カナダのMcGill University の経営学の教授である ヘンリー ミンツバーグ(Henry Mintzberg)先生 の 「Managers Not MBA: A hard look at the soft practice of managing and management development」の翻訳を入手した。
経営学を専門とする知人が本屋いくというのにつきあって、一緒に書棚をみていたら発売直後の本書を偶然発見。
ミンツバーグ先生は、経営学、特に組織論や戦略論では、著名な研究者、教育者である。経歴が少しかわっていて、最初は、カナダの2つの大学で、機械工学の学士、教養の学士(夜学)をとって、それから、MITで経営学の修士と博士をとっている。
日本では社会人向けにMBAスクールが花盛りだが、欧米ではMBA的なマネジメントの限界がささやかれている。
本書は、単なる在来型のビジネススクール(経営管理学修士:MBAを出す大学院)での教育の問題へのアンチテーゼではない。MBA取得者の分析的マネジメントの問題から、マネジメントやリーダシップの本質、その教育と学習について、様々な角度から論じている。中盤で、繰り返しのべられるキーワードは「省察」と「文脈からの判断」である。
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目次
はじめに
PART1 MBAなんていらない
第1章 間違った人間
マネジメントは実践である
MBAの入学者選考における「職務経験」
時期が間違っているだけ?
入学者選考の茶番
経営する意思vsビジネスへの情熱
第2章 間違った方法
ビジネス教育の歴史
・ビジネス教育のあけぼの
・アカデミズム重視への回帰
問題だらけのMBA教育
・業務機能が覇権を握った
・マネジメントはどう教えられているのか?
・分析至上主義の横行
・ソフトスキルはどこへ消えた?
ビジネススクールの教育方法
・「現実世界」を追い求めて
・学生がおこなうビジネスゲームの実態
・フィールドワークはそんなに素晴らしいのか?
ハーバード流ケースメソッドの功罪
・ハーバードの授業でやっていること
・ケースメソッドに異議あり
・「ボック報告書」の衝撃
ビジネス教育方法論の収斂
第3章 間違った結果(1)――教育プロセスの腐敗
学生はどう思っているのか?
自信―能力=傲慢
ビジネススクールの無責任商法
ビジネススクールの最大の関心事とは?
第4章 間違った結果(2)――マネジメント実務の腐敗
「現実」世界への跳躍
・教育への投資に見合う就職
・なぜ、MBAがホットなのか?
・コンサルタントと投資銀行家の「花嫁学校」
・MBA学生の人気就職先
・コンサルティング会社にも見離された?
・生産や販売にはノータッチ
マネジメントは迂回
・重役室の傭兵たち
バランスを欠いたマネジメント
・マネジメントに必要な三要素
・MBAのアンバランス
・計算型マネジャーの実態
・ヒーロー型マネジャーの台頭
MBAの成績表
・CEOの座に就くことには成功
・問題はトップでの仕事ぶり
第5章 間違った結果(3)――既存の組織の腐敗
「探検」と「開拓」
マネジメントの2つのカルチャー
MBAが日用消費財産業を好むわけ
起業家として成功しているか?
ハイテク起業家としての存在感
ハイテク企業のCEOに就任するMBA
MBAは新しい時代の「官僚」
第6章 間違った結果(4)――社会制度の腐敗
正統性を欠くリーダーシップ
バランスを欠いた社会
政府も非政府組織もMBAに任せろ?
リーダーシップに関する二つの考え方
第7章 新しいMBA?
MBA教育という支配的デザイン
エグゼクティブMBAの実態
MBAの革命?
教育テクノロジーの変化
国際化の進行
ビジネススクールの本業
世界のビジネス教育
ヨーロッパにおける専門分化
イギリスの新しい取り組み
二つの対照的なプログラム
MBAの「B」と「A」の断絶
PART2 マネジャーを育てる
第8章 企業のマネジャー育成
マネジメント教育とマネジャー育成
ぶっつけ本番
異動させて、助言して、見守る
・計画的人事異動
・メンタリング
・モニタリング
・日本のOJT
マネジャー育成のブッフェ
・娯楽、「教えること」、トレーニング、学習
・カスタマイゼーション
・リーダーシップ・プログラム
・ビジネススクールのプログラム
・新しい取り組み
アクションラーニング
・レバンス流アクションラーニング
・MiLのアプローチ
・GEのワークアウト
・アクションはもう十分?
企業内大学
・企業内大学の未来
日本流とアメリカ流
・マネジメントは「不自然」な行為?
専門分野の枠を越えてマネジャーを育てる
第9章 マネジメント教育の構築
まったく新しいアプローチ
定石1「マネジメント教育の対象は、現役マネジャーに限定すべきである」
定石2「教室では、マネジャーの経験を活用すべきである」
定石3「優れた理論は、マネジャーが自分の経験を理解するのに役立つ」
定石4「理論に照らして経験をじっくり振り返ることが学習の中核をなす」
定石5「コンピテンシーの共有は、マネジャーの仕事への意識を高める」
定石6「教室での省察だけでなく、組織に対する影響からも学ぶべきである」
定石7「以上のすべてを経験に基づく省察のプロセスに織り込むべきである」
定石8「カリキュラムの設計、指導は、柔軟なファシリテーション型に変える」
関与型のマネジメントを実現するために
第10章 マネジャーの育成(1)――IMPMプログラム
IMPM(国際マネジメント実務修士課程)
地理上の基本設定――本当の意味での国際性
構造上の基本設定――バランスの取れたパートナーシップ
概念上の基本設定――マネジメント志向のマインドセット
方法上の基本設定――省察志向の教室
第11章 マネジャーの育成(2)――五つのマインドセット
モジュールの設計
・モジュールの一般的な構造
第1モジュール――自己のマネジメント(省察のマインドセット)
第2モジュール――組織のマネジメント(分析のマインドセット)
第3モジュール――文脈のマネジメント(世間知のマインドセット)
第4モジュール――人間関係のマネジメント(協働のマインドセット)
第5モジュール――変革のマネジメント(行動のマインドセット)
第12章 マネジャーの育成(3)――職場における学習
リフレクション・ペーパー
チュータリング
セルフスタディー
マネジャー交換留学
ベンチャー
メジャー・ペーパーと学位
第13章 マネジャーの育成(3)――学習のインパクト
IMPMは割にあうのか?
IMPMの二つのインパクト
IMPMには効果があるのか?
残された課題
第14章 マネジャーの育成(5)――イノベーションの普及
現役マネジャー向け修士課程の位置づけ
IMPM的アプローチの普及
非営利組織向け修士課程プログラム
Eラウンドテーブル
企業向けの短期プログラム
上級リーダーシップ・プログラム
IMPMのイノベーションに不可欠な要素
「境界」でマネジャーを教育する
第15章 本物のマネジメントスクールをつくる
アカデミックな機関の特権
MBAの「M」と「B」と「A」
・専門分野に特化したプログラム
・現役マネジャー向けの総合的なプログラム
・現役マネジャー向けの非学位取得型プログラム
・学部レベルのプログラム
・年長者向けの博士課程プログラム
学術研究の果たす役割
・アカデミックな成果を求めて
・学問的厳密性と実用性
・研究に役立つ教育
・大学との結びつき
マネジメント/ビジネススクールをつくり変える
・「四〇対四〇対二〇」以外の道
・終身在職権の落とし穴
・縦割りを克服する
・基礎的学問分野の位置づけ
・「変革の担い手(チェンジ・エージェント)」を変革する
注釈
引用参考文献
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個人的には、最後の15章がとても参考になった。
550ページの大冊なので、全体を一気によむのはちょっと大変だが、章ごとにうまくモジュール化されているので興味のある章を先に読みすすめることもできる。このボリュームと内容で 2800円+税 はお買い特である。
翻訳もこなれている。注釈もすべて翻訳されている点はりっぱ。
経営学やその教育だけでなく、広い意味で、マネジメントとリーダーシップ、人材の教育や学習に興味のある方、現在、マネジメントに関わっている方にオススメの一冊。
経営学を専門とする知人が本屋いくというのにつきあって、一緒に書棚をみていたら発売直後の本書を偶然発見。
ミンツバーグ先生は、経営学、特に組織論や戦略論では、著名な研究者、教育者である。経歴が少しかわっていて、最初は、カナダの2つの大学で、機械工学の学士、教養の学士(夜学)をとって、それから、MITで経営学の修士と博士をとっている。
日本では社会人向けにMBAスクールが花盛りだが、欧米ではMBA的なマネジメントの限界がささやかれている。
本書は、単なる在来型のビジネススクール(経営管理学修士:MBAを出す大学院)での教育の問題へのアンチテーゼではない。MBA取得者の分析的マネジメントの問題から、マネジメントやリーダシップの本質、その教育と学習について、様々な角度から論じている。中盤で、繰り返しのべられるキーワードは「省察」と「文脈からの判断」である。
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目次
はじめに
PART1 MBAなんていらない
第1章 間違った人間
マネジメントは実践である
MBAの入学者選考における「職務経験」
時期が間違っているだけ?
入学者選考の茶番
経営する意思vsビジネスへの情熱
第2章 間違った方法
ビジネス教育の歴史
・ビジネス教育のあけぼの
・アカデミズム重視への回帰
問題だらけのMBA教育
・業務機能が覇権を握った
・マネジメントはどう教えられているのか?
・分析至上主義の横行
・ソフトスキルはどこへ消えた?
ビジネススクールの教育方法
・「現実世界」を追い求めて
・学生がおこなうビジネスゲームの実態
・フィールドワークはそんなに素晴らしいのか?
ハーバード流ケースメソッドの功罪
・ハーバードの授業でやっていること
・ケースメソッドに異議あり
・「ボック報告書」の衝撃
ビジネス教育方法論の収斂
第3章 間違った結果(1)――教育プロセスの腐敗
学生はどう思っているのか?
自信―能力=傲慢
ビジネススクールの無責任商法
ビジネススクールの最大の関心事とは?
第4章 間違った結果(2)――マネジメント実務の腐敗
「現実」世界への跳躍
・教育への投資に見合う就職
・なぜ、MBAがホットなのか?
・コンサルタントと投資銀行家の「花嫁学校」
・MBA学生の人気就職先
・コンサルティング会社にも見離された?
・生産や販売にはノータッチ
マネジメントは迂回
・重役室の傭兵たち
バランスを欠いたマネジメント
・マネジメントに必要な三要素
・MBAのアンバランス
・計算型マネジャーの実態
・ヒーロー型マネジャーの台頭
MBAの成績表
・CEOの座に就くことには成功
・問題はトップでの仕事ぶり
第5章 間違った結果(3)――既存の組織の腐敗
「探検」と「開拓」
マネジメントの2つのカルチャー
MBAが日用消費財産業を好むわけ
起業家として成功しているか?
ハイテク起業家としての存在感
ハイテク企業のCEOに就任するMBA
MBAは新しい時代の「官僚」
第6章 間違った結果(4)――社会制度の腐敗
正統性を欠くリーダーシップ
バランスを欠いた社会
政府も非政府組織もMBAに任せろ?
リーダーシップに関する二つの考え方
第7章 新しいMBA?
MBA教育という支配的デザイン
エグゼクティブMBAの実態
MBAの革命?
教育テクノロジーの変化
国際化の進行
ビジネススクールの本業
世界のビジネス教育
ヨーロッパにおける専門分化
イギリスの新しい取り組み
二つの対照的なプログラム
MBAの「B」と「A」の断絶
PART2 マネジャーを育てる
第8章 企業のマネジャー育成
マネジメント教育とマネジャー育成
ぶっつけ本番
異動させて、助言して、見守る
・計画的人事異動
・メンタリング
・モニタリング
・日本のOJT
マネジャー育成のブッフェ
・娯楽、「教えること」、トレーニング、学習
・カスタマイゼーション
・リーダーシップ・プログラム
・ビジネススクールのプログラム
・新しい取り組み
アクションラーニング
・レバンス流アクションラーニング
・MiLのアプローチ
・GEのワークアウト
・アクションはもう十分?
企業内大学
・企業内大学の未来
日本流とアメリカ流
・マネジメントは「不自然」な行為?
専門分野の枠を越えてマネジャーを育てる
第9章 マネジメント教育の構築
まったく新しいアプローチ
定石1「マネジメント教育の対象は、現役マネジャーに限定すべきである」
定石2「教室では、マネジャーの経験を活用すべきである」
定石3「優れた理論は、マネジャーが自分の経験を理解するのに役立つ」
定石4「理論に照らして経験をじっくり振り返ることが学習の中核をなす」
定石5「コンピテンシーの共有は、マネジャーの仕事への意識を高める」
定石6「教室での省察だけでなく、組織に対する影響からも学ぶべきである」
定石7「以上のすべてを経験に基づく省察のプロセスに織り込むべきである」
定石8「カリキュラムの設計、指導は、柔軟なファシリテーション型に変える」
関与型のマネジメントを実現するために
第10章 マネジャーの育成(1)――IMPMプログラム
IMPM(国際マネジメント実務修士課程)
地理上の基本設定――本当の意味での国際性
構造上の基本設定――バランスの取れたパートナーシップ
概念上の基本設定――マネジメント志向のマインドセット
方法上の基本設定――省察志向の教室
第11章 マネジャーの育成(2)――五つのマインドセット
モジュールの設計
・モジュールの一般的な構造
第1モジュール――自己のマネジメント(省察のマインドセット)
第2モジュール――組織のマネジメント(分析のマインドセット)
第3モジュール――文脈のマネジメント(世間知のマインドセット)
第4モジュール――人間関係のマネジメント(協働のマインドセット)
第5モジュール――変革のマネジメント(行動のマインドセット)
第12章 マネジャーの育成(3)――職場における学習
リフレクション・ペーパー
チュータリング
セルフスタディー
マネジャー交換留学
ベンチャー
メジャー・ペーパーと学位
第13章 マネジャーの育成(3)――学習のインパクト
IMPMは割にあうのか?
IMPMの二つのインパクト
IMPMには効果があるのか?
残された課題
第14章 マネジャーの育成(5)――イノベーションの普及
現役マネジャー向け修士課程の位置づけ
IMPM的アプローチの普及
非営利組織向け修士課程プログラム
Eラウンドテーブル
企業向けの短期プログラム
上級リーダーシップ・プログラム
IMPMのイノベーションに不可欠な要素
「境界」でマネジャーを教育する
第15章 本物のマネジメントスクールをつくる
アカデミックな機関の特権
MBAの「M」と「B」と「A」
・専門分野に特化したプログラム
・現役マネジャー向けの総合的なプログラム
・現役マネジャー向けの非学位取得型プログラム
・学部レベルのプログラム
・年長者向けの博士課程プログラム
学術研究の果たす役割
・アカデミックな成果を求めて
・学問的厳密性と実用性
・研究に役立つ教育
・大学との結びつき
マネジメント/ビジネススクールをつくり変える
・「四〇対四〇対二〇」以外の道
・終身在職権の落とし穴
・縦割りを克服する
・基礎的学問分野の位置づけ
・「変革の担い手(チェンジ・エージェント)」を変革する
注釈
引用参考文献
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個人的には、最後の15章がとても参考になった。
550ページの大冊なので、全体を一気によむのはちょっと大変だが、章ごとにうまくモジュール化されているので興味のある章を先に読みすすめることもできる。このボリュームと内容で 2800円+税 はお買い特である。
翻訳もこなれている。注釈もすべて翻訳されている点はりっぱ。
経営学やその教育だけでなく、広い意味で、マネジメントとリーダーシップ、人材の教育や学習に興味のある方、現在、マネジメントに関わっている方にオススメの一冊。
MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方ヘンリー ミンツバーグ著、池村千秋訳日経BP社このアイテムの詳細を見る |