世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

スピカが主な管理人です。時々留守にしているときは、ほかのものが管理します。コメントは月の裏側をご利用ください。

散歩する人

2017-02-09 04:17:34 | 詩集・絹の鎖

嘘でもいいから
ちがう自分になりたかったのです

わたしは
影でいやなことをして
馬鹿みたいなぶすになったから
あんな
やさしくていい女になりたくて
形を盗んで
きれいに整えて
いい女に成りすましたの

できることは全部して
完璧にやりました
おとなしめの
センスのいい服を着て
馬鹿みたいなこと言わない
静かな女のふりして
生きてきました

でも
だれも来ないの
男の子も
女の子も
だれも友達になってくれないの
だってわたしは
まだ何もしてないから
みんながわたしを知ってくれるような
いいことは何もしてないから

姿を盗んでも
何かでわかるの
みんなわたしのところには
来てくれない

だから
盗んだお金で
流行りのコーギーなんか買って
冬の町を散歩させてる
犬はかわいいけど
愛してるわけじゃない
犬がいないと
わたしがつらすぎるから
高い犬じゃないと
わたしが悲しすぎるから

風がささやく
このまま何もしないでいると
いつか空っぽになって
馬鹿になるだろう





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