ボリス・アルツィバシェフ
原題不明
ウクライナ生まれのアメリカの画家であるらしい。経歴は不明だが、画風や年代からすると、ナチスについて異様に痛い感情を持っているらしい。
カギ十字の紋章があちこちに蜘蛛のように描かれている。まるでヒトラーのエゴが幻影のようにあちこちにむさぼりついているという感じだ。
第二次大戦中に描かれたものであろう。
20世紀は人類戦争の時代と言ってもよかった。人類のエゴが、まさに人類史最大の規模でぶつかり合ったのだ。兵器も技術も殺戮の陰惨さも最高のレヴェルに達した。人類は、人類の、最も醜い姿を見た。
嫌らしいことをしてもいいんだという、暗愚の響きが、文明の縛りを離れて、虫のように這いだし、世界を暴れまわったのだ。
嫌な奴は殺してしまえ。俺の言うことを聞かないやつには、生きることを許さない。世界はみな、おれのものなのだ。
馬鹿の究極の願望だ。あらゆるものを自分の思い通りにするために、武器と傀儡で人類を滅ぼそうとする。
それを冷徹に見ていた魂が、これを表現したのであろう。