろん23年前のことはすっかり忘れておられたが,それでも大変喜んでいただけた.

 23年前の面接に参加していた先生方の殆どはすでに他界されている.修士論文の指導教授や副査の先生方もすでに他界された.昨年の学位取得時には,それぞれの先生の御霊前へのお手紙と論文での報告となった.

 今回,お元気なH先生に,直に学位取得を報告し23年前の約束を果たしたことは,とても幸いなことであると思う.

 
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米国,国語,満州

2006-03-06 | Education
 最近は, 昨年 12/18の blog で紹介した「国家の品格」でベストセラーランキングに名を連ねる,お茶の水女子大教授 藤原正彦 の新旧のエッセイの中から2冊.
 
 「若き数学者のアメリカ」は,藤原先生が1972年から,米国ミシガン大学に研究員として招かれ,そこからさらにコロラド大学の助教授となったときのさまざまな話しを綴ったもの.米国での3年間の体験を,独特の語り口で生き生きと伝えている.
 1972-74年ごろの話しなので,現在とは違う部分もあるが(特に,ベトナム戦争の影響の等),全体的にとても楽しく読める.
 英語の話し,人種の話しなどは,私も同じような体験をもっているので非常にリアリティを感じた.

 「祖国とは国語」は,国家の根幹を,国語教育にあるとする「国語教育絶対論」をはじめとして,新聞や雑誌にかかれた色々なエッセイのオムニバス.
 近年,ドイツでも「国力の低下は国語力の低下から」といわれているらしい.
 私の父親の家族も朝鮮からの引き上げ者だったので,母親との出生地訪問の旅を綴った巻末の「満州再訪記」は特に感慨深いものがある.


 いつもは,仕事関係の本や専門の本ばかり読んでいる方に,お勧めの教育的示唆に富んだエッセイ.


若き数学者のアメリカ
藤原正彦
新潮社

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祖国とは国語
藤原正彦
新潮社

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79歳11ヶ月の博士号!65歳からの挑戦!

2006-01-16 | Education
 数日前に,高校の恩師のO先生から,少し遅めの年賀状が届いた.その恩師は,生物の教諭で,2年,3年と担任としてもお世話になった方だ.

 年賀状には
 「お世話になり,ご心配いただきました学位は,昨年の11月22日,80歳の誕生日の一週間前に取得しました.」
 とあった.

 O先生は,25-30年ぐらい前の時点で,既に経験20余年のベテラン生物教師だったけでなく,日本に生息している植物の分類にかけてはフィールド研究者として第一人者だった.私が高校生のころ,聞いたところでは,当時既に 6000以上の植物を同定できるとおっしゃっていた.
 都立高校退職後も,私立の高校の嘱託などをしながら,植物の分類とそのデータベースついて,長年の研究の成果から何本も論文を発表し,それを博士論文としてまとめてて,博士号が授与されたのだ.

 大学教授でも引退間際に博士論文を提出して博士号を取得するという話しははあるが,引退後に,実際に博士論文をまとめて,79歳と11ヶ月で博士号を取得するというのは,理系の分野では極めて珍しいことだと思う.

 この恩師のように70歳を過ぎても80歳に近づいても,大きな仕事ができるように精進したいものだ.

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 この土曜日は,色々とお世話になっている,K大学のS教授の最終講話と懇親会があった.
 S教授は日本の大学での研究にUNIXを導入した第一世代の先生である.ソフトウェア工学やOSの専門家で,最近は,広い意味でのITやメディア学等も研究されてる.
 K大学では,学部長や常任理事まで務められた重鎮である.

 そのS教授は,K大学を退職されて,今度は,別のK大学でこの4月から新設される新しい学部の学部長としてその立ち上げを指導されるという.

 S教授は,最終講話の中で,「これまで,K大学でできなかったことやり残したことに,(移籍先のK大学の)新しい学部で)どんどん挑戦していきたい.」とおっしゃっていた.

 65歳といえば,普通であれば私立大学でもあと数年で定年である.
 65歳になっても,新しい環境で新しいことに挑戦できる,エネルギーと好奇心を養っていこう!!




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自分を磨く方法

2006-01-04 | Education
 年末に購入した数冊のうちの一冊.

 原題は,「The Portable Pep Talk: Motivational Morsels For Inspiring You To Succeed」.
 著者の Alexander Lockhart は,成功哲学や自己啓発について講演や研修をしている作家.
 出版元の ディスカヴァー21 は,「視点を変える 明日を変える」をミッションとするユニークな出版社.

 50の章に,自分の「可能性」や「自信」「自尊心」について,問いかけなおす,色々な言葉が満載.エピソードや引用もとても良い.
 原書は読んでいないが,訳文は非常にスムースで訳語の選択に好感がもてる.

 
 各章の表題とその順序に「意味」あると思うので,あえて目次は紹介しない.
 一般向けの本としては,私が昨年購入した本の中で,『ベスト3』に入ると思う.

  2005/11/15 の blog で紹介した『限界を突破する「学ぶ技術」』とは全くタイプの違う本だが,自分を成長させたいと思う人には,どちらも,自信を持ってお勧めできる.


自分を磨く方法
アレクサンダー・ロックハート 著,弓場隆 訳
ディスカヴァートゥエンティワン

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未来への投資としての教育

2006-01-02 | Education
  2006/1/2のきさらぎけいすけ氏の blog に「日本の理工系学生は、アメリカの大学ではついて行けない?」という記事があった.
  京都大学経済研究所教授の西村和雄 先生 の新聞への投稿について,以下のように紹介されていた.

 『昨年12月27日付産経新聞「正論」で、京都大学の西村和雄教授が「ゆとり教育見直しの手綱を緩めるな」と題した議論を展開していた。』
 『タイトルそのものの主張だったが、その根拠として彼が挙げた一例には驚いた。彼の後輩から、「大学院生をアメリカに留学させようとしても、最近はどの大学院も入学許可をくれなくなった」とのメールが入ったというのだ。さらに西村氏は、「かつて『正論』でも書いたこともあるが、日本人学生を入学させても、ついてゆけないし、かわいそうだという評価がアメリカの大学では定着している。」と続けていた。』という.

 西村先生は,元日本経済学会会長,日本経済学教育協会会長,Economic SocietyのFellowであり,日本を代表する経済学者として著名なだけでなく,「分数ができない大学生」(岡部恒治,戸瀬信之氏と共編,東洋経済新報社,1999年.)をはじめとして,日本の学生とくに大学生の学力低下に警笛をならし続けてきた.
 また, 「 21世紀人材育成フォーラム」 の代表, 「教育フォーラム」 所長,「ゆとり教育」に反対する学者らでつくる「2002年度からの新指導要領の中止を求める国民会議」の代表幹事として,教育問題に関して積極的に活動している.
 2005年には,小学生向けの新しい数学の参考書(指導要領に準拠していないのでその意味では教科書ではない)『学ぼう!算数』(岡部恒治氏と共著,数研出版.)のシリーズを執筆している.


 文部科学省の「ゆとり教育」の基本的な失敗は,議論するまでもなく明らかだろう.
 我国は,豊富な地下資源,有り余る水力資源,十分な農業用地等のどれももっていない.我国の最も重要かつ強力な資源は「高い識字率と教育」に支えられた「人材」だけである.また,「教育」だけが「未来への投資」であり,これに手を抜いて,未来が拓けるわけがない.

 もちろん,「教育指導要領」だけでなく,教員の質,高校入試や大学入試のシステムにも問題があろう.また大学の講座制のシステムや,国公立の大学や研究機関の幹部の人事の問題もあろう.さらに,文部科学省の人材,教育や科学への予算配分の問題も明らかである.
 私見では,まず,日本の子供や学生には「自分達は(世界的に見て)恵まれた環境にある」ということを,ちゃんと教えるべきだと思う.
 日本の大都市での学生の生活をとりまく環境は,全く「特別な」もの(もちろん良い話しだけではないが)である.インターネット対応のG3携帯電話も,コンビニやファーストフードでのアルバイトの8-10ドルの時給も,この星のほとんどの学生には得られない環境である.

 そういう状況認識を然るべき行動の前提として教えなければ,大学院へ進学しても,海外へ留学しても,緊張感や向上心を維持できるとは,とうてい思えない.


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「情緒と形」 「論理と合理性」

2005-12-18 | Education
 本書は, 日経ビジネス の2005.12.12号の 伊藤洋一氏 の書評をみて土曜日の午後購入.

 11/20 の初版から12/10までの20日間で,すでに,5刷.
 Amazon.co.jp 売上ランキングは「本で43位」と快走中.

 筆者の 藤原正彦先生 は,お茶の水大学理学部教授の数学者だが,数学の本ではない.

 「欧米にしてやられた近代」への認識から出発して,欧米による「自由,平等,民主主義」を疑い,「情緒と形」が日本の特質と説く.論理を操作する学問である数学の世界にいる先生だからこそ,論理や合理だけに立脚する弱点がよく判るということかもしれない.

 目についたキーワードには,以下のようなものがある.

 「ならぬことはならぬもの」
 「卑怯を憎む心」
 「総合判断力」
 「外国語より読書」
 「理系の学問における美的情緒の重要性」
 「識字率と国の底力」
 「美の存在と天才」
 「異常な国,日本」


 一部に「確信犯的な論理の飛躍」的記述があるが,私の日常的な考え方と一致している意見が多いので,ちょっと驚いた.
 また,p.85 の「GHQのハーグ条約違反」については,浅学のためこれまで知らなかった.これは,中学の歴史の時間にちゃんと教えるべきだと思う.


 日本や世界の現状に疑問をもつすべての人,また,若い世代に強くお勧めしたい,一冊.


国家の品格
藤原正彦
新潮社

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