＜パン屑＞ マタイ10：24

イエスは言う。「弟子は師にまさるものではなく、僕は主人にまさるものではない」（マタイ10：24）。本当に、弟子は師を乗り越えることができないのか。そんなことはない。弟子は師から学び、師を批判し、師を乗り越えて、人類は進歩する。もちろん、すべての弟子が師を乗り越えるわけではない。おそらく、ほとんどの弟子は師にまさるということはないかも知れない。でも、100人に1人、あるいは1000人に1人、師を乗り越えていく弟子が生まれれば、師は喜ぶ。それが師弟関係である。
中国に「青は藍より出でて藍よりも青し」という諺がある。その意味は、青い染料は藍から抽出する。しかし、藍から青を抽出する技術は並大抵ではない。ほっておいて出てくるものではない。詳しい工程はわからないが、ともかく大変の苦労の末、やっとあの鮮やかな青色が出てくる。その鮮やかさは藍そのものの持つ青さよりも青い。従って、藍染めが高価なのは当たり前であろう。
この諺は、弟子が師よりも勝るということを語っている、と解説されている。その意味で、「出藍（しゅつらん）」という言葉もある。しかし、よく考えてみると、そのような優れた学識と人格者を育てた教師は、育てられた弟子よりも上ではないか。弟子が師にまさるのは「一点突破」あるいは「部分的克服」にすぎないのであって、トータルにはやはり弟子は師にまさることはできない」というイエスの言葉は真実である。