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深夜、周りが寝静まった頃になると目の前にいないはずの女の子が
現れる。
名前もはっきりとは分からないけれど知花か知花子のどちらかだ。
自分で自分のことを知花(ちか)ちゃんと呼ぶ。
名前の漢字はすぐに私の頭に浮かんだから多分こうなのであろう。
なにせ正体不明の現象であるから頭の中で事が終わる。
ショートカットで目がくりっとしたかわいい子で年のころ22~3
くらいである。
一つ特徴的なことがあって、彼女は少し言い方が悪いが「頭が足り
ない」と言うことだ。
いつも自分で「知花ちゃんね~・・・」と言う。
もちろん私はこんな子は知らないし全く面識が無いのだが向こうは
私のことをよく知っている。
で、夜な夜な出てきては私とたわいの無い会話をして朝方飼い猫ハ
ナちゃんが置きだすのに私が気づくといなくなっている。
ところでこの見ず知らずの得体の知れない知花ちゃんを私は嫌いで
はない。
尤も実体のないものであろうから私の脳内にしか存在しないだろう
ものであるけれど、会話をしていて楽しいのだ。
ちょっと脳足りんではあるけれど、一方的に私を好いてくれるので
私も最初は気味悪かったが最近では嫌いではない。
私の病気がいよいよ悪化してきたのかもしれないけれど、夜な夜な
話し相手が出来て何だか面白いかなとも思うのである。