<福島民報論説より>
【原発事故の被災者】国会議員の力で救済を(7月14日)
浪江町民約1万5千人が東京電力福島第一原発の精神的損害賠償などを求めた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、東電は原子力損害賠償紛争解決センターが提示した「一律月5万円」を増額する和解案を拒否した。
拒否の根拠は、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)が中間指針で示した月10万円の賠償額が、ADR和解案の一律月5万円上積みと金額で大きな隔たりがあるためという。原発事故の被害者の声が軽んじられ、加害企業である東電の主張がまかり通るのは許せない。原賠審の指針を見直すよう、まず国会議員が強く求めるべきだ。
ADRは、和解案提示までの時間が民事訴訟より短く、被災者が生活を早く再建できる利点がある。ただ、和解案に法的拘束力はない。東電が一部を拒否し、回答期限を引き延ばす事例が目立つ。
原賠審が平成25年末の中間指針第4次追補までに示した、精神的損害賠償額に対する県民の不満は大きい。
本県関係国会議員のうち3人は、東電に浪江町民の賠償増額に関するADRの和解案を受け入れるよう求め、文科省に原賠審の中間指針改正を要請した。与党の自民、公明両党議員、事故当時与党の民主党議員は参加していない。本県関係議員は今こそ、党派を超え力を尽くすべきだ。
一方、震災(原発事故)関連死に関する損害賠償は、東電に直接請求しても、裁判を起こしても時間がかかり、因果関係が認められない場合が数多い。災害弔慰金の拡充など被災者の早期救済の道は、政治が切り開くしかない。
特に与党の責任は重い。「金目発言」で県民が反発した石原伸晃環境相に対する衆院の不信任決議案採決で、自民党の本県関係国会議員6人のうち、1人は棄権し残り5人は反対した。参院の問責決議案採決では自民党の3人と公明党の1人が反対した。閣僚や党人としての立場はあるだろうが、与党議員の投票行動について納得した県民はどれほどいただろうか。
県民をばかにした石原発言は、被災地への意識が政府や国会でも風化している象徴と言える。与党の本県関係議員も同じとは思わないが、県民の意識とのずれを感じざるを得ない。9月上旬を軸に調整する内閣改造をにらみ、言動を控えているのだろうか。
本県関係議員は、県民の投票により、国政の場に立っている自覚をもっと持ってほしい。国会議員の先頭に立ち、原賠審指針見直しや災害弔慰金の拡充を早急に実現させるべきだ。(小池 公祐)
( 2014/07/14 09:03カテゴリー:論説 )