だれもあなたを奪うことはできない
だれもあなたを加工することはできない
あなたの魂を引き裂いて
糸をより機にかけ
ほかの誰かのローブを織ることはできない
あなたの頭蓋を抜き
みじんに砕き粉に挽いて
だれかのおしろいをつくることはできない
あなたですらあなたを
無理に加工することはできない
神様ですら
かつてない貴い銀を扱うように
おそれおののいて
あなたのほおにふれてゆく
あなたがあなた自身であることを
はばむことは
あなたですらできない
まだ幼い翼の芽を
みずから痛めて
あなたがあなたをさげすむことほど
この世で愚かなことはない
あなたはすばらしい人ではないのか
生きることは珠玉の幸福ではないのか
神様はだれとともにいるというのか
諦観を装って物欲しげな目で空を見てはいけない
飛ばないものの翼は萎えてゆく
飛べ
(花詩集・33、2006年2月)