誰も知らない王様の
地下室の奥には
不思議な長い回廊があるんだよ
飴色をしたきれいな壁に
代々国を守ってきた
誰も知らない王様の絵が飾ってある
みんな貧乏な姿をしている
パン屋の帽子をかぶっていたり
おかみさんの鍋を持っていたり
クローケーの球を握っていたりする
人間が
幻に目がくらんで
嘘ばかりついている時代には
愛は
不思議なところに流れていくんだ
鼠の穴のような
小さな入り口から
みすぼらしい道を通って
突き当りの木の入り口を抜けると
きれいな薔薇の庭があって
そこで
不思議な人がヴァイオリンを弾いている
きれいな音楽を
真の心で流しているだけで
世界がきれいになるから
ずっとそうしているのだ
人間は
夢から覚めて
愛がわかったら
いつか
偽物の王様を捨てて
本当の王様を探し始める
暗闇に迷っていた間も
変わらずきれいな音楽を流してくれていた
あの愛を探し始める
そのときは
広くて派手な大通りを避けて
町はずれの細くて暗い角から
だんだん狭くなっていく小道を
通り抜けていかなければならない
時々小さな関所があって
追い剥ぎみたいな門番が
金目のものを出せと脅す
それはかつて
みんなが王様を閉じ込めてしまったときに
馬鹿を決して出すなと命令しておいた
猿なのだ
人間はその猿に出会うたび
着ていた服を脱ぎ捨てねばならない
そして
素裸になるまで捨てなければ
きっとあの人には会えない