英作問題『いちご 』
9. 酸味が強いイチゴは、イチゴジャム作りにうってつけだ。
⇒ うってつけ、ということである。
うってつけとは、どういうことだろう。
通常、良いイチゴとは、甘いイチゴである。その観点から言えば、酸味が強いイチゴは、悪いイチゴである。しかし、イチゴであれ何であれ、適材適所ということがあり、酸味が強いから、必ずしも悪いということではない。一見悪いイチゴでも、我々の工夫次第で、悪いものも良くなる。良くするも悪くするも、我々の発想次第ということだろう。
普通に食べるには、悪くても、ジャムにするには良いのである。うってつけとは、良い悪いでいうと、良いである。good を使い、
・When your strawberries are sour, they are good for making jam.
・Sour strawberries are good for making jam.
・Sour strawberries are good when you make jam.
『うってつけ』が『良い』には、なかなか結び付かないと思う。しかし、うってつけであれ、適切であれ、考えれば、要するに『良い』ことであるとわかる。
他に考える。
酸味が強いのが、ジャムにうってつけということは、酸味が強いのこそが『良い』のであり、そうならば、甘いのは使わない方がよい。ということは、酸っぱいイチゴをこそ使うべきだということになる。should を使い
・We should use sour strawberries to make jam.
酸っぱいイチゴが、うってつけということは、逆に言うと、ジャムを作るために必要なのは、酸っぱいイチゴである。need を使い
・Jam needs sour strawberris.
英語にする際、その語だけを見るのではなく、全体や、前後関係を見て、全体としてどういうことを言いたいのかを考えるのが大事である。単語レベルで見ると、どうしても直訳になってしまう。全体を見ると、別に単語レベルでズバリの言い方を知らなくても、困る必要はない。『うってつけ』だけを見ると、適切なという意味と考え、人によっては suitable, appropriate, proper とか思い浮かべるかもしれない。suitable なら、まあいいかもしれないが、他はちょっとこの文脈ではどうかなと思う。和英(大)辞典を見ると、うってつけ→ideal(理想的な), perfect, admirably suited, right 等書いてある。それぞれある場面における『うってつけ』かもしれないが、ことイチゴジャムに関しては、すこし不自然だろう。
少しだけ立ち止まって、考えれば、不自然な英語を使わなくても、ちゃんと言えるのである。そして、その自分で考える習慣こそが、英会話力を向上させることとなる。
和英辞典は、ある程度のレベルの英語力の人が見れば、よき道具となるが、それ以前で頼ってしまうと、和英辞典に書かれた英語を、自分の言いたい事柄の文脈に当てはめた時に、その英語が自然か不自然かを判断することが難しい。和英辞典に頼って、不自然な英語を言うよりも、自分で考えた方が、よっぽど自然な英語になる。
自分で考えるとは、自分が知っている、自分が習い覚えた英語表現に、自分が言いたいことを、いかに近づけるかの努力である。
通常は、考えない状態であれば、自分の知ってい英語表現と、自分の言いたいことは、相当乖離(かいり)しているだろう。考えることにより、言いたい事柄が、本当はどういうことなのかを分析する。考えるのは、その事柄の意味を考えるためである。その事柄の意味を知るためにこそ、考える。意味が分かれば、英語にするのは、簡単である。
酸っぱいイチゴであっても、我々は、良きジャムを作れる。英語も同じである。
語彙が少なくても、ちゃんと考えさえすれば、正しい、より自然な英語を話すことができる。
語彙が少なくても、考えるという、人間本来の宝を放棄しなければ、ネイティブが読む洋書を読んで、楽しむことができる。
持てる材料をいかに活用するか。
全て、我々の工夫する力にかかっている。