来し方、行く末に思いを続けて…
日記 … Kametarou Blog
劉連仁(りゅう・りえんれん)のこと-3
長い冬眠があけ
春 穴から出るときは
二日も練習すれば歩くことができたものだ
年とともに 歩くうための日は多く多く費やされ
二ヶ月もかけなければ歩けないほどに
足腰は痛めつけられていった …
惨憺たる月日を縫い
あなたの国の河のように悠々と流れた …
しかし限度にきたようにみえた
厳しい或る冬の朝のこと
あなたはとうとう発見された
札幌に近い当別の山で
日本人の猟師によって
凍傷にまみれた六尺ゆたかな見事な男
一尺半のお下げ髪の 言葉の通じない変な男絶望的な表情を滲ませて
「イダイ イダイ」を連発する男
痛い それは
りゅうりえんれんの覚えていた たった一ツの日本語だった
「中国人らしい」
スキーを穿いた警官は俄に遠慮がちになった
りゅうりえんれんは訝しむ
何故ぶん殴らないのだろう …
りゅうりえんれんは認めない
祖国が勝ったことをも認めない …
りゅうりえんれんの名がある日
くっきりと炙出しのように浮かんできた
「劉連仁 山東省 … の人
昭和十九年九月 北海道明治鉱業会社
昭和鉱業所で労働に従事
昭和二十年無断退去 現在なお内地残留」
昭和三十三年(1958)三月りゅうりえんれんは雨にけむる東京についた
罪もない 兵士でもない 百姓を
こんなひどい目にあわせた
「華人労務者移入方針」
かつてこの案を練った商工大臣が
今は総理大臣となっている不思議な首都へ …
春 穴から出るときは
二日も練習すれば歩くことができたものだ
年とともに 歩くうための日は多く多く費やされ
二ヶ月もかけなければ歩けないほどに
足腰は痛めつけられていった …
惨憺たる月日を縫い
あなたの国の河のように悠々と流れた …
しかし限度にきたようにみえた
厳しい或る冬の朝のこと
あなたはとうとう発見された
札幌に近い当別の山で
日本人の猟師によって
凍傷にまみれた六尺ゆたかな見事な男
一尺半のお下げ髪の 言葉の通じない変な男絶望的な表情を滲ませて
「イダイ イダイ」を連発する男
痛い それは
りゅうりえんれんの覚えていた たった一ツの日本語だった
「中国人らしい」
スキーを穿いた警官は俄に遠慮がちになった
りゅうりえんれんは訝しむ
何故ぶん殴らないのだろう …
りゅうりえんれんは認めない
祖国が勝ったことをも認めない …
りゅうりえんれんの名がある日
くっきりと炙出しのように浮かんできた
「劉連仁 山東省 … の人
昭和十九年九月 北海道明治鉱業会社
昭和鉱業所で労働に従事
昭和二十年無断退去 現在なお内地残留」
昭和三十三年(1958)三月りゅうりえんれんは雨にけむる東京についた
罪もない 兵士でもない 百姓を
こんなひどい目にあわせた
「華人労務者移入方針」
かつてこの案を練った商工大臣が
今は総理大臣となっている不思議な首都へ …
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 劉連仁(りゅ... | 劉連仁(りゅ... » |