来し方、行く末に思いを続けて…
日記 … Kametarou Blog
劉連仁(りゅう・りえんれん)のこと-2
日本の管理者は言った
「日本は島国である 四面は海に囲まれておる
逃げようたって逃げきれるものか!」…
かれらは信じない日本は大陸の地続きだ…
西北へ 西北へと歩けば
故郷にいつかは必ず達する
おお おおらかな知識よ! 幸あれ!
花も樹々もいっせいにひらく北海道の夏
にげるのなら今だ! 雪もきれいに消えている…
りゅうりえんれんは一人で逃げた
どこから
便所の汲取口から
汚物にまみれて這い出した
このときほど日本を烈しく憎んだことがあったろうか
(このとき偶然にも逃げた仲間は他に四人いた。しかし二人はすぐ見つけられ引き立てられた行った)
羽幌という町の近くで
らんらんと輝く太陽のした
戦さは数日前に終わっていることも知らないで
三人は山へ向かって逃げた
おびえきった野兎のように …
(じゃがいもを土の中から掘って食べたらうまかった)
じゃがいもはかれらの主食になった
「おい、聞こえたかい? いまのは汽笛だ!
いいぞ! 鉄道に沿っていけば朝鮮までゆける」…
何日もかかって辿りついたところは
鉄道の終点 …
故郷からは更に遠のいたのも確からしい
三人の男たちは
黙々と冬眠の準備を始めた
(妻のこと、子どものことなど…)
三人の男は冬を耐えた 半年あまりの冬を
(網走の近く 釧路の近く 山狩り 等)
追われ追われて二人の仲間は掴まった
たった一人になってしまった りゅうりえんれん
(死のうとしたが死ねなかった)
「ばかやろう!」 そのつもりなら生きのびてみせらあな!
その時だ しっかり肝っ玉ア坐ったのは
彼の上にそれから十二年の歳月が流れていった
(穴にはいり、穴から出る。女に会う、女は鋭く一声叫び 這うように逃げた)
伸び放題の乱れた髪
畑の小屋から失敬した女の着物
妖怪めいてゆらいでいる
これが自分の姿か?
開拓村の小屋からいろんなものを盗んだが
俺は子供のものだけはとらなかった
柔らかい布団は目が眩むほど欲しかったが
赤ん坊の夜具だったからそいつばかりは
手をつけなかったぜ
畑の小屋におかれるものは豊かになってゆくようだった
米とマッチをみつけたときの喜びは
ガキの頃の正月気分
じゃがいもは茹でられてこの世のものともおもえぬうまさ
それから更に何年かたち
十年たつと月日はかぞえられなくなり
家族の顔もおもろになった
妻もおそらく他家へ嫁いだことだろう
「日本は島国である 四面は海に囲まれておる
逃げようたって逃げきれるものか!」…
かれらは信じない日本は大陸の地続きだ…
西北へ 西北へと歩けば
故郷にいつかは必ず達する
おお おおらかな知識よ! 幸あれ!
花も樹々もいっせいにひらく北海道の夏
にげるのなら今だ! 雪もきれいに消えている…
りゅうりえんれんは一人で逃げた
どこから
便所の汲取口から
汚物にまみれて這い出した
このときほど日本を烈しく憎んだことがあったろうか
(このとき偶然にも逃げた仲間は他に四人いた。しかし二人はすぐ見つけられ引き立てられた行った)
羽幌という町の近くで
らんらんと輝く太陽のした
戦さは数日前に終わっていることも知らないで
三人は山へ向かって逃げた
おびえきった野兎のように …
(じゃがいもを土の中から掘って食べたらうまかった)
じゃがいもはかれらの主食になった
「おい、聞こえたかい? いまのは汽笛だ!
いいぞ! 鉄道に沿っていけば朝鮮までゆける」…
何日もかかって辿りついたところは
鉄道の終点 …
故郷からは更に遠のいたのも確からしい
三人の男たちは
黙々と冬眠の準備を始めた
(妻のこと、子どものことなど…)
三人の男は冬を耐えた 半年あまりの冬を
(網走の近く 釧路の近く 山狩り 等)
追われ追われて二人の仲間は掴まった
たった一人になってしまった りゅうりえんれん
(死のうとしたが死ねなかった)
「ばかやろう!」 そのつもりなら生きのびてみせらあな!
その時だ しっかり肝っ玉ア坐ったのは
彼の上にそれから十二年の歳月が流れていった
(穴にはいり、穴から出る。女に会う、女は鋭く一声叫び 這うように逃げた)
伸び放題の乱れた髪
畑の小屋から失敬した女の着物
妖怪めいてゆらいでいる
これが自分の姿か?
開拓村の小屋からいろんなものを盗んだが
俺は子供のものだけはとらなかった
柔らかい布団は目が眩むほど欲しかったが
赤ん坊の夜具だったからそいつばかりは
手をつけなかったぜ
畑の小屋におかれるものは豊かになってゆくようだった
米とマッチをみつけたときの喜びは
ガキの頃の正月気分
じゃがいもは茹でられてこの世のものともおもえぬうまさ
それから更に何年かたち
十年たつと月日はかぞえられなくなり
家族の顔もおもろになった
妻もおそらく他家へ嫁いだことだろう
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