鏡海亭 Kagami-Tei  ウェブ小説黎明期から続く、生きた化石?

孤独と絆、感傷と熱き血の幻想小説 A L P H E L I O N(アルフェリオン)

生成AIのHolara、ChatGPTと画像を合作しています。

第59話「北方の王者」(その1)更新! 2024/08/29

 

拓きたい未来を夢見ているのなら、ここで想いの力を見せてみよ、

ルキアン、いまだ咲かぬ銀のいばら!

小説目次 最新(第59)話 あらすじ 登場人物 15分で分かるアルフェリオン

主人公ルキアンの謎

連載小説『アルフェリオン』、昨晩でまとめ版アップを完了しました。
2週間連続の「まとめ読み」キャンペーンを終えて、いよいよ今度は最新話の第49話の続きを書かなければなりません(^^;)。

その前に、今回は、これまでの全48話を振り返って、ルキアンの正体について考察するための伏線(笑)を整理しておこうと思います。いや、仮に私が読者だとしたら、ルキアンの正体、非常に気になるので…。

第1話には、ルキアン・ディ・シーマーがカルバに弟子入りした経緯が書かれています。落ちぶれた貧乏貴族の家系、シーマー家。このような貧乏貴族がなんとか体面を保ってゆくためには、長男に財産をすべて継がせ、弟たちは家から出て独立するというのがオーリウムの習い。貧乏貴族の財産を兄弟で分割してしまったら、ただでさえ少ない財産がますます細分化されてしまいますからね(^^;)。いずれジリ貧。

そこでルキアンは魔道士カルバに弟子入り。
オーリウムでは魔道士は一種の技術者でもあり、幸いにも読み書きのできる零細貴族の息子は、魔道士となって生計を立ててゆくことも結構あるということでした。

その後、第3話「覚醒、そのとき」の冒頭で謎の回想シーンが。
「ここには、僕の探している未来はありません」と言って、セラス女神の像の前で絶望するルキアン。

そして、ルキアンが両親の実の子ではなく、しかもその養親から冷たい仕打ちを受けていたことが明らかになるのが、第9話。ルキアン定番の鬱回想ですね。まぁ、この鬱回想を経て、アルフェリオンで出撃し、超覚醒に至るんですけど。
下記のような養親のやり取りを幼いルキアンが聞いてしまったという回想シーンでした。


 ――ねえ、あなた……あんな子なんてもらわなければ良かったわ。
 ――声が高いぞ。あの子が聞いていたらどうするんだ。
 ――大丈夫ですわ。もう寝てますよ。
 ――まあ、やむを得まい。金になるんだ。わが家を守るためには……。


ここ、不自然に思った方もいると思います。
ルキアンの養父の「金になる」というセリフです。
ダメっ子のルキアンを引き取ったことを後悔している養親。しかし、金になるから仕方がない、という話。

第1話では、シーマー家にはお金がないから、ルキアンをいわば「口減らし」的にカルバの内弟子に入れたことになっているわけです。ルキアンを養うことが金になるどころか、余計な負担になるから追い払ったのでは?

継子のルキアンだけが兄たちに比べて冷遇されていたことは、第17話にも出てきます。
もっとも、ここでは自分が「要らない人間」であるというルキアンの嘆きが強調されるばかりで、上掲の第9話に出てきた伏線をさらに深める方向には動いていません。

その間も、このまま戦い続ければ自分がいつかステリアの力に魅入られて単なる兵器になってしまうのではないかと、ルキアンは苦悩し続けます。そして、パリスとの決戦でゼフィロス・モードが炸裂し、ルキアンが超覚醒する第35話に至る。

超覚醒する前のルキアン定番の鬱回想。
「おうちに帰りたいよぅ」と泣く子供時代のルキアン。
実は、その直前の以下の引用部分が謎なんですね。


 何故か、幼い頃からこれまでの記憶が鮮やかに浮かび上がる。過ぎ去った経験は憎々しいほどに明確なかたちをとり、ルキアンの辿ってきた仄暗い心の旅路が、残骸の山のように次々と重なって現れる。

  そこに光はなかった。
  少年の瞳から無邪気な輝きが失われたのは、
  いつのことだったろうか。
  思い出の中の時間が、新しい記憶の方へと巻き戻されてゆく。
  時が辿られるにつれ、夕暮れの道を行くように、
  記憶の中の風景を包む翳りは次第に深くなるばかり。


幼い頃へと記憶を辿ってゆくほど、かげりが濃くなるばかり。
夕暮れの道を行くように…。

そして第37話、ルキアンが「物心ついたときから手にしていた唯一のもの」として、「子豚のぬいぐるみ」が出てきます。そんなルキアンを例によって遠見の水晶でストーキング、もとい、監視するアマリア(^^;)。ここでアマリアが書き付けた次の予言詩が意味深。


  引き裂かれし二人。
  その本来の思いが、両者の邂逅によって取り戻されるとき、
  だが新たな悲劇が、たちまち二人をまた引き裂くだろう。
  再びの別れは永劫の別れとなる。
  そのとき青き淵に輝く光は潰え、憎しみの翼は羽ばたく。
  闇は解き放たれ、三つの凶星は滅びの天使を呼ぶ。


引き裂かれし二人?
ルキアンと誰かのことを言っているのでしょうか。
そして予言詩の後半は、例の「沈黙の詩」の一節と似ていますね。
引き裂かれた二人が再び出会うとき、それが永劫の別れとなる。その結果…。

続く第38話、夕暮れの中でルキアンが 不意に思い出す。


「今みたいに、もうすっかり暗くなった夕方、心細い気持ちで歩いていたとき……。ずっと昔、いつ? 思い出せないほど前、僕が本当に幼かったとき?」
 彼の口から、途切れ途切れに言葉が漏れる。
「そのとき、僕は……。僕は、そのとき……独りでは、なかった?」


失われた記憶の糸を手探りで辿るかのごとく、ルキアンが問題の子豚のぬいぐるみに手をふれようとしたとき、魔少女エルヴィンがそれを止めた。「まだ思い出しては駄目。ものごとには、そのために予め定められている《時》がある」というエルヴィンのセリフ、いかにもウラがありそうです。でも、何でエルヴィンがルキアンの失われた記憶について知っているのか??

そして第46話、ソルミナの結界にルキアンが取り込まれたとき、ついに…。
ソルミナの創り出した迷宮のごとき幻の世界。
ルキアンが先に進むにつれて、彼の記憶を遡って反映しているかのような場面が次々と現れる。

第一の部屋「真昼の光の間」から、第二の部屋「近づく日暮れの間」へ。
以前に第3話の回想シーンで出てきた、養親の会話を幼いルキアンが聞いてしまった場面が再び登場。


「まあ、やむを得まい。金になるんだ。わが家を守るためには……」という養父の言葉に違和感を覚えるルキアン。

 ――お金に困ってたのは知っていたけど、僕を引き取って育てたことがどうしてお金に結びつくんだろう。逆に、僕みたいな《いらない子》を養うのはお金の無駄だったんじゃないのか。父さんと母さんが僕をカルバ先生のところに弟子入りさせたのだって、口減らしのためだと思っていた


ルキアンの疑問が、当時の養親の言葉を彼に思い出させます。
あの後、養親たちは次のような話をしていたのでした。


「とにかく16歳まで面倒を見れば大金が手に入る。あとは、とっとと追っ払って」
「えぇ、あんなどうしようもない子とも、あの薄気味悪い連中とも、早く縁を切ってしまいたいもの」
「その話は出すな。彼らのことは決して口にしないようにと言われたじゃないか」


16歳…。ルキアンがカルバに弟子入りした歳です。
その時点まで嫌々でもルキアンを育てれば、養親は大金を手に入れることができるという。その相手方は、養母の言葉を借りれば「薄気味悪い連中」。だが、彼らに言及することは口止めされているようですが…。
これは怪しい!

そして、続く第三の部屋「落日の間」。
夕暮れに包まれた曖昧な記憶の中、幼いルキアンの手を取って歩いていた謎の少女。その記憶の詳細が分からないまま、ルキアンの前に最後の部屋「夜」への扉が現れる。ルキアンは扉を恐れました。自分には記憶のない場面が最後の扉の向こうで待ち構えていることを、理解したから。

続く第47話、ソルミナの迷宮空間の最後の部屋を描く前に、なぜか旧世界のことがいきなり出てきていますね。誰かの回想というかたちではなく(例:イリスがルウム教授のことを思い出していた場面)、遠い過去に遡って旧世界の人間が登場する描写は、これまでには見られません。異例中の異例。

天上界の「天帝」に使える大魔道士イプシュスマ。
かつての闇の御子エインザールとは敵であり、以前には友人であったようですが。
天上界に対する地上界の勝利が確定したにもかかわらず、エインザールが「戦い」には敗れたとイプシュスマは言います。「ノクティルカの鍵」の秘密に到達できなかったこの世界は終わる、と…。

第48話で、「リュシオンが私に命を与える以前、それまでに無数に生まれては消えていった世界」とリューヌが言っています。このセリフは、過去に世界が何度も滅亡しては再生してまた滅亡するという経緯を繰り返してきたように聞こえます。

ここで気になるのは、第33話のアマリアとフォリオムの会話。
かつて旧世界が「永遠の青い夜」のために天空人と地上人とに分かたれたことは、予め定められていたというフォリオム。フォリオムはさらに続けます。地上界の勝利を目前にして、エインザールがある危惧を抱いていたと。フォリオムは言う:


仮に、人間の歴史に先ほど言ったような《目的》が定められていたとしたら、自分たちの戦いは、連綿と続いてきた旧世界の歴史をいったん白紙に戻すことを意味するのではないかと。それが現実となったとき、《目的》の実現に向かって因果の輪を着々とつなげてきた《力》の側からの、つまり《あれ》からの、何らかの反作用が必ず生じるのではないかという漠然とした危惧を持っておった。


人間の歴史には予め何らかの目的が定められているのではないかと、漠然と気づいていたというエインザール博士。すなわち「《新たな人の子》を創造すること、言い換えれば《人間》をより《高次》の存在へと《昇華》させるという《目的》が、《何か》によって自分たちの歴史に予め定められているような気がする、と」。

だがエインザールは、紅蓮の闇の翼「アルファ・アポリオン」によって天上界を滅亡に追い込んだ。その行いを振り返って、フォリオムは声を押し殺して言った。


  《御使いたちが、それを見逃すはずはなかった》


以上の旧世界に関するエピソードをはさんだ上で、ソルミナの幻の世界の最終局面に描写は戻ります。漆黒の闇の中、地の底から這い出す子供たちの霊。
意味の分からないルキアンに対し、幼い日のルキアンの手を引いていたあの少女の影が現れます。

「まだ思い出さないの?」

実際には、ルキアンを精神的な死に至らしめるため、ソルミナが彼の記憶を読み取り、非常に周到にこの結末へと導いていたのでした。しかし、当のルキアンには、なぜか記憶がありません…。多分、覚えていたら発狂しかねないようなことだったのでしょうね。

そこでアマリアは気づきます。


 《この少年は、過去に何者かによって記憶を操作されている》


ここで、ルキアンが普通の人間ではないことが明らかになってしまいました。
強化人間か何かか?という話もありますが…。

で、結局、ルキアンに対して最も忌まわしき記憶を突きつけたはずのソルミナですが、肝心のルキアンが覚えていなかったため、大失敗(^^;)。そこで作戦を切り替え、直接にルキアンをなき者にしようとするソルミナの化身。あまりにも完璧な幻の世界であるため、ここで死んだら、実際の肉体にも死が訪れるという…。

まぁ、それが裏目に出て、ルキアンが超覚醒。
幻の世界の中でルキアンに戦いを挑んだばっかりに、現実界での戦いならば発揮され得ないはずのルキアンの「御子」の力が炸裂! ソルミナの化身としては、自らが生み出した世界の中での戦いで負ける気などしなかったのでしょうが…ルキアンの妄想の方が遙かに上回っていたのでした(^^;)。

闇の支配結界を展開し、ソルミナの創った夢幻の結界を侵蝕するルキアン。
結果、アルフェリオンまで幻の世界に勝手に召喚して(笑)、第3話以来使われていなかった必殺技、ステリアン・グローバーを全力で放ったルキアンの圧勝。

いや、戦いの行方もさることながら、ここで重要なのは、ソルミナの生み出した迷宮空間の最後の部屋「夜」の場面です。あの幼子たちの霊は何を意味していたのでしょうか。ソルミナとしては、ルキアンにあの場面を見せれば彼はおそらく崩壊する、必勝だ!と思っていたわけです。そんなにもルキアンにとって恐ろしい意味をもった場面だったのでしょうか。

ルキアン本人は「わけがわからないよ」(by QB)状態。
でも、そういえば、この第47話の冒頭に掲げられているコズマスの以下の言葉が意味ありげです。前に「月闇の僧院」の初登場の際に出てきたセリフですね。

 鍵の石版を解読して「ロード」のための実験を開始したときから、
 我々は人としての資格を捨てて悪魔となったのだ。
 何の咎もない者たちを次々と犠牲にし、この身に永劫の罪を背負い、
 「あれ」と戦うために闇に堕ちた。

  (月闇の僧院の長・コズマス)

これとルキアンとの間に何らかの関係があるのでしょうか?
ロードって?
そのことが、ソルミナがルキアンに見せた幼い子供たちの霊の幻と、どういう関係をもっているのか?

あ、そういえば、「僧院」にはあのキャラが関わっているような描写が以前にありました。誰? それは内緒です(^^;)。でも、それが誰だか分かれば、ルキアンと「僧院」との間で一気に話がつながるんですよね。

ルキアン、一体、何者?
以上を踏まえた上で、最新話の第49話(その1)を呼んでみると、何かと思うところがあるのではないでしょうか。

ルキアンって誰?(^・^;)

かがみ
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