＜パン屑＞ マタイ6：26

空の鳥をよく見なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は鳥を養ってくださる。　マタイ6：26

拾って食う時代から収穫して食べる時代まで、人間は実に長い時間を経た。さらに、倉に納めて、将来に備えること、つまり貨幣経済が成立したのはごく最近のことである。人間はこれを文明の発達という。しかし、文明が発達すればするほど、そのことによって失われたものが沢山あることも知らねばならない。
わたしたちの国の農水省はどうなっているのだろう。農業や水産業等第1次産業に従事している人たちの、「わたしたちが日本人の生活を支えている」という自負がなくなってしまったのだろうか。
むかし、牧師になりたての頃、宮城県の叔父の葬式に親爺の名代として出席したときの、農家の人々の言葉が忘れられない。「あんたち宗教家たちは口先だけで生きているが、その口を満たすのはわたしたちだ」。この第1次産業従事者たちの自信に満ちた言葉にショックを受けて、「献金による生活」を中断し、それから10年、社会の経済構造を探求し、第1次産業から、第2次産業、さらに第3次産業から宗教家へという経済構造の正当性を理解し、やっと牧師という「献金による生活」に戻ることができた頃のことを思い出す。