英作問題『山菜採り』
3. この山は、山菜の宝庫で、麓(ふもと)の宿では、四季を通して山の恵みを頂ける。
⇒ 『山菜の宝庫』とは、英語でどう表現したらよいだろうか。
宝庫とは、何か。
なぜ、宝庫というのか。
宝庫、お宝という言葉で、それを言っている人の、言いたい所を思うことが大事である。
山菜の宝庫というしかない状況を想像する。
山菜の宝庫という時の、絶対条件の一つは、数である。1つや2つしかないのなら、それは宝庫とは言わない。要するに、数で言うと「多い」ということである。
宝庫という為のもう一つの条件は、質に関してである。単にあるものが、多数あるからといって、それを宝庫とは呼ばない。質や価値として高いものだから、宝なのである。質や価値が高いものとは、要するに「良い」ものである。
以上を総合すると、山菜の宝庫とは、要するに、良い山菜が、多数山にある、ということになる。よって、
・This mountain has a lot of good wild plants.
良い山菜とは、何かというと、当然「食べられるもの」なので、
・The mountain has a lot of edible wild plants. ということになる。
物理的観点から言うと、宝庫とは、数量的には、単に多いということでしかない。では、心理的観点から言うと、宝庫とは、どういう心境なのだろうか。山菜採りに行って、お目当ての山菜が、辺り一面に生育している。探し求めたものが、目の前に、辺り一面に広がっているとしたならば、特にそのことが予期せぬことであれば、なおさら、その事態は、心理的、感情的観点から見ると、それは驚きに他ならない。よって surprise を使って
・You will be surprised to see so many (edible) wild plants in this mountain.
山菜の宝庫ということで、宝なので、treasure という語を使おうと思う方もいるだろう。本当に、古墳から発掘されたり、何らかの埋蔵金のような、純然たるお宝であれば、本来の意味として treasure を使うのは自然であるが、山菜を称して宝というのは、比喩的な表現であり、山菜が宝であるのは、それらの価値を高く評価する一部の人たちだけである。よって、広く宝と認知されていないものに、宝と言うのは、英語にすると不自然となる可能性がある。従って、treasure の使用は、山菜採りの文脈においては慎む方がよいだろう。不自然になり得る、ハイリスクな英語を避けることも、大事な英語力の一つである。
『麓(ふもと)の宿では、四季を通して山の恵みを頂ける』
麓の宿、ということであるが、麓とは何か。最も簡単に考えると、山に対して、麓は山の近くと考えられるので near the mountains となる。 厳密にいうと、山の麓は、at the foot of the mountain という。山の足元ということ。対するのが at the top of the mountain である。これを覚えているのがベストである。英作の趣旨では、知らないなら、考えよということなので、英会話においては、必ずしも常にベストな答えは出ないという、現実に立脚した発想が大事であり、最善でなくても、次善の策として(second best)どんな時でも、自分の持つ英語で、自在に表現できる力を培いたい。
続いて、宿ということであるが、いかにも日本的な響きのする語であり、inn という語もあるが、わからないと言って、すぐ調べるまでもなく、少し考えたら、同じ形式のもので、欧米に似たものはないかと思うと、すぐに hotel が考えつく。hotel の定義(OXFORD 現代英英辞典)→a building where people stay, usually for a short time, paying for their rooms and meals(短期間滞在する所(建物)で、部屋と食事代を払う)とある。宿そのものである。宿のイメージはもう少し小規模かもしれないが。 innの定義は、a small hotel, usually in the country(小さなホテル、たいてい田舎の方にある)とある。inn は、a small hotel と定義されているので、要するに、宿は hotel でよい。
宿を、a Japanese inn と知っていればよい。しかし、知らない時に、だからと言って、慌ててスマホや辞書にお世話になったり、お手上げで何も言えないという事態は避けたい。
『四季を通して山の恵みを頂ける』
山の恵みとは、何か。
恵みという、ある種漠然とした、抽象的な言い方は、そのままでは英語にするのが難しいものは、具体的に考えるとよい。
山の恵み、というのは、具体的に言うと、明らかに、山菜のことであり、その他を意味はしない。よって、山の恵みを頂くとは、単純に考えて、山菜を食べること(もしくは採取すること)なので
・You can eat wild plants from the mountains. / You can get wild plants in the mountains.
『四季を通して』とは、どう考えるか。
四季を通してとは、どの季節でもということなので
・You can eat wild plants in every season.
四季を通して頂けるということは、特定の季節ではないということ。即ち、いつでもということ。よって
・You can always get wild plants in the mountains.
四季を通してということは、年中ということ。夜通しが all night なので、年中ならば all year となるので
・You can get wild plants all year. (年中→ all year around /throughout the year 等もあり)
他にも『山の恵みを頂ける』ということで、山菜を食べることを楽しめると解して
・You can enjoy eating wild plants in every season.
とも考えられる。
『四季を通して山の恵みを頂ける』ということは、1つの季節限定ならば、採れる山菜の種類も限られるかもしれないが、四季を通してということは、四季折々の山菜が楽しめるということで、幅広い種類の山菜が採れることを意味する。
・You can enjoy eating many kinds of wild plants, because you can pick wild plants all year in this mountain. (たくさんの種類の山菜が楽しめる、なぜなら、年中山菜採りができるから)
have でもよい。
・This mountain has various wild plants for us in every season.
簡単な英語であっても、我々の工夫と使い方次第で、十分意味を伝えることができる。ネイティブの英語に耳を傾ければ分かるが、我々の認識をはるかに超えて、基本単語を多用している(もちろん簡単な英語といえども、基本単語の基本的な使用法から、前置詞との組み合わせで意味が千変万化する句動詞の使用も含まれるが)。
まとめると
『この山は、山菜の宝庫で、麓(ふもと)の宿では、四季を通して山の恵みを頂ける』
・This mountain has a lot of edible wild plants. At hotels near the mountains, you can eat various wild plants from the mountains all year around. 等。