土日は面会が18時までなので、女房が帰ってきてそのまますっ飛
んで行ってきた。
「おいハナちゃん来たよー」
「あー、お父ちゃん」
「フン、どうせ今日も帰れないんでしょ」
「まあな、もうちょっと掛かるな、今日はトイレで寝てないんだね」
「っつーかさー、顔はかゆいし背中もかゆいんだけど掻けないんで
すが」
「分かったわかった、搔いてやるから」
「ふぅ~ん、お父ちゃ~ん・・・あ、もうちょっと右ね、首のとこ
も」
「よしよし、カラーが取れないと何ともならんもんなぁ、よしよし」
女房が私も私もと言うので今度は女房
「来たな婆貞子、おめーには負けらんねぇんだよ」
とは言いつつもうれしさを隠せない尻尾が物を言っている。
「それはそうと、このひぼ(紐)よ、何とかならんのもうこのテイ
テイッ」
「お前なあ、邪魔かも知れんがそれで病気治してるんだから我慢し
なさい」
先生の説明では日に日に血液の値はよくはなっているものの、まだ
膿の中のバイキンに変なものがないか結果が出ていないから、その
結果によっては抗生剤を別のものに変えなければならないから、も
う少しやはり掛かりますね、と言っておられた。
だがやはり、まあネコ部屋なのにイヌばっかりだからうるさくって
眠られないらしく、私たちの顔を見ると安心するのか眠くてしょう
がない様子だったが、見るたび少しずつ元気になっていっているの
は何となく分かるので、まだまだ安心できるような状態ではないけ
れど、頑張ってんねと女房と話しながら帰ってきた。
もう少し、と言ってもそう簡単には「はいどうぞ」と帰させてもら
う訳には行かないので、まだしばらく辛抱してもらわないといけな
い。
せめて毎日10分でもいいから顔を見せてなでてやる事しかできな
いのだ。
そう言えばハナちゃんが緊急手術した21日はわたし達の結婚記念
日だった。
なんか携帯が時折ペロペロ鳴るなあと思って、夜見たらそうだった。
だけれどそんなものよりハナちゃんの命の方が何万倍も大切だから
な、そんな事すっかり忘れていたし、それどころでなかったがいい
や。
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